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第18話 さてと……オレのレベルはどうなってるかな?
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冒険者レベルを決めるための測定は滞りなく進んでいった。
実戦以外にも、魔法威力や魔力量を測定したり、魔獣の特徴について筆記試験があったり、なんやかんやと測定はほぼ一日かかる。
そうしてその日の夕方にようやく測定は終わり、レニは目を回していたし、優秀なレベッカでも疲れを滲ませていた。
だからオレたちは、ギルド受付ホールのベンチで、会話もせずに座っている。正式な冒険者に付与される冒険証の発行待ちで。
冒険証は、日本で言えば自動車の免許証みたいなものだ。自分のレベルや技能を確認したり、冒険証の提示によって魔力の換金も出来る。
その冒険証を受け渡しているギルド受付は、今は新人冒険者で賑わっているが、あと一時間もすると、帰還した冒険者たちでごった返すことだろう。だからギルド職員も焦った感じでわたわたと対応している。
受付ホール自体はとても広くて、日本で例えるなら銀行みたいな受付カウンターが、横一線に三十コもズラリと並ぶ感じだ。カウンターといっても椅子はないが。
受付カウンターは多いが待合席は逆に少なくて、壁際に並ぶ程度だ。オレたちが座れたのも、疲れ切ったレニに気を使ってくれた同級生が席を譲ってくれたからだった。
レニって、人見知り&引きこもりの割に人気があるんだよなぁ……やはり容姿の魅力がすごいってことか。当のレニは、感謝もそこそこに舟をこぎ始めているが。
そんなことを考えていたら、「ジップ・ヴェイトく~ん」と受付カウンターから呼ばれたのでオレは立ち上がった。
「さてと……オレのレベルはどうなってるかな?」
「レベル、すぐ教えてよね?」
「ああ、もちろんだ」
オレはレベッカに頷いてから受付カウンターに出向く。
「ジップ・ヴェイトくんだね?」
受付スタッフのお姉さんに名前を確認されたので、オレは「はい、そうです」と答えた。
すると受付のお姉さんは、目をキラキラさせながら言ってきた。
「さすが、学年主席で卒業しただけあるね!」
「は、はぁ……」
「おめでとうだよ! 新人冒険者としては過去最高の──レベル9だよ!」
「え……?」
お姉さんは、興奮気味にそう宣言したので、周囲にも聞こえたのだろう。新人冒険者やギルドスタッフたちからどよめきが起こる。
それを聞きつけたのだろうレベッカが、近づいてくる気配も分かった。レニは、さっきウトウトし始めていたから、すでに寝入っているのかもしれない。
だがオレは……呆けた声しか出せなかった。だからお姉さんが首を傾げる。
「あれ? もっと喜ぶと思ったんだけど……驚きすぎとか?」
そんなお姉さんに、オレは曖昧な笑みで答えた。
「あ、ああ……そうですね。がんばった甲斐があったというか、そんな感じで驚きを通り越してます、はい……」
いや実は……本音を言えば拍子抜けしたというか……
オレの体感としては、レベル30は確実に超えていると思っていたからなぁ。
本体のオレがレベル9ということは、オレの残機たちだって同じだ。だというのにオレたちは、レベル9なんかじゃ、足を踏み入れることなんて到底できないダンジョン階層まで探索している。
となるとそれは、どういうことなのだろう?
冒険者が無茶をしないよう、ギルドは、ダンジョン攻略のレベルを高めに設定しているのか?
あるいは、残機たちは文字通り一心同体だから、普通のパーティより遙かに連携が上手くて、だから低レベルでもダンジョンの奥まで行けたのか……
そんなことを黙考していたら、受付のお姉さんが言ってきた。
「あ、それと。ジップ君はギルドマスターからお呼びが掛かってるよ。このあとマスター室に行くんだぞ?」
「あ、はい……分かりました」
「にしてもすごいねキミ。まだダンジョンにも入っていないのにレベル9だなんて」
「ま、まぁ……実技を特にがんばりましたから」
「うんうん、それでこそフリストル市の若人だよ。あ、わたし、カリン・フィッシャーっていうんだ。はいこれ名刺」
「あ、どうも」
「ぜひこれから懇意にしてほしいな♪」
受付のお姉さん改めカリンさんを見ると、小柄な感じで背も低く、どっちかって言うと妹って雰囲気だったが、ギルド職員をしているのだから年上なのだろう。
髪の毛は肩に掛かる程度の長さで、目は大きなつり目。なんとなく、猫を彷彿させるような容姿でとても愛くるしい。この異世界には獣人はいないようなので、ぜひとも猫耳のカチューシャを付けて、語尾は「懇意にして欲しいにゃ♪」としてもらいたい。
などと考えていたら背中を小突かれた。振り向くとレベッカがいた。
「ジップ、何やってるのよ」
「何って、冒険証をもらってるんだろ」
「わたしには、受付の可愛いお姉さんから名刺をもらって、鼻の下を伸ばしているようにしか見えないけど?」
「ち、違うって!」
「そう? ならいいけど。冒険証の交付はもう終わったんでしょ?」
「あ、ああ……」
オレが頷くと、レベッカはにこやかに……でもなぜか凄みのある笑みでカリンさんを見た。
「では、もう用は済みましたよね?」
カリンさんは、苦笑しながらレベッカに向かって頷く。
「まぁ……そうなるかな?」
「では失礼します。後も詰まってますからね」
「たはは……ジップくんはモテるんだねぇ」
「いや、そういうんじゃなくて──」
しかしオレはレベッカに引っ張られてその場を立ち去るしかなくなる。
そんなオレに、カリンさんは言ってきた。
「あ、マスター室にいくのを忘れずにね~」
「はい、分かりました」
オレは引きずられながら振り返り、カリンさんに答えるのだった。
実戦以外にも、魔法威力や魔力量を測定したり、魔獣の特徴について筆記試験があったり、なんやかんやと測定はほぼ一日かかる。
そうしてその日の夕方にようやく測定は終わり、レニは目を回していたし、優秀なレベッカでも疲れを滲ませていた。
だからオレたちは、ギルド受付ホールのベンチで、会話もせずに座っている。正式な冒険者に付与される冒険証の発行待ちで。
冒険証は、日本で言えば自動車の免許証みたいなものだ。自分のレベルや技能を確認したり、冒険証の提示によって魔力の換金も出来る。
その冒険証を受け渡しているギルド受付は、今は新人冒険者で賑わっているが、あと一時間もすると、帰還した冒険者たちでごった返すことだろう。だからギルド職員も焦った感じでわたわたと対応している。
受付ホール自体はとても広くて、日本で例えるなら銀行みたいな受付カウンターが、横一線に三十コもズラリと並ぶ感じだ。カウンターといっても椅子はないが。
受付カウンターは多いが待合席は逆に少なくて、壁際に並ぶ程度だ。オレたちが座れたのも、疲れ切ったレニに気を使ってくれた同級生が席を譲ってくれたからだった。
レニって、人見知り&引きこもりの割に人気があるんだよなぁ……やはり容姿の魅力がすごいってことか。当のレニは、感謝もそこそこに舟をこぎ始めているが。
そんなことを考えていたら、「ジップ・ヴェイトく~ん」と受付カウンターから呼ばれたのでオレは立ち上がった。
「さてと……オレのレベルはどうなってるかな?」
「レベル、すぐ教えてよね?」
「ああ、もちろんだ」
オレはレベッカに頷いてから受付カウンターに出向く。
「ジップ・ヴェイトくんだね?」
受付スタッフのお姉さんに名前を確認されたので、オレは「はい、そうです」と答えた。
すると受付のお姉さんは、目をキラキラさせながら言ってきた。
「さすが、学年主席で卒業しただけあるね!」
「は、はぁ……」
「おめでとうだよ! 新人冒険者としては過去最高の──レベル9だよ!」
「え……?」
お姉さんは、興奮気味にそう宣言したので、周囲にも聞こえたのだろう。新人冒険者やギルドスタッフたちからどよめきが起こる。
それを聞きつけたのだろうレベッカが、近づいてくる気配も分かった。レニは、さっきウトウトし始めていたから、すでに寝入っているのかもしれない。
だがオレは……呆けた声しか出せなかった。だからお姉さんが首を傾げる。
「あれ? もっと喜ぶと思ったんだけど……驚きすぎとか?」
そんなお姉さんに、オレは曖昧な笑みで答えた。
「あ、ああ……そうですね。がんばった甲斐があったというか、そんな感じで驚きを通り越してます、はい……」
いや実は……本音を言えば拍子抜けしたというか……
オレの体感としては、レベル30は確実に超えていると思っていたからなぁ。
本体のオレがレベル9ということは、オレの残機たちだって同じだ。だというのにオレたちは、レベル9なんかじゃ、足を踏み入れることなんて到底できないダンジョン階層まで探索している。
となるとそれは、どういうことなのだろう?
冒険者が無茶をしないよう、ギルドは、ダンジョン攻略のレベルを高めに設定しているのか?
あるいは、残機たちは文字通り一心同体だから、普通のパーティより遙かに連携が上手くて、だから低レベルでもダンジョンの奥まで行けたのか……
そんなことを黙考していたら、受付のお姉さんが言ってきた。
「あ、それと。ジップ君はギルドマスターからお呼びが掛かってるよ。このあとマスター室に行くんだぞ?」
「あ、はい……分かりました」
「にしてもすごいねキミ。まだダンジョンにも入っていないのにレベル9だなんて」
「ま、まぁ……実技を特にがんばりましたから」
「うんうん、それでこそフリストル市の若人だよ。あ、わたし、カリン・フィッシャーっていうんだ。はいこれ名刺」
「あ、どうも」
「ぜひこれから懇意にしてほしいな♪」
受付のお姉さん改めカリンさんを見ると、小柄な感じで背も低く、どっちかって言うと妹って雰囲気だったが、ギルド職員をしているのだから年上なのだろう。
髪の毛は肩に掛かる程度の長さで、目は大きなつり目。なんとなく、猫を彷彿させるような容姿でとても愛くるしい。この異世界には獣人はいないようなので、ぜひとも猫耳のカチューシャを付けて、語尾は「懇意にして欲しいにゃ♪」としてもらいたい。
などと考えていたら背中を小突かれた。振り向くとレベッカがいた。
「ジップ、何やってるのよ」
「何って、冒険証をもらってるんだろ」
「わたしには、受付の可愛いお姉さんから名刺をもらって、鼻の下を伸ばしているようにしか見えないけど?」
「ち、違うって!」
「そう? ならいいけど。冒険証の交付はもう終わったんでしょ?」
「あ、ああ……」
オレが頷くと、レベッカはにこやかに……でもなぜか凄みのある笑みでカリンさんを見た。
「では、もう用は済みましたよね?」
カリンさんは、苦笑しながらレベッカに向かって頷く。
「まぁ……そうなるかな?」
「では失礼します。後も詰まってますからね」
「たはは……ジップくんはモテるんだねぇ」
「いや、そういうんじゃなくて──」
しかしオレはレベッカに引っ張られてその場を立ち去るしかなくなる。
そんなオレに、カリンさんは言ってきた。
「あ、マスター室にいくのを忘れずにね~」
「はい、分かりました」
オレは引きずられながら振り返り、カリンさんに答えるのだった。
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