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第3話 そうして人間の悲願は、再び地上で生活することとなった

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 この異世界は、閉ざされている。

 なぜなら人間は、ダンジョンの中で生活しているからだ。

 そうして人間の悲願は、再び地上で生活することとなった。

 どうしてそんなことになったのかと言えば、300年前に起こった魔族との戦争で敗北したからだ。

 圧倒的な戦闘能力を持つ魔族が、突如として人間領土に進行してきて、瞬く間に制圧。これにより人間は、絶滅寸前まで追い込まれる。

 だから窮地に陥ったご先祖様たちは、ダンジョンの中へと身を潜めた。

 とはいえダンジョンは危険がいっぱいだ。魔獣と呼ばれる、魔法を使う獣がウヨウヨしている。

 ちなみに魔族とは総称のことで、魔族には大きく分けて二種類が存在する。それが魔人と魔獣だ。

 魔人は言葉を使い、人間と同じ知性を持ち、しかも人間以上に強大な魔法を使う。オレはまだ相まみえたことはないが、知性があるとはいえ、きっと悪鬼羅刹のごとき存在なのだろう。筋骨隆々で、人の背丈の三倍はある鬼って感じの。

 これに比べて魔獣は、知性はただの動物並みで、魔法の強さもまちまちだ。現状では、魔人より強力な魔法を使う魔獣は確認されていない。

 人間に例えるなら、生物という総称の中で、人間と動物が枝分かれしているような感じだろう。

 そして人間と戦争したのは当然魔人のほうだ。知性がなければ戦争なんて出来ないし。

 だから敗れた人間達はダンジョンに潜り、魔人と比べたらまだ与しやすい魔獣と戦う道を選ぶ。

 それにダンジョンというのは複雑怪奇な地形をしていて、さらに広大だから、ダンジョンに潜ることで魔人の手から逃れることも出来た。

 こうしてご先祖様は、下へ下へとダンジョンを潜っていき、やがて地下深くにいくつもの集落を作ることになる。

 これがのちのダンジョン都市と呼ばれる都市に発展していき、今、オレやレニが住んでいる場所となったのだ。オレたちが住むこの都市はフリストル市と呼ばれている。

 ダンジョンは危険がいっぱいだから、フリストル市以外の都市状況は把握し切れていないが、近隣にはあと三つのダンジョン都市があるという。逆を言えば、それ以外には交流がない閉ざされた世界というわけだ。

 全世界に三つの都市しかないなんて、日本から転生してきた当時のオレには信じられない状況だったが、あれから18年も経つともう慣れてしまった。

 そしてダンジョン都市には空がない。ダンジョン内の巨大な空洞だから当然だった。だから、空を知るオレは常に圧迫感を覚えるのだ。

 不幸中の幸いなのは、このダンジョンには昼夜の区別があることだろう。朝になると、徐々にダンジョンの壁面が光り出すのだ。これにより、植物は光合成をすることも出来る。なんとも摩訶不思議な話だが。

 しかし太陽のような鮮やかな光ではないし、例えるなら、重くて低い曇天に覆われた東京の街と言ったところだろうか。そして覆い被された空が風景を色あせても見せる。

 天気によって気分の浮き沈みを感じる人間ならば、ダンジョン都市に住んでいると、次第に滅入ってくるかもしれない。もっとも、この都市に生まれて育った人間は、この景色が当然と思っているので滅入ったりはしないのだが……

 しかしどんなことにでも、例外ということはあるわけで。

 その例外が、レニ・バインホルンだった。
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