孤高のぼっち王女が理不尽すぎ! なのに追放平民のオレと……二人っきりの逃避行!?

佐々木直也

文字の大きさ
上 下
194 / 245
第5章

第27話 イヤラシイお兄ちゃん

しおりを挟む
 まったくアルデは! やっぱり野獣剥き出しじゃないですか!!

 アルデのイヤラシイ視線に耐えられなくなったティスリわたしは、すぐさま制服からいつもの服装に着替えて、髪型も戻して眼鏡も外します!

 リリィが残念がっていましたが……そもそもわたし、どうしてリリィの口車に乗ってしまったのか……

 っていうか本当になぜ「アルデも喜ぶと思いますわよ?」などという馬鹿げた甘言に乗ってしまったのですかほんとに!?

 普段なら、そんな言葉になんて絶対に惑わされないのに! 本当に、どうかしていますよわたし!!

 ということでわたしは、激しい後悔にさいなまれながらも元の服に着替え、それでもまだ頬が熱かったので──

 ──アルデを正座させることでなんとか気を静めました。

 そうしてアルデの前で仁王立ちとなり見下ろします。

 さらにはユイナスさんも仁王立ちになっていました。ちなみにリリィは、話が長くなると判断したのか、ソファで紅茶をすすり始めています。

 そんな応接間で、わたしは言い放ちました。

「やはり……こんなイヤラシイ人間を女子校に解き放つなんて言語道断です! あなたはずっとこの応接間で待機してなさい!」

「そ、そんな!? 今日ずっとって……退屈すぎるんだが!?」

 アルデが情けない声で訴えてきますが、ユイナスさんも怒号を放ちます!

「わたしに関心のないお兄ちゃんなんてもう知らない! っていうか他の女に目移りするなんて! 学祭デートどころじゃないでしょ!」

「他の女って……確かにティスリの制服姿には不意打ちを食らったが……他の女子生徒までそんな目で見てないだろ……!?」

「何よ!? じゃあティスリだけが特別だとでも言いたいわけ!?」

「ま、まぁ……結果的には……そうなるが……」

「……!?」

 妙なところで素直にならないでくださいよ!? ──というわたしの非難は声にもなりません!

 代わりにユイナスさんにキッと睨まれてしまいます!

「そう──やっぱりこの女が最大の敵ってわけね!?」

「ちちち、違いますよユイナスさん!?」

 わたしは数歩後じさってユイナスさんに弁明を試みます! っていうか、このわたしを気後れさせるほどの怒気って、ユイナスさんは何者なのですかホント!?

 しかしわたしもここで負けるわけにはいきません! ユイナスさんになんとか弁明を試みます!

「こ、これはあくまでもアルデのイヤラシさが原因であって! だからわたしは悪くありませんよ!?」

「そのイヤラシイお兄ちゃんを誘惑したのはあんたでしょ!?」

「ゆ、誘惑!? そんなつもりはありません! アルデなら誰にだってイヤラシイ視線を送るのです!」

「じゃあなんで、お兄ちゃんはわたしにイヤラシイことしないのよ!?」

「兄妹だからでは!?」

 などと言い合っていると、アルデが逆ギレしてきました!

「イヤラシイいやらしいって……オレだって男だから仕方がないだろ!?」

「アルデは黙ってなさい!」「お兄ちゃんは黙ってて!」

「はい……」

 わたしとユイナスさんが同時に一喝すると、アルデは再び小さくなって正座をしました。

「と、とにかくです……」

 わたしは咳払いをしてから、冷静さを失わないよう慎重に言いました。

「いまアルデ自身も自白しましたよね? 『男だから見境がない』と……」

「い、いやあの……そんなこと一言もいってないが……」

 その小声の抗議は完全無視して、わたしは話を続けます。

「ですから、あくまでも女性全般に対してアルデはイヤラシイのであって、わたしだけではないのですよ? 分かってくれましたか、ユイナスさん」

「………………」

 わたしが落ち着いてそう諭すと、ユイナスさんが頬を膨らませながらも言いました。

「ならどうして、お兄ちゃんがわたしに色目を使わないのかが謎だけど……」

 え……? そこ、謎でしょうか……?

「まぁ……いいわ。いわゆる男のさがってヤツね。そこにいちいち目くじら立てるほど、わたしは面倒な女じゃないし……わたしが例外ってのがどうにも釈然としないけど……」

 い、いやですから……それは妹だからでは……?

 思わず突っ込みそうになりますが、しかしここでユイナスさんをまた怒らせるわけにはいきません。

 なのでわたしが言葉を飲み込んでいると、ユイナスさんがアルデを見下ろしました。

「じゃあいいわ、お兄ちゃん。もう帰りなさい」

「え、ええ……っていうか、なんでお前が決めるの……?」

「じゃあ何? ティスリが視察を終えるまで、ここで待機してたいわけ?」

「ぐっ……それは……そうだが……」

 アルデは、ちらりとこちらを見てきます。

 どうやらわたしに、助け船を求めているようですが……

 そもそも、ユイナスさんがいるからアルデを女子校に連れてきたわけで、もしユイナスさんが「帰れ」というのであれば、わたしはそれを止める理由もありません。

 ですが……

 なんだかちょっと、アルデが気の毒に感じたわけでもなきにしもあらずなわけで……?

 それに、せっかくの学園祭ですし……

「ユイナスさん……」

「なによ?」

 ぶっきらぼうに返事をするユイナスさんに、わたしは意を決して言いました。

「わたしは、アルデを許そうと思うのですが……」

「どういうことよ?」

「せっかくの学園祭ですし、見学もせず帰宅させるというのもちょっと可哀想になってきまして……」

「………………」

 考え込むことしばし、ユイナスさんが口を開きます。

「まぁ……そうね。わたしとしても、お兄ちゃんが女子生徒に目移りしなければ学祭デートしたかったわけだし」

「いやだから、オレは目移りなんて……」

 弱々しい抗議は完璧スルーして、わたしはユイナスさんに言いました。

「どうでしょう? ここは協力して、アルデを監視するというのは」

「お兄ちゃんを監視?」

「ええ。アルデが目移りしないよう二人で見張るのです。あとお忍び視察はアルデのせいで、、、、、、、出来なくなってしまいましたが、むしろ公式視察であれば、女子生徒もなかなか近づけないでしょうし」

「……まぁ、やむを得ないわね」

 そうしてユイナスさんは、アルデに向かって沙汰を下します。

「じゃ、お兄ちゃんは、絶対にわたしたちから離れないこと。いいわね?」

「いやもう……帰宅でいいんだがオレ……」

 ということでアルデは、わたしとユイナスさんの強固な監視体制の元、学園祭を楽しむことになったのでした。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...