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第5章
第23話 どういう風の吹き回しなんだろうな
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ふふっ……まさかユイナスさんが、学園祭に招待してくれるなんて。
ティスリは誘われたときを思い出し、つい笑みを浮かべてしまったようです。そんなわたしに、アルデが声を掛けてきました。
「ティスリ、今日は久しぶりに楽しそうだな」
「え……そう見えますか?」
「ああ。ずっとニコニコしてるし」
「そ、そこまで笑ってませんよ……!」
御料車とはいえ車内は大きくありませんから、向かい合って座っていると表情が丸見えでしたね……
なぜかわたしは気恥ずかしさを感じてしまい、それを打ち消すために窓の外へと視線を移しました。
わたしとアルデは、今、ユイナスさんが通う学校に向かっています。学園祭を視察するために。
四大貴族独立以降、スケジュールが秒単位で埋まってましたが、普段の三倍速で雑務を片付けたので、今日は丸一日フリーの時間を作ることが出来ました。
その結果、ラーフルがちょっと目を回していたので……今日の彼女はお休みとしましたが。
あと最近、ラーフルは何かとアルデと張り合うので、そもそも今日の予定は伝えていません。伝えたら這ってでも来そうですし。
それにしても、どうしてラーフルはアルデと張り合うのか……これまでの彼女は、そのような対抗心を見せたことなどなかったのに。少なくとも親衛隊内では。
あ、もしかしてラーフルは男性嫌いなのかも。わたしの親衛隊は女性のみで構成されていますが、その中でイイヒトがいるなどと噂になってもいましたし。幼馴染みなんだとか。
もちろんわたしは、そういったことに偏見はありません。同性でもお互いが思い合っているのであればまったく問題ないでしょう。上手くいってくれたらいいなとも思っています。
とはいえ男性嫌いとなると、アルデへの対抗心については、根本的な対策は難しいですし……最近のちょっとした懸念点です。
そんなことを考えながらふとアルデを見ると、いつものマヌケ面でぽけーっとしているばかり。
わたしが心を煩わせているというのに……いい気なものですね。
まぁ……アルデなら別にいいでしょう。ラーフルに嫌みの一つを言われたところで、そもそも嫌みだと気づかなそうですし。
そんなアルデが、ふと思い出したように言ってきました。
「にしても、ユイナスがティスリを祭りに誘うとはなぁ……どういう風の吹き回しなんだろうな」
「確かに、わたしもちょっと不思議に思いましたが……」
もちろんわたしも、ユイナスさんに嫌われていることは理解しています。だからなんとか関係改善をすべく、あの手この手を尽くしているわけで。
しかし関係改善の兆候すら見えず落ち込んでいたところに、ユイナスさんからのお誘いです。
「もしかすると……ちょっとはわたしのことを認めてくれたのでしょうか?」
恐る恐るアルデに聞いてみると、アルデは難しそうな顔をしました。
「認めているか否かって話じゃないと思うんだが……」
「というと?」
「ティスリが凄いヤツだってのは、ユイナスも当然認めてると思うぞ」
「そ、そうですか?」
アルデがそんなことを言ってくるものだから、わたしは思わず頬が熱くなります。しかしアルデは渋面のままでした。
「なんか、妙なことを考えてなければいいけど……」
「妙……とは?」
「それが分かれば、毎回苦労しないんだよなぁ……」
「ふむ……」
とはいえ今日の予定はほぼプライベートです。情勢的に不安定な最近なので、学園祭中に王女として演説して、学生に安心してもらう仕事はありますが、わたしにとっては息抜きに近い仕事ですし。
だからユイナスさんが何を考えていたとしても、大きな問題になるとも思えません。そもそも、ユイナスさんが企みなんてするはずありませんし。
だからわたしは、心配性のアルデに言いました。
「そうであったとしてもいいではないですか。そもそも学校行事なのですから、揉め事になったりしませんよ」
「ふむ……まぁそりゃそうか。そうしたらユイナスが、ちゃんと学校になじめているのか見学するかな。父兄として」
「それがいいでしょう。わたしも今日は休暇のつもりですから」
しかしこのあと──
──学園祭のスローガンを目撃し、わたしは顔を引きつらせることになります。
企てをしていたのは、ユイナスさんではなくリリィだったようです……
ティスリは誘われたときを思い出し、つい笑みを浮かべてしまったようです。そんなわたしに、アルデが声を掛けてきました。
「ティスリ、今日は久しぶりに楽しそうだな」
「え……そう見えますか?」
「ああ。ずっとニコニコしてるし」
「そ、そこまで笑ってませんよ……!」
御料車とはいえ車内は大きくありませんから、向かい合って座っていると表情が丸見えでしたね……
なぜかわたしは気恥ずかしさを感じてしまい、それを打ち消すために窓の外へと視線を移しました。
わたしとアルデは、今、ユイナスさんが通う学校に向かっています。学園祭を視察するために。
四大貴族独立以降、スケジュールが秒単位で埋まってましたが、普段の三倍速で雑務を片付けたので、今日は丸一日フリーの時間を作ることが出来ました。
その結果、ラーフルがちょっと目を回していたので……今日の彼女はお休みとしましたが。
あと最近、ラーフルは何かとアルデと張り合うので、そもそも今日の予定は伝えていません。伝えたら這ってでも来そうですし。
それにしても、どうしてラーフルはアルデと張り合うのか……これまでの彼女は、そのような対抗心を見せたことなどなかったのに。少なくとも親衛隊内では。
あ、もしかしてラーフルは男性嫌いなのかも。わたしの親衛隊は女性のみで構成されていますが、その中でイイヒトがいるなどと噂になってもいましたし。幼馴染みなんだとか。
もちろんわたしは、そういったことに偏見はありません。同性でもお互いが思い合っているのであればまったく問題ないでしょう。上手くいってくれたらいいなとも思っています。
とはいえ男性嫌いとなると、アルデへの対抗心については、根本的な対策は難しいですし……最近のちょっとした懸念点です。
そんなことを考えながらふとアルデを見ると、いつものマヌケ面でぽけーっとしているばかり。
わたしが心を煩わせているというのに……いい気なものですね。
まぁ……アルデなら別にいいでしょう。ラーフルに嫌みの一つを言われたところで、そもそも嫌みだと気づかなそうですし。
そんなアルデが、ふと思い出したように言ってきました。
「にしても、ユイナスがティスリを祭りに誘うとはなぁ……どういう風の吹き回しなんだろうな」
「確かに、わたしもちょっと不思議に思いましたが……」
もちろんわたしも、ユイナスさんに嫌われていることは理解しています。だからなんとか関係改善をすべく、あの手この手を尽くしているわけで。
しかし関係改善の兆候すら見えず落ち込んでいたところに、ユイナスさんからのお誘いです。
「もしかすると……ちょっとはわたしのことを認めてくれたのでしょうか?」
恐る恐るアルデに聞いてみると、アルデは難しそうな顔をしました。
「認めているか否かって話じゃないと思うんだが……」
「というと?」
「ティスリが凄いヤツだってのは、ユイナスも当然認めてると思うぞ」
「そ、そうですか?」
アルデがそんなことを言ってくるものだから、わたしは思わず頬が熱くなります。しかしアルデは渋面のままでした。
「なんか、妙なことを考えてなければいいけど……」
「妙……とは?」
「それが分かれば、毎回苦労しないんだよなぁ……」
「ふむ……」
とはいえ今日の予定はほぼプライベートです。情勢的に不安定な最近なので、学園祭中に王女として演説して、学生に安心してもらう仕事はありますが、わたしにとっては息抜きに近い仕事ですし。
だからユイナスさんが何を考えていたとしても、大きな問題になるとも思えません。そもそも、ユイナスさんが企みなんてするはずありませんし。
だからわたしは、心配性のアルデに言いました。
「そうであったとしてもいいではないですか。そもそも学校行事なのですから、揉め事になったりしませんよ」
「ふむ……まぁそりゃそうか。そうしたらユイナスが、ちゃんと学校になじめているのか見学するかな。父兄として」
「それがいいでしょう。わたしも今日は休暇のつもりですから」
しかしこのあと──
──学園祭のスローガンを目撃し、わたしは顔を引きつらせることになります。
企てをしていたのは、ユイナスさんではなくリリィだったようです……
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