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第5章
第8話 思わず胸を押さえたくなりました
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やはり、ティスリは間違っていたのかもしれません……
そんな考えが脳内をグルグル回っているのは自覚しているのですが、わたしはどうしてもその思考を止めることが出来ずにいました。
普段なら、こんなことあり得ないのに……
後悔の念は、荒れ狂う波のように押し寄せてはわたしを飲み込もうとします。わたしはなんとかその場に留まり、冷静を取り戻そうとしても、すぐさま次の荒波がやってきてわたしを飲み込むのです。
そのたびに、わたしは息も切れ切れになり、思わず胸を押さえたくなりました。
実際には、波にも揉まれていないし水中でもないというのに……どうしてこんなに息苦しいのでしょうか……?
「殿下、そろそろお時間なのですが……」
「え?」
「いやあの、協議会の時間が迫っていますが……」
「あっ! は、はい。そうでしたね……!」
背後に控えていたラーフルに声を掛けられ、わたしはハッとして置き時計を見ました。あと五分で協議会の時間です。
い、いけない!
今日は重要な協議会の日──
──ミアさん達の護衛にアルデをつけたのは間違いだったのではないか? などという些末なことを考えている場合ではありません!
そもそもわたしは、みんなの護衛をお願いしたのです。アルデも事の重要性は分かっているでしょうから、その護衛中、ミアさんと抜け出して、ふたりっきりで王都観光する……なんて、まさかそんなことをするはずありません!
でも……先日の花火大会では……まさにそれを二人はやっていたわけで……
あの森で、二人は一体何を話していたのか……ただならぬことを話していたことは間違いないのですが……
こんなに気になるなら、やっぱりアルデはわたしの護衛としてつけていたほうがよかったかも。いえそれ以前に、あの森の中で、いっそ魔法で聞いてしまえばよかったのかも──
「殿下? さすがにそろそろ……」
「え?」
「いやですから評議会が……」
「あっ!」
再びラーフルに声を掛けられ、わたしは思考の海から慌てて浮上します。その勢いのまま立ち上がりました。
「も、もちろん行きますよ。今日は協議会なのですからね!」
「え、えぇ……では参りましょう」
わたしの様子が普段と違うことを悟られたのか、ラーフルは怪訝な顔をしながらも頷きます。
そうしてわたしは、控え室から慌てて出るのでした。
そんな考えが脳内をグルグル回っているのは自覚しているのですが、わたしはどうしてもその思考を止めることが出来ずにいました。
普段なら、こんなことあり得ないのに……
後悔の念は、荒れ狂う波のように押し寄せてはわたしを飲み込もうとします。わたしはなんとかその場に留まり、冷静を取り戻そうとしても、すぐさま次の荒波がやってきてわたしを飲み込むのです。
そのたびに、わたしは息も切れ切れになり、思わず胸を押さえたくなりました。
実際には、波にも揉まれていないし水中でもないというのに……どうしてこんなに息苦しいのでしょうか……?
「殿下、そろそろお時間なのですが……」
「え?」
「いやあの、協議会の時間が迫っていますが……」
「あっ! は、はい。そうでしたね……!」
背後に控えていたラーフルに声を掛けられ、わたしはハッとして置き時計を見ました。あと五分で協議会の時間です。
い、いけない!
今日は重要な協議会の日──
──ミアさん達の護衛にアルデをつけたのは間違いだったのではないか? などという些末なことを考えている場合ではありません!
そもそもわたしは、みんなの護衛をお願いしたのです。アルデも事の重要性は分かっているでしょうから、その護衛中、ミアさんと抜け出して、ふたりっきりで王都観光する……なんて、まさかそんなことをするはずありません!
でも……先日の花火大会では……まさにそれを二人はやっていたわけで……
あの森で、二人は一体何を話していたのか……ただならぬことを話していたことは間違いないのですが……
こんなに気になるなら、やっぱりアルデはわたしの護衛としてつけていたほうがよかったかも。いえそれ以前に、あの森の中で、いっそ魔法で聞いてしまえばよかったのかも──
「殿下? さすがにそろそろ……」
「え?」
「いやですから評議会が……」
「あっ!」
再びラーフルに声を掛けられ、わたしは思考の海から慌てて浮上します。その勢いのまま立ち上がりました。
「も、もちろん行きますよ。今日は協議会なのですからね!」
「え、えぇ……では参りましょう」
わたしの様子が普段と違うことを悟られたのか、ラーフルは怪訝な顔をしながらも頷きます。
そうしてわたしは、控え室から慌てて出るのでした。
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