175 / 245
第5章
第8話 思わず胸を押さえたくなりました
しおりを挟む
やはり、ティスリは間違っていたのかもしれません……
そんな考えが脳内をグルグル回っているのは自覚しているのですが、わたしはどうしてもその思考を止めることが出来ずにいました。
普段なら、こんなことあり得ないのに……
後悔の念は、荒れ狂う波のように押し寄せてはわたしを飲み込もうとします。わたしはなんとかその場に留まり、冷静を取り戻そうとしても、すぐさま次の荒波がやってきてわたしを飲み込むのです。
そのたびに、わたしは息も切れ切れになり、思わず胸を押さえたくなりました。
実際には、波にも揉まれていないし水中でもないというのに……どうしてこんなに息苦しいのでしょうか……?
「殿下、そろそろお時間なのですが……」
「え?」
「いやあの、協議会の時間が迫っていますが……」
「あっ! は、はい。そうでしたね……!」
背後に控えていたラーフルに声を掛けられ、わたしはハッとして置き時計を見ました。あと五分で協議会の時間です。
い、いけない!
今日は重要な協議会の日──
──ミアさん達の護衛にアルデをつけたのは間違いだったのではないか? などという些末なことを考えている場合ではありません!
そもそもわたしは、みんなの護衛をお願いしたのです。アルデも事の重要性は分かっているでしょうから、その護衛中、ミアさんと抜け出して、ふたりっきりで王都観光する……なんて、まさかそんなことをするはずありません!
でも……先日の花火大会では……まさにそれを二人はやっていたわけで……
あの森で、二人は一体何を話していたのか……ただならぬことを話していたことは間違いないのですが……
こんなに気になるなら、やっぱりアルデはわたしの護衛としてつけていたほうがよかったかも。いえそれ以前に、あの森の中で、いっそ魔法で聞いてしまえばよかったのかも──
「殿下? さすがにそろそろ……」
「え?」
「いやですから評議会が……」
「あっ!」
再びラーフルに声を掛けられ、わたしは思考の海から慌てて浮上します。その勢いのまま立ち上がりました。
「も、もちろん行きますよ。今日は協議会なのですからね!」
「え、えぇ……では参りましょう」
わたしの様子が普段と違うことを悟られたのか、ラーフルは怪訝な顔をしながらも頷きます。
そうしてわたしは、控え室から慌てて出るのでした。
そんな考えが脳内をグルグル回っているのは自覚しているのですが、わたしはどうしてもその思考を止めることが出来ずにいました。
普段なら、こんなことあり得ないのに……
後悔の念は、荒れ狂う波のように押し寄せてはわたしを飲み込もうとします。わたしはなんとかその場に留まり、冷静を取り戻そうとしても、すぐさま次の荒波がやってきてわたしを飲み込むのです。
そのたびに、わたしは息も切れ切れになり、思わず胸を押さえたくなりました。
実際には、波にも揉まれていないし水中でもないというのに……どうしてこんなに息苦しいのでしょうか……?
「殿下、そろそろお時間なのですが……」
「え?」
「いやあの、協議会の時間が迫っていますが……」
「あっ! は、はい。そうでしたね……!」
背後に控えていたラーフルに声を掛けられ、わたしはハッとして置き時計を見ました。あと五分で協議会の時間です。
い、いけない!
今日は重要な協議会の日──
──ミアさん達の護衛にアルデをつけたのは間違いだったのではないか? などという些末なことを考えている場合ではありません!
そもそもわたしは、みんなの護衛をお願いしたのです。アルデも事の重要性は分かっているでしょうから、その護衛中、ミアさんと抜け出して、ふたりっきりで王都観光する……なんて、まさかそんなことをするはずありません!
でも……先日の花火大会では……まさにそれを二人はやっていたわけで……
あの森で、二人は一体何を話していたのか……ただならぬことを話していたことは間違いないのですが……
こんなに気になるなら、やっぱりアルデはわたしの護衛としてつけていたほうがよかったかも。いえそれ以前に、あの森の中で、いっそ魔法で聞いてしまえばよかったのかも──
「殿下? さすがにそろそろ……」
「え?」
「いやですから評議会が……」
「あっ!」
再びラーフルに声を掛けられ、わたしは思考の海から慌てて浮上します。その勢いのまま立ち上がりました。
「も、もちろん行きますよ。今日は協議会なのですからね!」
「え、えぇ……では参りましょう」
わたしの様子が普段と違うことを悟られたのか、ラーフルは怪訝な顔をしながらも頷きます。
そうしてわたしは、控え室から慌てて出るのでした。
0
お気に入りに追加
365
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる