孤高のぼっち王女が理不尽すぎ! なのに追放平民のオレと……二人っきりの逃避行!?

佐々木直也

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第5章

第2話 極秘事項

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 どうにも寝付けなかったアルデオレは、気晴らしで早朝トレーニングをしていた。

 しかしどれだけ体を動かしても、ミアのことが頭から離れない……しかもそれをティスリに見られていたとか……最悪だ。

 ん? でもなんで……ティスリに見られていたことが最悪だと考えているんだオレ?

 そりゃ、ティスリが怒るからだが……そもそもなんでティスリに怒られると思ったんだっけ?

 だいたいティスリは怒らなかったじゃないか。かなり戸惑ってはいたけれど。でもそれは、会話までは聞いていなかったからか?

 だとしたら、会話を聞かれていたらティスリは怒ったのだろうか?

 う、う~ん……何か違う気がする……

 ってかそもそも!

 ミアのことはどうすりゃいいんだよ!

 まさかミアがオレのことを……その……好きだった、だなんてなぁ……

 長い付き合いだというのに、そんな素振そぶりは微塵も見せていなかった、、、、、、、、、、、のに急すぎるだろ……

 しかも答えなくていいって……どういうことだ?

 こういうのって、ふつー、告られたら、オレも好きだとか付き合おうとか、あるいはごめんなさいとか、そういうのを答えるべきなんじゃないのか?

 だというのに答えなくていいって……ならオレはどうしろと!?

「はぁ……駄目だ……帰ろう……」

 海岸沿いをいくらランニングしても堂々巡りになってしまうので、オレは諦めてリリィの別荘に戻る。

 シャワーを浴びてからリビングに入ると、まだ早朝だというのにティスリが起きていて、さらに見知らぬ顔もあった。

「おはようティスリ……その人は?」

「そういえば、アルデは初対面でしたか。彼女はラーフル・ブルシェンシャフト。わたしの親衛隊長で、今はフェルガナ領主代行も務めています」

「フェルガナって、うちの村の領主? ……ああ、ティスリに代行を押しつけられたっていう気の毒な人か」

 そんな彼女──ラーフルは、ソファにも座らず直立不動のまま言ってくる。

「貴殿と会うのは初めてではないのだが──」

「え、そうだったっけ?」

「──状況が状況だったのでやむを得まい。改めてよろしく頼む。それとわたしは気の毒などではない。領主代行などという余りある栄誉に預かることが出来て、むしろ光栄の極みというものだ」

「余りあったんじゃむしろ大変じゃね?」

「そそそ、そんなことはないぞ!?」

 まぁティスリの手前、そう言わざるを得ないのだろう。ここで揚げ足をとったところで意味がないのでオレはスルーしてソファに座った。

「それで、その領主代行様がなんの用なんだ? 南国にまで」

 オレのその疑問にはティスリが答えてくる。

「もちろん、楽しい知らせではないでしょうね。転送魔法で飛んでくるくらいですから」

「……そうだろうな」

「リリィにも聞かせたいとのことで、今はリリィの身支度待ちです」

 ティスリがそう説明したところでリビングの扉がノックされて、大慌てでリリィが入ってきた。

「も、申し訳ございませんお姉様! お姉様をお待たせしてしまうなんて、このリリィ一生の不覚──」

「まだ早朝ですから構いません。いいから座りなさい」

 確かにまだ六時だもんな。他の面子は寝ているし。

 ということでリビングに揃ったのは、ティスリ、ラーフル、リリィ、そしてオレの四人。

 夜明けにはラーフルが転送魔法でこの別荘に訪れていて、ティスリの起床を待っていたのだそうだ。朝からご苦労なこった。

 そして、ティスリが思いのほか早く起きてきたので、リリィが叩き起こされたという構図か。

 さらに他の面子には聞かせたくないらしく、早朝だったのは好都合だったようだ。

 だとしたら……オレはたまたま居合わせただけだし、この場にいていいのか?

 オレと同じ疑問を抱いたのか、ラーフルがティスリに言った。

「殿下。今回の話は極秘事項なのですが、彼には──」

「構いません。アルデはわたしの側近だと思って接しなさい」

「そ、そうですか。かしこまりました」

 え、まぢで?

 今まで護衛やら従者やらただの男避けやら挙げ句の果てに奴隷やら、散々な言われようだったのに、ここに来て王女の側近だとか。

 オレの立場、アップダウンが激しすぎない?

 なんとなく、ラーフルに嫉妬の眼差しを向けられている気がしないでもないが……まぁ彼女は貴族だし、平民のオレが王女の側近になったら嫉妬の一つや二つも出てくるのだろう。でもオレ、別に出世とかしたいわけじゃないのになぁ……

 などと考えていたら、ラーフルが姿勢を正してから話し始めた。

「まず結論から申し上げます。実は……五大貴族のうち、テレジア家を除く貴族が……反乱を起こしました」

 ラーフルがそう告げて、数瞬後。

「はぁ!?」

 リリィの悲鳴だけが、リビングに反響するのだった。
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