孤高のぼっち王女が理不尽すぎ! なのに追放平民のオレと……二人っきりの逃避行!?

佐々木直也

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第5章

第1話 に、にゃあ〜……

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 昨夜のアレ、、は、一体なんだったのでしょう……?

 そんなことを考えていたら、ティスリわたしは一睡も出来ないまま夜を明かしていました。

「うう……眠いのに眠れませんでした……」

 カーテンの隙間から差し込む朝日を見て、わたしは諦めて上体を起こします。

 そうしてまた、脳裏に同じ言葉を浮かべてしまいました。

 昨夜のアレは、一体なんだったのか……

 花火大会に出向く道中の混雑で、わたしたちははぐれてしまいましたが、アルデとミアさん以外はつつがなく合流します。

 しかしいくら待っても二人とは合流できないので、わたしは、守護の指輪に仕込んだ通信機で呼んでみたところ、アルデは応答しましたがミアさんの応答がありません。

 だからわたしは胸騒ぎを覚えました。

 もちろんミアさんの身を案じての胸騒ぎです。非常用通信に出ないということは、下手をしたら意識がない状態ということですからね。

 けっして、絶対に、間違っても、アルデとミアさんだけがいないから胸騒ぎを覚えたわけではありません!

 ということでわたしは非常時と判断し、指輪の発信魔法を頼りに、二人の元に向かいます。

 なぜか、どういうわけか、不思議なことに、二人の発信源は同じ場所でした………………きっと、運良く合流できたということですね!

 しかも不可解なことに林道を外れた森の中でしたが、トイレなんかを探しているうちに道を外れたのでしょう!

 そうして。

 わたしが、発信源の元に辿り着いたとき。

 森の中、ちょっとひらけた広場に二人がいて。

 ミアさんが、とても真剣に話していました──

 ──アルデに向かって。

「アレは……何を話していたんでしょう……?」

 遠巻きに目撃したわたしでは、ミアさんの話までは聞こえませんでした。魔法を使えば聞くこともできましたが、もちろん人の話を盗み聞きするような真似は出来ません。

 ですがあのシチュエーションと雰囲気で、何か、ただならぬ会話がなされたことは分かりました。

 事実、アルデに何かを告げた後のミアさんは、すぐにその場を立ち去ってしまいましたし……

 あとに残されたのは、呆然と立ち尽くすアルデのみでしたが……やがてアルデは、後頭部を掻きながら歩き始めました。

 ま、まずい……! アルデはわたしのいる場所に向かって歩いています! このままでは鉢合わせをしてしまう!

 い、いやでも……わたしは二人を迎えに来ただけであって……別にやましいことも何もないのですが……でもなぜか、アルデと顔を合わせるのは非常にマズイ気がします!

 なのでわたしはすぐに引き返そうとして──

 ──パキンッ。

 運悪く、足元の小枝を踏んでしまいました!

「ん、誰だ?」

 だからアルデに気づかれました!?

 な、何しているのですかわたし!

 普段なら、こんなミス絶対しないのに!

 さらにあり得ないことに!

「に、にゃあ~……」

 わたしは咄嗟に、猫の鳴きマネなんてしてしまいます!

 そんなことで誤魔化せるとでも!?

「なんだ猫か──」

 っていうかアルデ、なんて単細胞!

「──とでもいうと思ったか? 後ろ姿が丸見えだぞ、ティスリ」

「ぐっ……!」

 誤魔化せたかと一瞬思いましたが、さすがのアルデも、あんな猫の真似では誤魔化せなかったようです……っていうかわたし、後ろ姿まで晒すとはなんたる醜態……!

 やむを得ないので、わたしは振り返ってアルデを睨みました。

「あなたたちが遅いから迎えに来ただけですからね!? 決して、覗き見していたわけではありませんよ!」

「いやそれ……覗き見してたって言っているようなもんじゃん」

 ぐぐっ……! ま、まさかアルデに論破されるなんて!?

 っていうかわたし、なぜこれほどまでに動揺しているのですか!?

 やむを得ないので、わたしは事実をありのままに伝えることにします!

「し、仕方がないでしょう!? あなたたちが遅いから迎えに来たら、鉢合わせしてしまったのですから! 別に、意図して覗き見したわけではないですからね!?」

「あー……うん、そう……」

 アルデは決まり悪く視線を逸らすだけで、わたしが覗き見していたことに怒る様子はありませんでした。

 怒るというよりも、むしろ困った感じでした。

 だからわたしは気になって、思わず聞いてしまいます。

「それで……あの……何かあったんですか? ミアさん、一人でどこかに行ってしまいましたが……」

「……ん?」

 私の問いかけに、アルデは眉をひそめます。

「オレ達の会話を聞いてたんじゃないのか?」

「そ、そこまではしてませんよ! それなりの距離もありましたから、会話までは聞こえていません」

「そうか……」

 そうしてアルデは、少し黙考したあと答えてきます。

「いや別に……大したことじゃないんだ。ケンカとかでもないから気にしないでくれ」

「でも、ミアさんが……」

「たぶん、花火会場に向かってると思う。だからオレ達も行こう」

「え……けど……」

 わたしの戸惑いには意も介さず、というよりアルデは心ここにあらずという感じで歩いて行ってしまいます。

 だからわたしは、それ以上の追求が出来るはずもなく……アルデの後を追うしかありませんでした。

 そうして花火会場の出入口に戻ってみれば、確かに、ミアさんはすでに到着していました。

 そうして、どこかスッキリした笑顔で普通にアルデと話していました。アルデのほうは、なぜか戸惑った感じではありましたが……

 もちろん、勝手に盗み見てしまったわたしは、ミアさんに尋ねることも出来ずに……昨夜は、みんなで花火を見た後、リリィの別荘宅に帰ってきて、あとは特に何もなく就寝となりました……わたしは寝付けなかったわけですが。

 やむを得ず、わたしはベッドから降りてカーテンを明けました。

 光を浴びてわたしは目を細めますが、眩しい割に今日は曇り空でした。

 分厚そうな雲が南国の空を覆っています。もしかしたら一雨降るかもしれません。

 南国の青空で、気怠い気分を晴らしたかったのですが、やむを得ません。

 わたしは備え付けのバスルームでシャワーを浴びて、寝不足の頭をいくらか起こすと、身支度を調えました。

 その後、自室のドアノブに手を掛けて──

 ──今日のアルデは、普段通りに戻っているかしら……?

 そんなことをふと思いながら扉を開け、リビングに向かいます。

 しかしリビングにいた人間は、わたしが予想だにしていなかった人物でした。
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