163 / 194
第4章
番外編2 ティスリの二日酔い(その2)
しおりを挟む
ティスリが禁酒を決意していると、アルデが言ってきました。
「やっちまったもんは仕方がないだろ。大切なのは今後だよ」
「………………それは、そうですが……」
そうしてアルデは、どうしてわたしがユイナスさんを気に掛けるのかと聞いてくるのですが……
「そ、それは……」
ユイナスさんだって、この国の民なのですから、わたしが気に掛けるのは当然だと説明していると、アルデは、まだなんとなく釈然としない様子で聞いてきます。
「いや、お前がオレたち平民を大切にしてくれるのはありがたいけど、とは言ったって、お前がユイナスに執着しているのはちょっと違う話じゃね?」
「うっ……そ、それは……」
言われてみれば確かにその通りなんですが……
しかし人に対する好悪の感情なんて、そもそも理由があるかも怪しいわけで……
だからわたしがハッキリ答えられずにいると、アルデは「ユイナスは友達に勧められない」なんてことを言ってきます。
だからわたしは、そんなことないとユイナスさんを庇っていると、アルデは思いがけぬことを言いました。
「しばらく村に滞在するならミアとかどうよ? ユイナスと比べるべくもなく、アイツはまともな性格だぜ?」
と、そこで……
どうしてかわたしの感情は……
真っ白になっていました。
だからわたしは、反射的に言っていました。
「も、もちろん……ミアさんとも仲良くしたいと思ってます」
わたしが、なんの考えも無しに言葉を口にするなんて……
それだけでも驚きなのですが……
いえもちろん、ミアさんはとてもよい人だと思いますし、仲良くしたいとも思っています。
しかしどうしてか、これまでのミアさんの言動を思い浮かべると……心に引っかかるものがあって。
もちろんそれは、嫌悪感ではありません。例えば悪徳貴族と接するときは、きまって嫌悪感を覚えたものですが、そういった類いのものではないのです。そもそもミアさんと仲良くしたいのは本当ですし……
でもどうしてか……
何かが引っかかって……
わたしはその引っかかりの理由が分からず、しかもそれ以上考えたくなくて……
だから話を逸らすべく、覚悟を決めて、いよいよ本題を切り出すことにしました。
「そ、それで、その………………ユイナスさんの様子は……どうですか?」
わたしのそんな覚悟を知りもしないアルデは、やっぱり無神経にもズゲズゲと言ってきました。
「ぶっちゃけ……めっちゃ怒ってる」
「………………!?」
「お前のダル絡みが、相当にイヤだったらしい」
「………………!!」
くっ……!
や、やはり……
そうですよね!?
わたしは、知りたくなかった現実を突きつけられ……思わず歯を食いしばりました!
かつて、これほど後悔したことなんてなかった──というよりわたしは後悔なんてしたことなくて、強いていえば、これまでにもアルデには泥酔状態を何度か見られてしまったことが後悔と言えなくもないですが、しかしそれは「所詮はアルデだし、まぁいっか」程度で済んでいたというのに……
まさかユイナスさんにまで、泥酔したわたしを晒してしまうとは!
「ど、どうすればいいんですか!?」
だからわたしは、いてもたってもいられなくなって身を乗り出します!
「どうすればユイナスさんの許しを得られるのです!?」
「う~~~ん……そうだなぁ……」
「アルデ! ちゃんと考えてくださいよ! もはやこうなっては、兄であるあなただけが頼りなのですよ!?」
そうしてわたしは、血の巡りが悪そうなアルデの頭を必死に揺すって、なんとか打開策を捻り出させようとしました!
やがてアルデは、頭に血を通わすことが出来たのか答えてきます!
「そうだなぁ……何か詫びの品でもあれば、あるいは。ユイナスは、オシャレでハイソな生活を夢見ている節があるから、例えば──」
「なるほど分かりました!」
そんなことならお安いご用です!
だからわたしは張り切って答えました!
「であれば、わたしの屋敷を進呈しましょう!」
何しろわたしには、無駄な屋敷がたくさんあります。
国家予算をゆうに超えるキャッシュを寝かせておいては経済に悪影響しかありませんから、わたしはやむを得ず、不動産を始めとする多くの資産を個人的に所有していますが、ぜんぜん使っていなかったのです。そもそも使う時間もありませんでしたし。
だから、個人的な資産は国民に解放しようと思っていたのですが、大臣達が「民が詰めかけ現地が大混乱するからやめてくだされ!」と泣いて懇願してくるものですから、やむを得ず保留としていました。
ですから、それらがユイナスさんの役に立つというのなら、譲渡はぜんぜん構いません!
しかしそんな不用品をユイナスさんに差し上げても詫びになるかどうか……というかそもそも、不用品を詫びの代わりにするなんて失礼ですよね?
であれば、わたしが保有する様々な会社の所有権も付けましょう!
ただいま現在ですと、やはり最先端技術を扱っている魔動車会社が最も高い価値となっていますから、そこの独占販売権なら、なんとかお詫びになるかもしれません!
もちろん、販売事業の細かなオペレーションは商会の人間がやりますから、ユイナスさんは特に何もすることなく、銀行口座にお金が振り込まれるのを日々見ているだけでいいのです!
うん、これなら詫びになりますね!
ということをアルデに説明していたら、気づけばアルデは慌てふためいていました。
「ちょっと待て待て!? おまいはいったい何を言ってるんだ!?」
「何をって……お詫びの品が必要なのでしょう?」
「どこの世界に、悪酔いしただけで家屋敷や車を渡すヤツがいるんだよ!?」
というわけでアルデに反対されてしまいます。曰く「ユイナスにそんな大金掴ませたら、何をしでかすか分からない」とのこと。
悪徳貴族じゃあるまいし、ユイナスさんが悪さをするなんて思えませんが、しかしアルデがどうしてもやめてくれと言ってきます。だからわたしはアルデに問いました。
「ならアルデは、どんな品物ならいいというのですか?」
するとアルデは、文房具とか鞄とか服とかいう始末。
そんなの、詫びどころかただの粗品じゃないですか。
だからわたしは納得がいかず、アルデと議論を続けた結果、ユイナスさんに直接尋ねることになりました。
そうして、お詫びなら出来る限り早い方がいいということになり、だからわたしは立ち上がろうとしたのですが──
──まだ昨日の酒精が残っていたのか、わたしは思わずよろめいてしまいます。
それを咄嗟にアルデが支えてくれました。
「おい、大丈夫か?」
「うう……まだ酒精が残っているようで……」
アルデがすぐ間近にいることに、わたしは思わずドキリとしますが、それ以上に目眩が酷くて、わたしはアルデを引き離すこともできません。
そんなわたしにアルデが言ってきます。
「なら詫びは、お前が完全に回復してからでいいよ」
「ですが……少しでも早い方が……」
「調子悪いのに詫びようとしても、誠意が伝わらないかもしれないだろ。お前が謝りたがっていることは、オレからそれとなく伝えておくから」
「そうですね……ではそのようにお願いします」
それからわたしは、アルデに支えられながら、再び横になりました。
わたしの背中にアルデの手が添えられて……その暖かさが、パジャマの生地を通して伝わってきて……
だ、大丈夫ですよね……?
わたしの心音が、アルデにまで伝わったりはしてませんよね……!?
そもそもドキドキしているのは二日酔いのせいですが!
「じゃ、オレはユイナスに話を付けてくるわ」
わたしがベッドの上で心を落ち着かせていると、アルデが部屋を出て行こうとします。
そんなアルデを、気づけばわたしは呼び止めていました。
「あの……アルデ……」
「なんだよティスリ。まだ何か用があるのか?」
「ユイナスさんに話をしたら……」
「話をしたら?」
「戻ってきてください」
……え?
いやあの、わたし?
いったい何を言い始めましたか……!?
「戻れって……いったいなんで?」
アルデは、ちょっと戸惑いながら聞いてきます。
いったいなんでって……それはわたしが聞きたいくらいですよ……!
だからわたしは、二日酔いで機能停止している脳細胞を強制的に動かして、無意識にしていた今の言動に、整合性の取れたもっともらしい理由を考え始めます!
そうして思いついたキーワードは──やはり『後悔』ですか!
「一人でいると……後悔で押し潰されそうになるんです……でも……」
そう──昨日の後悔を打ち消すためには、今この瞬間に意識を集中させることが肝要です。いかに超絶天才美少女たるわたしと言えども、会話をしながら昨日のことを思い出すことは出来ませんからね。
だから、内容はなんでもいいので誰かとおしゃべりしていたいわけですが……
アルデの地元で実家にいると、その相手はアルデ以外にいません。アルデのご両親とではさすがに気疲れしてしまいますし、ユイナスさんと顔を合わせるのは謝罪するときですし……
それに、アルデの顔を見ていると……
なんだか、とっても……
ホッとするわけで……
だからわたしは、正直な気持ちを言いました。
「あなたのアホ面を見ているとホッとするんです。だから──」
「二度と来ないからな!?」
「ああ!? ちょっとアルデ──」
どういうわけか、アルデは怒って部屋を出ていってしまいました!
な、なんでですか!
わたし、今だかつて無いほどアルデを褒めたというのに!
アルデがアホ面なのは元からで仕方のない事でしょう!?
それよりも『アルデを見ているとホッとする(アホ面だけど)』ということの方が大切でしょう!?
だというのにアルデは、重要な文脈をちっとも理解せず、ちょっとしたことで怒り出す始末!
やっぱりアルデは狭量にも程があります!
などと──怒り心頭でいたら昨日のことを忘れられていて、それから少しして、結局はアルデが部屋に戻ってきたので、わたしはいっときの間、後悔を忘れることが出来たのでした。
とはいえ……いずれにしても……
もう、人前でお酒を呑むのはやめにしましょう……
酒精は、体質や気質によってその反応が変わるといいますし、わたしの体質では酒精は受け付けられないのでしょうね。
お酒の味は嫌いじゃないのですが……残念です。
それと、飲酒魔法自体は成功していたんですけどね。
飲酒魔法が想定する以上に、わたしの酒精許容量が少なかったというだけで。
あ、であれば……
今後もちょくちょく飲酒して、その許容量を正確に測って、それを飲酒魔法にフィードバックすれば……
悪酔いや二日酔いすることなく、最終的にはわたしもお酒を楽しめるかも?
もちろん、そんなことを人前で試したりは今後二度と絶対にしませんが、さりとて一人でやるには、酔い潰れてしまったときのリスクが高いわけで……
であれば……
アルデの前だけでなら……
いいかも?
なぜなら……
なぜならアルデは……
所詮、アルデですしね!
(ティスリの二日酔い・おしまい)
「やっちまったもんは仕方がないだろ。大切なのは今後だよ」
「………………それは、そうですが……」
そうしてアルデは、どうしてわたしがユイナスさんを気に掛けるのかと聞いてくるのですが……
「そ、それは……」
ユイナスさんだって、この国の民なのですから、わたしが気に掛けるのは当然だと説明していると、アルデは、まだなんとなく釈然としない様子で聞いてきます。
「いや、お前がオレたち平民を大切にしてくれるのはありがたいけど、とは言ったって、お前がユイナスに執着しているのはちょっと違う話じゃね?」
「うっ……そ、それは……」
言われてみれば確かにその通りなんですが……
しかし人に対する好悪の感情なんて、そもそも理由があるかも怪しいわけで……
だからわたしがハッキリ答えられずにいると、アルデは「ユイナスは友達に勧められない」なんてことを言ってきます。
だからわたしは、そんなことないとユイナスさんを庇っていると、アルデは思いがけぬことを言いました。
「しばらく村に滞在するならミアとかどうよ? ユイナスと比べるべくもなく、アイツはまともな性格だぜ?」
と、そこで……
どうしてかわたしの感情は……
真っ白になっていました。
だからわたしは、反射的に言っていました。
「も、もちろん……ミアさんとも仲良くしたいと思ってます」
わたしが、なんの考えも無しに言葉を口にするなんて……
それだけでも驚きなのですが……
いえもちろん、ミアさんはとてもよい人だと思いますし、仲良くしたいとも思っています。
しかしどうしてか、これまでのミアさんの言動を思い浮かべると……心に引っかかるものがあって。
もちろんそれは、嫌悪感ではありません。例えば悪徳貴族と接するときは、きまって嫌悪感を覚えたものですが、そういった類いのものではないのです。そもそもミアさんと仲良くしたいのは本当ですし……
でもどうしてか……
何かが引っかかって……
わたしはその引っかかりの理由が分からず、しかもそれ以上考えたくなくて……
だから話を逸らすべく、覚悟を決めて、いよいよ本題を切り出すことにしました。
「そ、それで、その………………ユイナスさんの様子は……どうですか?」
わたしのそんな覚悟を知りもしないアルデは、やっぱり無神経にもズゲズゲと言ってきました。
「ぶっちゃけ……めっちゃ怒ってる」
「………………!?」
「お前のダル絡みが、相当にイヤだったらしい」
「………………!!」
くっ……!
や、やはり……
そうですよね!?
わたしは、知りたくなかった現実を突きつけられ……思わず歯を食いしばりました!
かつて、これほど後悔したことなんてなかった──というよりわたしは後悔なんてしたことなくて、強いていえば、これまでにもアルデには泥酔状態を何度か見られてしまったことが後悔と言えなくもないですが、しかしそれは「所詮はアルデだし、まぁいっか」程度で済んでいたというのに……
まさかユイナスさんにまで、泥酔したわたしを晒してしまうとは!
「ど、どうすればいいんですか!?」
だからわたしは、いてもたってもいられなくなって身を乗り出します!
「どうすればユイナスさんの許しを得られるのです!?」
「う~~~ん……そうだなぁ……」
「アルデ! ちゃんと考えてくださいよ! もはやこうなっては、兄であるあなただけが頼りなのですよ!?」
そうしてわたしは、血の巡りが悪そうなアルデの頭を必死に揺すって、なんとか打開策を捻り出させようとしました!
やがてアルデは、頭に血を通わすことが出来たのか答えてきます!
「そうだなぁ……何か詫びの品でもあれば、あるいは。ユイナスは、オシャレでハイソな生活を夢見ている節があるから、例えば──」
「なるほど分かりました!」
そんなことならお安いご用です!
だからわたしは張り切って答えました!
「であれば、わたしの屋敷を進呈しましょう!」
何しろわたしには、無駄な屋敷がたくさんあります。
国家予算をゆうに超えるキャッシュを寝かせておいては経済に悪影響しかありませんから、わたしはやむを得ず、不動産を始めとする多くの資産を個人的に所有していますが、ぜんぜん使っていなかったのです。そもそも使う時間もありませんでしたし。
だから、個人的な資産は国民に解放しようと思っていたのですが、大臣達が「民が詰めかけ現地が大混乱するからやめてくだされ!」と泣いて懇願してくるものですから、やむを得ず保留としていました。
ですから、それらがユイナスさんの役に立つというのなら、譲渡はぜんぜん構いません!
しかしそんな不用品をユイナスさんに差し上げても詫びになるかどうか……というかそもそも、不用品を詫びの代わりにするなんて失礼ですよね?
であれば、わたしが保有する様々な会社の所有権も付けましょう!
ただいま現在ですと、やはり最先端技術を扱っている魔動車会社が最も高い価値となっていますから、そこの独占販売権なら、なんとかお詫びになるかもしれません!
もちろん、販売事業の細かなオペレーションは商会の人間がやりますから、ユイナスさんは特に何もすることなく、銀行口座にお金が振り込まれるのを日々見ているだけでいいのです!
うん、これなら詫びになりますね!
ということをアルデに説明していたら、気づけばアルデは慌てふためいていました。
「ちょっと待て待て!? おまいはいったい何を言ってるんだ!?」
「何をって……お詫びの品が必要なのでしょう?」
「どこの世界に、悪酔いしただけで家屋敷や車を渡すヤツがいるんだよ!?」
というわけでアルデに反対されてしまいます。曰く「ユイナスにそんな大金掴ませたら、何をしでかすか分からない」とのこと。
悪徳貴族じゃあるまいし、ユイナスさんが悪さをするなんて思えませんが、しかしアルデがどうしてもやめてくれと言ってきます。だからわたしはアルデに問いました。
「ならアルデは、どんな品物ならいいというのですか?」
するとアルデは、文房具とか鞄とか服とかいう始末。
そんなの、詫びどころかただの粗品じゃないですか。
だからわたしは納得がいかず、アルデと議論を続けた結果、ユイナスさんに直接尋ねることになりました。
そうして、お詫びなら出来る限り早い方がいいということになり、だからわたしは立ち上がろうとしたのですが──
──まだ昨日の酒精が残っていたのか、わたしは思わずよろめいてしまいます。
それを咄嗟にアルデが支えてくれました。
「おい、大丈夫か?」
「うう……まだ酒精が残っているようで……」
アルデがすぐ間近にいることに、わたしは思わずドキリとしますが、それ以上に目眩が酷くて、わたしはアルデを引き離すこともできません。
そんなわたしにアルデが言ってきます。
「なら詫びは、お前が完全に回復してからでいいよ」
「ですが……少しでも早い方が……」
「調子悪いのに詫びようとしても、誠意が伝わらないかもしれないだろ。お前が謝りたがっていることは、オレからそれとなく伝えておくから」
「そうですね……ではそのようにお願いします」
それからわたしは、アルデに支えられながら、再び横になりました。
わたしの背中にアルデの手が添えられて……その暖かさが、パジャマの生地を通して伝わってきて……
だ、大丈夫ですよね……?
わたしの心音が、アルデにまで伝わったりはしてませんよね……!?
そもそもドキドキしているのは二日酔いのせいですが!
「じゃ、オレはユイナスに話を付けてくるわ」
わたしがベッドの上で心を落ち着かせていると、アルデが部屋を出て行こうとします。
そんなアルデを、気づけばわたしは呼び止めていました。
「あの……アルデ……」
「なんだよティスリ。まだ何か用があるのか?」
「ユイナスさんに話をしたら……」
「話をしたら?」
「戻ってきてください」
……え?
いやあの、わたし?
いったい何を言い始めましたか……!?
「戻れって……いったいなんで?」
アルデは、ちょっと戸惑いながら聞いてきます。
いったいなんでって……それはわたしが聞きたいくらいですよ……!
だからわたしは、二日酔いで機能停止している脳細胞を強制的に動かして、無意識にしていた今の言動に、整合性の取れたもっともらしい理由を考え始めます!
そうして思いついたキーワードは──やはり『後悔』ですか!
「一人でいると……後悔で押し潰されそうになるんです……でも……」
そう──昨日の後悔を打ち消すためには、今この瞬間に意識を集中させることが肝要です。いかに超絶天才美少女たるわたしと言えども、会話をしながら昨日のことを思い出すことは出来ませんからね。
だから、内容はなんでもいいので誰かとおしゃべりしていたいわけですが……
アルデの地元で実家にいると、その相手はアルデ以外にいません。アルデのご両親とではさすがに気疲れしてしまいますし、ユイナスさんと顔を合わせるのは謝罪するときですし……
それに、アルデの顔を見ていると……
なんだか、とっても……
ホッとするわけで……
だからわたしは、正直な気持ちを言いました。
「あなたのアホ面を見ているとホッとするんです。だから──」
「二度と来ないからな!?」
「ああ!? ちょっとアルデ──」
どういうわけか、アルデは怒って部屋を出ていってしまいました!
な、なんでですか!
わたし、今だかつて無いほどアルデを褒めたというのに!
アルデがアホ面なのは元からで仕方のない事でしょう!?
それよりも『アルデを見ているとホッとする(アホ面だけど)』ということの方が大切でしょう!?
だというのにアルデは、重要な文脈をちっとも理解せず、ちょっとしたことで怒り出す始末!
やっぱりアルデは狭量にも程があります!
などと──怒り心頭でいたら昨日のことを忘れられていて、それから少しして、結局はアルデが部屋に戻ってきたので、わたしはいっときの間、後悔を忘れることが出来たのでした。
とはいえ……いずれにしても……
もう、人前でお酒を呑むのはやめにしましょう……
酒精は、体質や気質によってその反応が変わるといいますし、わたしの体質では酒精は受け付けられないのでしょうね。
お酒の味は嫌いじゃないのですが……残念です。
それと、飲酒魔法自体は成功していたんですけどね。
飲酒魔法が想定する以上に、わたしの酒精許容量が少なかったというだけで。
あ、であれば……
今後もちょくちょく飲酒して、その許容量を正確に測って、それを飲酒魔法にフィードバックすれば……
悪酔いや二日酔いすることなく、最終的にはわたしもお酒を楽しめるかも?
もちろん、そんなことを人前で試したりは今後二度と絶対にしませんが、さりとて一人でやるには、酔い潰れてしまったときのリスクが高いわけで……
であれば……
アルデの前だけでなら……
いいかも?
なぜなら……
なぜならアルデは……
所詮、アルデですしね!
(ティスリの二日酔い・おしまい)
0
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる