孤高のぼっち王女が理不尽すぎ! なのに追放平民のオレと……二人っきりの逃避行!?

佐々木直也

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第4章

第37話 ひっじょーにマズイ気がする!

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 夏祭りは想像以上に賑やかで、そんな中でアルデオレ達は、屋台を冷やかしたり、盆踊りなる民族舞踊を見たりして楽しんだ。

 屋台には、食い物以外にも様々なゲームやクジ引きがあって、ティスリが屋台のインチキを暴いたりしてヒヤリとしたりもしたが。無駄に凄みを利かせてくるテキ屋のほうの身を案じて。

 あとティスリは食べ歩きには未だ抵抗があるようなので、屋台で買った不思議な食い物は、要所要所に設置されている休憩所で食べた。

 ティスリに屋台の食い物を食べさせることをリリィが嫌がっていたが、毒が入っているわけでもないし、万が一にでも入っていたら守護の指輪が検知するとのことで、ティスリは普通に食べていたが。

 そもそも王都から出てきてからこっち、ティスリは庶民的な食べ物に慣れたしな。ただこの地方の食べ物はオレでも始めてのものが多かったが。丸っこい生地の中に海産物が入っているヤツなんて見たこともなかったけど旨かった。

 そうこうしているうちに花火大会の時間が迫ってくる。花火大会は河川敷で行うそうだが、オレ達には特別席が用意されているという。

 本来なら、王侯貴族が庶民の祭りに参加するはずもないし、いわんや人でごった返すであろう花火会場に連れて行くわけにもいかないだろう──普通ならば。

 ということで普通じゃないティスリが言った。

「どうせなら、一般会場で花火大会を鑑賞したいですね」

 それを聞いたリリィが驚きの声を上げる。

「ええっ!? しかしお姉様、一般会場は立ち見で、しかも大混雑ですわよ?」

「まさにそういう状況こそが視察として意味のあることです。もっとも、今日は視察なんて堅苦しい話ではありませんので、皆さんがイヤでなければですが」

「ですが……満足に護衛も付けられない場所にお姉様をお連れするわけには……」

「守護の指輪があれば問題ありませんし、そもそも、このわたしに護衛が必要だと思いますか?」

「まぁ……これまでも形式的に付けていただけですが……」

 などと言いながら、リリィはこちらを見てくる。いや……このタイミングで護衛役のオレを見ないでほしい……

 ということでオレ達は、ティスリの希望で一般会場へと向かうことになった。

 ユイナスが「イヤよ! 混雑する会場より特等席に行きたい!」と言い出すかと思ったのだが、特に何も言ってこない。

 その代わりユイナスは、何やらリリィに耳打ちしていた……なぁんか、あいつら企んでいる気がするが……まぁいいか。大した問題になるはずもないし。

 それに、オレも人混みに紛れて姿をくらませることが出来るから一般会場のほうが好都合だ。その後、ミアと落ち合って用件を聞いた後に一般会場へ向かうとしよう。

 ということでオレ達は花火会場へと歩き出す。

 すると案の定、会場へ向かう道は人で溢れていた──っていうか、いくらなんでも混み過ぎじゃないか?

 どうやら会場出入口のほうが詰まっている……というか通行止めされている?

 雑踏の会話を聞き取るに、なぜかお貴族様が出入口を一時的に入場制限しているという話だった。いったいなぜに?

 そんな訳の分からないお貴族様はリリィに一喝してもらおうと思って回りを見ると、リリィどころか全員の姿がなくなっていた。

「やべ……はぐれたか」

 もはや通りの密集具合は尋常じゃなくなっているので、これじゃはぐれても仕方がないか。花火会場までは、森を突き抜ける形の一本道だから、みんなこのまま会場には向かうだろう。

 ならば、今のうちにミアと落ち合うか。

 ということでオレが人混みを掻き分けていると、頭の中に、ちりりりり~ん──というベルのような音が突然聞こえた。

「あ、通信魔法か」

 ということでオレは呪文を唱えて通信を繋げる。相手はミアだった。

(アルデ、今ひとり?)

「おう。ちょうど人の少ない場所に移動しようと思ってたとこだ」

 受け答えを声に出す必要はないのだが、どうしても声に出してしまうな。独り言をブツブツ言っているようで傍から見たらマヌケだが、こうも混雑していたら誰も気にしていないだろう。

 そんなオレの頭の中に、ミアの声が入ってくる。

(そう──それなら、わたしがいる場所を送るから、そこで落ち合おうよ)

「いる場所を送る?」

 最初、その意味が分からなかったのだが……視界の中に、何か赤い光が明滅していることに気づく。

(その赤い光に向かってくれば、わたしがいるはずだよ)

「え、なんでこんなことが出来るんだ?」

(これも指輪の機能なんだって)

「そうなのか。っていうか魔具をすでに使いこなしているお前はすごいな。これならすぐにみんなを捜せるし」

(うん。でもそれぞれの通信呪文を知ってないと駄目らしいよ)

「そういや、みんなの呪文忘れたわ、オレ……」

 この指輪を受け取る際に通信呪文のメモももらったが、今は持ってきていないし、六人分もの呪文を覚えているはずもない。ミア以外から通信魔法が入ってこないということは、他の面子も同様なのだろう。

 でもそのうち、ティスリが全員に連絡してくれるだろうから問題ないはずだ。ティスリなら全員の呪文を覚えているだろうし。

 だったら事を急いだ方がいいな。オレがミアと二人で会っているのがティスリにバレたら──

 ──ひっじょーにマズイ気がする!

 ということでオレは、ちょっと冷や汗を掻きながら、人混みを掻き分けてミアの元へ急行するのだった。
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