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第4章
第29話 お兄ちゃん、だ〜い好き!
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水着で一悶着あったものの、リリィ達は日中ずっと海水浴を楽しみました。
最初は水着に恥ずかしがっていたミアさんも、遊んでいるうちに徐々に慣れたようですわね。こういうのは慣れなのですから、お姉様も水着になってほしかったのですけれども……結局お姉様は服を脱ぎませんでしたわ、はぁ……
そうして夕食時になって、今日はバーベキューなるものを頂くことにしました。わたしも初体験なのですけれども、なんでも、屋外でお肉やお野菜を焼いてみんなで食べるんだとか。
最近は、貴族の間でキャンプが流行っているものの、野外での食事なんていささかお行儀が悪いかとも思ったのですが……しかし意外にも、お姉様は特に抵抗もないようです。
というわけでわたしたちは、満天の星空の下でバーベキューをするのでした。
「ところでお姉様はお呑みになりませんの? 冷えた発泡酒などもご用意してましてよ」
お姉様がお酒に興味津々だということは、これまでのストーキン──いえ調査から把握済みです。ですのでこの別荘地には、古今東西ありとあらゆるお酒を準備していたのですが……
呑まれているのは男性陣とミアさんで、お姉様はお酒に手を付けようとしません。お姉様、呑んでいる皆さんを羨ましそうに眺めておりますのに。今はバカンスで、明日も公務なんてないのですから、我慢する必要はないと思うのですが。
ということでわたしは、発泡酒をお姉様に渡そうとしたのですが……
「いえ、お酒は結構です」
取り付く島もありません!
「え、でも……お姉様、お酒お好きでしたよね?」
「いいえ。好きではありません」
「ですが……」
「とにかく結構です。わたしは一滴たりとも呑みませんから……!」
美しいその瞳は発泡酒に釘付けだというのに、なぜか頑なに拒否してきます!
「そ、そうですか……でも呑みたくなったら、いつでもおっしゃってくださいね?」
「ぜっっったいに、呑みたくなんてなりませんから!」
「…………は、はぁ?」
どう見ても呑みたそうに見えるのですが……しかしお酒を無理強いするのは良くないですしね。
あぁ……ほろ酔い姿のお姉様をぜひ見てみたかったのに。でも──
──何度もご一緒した晩餐会でお姉様は飲酒されていましたが、まったくもって酔った感じがありませんでしたから、お姉様はきっとお酒にもお強いんでしょうね。
水着の件といい、ちっともままなりませんわぁ……
わたしが肩を落としていると、ユイナスのはしゃいだ声が聞こえてきます。
「というわけで、子供の頃のお兄ちゃんは本当に可愛かったわけ!」
「いや、妹のお前が可愛いとか言うなよ……」
「え、なになに! わたしのほうがもっと可愛いって!?」
「一言もいってねぇ!」
ふむ……今日のユイナスは、ずいぶんとご機嫌ですわね。
アルデに水着を褒められまくっていましたし、ほとんどアルデを独占して遊んでいましたからね。
とはいえ、ねぇ……
ご機嫌のユイナスの隣で、ため息をつくアルデを眺めながら、わたしは考えます。
アルデのあの反応、どう見ても、ユイナスに恋心を抱いているとは思えないのですが……
そもそも、実の兄ですし。
別に嫌っているわけではないようですが「いつになったら兄離れするんだ、コイツは?」という内心が滲み出ております。
それに気づいていないのは当のユイナスだけなのでしょうけれども……というか、アルデの滲み出る内心ですら、ユイナスに掛かったら「お兄ちゃんがわたしを気に掛けてくれてる! わたしのことが好きだから!!」などと、いいように解釈しているのでしょうし。
う~ん……
ユイナスに協力するとは言いましたが、これでは協力のしようがないのでは? 何しろアルデには、よくて兄妹愛しかないのですから。
それならむしろ、嫌われているほうがまだやりようもあるのに……
ちなみにわたしは、そういう愛憎感情にとっても興味がありまして、だから何度も何度も学者に研究させましたから間違いありません。つまり『嫌い』は『好き』の裏返し! だからいくらでもコロッコロにひっくり返すことも可能!
いやもはや、ひっくり返すまでもありません! だって嫌いは好きなのですから!!
まぁそんなこと、研究するまでもなく、わたしに対するお姉様の態度を見れば一目瞭然ですけどね!
ですが……
兄妹愛を恋愛感情に変えるなんて研究してもいませんし、そもそも不可能だと思うのですよねぇ……
だとしたら、どうなるのか?
つまりアルデとユイナスが結ばれなかった場合……お姉様とアルデが結ばれる……!?
い、いえいえ……さすがにそれはありませんわよね。なんだか、最近のお姉様を見ていると、どうしてかそういう将来像が垣間見えてしまうのですが、お姉様は王族でアルデは平民。まかり間違ってもそんなことはあり得ません。
いわんやお姉様は、世界の支配者として君臨されるお方! 歴史にその名を刻むどころか轟かせること間違いないのですから、凡人アルデと釣り合うはずもありません。
ですが、しかし……
アルデが剣技に秀でた人間であることは、どうひっくり返したってそう見えなくても、摩訶不思議なことに事実でしたし……
だとしたら、身分にこだわらないお姉様が、アルデをこのまま重用し続ける可能性は十分あります。お姉様がいかに強くとも、ご自身の周りに腕の立つ護衛を付けることは、周囲を牽制する上でも重要です。
となるとゆくゆくは、アルデが近衛隊長なんかに収まったりする可能性が、なきにしもあらずなわけで……
(うぬぬ……そんなの認められませんわ!)
わたしを差し置いてお姉様の側近になるとか、ぜったいに認められません!
だからアルデには、是が非にでもお姉様に嫌われてもらわねばならないのです!
何しろ、好きと嫌いはコロッコロですからね! ふたりの仲をちょっと突けば、アルデだったらすぐに嫌われるはず!
(で、そのためのキッカケがユイナスでは、まったくもって力不足なのですが……)
もちろん、聡いわたしはもう気づいています。
お姉様とアルデを不仲にするために、うってつけの人材。
まさにおあつらえ向き。もはやカモがネギを背負って来たといっても過言ではない女性。
それがミアさんという方なのです!
「確かにアルデは、昔から、向こう見ずでヤンチャだったよね」
「ミアまで何いってんだよ……!」
そのミアさんが、ユイナスの思い出話につられて失笑してました。
「もうほんと、わたしは気が気じゃなかったんだから。しかも大人でも太刀打ちできないほど強かったから、ぜんぜん言うこと聞いてくれないし」
「い、今はそんなことどうでもいいだろ!?」
「そうよミア! わたしとお兄ちゃんの思い出に入ってこないで!」
ふむ……やはり、お姉様の反応が違いますわね。
ユイナスが思い出話をしていたときは、微笑ましそうに聞いていたのに、ミアさんが話したら、少しだけ複雑な感情がその笑顔から見て取れます!
ふふ……お姉様の気持ちなんて、わたしに掛かれば透けて見えるも同然ですからね!
つまりそれは、嫉妬!
お姉様はミアさんに嫉妬しているのです!
例えば……子供の頃のアルデを知っていたり、学生として長い時間を共有してたり、そういうのにジェラシーを感じておりますのね、お姉様!
ふふふっ!
ジェラっているのに無自覚だから困惑するお姉様……なんて可愛らしい!
ああ! そんなお姉様を撫で繰り回したいですわぁ──
──っと、そこまで考えて。
わたしはふと気づきます。
(っていうかお姉様は、どうしてジェラってるのかしら?)
えーっと……
それはつまり……
アルデに対して、側近以上の感情を……
(い、いえいえまさか! そんなわけありませんわ!)
わたしは、首をブンブン振ってその思考を掻き消します!
(あ、そうですわ! きっと、自分の所有物をミアさんに取られた気分になって、それでジェラってるのですわ!)
うん、きっとそうです! 間違いありません!
であればなおさら、ミアさんは使えます。
(あとは……アルデがミアさんに対して、何か破廉恥な行為でもしてくれたら一発なのですけれども……)
水着の件にしたって、お姉様は激怒してましたからね。
ですが、見るからに意気地無しなあの男が、そんな大それたことをするとも思えませんし……いったいどう焚きつけたらいいのやら……
それにもう一つ、わたしには大きな問題があります。
その問題とは、ただいま上機嫌真っ盛りのユイナスです。
(ミアさんとアルデの仲を取りもつということは、やっぱり、ユイナスを裏切ることになりますわよね……)
別にユイナスとは長い付き合いでもないし、そもそも身分が違いすぎますし、だから裏切ったところで気にする必要はないはずなのですけれども……
今日のユイナスの笑顔を見ていると、どうしてか、わたしの胸はチクリと痛みました。
(き、きっとアレです、ユイナスはお姉様のお気に入りだから、裏切りがお姉様に伝わるとまずくて……)
そ、そうですわ。だから胸がチクッと感じているのですわよね?
ならばユイナスにバレないよう画策すればいいだけの話……
………………う、う~ん?
なぜですの?
バレなければいい話のはずなのに、どうしてこんなにモヤモヤするんですの……?
あ、そうだ!
ならばこう考えましょう。
実の兄への恋心なんて報われるわけないのですから、心を鬼にしてでもユイナスの邪魔をして、その曇りすぎな眼を覚まさせるとか!
それならユイナスのためになるし、お姉様もたぶらかされずに済みますし、わたしの益にもなります。さらにはミアさんも嬉しいし、ついでに非モテ男アルデもお嫁さんがゲットできて、四方八方丸く収まるではないですか!
アルデとミアさんがくっつくだけで!
どうして今まで気づかなかったのでしょう!
ならばむしろ積極的に二人の仲を取りもつべきでは!?
「うふふ! お兄ちゃん、だ~い好き!」
「な、なんだよユイナス!? もしかして酔ってるのか!?」
………………。
………………。
………………だというのに。
ユイナスを見ていると、どうにも気分が晴れないのでした……
最初は水着に恥ずかしがっていたミアさんも、遊んでいるうちに徐々に慣れたようですわね。こういうのは慣れなのですから、お姉様も水着になってほしかったのですけれども……結局お姉様は服を脱ぎませんでしたわ、はぁ……
そうして夕食時になって、今日はバーベキューなるものを頂くことにしました。わたしも初体験なのですけれども、なんでも、屋外でお肉やお野菜を焼いてみんなで食べるんだとか。
最近は、貴族の間でキャンプが流行っているものの、野外での食事なんていささかお行儀が悪いかとも思ったのですが……しかし意外にも、お姉様は特に抵抗もないようです。
というわけでわたしたちは、満天の星空の下でバーベキューをするのでした。
「ところでお姉様はお呑みになりませんの? 冷えた発泡酒などもご用意してましてよ」
お姉様がお酒に興味津々だということは、これまでのストーキン──いえ調査から把握済みです。ですのでこの別荘地には、古今東西ありとあらゆるお酒を準備していたのですが……
呑まれているのは男性陣とミアさんで、お姉様はお酒に手を付けようとしません。お姉様、呑んでいる皆さんを羨ましそうに眺めておりますのに。今はバカンスで、明日も公務なんてないのですから、我慢する必要はないと思うのですが。
ということでわたしは、発泡酒をお姉様に渡そうとしたのですが……
「いえ、お酒は結構です」
取り付く島もありません!
「え、でも……お姉様、お酒お好きでしたよね?」
「いいえ。好きではありません」
「ですが……」
「とにかく結構です。わたしは一滴たりとも呑みませんから……!」
美しいその瞳は発泡酒に釘付けだというのに、なぜか頑なに拒否してきます!
「そ、そうですか……でも呑みたくなったら、いつでもおっしゃってくださいね?」
「ぜっっったいに、呑みたくなんてなりませんから!」
「…………は、はぁ?」
どう見ても呑みたそうに見えるのですが……しかしお酒を無理強いするのは良くないですしね。
あぁ……ほろ酔い姿のお姉様をぜひ見てみたかったのに。でも──
──何度もご一緒した晩餐会でお姉様は飲酒されていましたが、まったくもって酔った感じがありませんでしたから、お姉様はきっとお酒にもお強いんでしょうね。
水着の件といい、ちっともままなりませんわぁ……
わたしが肩を落としていると、ユイナスのはしゃいだ声が聞こえてきます。
「というわけで、子供の頃のお兄ちゃんは本当に可愛かったわけ!」
「いや、妹のお前が可愛いとか言うなよ……」
「え、なになに! わたしのほうがもっと可愛いって!?」
「一言もいってねぇ!」
ふむ……今日のユイナスは、ずいぶんとご機嫌ですわね。
アルデに水着を褒められまくっていましたし、ほとんどアルデを独占して遊んでいましたからね。
とはいえ、ねぇ……
ご機嫌のユイナスの隣で、ため息をつくアルデを眺めながら、わたしは考えます。
アルデのあの反応、どう見ても、ユイナスに恋心を抱いているとは思えないのですが……
そもそも、実の兄ですし。
別に嫌っているわけではないようですが「いつになったら兄離れするんだ、コイツは?」という内心が滲み出ております。
それに気づいていないのは当のユイナスだけなのでしょうけれども……というか、アルデの滲み出る内心ですら、ユイナスに掛かったら「お兄ちゃんがわたしを気に掛けてくれてる! わたしのことが好きだから!!」などと、いいように解釈しているのでしょうし。
う~ん……
ユイナスに協力するとは言いましたが、これでは協力のしようがないのでは? 何しろアルデには、よくて兄妹愛しかないのですから。
それならむしろ、嫌われているほうがまだやりようもあるのに……
ちなみにわたしは、そういう愛憎感情にとっても興味がありまして、だから何度も何度も学者に研究させましたから間違いありません。つまり『嫌い』は『好き』の裏返し! だからいくらでもコロッコロにひっくり返すことも可能!
いやもはや、ひっくり返すまでもありません! だって嫌いは好きなのですから!!
まぁそんなこと、研究するまでもなく、わたしに対するお姉様の態度を見れば一目瞭然ですけどね!
ですが……
兄妹愛を恋愛感情に変えるなんて研究してもいませんし、そもそも不可能だと思うのですよねぇ……
だとしたら、どうなるのか?
つまりアルデとユイナスが結ばれなかった場合……お姉様とアルデが結ばれる……!?
い、いえいえ……さすがにそれはありませんわよね。なんだか、最近のお姉様を見ていると、どうしてかそういう将来像が垣間見えてしまうのですが、お姉様は王族でアルデは平民。まかり間違ってもそんなことはあり得ません。
いわんやお姉様は、世界の支配者として君臨されるお方! 歴史にその名を刻むどころか轟かせること間違いないのですから、凡人アルデと釣り合うはずもありません。
ですが、しかし……
アルデが剣技に秀でた人間であることは、どうひっくり返したってそう見えなくても、摩訶不思議なことに事実でしたし……
だとしたら、身分にこだわらないお姉様が、アルデをこのまま重用し続ける可能性は十分あります。お姉様がいかに強くとも、ご自身の周りに腕の立つ護衛を付けることは、周囲を牽制する上でも重要です。
となるとゆくゆくは、アルデが近衛隊長なんかに収まったりする可能性が、なきにしもあらずなわけで……
(うぬぬ……そんなの認められませんわ!)
わたしを差し置いてお姉様の側近になるとか、ぜったいに認められません!
だからアルデには、是が非にでもお姉様に嫌われてもらわねばならないのです!
何しろ、好きと嫌いはコロッコロですからね! ふたりの仲をちょっと突けば、アルデだったらすぐに嫌われるはず!
(で、そのためのキッカケがユイナスでは、まったくもって力不足なのですが……)
もちろん、聡いわたしはもう気づいています。
お姉様とアルデを不仲にするために、うってつけの人材。
まさにおあつらえ向き。もはやカモがネギを背負って来たといっても過言ではない女性。
それがミアさんという方なのです!
「確かにアルデは、昔から、向こう見ずでヤンチャだったよね」
「ミアまで何いってんだよ……!」
そのミアさんが、ユイナスの思い出話につられて失笑してました。
「もうほんと、わたしは気が気じゃなかったんだから。しかも大人でも太刀打ちできないほど強かったから、ぜんぜん言うこと聞いてくれないし」
「い、今はそんなことどうでもいいだろ!?」
「そうよミア! わたしとお兄ちゃんの思い出に入ってこないで!」
ふむ……やはり、お姉様の反応が違いますわね。
ユイナスが思い出話をしていたときは、微笑ましそうに聞いていたのに、ミアさんが話したら、少しだけ複雑な感情がその笑顔から見て取れます!
ふふ……お姉様の気持ちなんて、わたしに掛かれば透けて見えるも同然ですからね!
つまりそれは、嫉妬!
お姉様はミアさんに嫉妬しているのです!
例えば……子供の頃のアルデを知っていたり、学生として長い時間を共有してたり、そういうのにジェラシーを感じておりますのね、お姉様!
ふふふっ!
ジェラっているのに無自覚だから困惑するお姉様……なんて可愛らしい!
ああ! そんなお姉様を撫で繰り回したいですわぁ──
──っと、そこまで考えて。
わたしはふと気づきます。
(っていうかお姉様は、どうしてジェラってるのかしら?)
えーっと……
それはつまり……
アルデに対して、側近以上の感情を……
(い、いえいえまさか! そんなわけありませんわ!)
わたしは、首をブンブン振ってその思考を掻き消します!
(あ、そうですわ! きっと、自分の所有物をミアさんに取られた気分になって、それでジェラってるのですわ!)
うん、きっとそうです! 間違いありません!
であればなおさら、ミアさんは使えます。
(あとは……アルデがミアさんに対して、何か破廉恥な行為でもしてくれたら一発なのですけれども……)
水着の件にしたって、お姉様は激怒してましたからね。
ですが、見るからに意気地無しなあの男が、そんな大それたことをするとも思えませんし……いったいどう焚きつけたらいいのやら……
それにもう一つ、わたしには大きな問題があります。
その問題とは、ただいま上機嫌真っ盛りのユイナスです。
(ミアさんとアルデの仲を取りもつということは、やっぱり、ユイナスを裏切ることになりますわよね……)
別にユイナスとは長い付き合いでもないし、そもそも身分が違いすぎますし、だから裏切ったところで気にする必要はないはずなのですけれども……
今日のユイナスの笑顔を見ていると、どうしてか、わたしの胸はチクリと痛みました。
(き、きっとアレです、ユイナスはお姉様のお気に入りだから、裏切りがお姉様に伝わるとまずくて……)
そ、そうですわ。だから胸がチクッと感じているのですわよね?
ならばユイナスにバレないよう画策すればいいだけの話……
………………う、う~ん?
なぜですの?
バレなければいい話のはずなのに、どうしてこんなにモヤモヤするんですの……?
あ、そうだ!
ならばこう考えましょう。
実の兄への恋心なんて報われるわけないのですから、心を鬼にしてでもユイナスの邪魔をして、その曇りすぎな眼を覚まさせるとか!
それならユイナスのためになるし、お姉様もたぶらかされずに済みますし、わたしの益にもなります。さらにはミアさんも嬉しいし、ついでに非モテ男アルデもお嫁さんがゲットできて、四方八方丸く収まるではないですか!
アルデとミアさんがくっつくだけで!
どうして今まで気づかなかったのでしょう!
ならばむしろ積極的に二人の仲を取りもつべきでは!?
「うふふ! お兄ちゃん、だ~い好き!」
「な、なんだよユイナス!? もしかして酔ってるのか!?」
………………。
………………。
………………だというのに。
ユイナスを見ていると、どうにも気分が晴れないのでした……
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