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第4章
第25話 あれが要注意人物だからね……!
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「う、うわぁ……これが海なの……!?」
転送ゲートを設置した尖塔から出ると、視界いっぱいに海が飛び込んできます。それを見たユイナスが思わずと言った感じで声を上げていました。
そんな彼女にリリィは聞きました。
「あらユイナス。もしかして海は初めてですの?」
わたしがそう尋ねると、ユイナスは素直にコクンと頷きました。
「うん。うちの両親は体が弱くて遠出ができなかったから、近くの湖で水遊びをしてたくらいだったし……」
「そうでしたの。では驚くのも無理はありませんね」
「そうね……てっきり、湖が広くなったくらいにしか考えていなかったから、さすがに驚いたわ……」
特にここ南国の海は、透明度が抜群でエメラルドグリーンに輝き、珊瑚礁や熱帯魚を肉眼で観賞できるほどですから、海を見慣れた人でも感動します。ユイナスが驚くのは当然と言えますね。
そのユイナスは、珍しく純粋な眼で海を眺めていました。普段からああいう感じなら、砂浜に映える美少女といった感じなんですけどねぇ……なぜあのようなザンネンな性格に?
そんなことを考えていたら、転送前に紹介されたミアという女性も感嘆の声を上げていました。
「こ、これが転送魔法……? でもここ、明らかにわたしたちの領地と違う海ですよね……?」
どうやらミアさんのほうは、お姉様の魔法に驚いているようですね。
そんな彼女に、お姉様が説明しました。
「そうですね。ここは皆さんの領地から見たら正反対、つまり南国の島になります」
「そ、そんな距離を転送してきたんですか!? 転送魔法って、普通、どんなに長距離でも隣町への移動が精々だって聞いたことありますよ!?」
驚くミアさんに、今度はわたしが気分上々で説明しました。
「おーほっほっほっ。驚くのも無理はないですねミアさん! 普通なら、馬車で何ヶ月も移動しなければならない距離ですが、お姉様に掛かれば一瞬なのですよ! ですがそれこそがお姉様なのです!!」
「そ、そうなんですか……すごいですね……」
「なぜあなたが誇らしげなのですか……」
わたしの説明にミアさんは圧倒されて、お姉様は呆れていましたが……ふふっ、分かっていますよお姉様?
そんな連れない態度こそが、お姉様の愛情表現だということを!
そもそも、今回の転送魔法ひとつ取ってもそうです。わたしイチオシの避暑地はこのプライベートビーチだったのですが、あの農村からでは遠すぎますので最初は断念していました。
さりとて比較的近い別荘地でも馬車で一両日はかかる距離ですから、この暑い最中、お姉様を馬車に閉じ込めておくのは偲びありません。とはいえ、平民でごった返している海水浴場に、お姉様を連れて行くわけにはいきませんし。
そんな感じでわたしが頭を悩ませていたところ、助け船を出してくれたのがお姉様だったのです!
お姉様曰く──
「近場でも移動に数日かかるなら、転送魔法で最善の場所へ行きましょう。そのほうがユイナスさんも喜ぶでしょうし」
──とのこと!
そうして、とてつもない最高難易度の超長距離転移魔法を、惜しげもなく使ってくださったのです! わたしが悩んでいたから!!
ああ……お姉様。やっぱりお姉様は、わたしが困っていたらいつでも助けてくれるのですね! 分かってますよお姉様。そういうの、最近はツンデレというのでしょう!?
わたしがお姉様の愛を思い出して痺れていると、にっくき男・アルデが、ぼけーっとした声音で言いました。
「っていうかさ、こんな魔法が使えるんだったら、オレの村までも一瞬だったんじゃ?」
そんなお馬鹿さんに、お姉様はお優しくも説明しました。
「転送魔法には、転送ゲートが必要だと以前に説明したじゃないですか」
「そうだったっけ?」
「そうだったのですよ。『出発』は呪文一つでできますが、『到着』するには魔方陣が必要なのです。リリィのこの別荘地にはゲートがあるとのことだったので、だから転送できたのですよ」
「なるほどな……まぁそうじゃないと、どこにでもポンポン転送できてしまうもんな。例えば敵陣のど真ん中とか」
「そういうことです。ちなみにこちらへ来るときに、村にも転送ゲートを設置しておきましたから帰りもすぐですよ」
「さすが、抜かりないな」
アルデは大した驚きもなく聞き流していますが、普通、転送魔法を発現するには大人数の魔法士が必要ですし、そもそもこの距離を移動できる魔法士なんて存在しないのですよ。アホの子・アルデは知りもしないでしょうけれども。
まったく……お姉様の凄さを微塵も分かっていないあの男が、なぜ側仕えなんてしているのか……わたしが呆れていたら、アルデの友人らしき男性が海を眺めて言いました。
「それにしても空いてるな。下手すりゃ、海辺一体が芋を洗うような混雑具合だと覚悟していたんだが……」
マヌケなことを言う彼に、わたしはため息交じりに説明しました。
「そんな平民が押しかける場所に、お姉様をお連れするわけないでしょう? この島自体がわたしの私有地なのですから、わたしたち以外の観光客なんていませんよ」
「そ、そうなのですか……!」
「ええ。ああでも、近隣の島には住民もいて、そこでは近々夏祭りが行われるそうですから、お姉様が希望なされるのでしたら、南国文化の視察もできますよ」
「おお、それはいいっすね。っていうか、どうしてリリィちゃ──いえリリィ様は、そんなにティスリさんのことを気に掛けているんです?」
あ……しまった。
お姉様は、ご自身の身分は隠しているんでしたわ……!
お姉様を見ると、ジロリとこちらを睨んでいます! こ、これはなんとか誤魔化さないと……!
「そ、それはもちろん、お姉様とわたしは、身分を超えた愛情で結ばれているからですわ! だから気を使うのは当然なのですよ!」
「なるほど! すばらしい友情ですね!」
言ったわたし自身も「誤魔化すには苦しい……」と思っていた言い分けでしたが、彼はあっさりと納得します。
っていうかこの男、郡庁で冤罪に遭いかけた彼ですわよね? 名前はなんといったかしら?
いずれにしても、郡庁長官や憲兵隊長の態度を見ても、お姉様の身分に思い至らないなんて……頭の中はお花畑しかないのかしら?
ですが誤魔化せたのならいいですわ。なぜかお姉様に睨まれっぱなしですが……だからゾクゾクが止まりませんわ!?
しかしこの炎天下の中、いつまでもお姉様を突っ立たせておくわけにもいきませんので、わたしは皆に言いました。
「それでは海の観賞はこのくらいにして、別荘に向かいましょう。そこでひと息ついたのち、今日は海水浴を楽しみましょう」
そうしてわたしを先頭に歩き出すと──
──気づけばユイナスが隣によってきて、わたしに耳打ちしてきます。
「ねぇ……ここに来る前に言ったこと、覚えてるわよね?」
「え、ああ……協力体制のことですか?」
「それもそうだけど、さっきあなたと話してたミア。あれが要注意人物だからね……!」
昨日の晩、ユイナスがわたしの元を訪れて協力体制を申し入れてきたのです。
何しろ、わたしたちの利害は一致しています。
このバカンスで、わたしはお姉様ともっと親密になりたくて、ユイナスはアルデを落としたい。
そのためには、アルデに対するお姉様の好感度を下げることが重要です。その点においてわたしたちの利害は一致しているわけですが……
ユイナスがいうには、お姉様の好感度を下げる以上に重要事ができたというのです。
それがミアという女性だとのこと。
ということでユイナスが、わたしの隣で囁くように言いました。
「まさかお兄ちゃんが、あの女狐を連れてくるなんて夢にも思わなかったわ……」
「ひょっとしたらあなたのお兄様、ミアさんのことが好きなのでは?」
「そんなわけないでしょ……!?」
あながち間違ってもいないとわたしは思うのですが、ユイナスは頑なに認めようとしません。だからわたしはため息交じりに言いました。
「もう……分かりましたよ。アルデとミアさんを引き離せばいいのでしょう?」
「そうよ。あなたの侍女や執事も使って邪魔してよね? その上で、ティスリの好感度を下げるんだからね?」
「はいはい……」
そもそも、大貴族たるこのわたしが、平民であるユイナスの要求を聞き入れるなんてあり得ないのですが……
でもなぜか、ユイナスはお姉様のお気に入りですし……くうぅ……なぜですの? ユイナスが羨ましいですわ……
まぁそれはともかく、お姉様のお気に入りだという事実を差し引いても、ユイナスにはどうしてか反抗できない気分にさせられるんですのよねぇ……
わたしからしたら、アルデとミアさんが恋仲になっても、なんら支障はないのですけれども……
というよりも?
よくよく考えてみれば、アルデとユイナスをくっつけるだなんて不可能ではないかしら? なんど確認しても実の兄妹だという話ですし。
歴史を振り返れば兄妹婚がないわけでもないですが、少なくとも現代においてはありえませんし、そもそもすでに法律で禁止されていますし。
何よりアルデの態度を見る限り、ユイナスになびくとはとても思えません。
だとしたら、お姉様の好感度を下げるためには、血の繋がりがなくて幼馴染みだというミアさんのほうが断然使えるのでは?
そんなことを考えながら、わたしはちらっと後ろを見ると──
ちょっとモジモジしながら歩くミアさんと、なぜかそのミアさんを見ようとしないアルデ。
そうしてそのすぐ後ろを歩くお姉様は……なぜか目を三角にしてアルデを睨んでおりますわ!?
もしかしてお姉様の好感度って……思ったより高くない?
わたしはブルッと身震いしてから向き直りました。
「ねぇリリィ! 本当に分かってるの……!?」
ユイナスは、わたしの隣でヒソヒソと今後の段取りを説明していたらしく、聞いていなかったわたしの腕を引っ張ってきます。
「え、ああ……はいはい。分かっていますよ」
「なら今の説明、反復してみなさいよ……!」
「もぅ……あとで侍女長を紹介しますから、詳細は彼女に説明してくださいな」
などと言い合いながら、わたしたちのバカンスは始まったのでした。
転送ゲートを設置した尖塔から出ると、視界いっぱいに海が飛び込んできます。それを見たユイナスが思わずと言った感じで声を上げていました。
そんな彼女にリリィは聞きました。
「あらユイナス。もしかして海は初めてですの?」
わたしがそう尋ねると、ユイナスは素直にコクンと頷きました。
「うん。うちの両親は体が弱くて遠出ができなかったから、近くの湖で水遊びをしてたくらいだったし……」
「そうでしたの。では驚くのも無理はありませんね」
「そうね……てっきり、湖が広くなったくらいにしか考えていなかったから、さすがに驚いたわ……」
特にここ南国の海は、透明度が抜群でエメラルドグリーンに輝き、珊瑚礁や熱帯魚を肉眼で観賞できるほどですから、海を見慣れた人でも感動します。ユイナスが驚くのは当然と言えますね。
そのユイナスは、珍しく純粋な眼で海を眺めていました。普段からああいう感じなら、砂浜に映える美少女といった感じなんですけどねぇ……なぜあのようなザンネンな性格に?
そんなことを考えていたら、転送前に紹介されたミアという女性も感嘆の声を上げていました。
「こ、これが転送魔法……? でもここ、明らかにわたしたちの領地と違う海ですよね……?」
どうやらミアさんのほうは、お姉様の魔法に驚いているようですね。
そんな彼女に、お姉様が説明しました。
「そうですね。ここは皆さんの領地から見たら正反対、つまり南国の島になります」
「そ、そんな距離を転送してきたんですか!? 転送魔法って、普通、どんなに長距離でも隣町への移動が精々だって聞いたことありますよ!?」
驚くミアさんに、今度はわたしが気分上々で説明しました。
「おーほっほっほっ。驚くのも無理はないですねミアさん! 普通なら、馬車で何ヶ月も移動しなければならない距離ですが、お姉様に掛かれば一瞬なのですよ! ですがそれこそがお姉様なのです!!」
「そ、そうなんですか……すごいですね……」
「なぜあなたが誇らしげなのですか……」
わたしの説明にミアさんは圧倒されて、お姉様は呆れていましたが……ふふっ、分かっていますよお姉様?
そんな連れない態度こそが、お姉様の愛情表現だということを!
そもそも、今回の転送魔法ひとつ取ってもそうです。わたしイチオシの避暑地はこのプライベートビーチだったのですが、あの農村からでは遠すぎますので最初は断念していました。
さりとて比較的近い別荘地でも馬車で一両日はかかる距離ですから、この暑い最中、お姉様を馬車に閉じ込めておくのは偲びありません。とはいえ、平民でごった返している海水浴場に、お姉様を連れて行くわけにはいきませんし。
そんな感じでわたしが頭を悩ませていたところ、助け船を出してくれたのがお姉様だったのです!
お姉様曰く──
「近場でも移動に数日かかるなら、転送魔法で最善の場所へ行きましょう。そのほうがユイナスさんも喜ぶでしょうし」
──とのこと!
そうして、とてつもない最高難易度の超長距離転移魔法を、惜しげもなく使ってくださったのです! わたしが悩んでいたから!!
ああ……お姉様。やっぱりお姉様は、わたしが困っていたらいつでも助けてくれるのですね! 分かってますよお姉様。そういうの、最近はツンデレというのでしょう!?
わたしがお姉様の愛を思い出して痺れていると、にっくき男・アルデが、ぼけーっとした声音で言いました。
「っていうかさ、こんな魔法が使えるんだったら、オレの村までも一瞬だったんじゃ?」
そんなお馬鹿さんに、お姉様はお優しくも説明しました。
「転送魔法には、転送ゲートが必要だと以前に説明したじゃないですか」
「そうだったっけ?」
「そうだったのですよ。『出発』は呪文一つでできますが、『到着』するには魔方陣が必要なのです。リリィのこの別荘地にはゲートがあるとのことだったので、だから転送できたのですよ」
「なるほどな……まぁそうじゃないと、どこにでもポンポン転送できてしまうもんな。例えば敵陣のど真ん中とか」
「そういうことです。ちなみにこちらへ来るときに、村にも転送ゲートを設置しておきましたから帰りもすぐですよ」
「さすが、抜かりないな」
アルデは大した驚きもなく聞き流していますが、普通、転送魔法を発現するには大人数の魔法士が必要ですし、そもそもこの距離を移動できる魔法士なんて存在しないのですよ。アホの子・アルデは知りもしないでしょうけれども。
まったく……お姉様の凄さを微塵も分かっていないあの男が、なぜ側仕えなんてしているのか……わたしが呆れていたら、アルデの友人らしき男性が海を眺めて言いました。
「それにしても空いてるな。下手すりゃ、海辺一体が芋を洗うような混雑具合だと覚悟していたんだが……」
マヌケなことを言う彼に、わたしはため息交じりに説明しました。
「そんな平民が押しかける場所に、お姉様をお連れするわけないでしょう? この島自体がわたしの私有地なのですから、わたしたち以外の観光客なんていませんよ」
「そ、そうなのですか……!」
「ええ。ああでも、近隣の島には住民もいて、そこでは近々夏祭りが行われるそうですから、お姉様が希望なされるのでしたら、南国文化の視察もできますよ」
「おお、それはいいっすね。っていうか、どうしてリリィちゃ──いえリリィ様は、そんなにティスリさんのことを気に掛けているんです?」
あ……しまった。
お姉様は、ご自身の身分は隠しているんでしたわ……!
お姉様を見ると、ジロリとこちらを睨んでいます! こ、これはなんとか誤魔化さないと……!
「そ、それはもちろん、お姉様とわたしは、身分を超えた愛情で結ばれているからですわ! だから気を使うのは当然なのですよ!」
「なるほど! すばらしい友情ですね!」
言ったわたし自身も「誤魔化すには苦しい……」と思っていた言い分けでしたが、彼はあっさりと納得します。
っていうかこの男、郡庁で冤罪に遭いかけた彼ですわよね? 名前はなんといったかしら?
いずれにしても、郡庁長官や憲兵隊長の態度を見ても、お姉様の身分に思い至らないなんて……頭の中はお花畑しかないのかしら?
ですが誤魔化せたのならいいですわ。なぜかお姉様に睨まれっぱなしですが……だからゾクゾクが止まりませんわ!?
しかしこの炎天下の中、いつまでもお姉様を突っ立たせておくわけにもいきませんので、わたしは皆に言いました。
「それでは海の観賞はこのくらいにして、別荘に向かいましょう。そこでひと息ついたのち、今日は海水浴を楽しみましょう」
そうしてわたしを先頭に歩き出すと──
──気づけばユイナスが隣によってきて、わたしに耳打ちしてきます。
「ねぇ……ここに来る前に言ったこと、覚えてるわよね?」
「え、ああ……協力体制のことですか?」
「それもそうだけど、さっきあなたと話してたミア。あれが要注意人物だからね……!」
昨日の晩、ユイナスがわたしの元を訪れて協力体制を申し入れてきたのです。
何しろ、わたしたちの利害は一致しています。
このバカンスで、わたしはお姉様ともっと親密になりたくて、ユイナスはアルデを落としたい。
そのためには、アルデに対するお姉様の好感度を下げることが重要です。その点においてわたしたちの利害は一致しているわけですが……
ユイナスがいうには、お姉様の好感度を下げる以上に重要事ができたというのです。
それがミアという女性だとのこと。
ということでユイナスが、わたしの隣で囁くように言いました。
「まさかお兄ちゃんが、あの女狐を連れてくるなんて夢にも思わなかったわ……」
「ひょっとしたらあなたのお兄様、ミアさんのことが好きなのでは?」
「そんなわけないでしょ……!?」
あながち間違ってもいないとわたしは思うのですが、ユイナスは頑なに認めようとしません。だからわたしはため息交じりに言いました。
「もう……分かりましたよ。アルデとミアさんを引き離せばいいのでしょう?」
「そうよ。あなたの侍女や執事も使って邪魔してよね? その上で、ティスリの好感度を下げるんだからね?」
「はいはい……」
そもそも、大貴族たるこのわたしが、平民であるユイナスの要求を聞き入れるなんてあり得ないのですが……
でもなぜか、ユイナスはお姉様のお気に入りですし……くうぅ……なぜですの? ユイナスが羨ましいですわ……
まぁそれはともかく、お姉様のお気に入りだという事実を差し引いても、ユイナスにはどうしてか反抗できない気分にさせられるんですのよねぇ……
わたしからしたら、アルデとミアさんが恋仲になっても、なんら支障はないのですけれども……
というよりも?
よくよく考えてみれば、アルデとユイナスをくっつけるだなんて不可能ではないかしら? なんど確認しても実の兄妹だという話ですし。
歴史を振り返れば兄妹婚がないわけでもないですが、少なくとも現代においてはありえませんし、そもそもすでに法律で禁止されていますし。
何よりアルデの態度を見る限り、ユイナスになびくとはとても思えません。
だとしたら、お姉様の好感度を下げるためには、血の繋がりがなくて幼馴染みだというミアさんのほうが断然使えるのでは?
そんなことを考えながら、わたしはちらっと後ろを見ると──
ちょっとモジモジしながら歩くミアさんと、なぜかそのミアさんを見ようとしないアルデ。
そうしてそのすぐ後ろを歩くお姉様は……なぜか目を三角にしてアルデを睨んでおりますわ!?
もしかしてお姉様の好感度って……思ったより高くない?
わたしはブルッと身震いしてから向き直りました。
「ねぇリリィ! 本当に分かってるの……!?」
ユイナスは、わたしの隣でヒソヒソと今後の段取りを説明していたらしく、聞いていなかったわたしの腕を引っ張ってきます。
「え、ああ……はいはい。分かっていますよ」
「なら今の説明、反復してみなさいよ……!」
「もぅ……あとで侍女長を紹介しますから、詳細は彼女に説明してくださいな」
などと言い合いながら、わたしたちのバカンスは始まったのでした。
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