孤高のぼっち王女が理不尽すぎ! なのに追放平民のオレと……二人っきりの逃避行!?

佐々木直也

文字の大きさ
上 下
140 / 245
第4章

第18話 なんて舐めた真似を!

しおりを挟む
「ナーヴィン・ベレルク! キサマは完全に包囲されている! 大人しく投降しろ!!」

 昨夜の状況をティスリわたし達がナーヴィンさんに聞いていると、宿屋の外から怒鳴り声が聞こえてきました。

「も、もう憲兵が戻ってきたのか!?」

 憲兵に名指しをされたからか、ナーヴィンさんが身をすくめます。

 その隣に座っていたアルデは立ち上がって、食堂の窓へと歩いて行きました。

「──フル武装した憲兵が、ザッと30人ってところだな」

 アルデの言葉を受けてわたしは言いました。

「おそらくは、爆発を免れた憲兵が逃げ帰り、応援を呼んできたのでしょうね」

 ナーヴィンさんが涙目になってわたしを見ます。

「どどど、どうしましょうティスリさん! オレ、憲兵を爆発なんてしてないし、もちろん強盗もしてません! そもそも魔法なんて使えないし!」

「ええ、分かっていますよ。爆発したのはその指輪の効果ですから」

「え、あ──この指輪ですか!?」

「そうです。なのでもし逮捕されるとしたら、それを作ったわたしですから、ナーヴィンさんは安心してください」

「そ、そうですか……」

 わたしの言葉に安堵しかけたナーヴィンさんでしたが、すぐさま身を乗り出してきました。

「って、いやいや!? それじゃあティスリさんが捕まってしまいますよ!?」

「ご心配なく。不当逮捕になんて屈したりしませんから」

 わたしのその言葉に、リリィが質問してきます。

「お姉様、不当逮捕とはどういうことですの?」

「まず、ナーヴィンさんはリリィの従者だと思われたのでしょうね。そして犯罪と偽って従者を逮捕し、それにより司法取引に持ち込もうとしているのでしょう」

「司法取引? いったい何を取引するんですの?」

「昨日取り決めた、20年間の減税を無しにしたいのでしょうね」

「あっ、そういうことですの……」

 わたしの説明を聞いて納得したリリィでしたが、徐々に怒りを露わにしてきました。

「ということは……つまりは、このわたしを脅す気ですの!?」

「そういうことになります」

「なんて舐めた真似を! テレジア家にしてお姉様のご寵あ──」

「寵愛なんて与えていません。未だかつて一度たりとも。今後どこかでそれを吹聴したら、二度と会いませんからそのつもりで」

「そ、そんなお姉様!? 別に恥ずかしがらなくても──」

「恥ずかしがってなどいません。心の底から嫌がっているのです」

 リリィは愕然とした様子で数歩後じさったかと思うと、やがて食堂の隅にいって膝を抱えましたが、わたしは気にも留めずに思索を続けます。

「それにしても、こんな強硬手段に打って出てくるとは……」

 宿屋の外から聞こえてくる憲兵の怒鳴り声に、わたしは眉をひそめます。

 リリィを庇うつもりは毛頭ありませんが、そうであったとしても明らかにおかしな状況です。地方貴族が中央貴族を──それもテレジア家の長女を脅すだなんて前代未聞なのですから。

 あちらからしたら不服な罰則だったのでしょうけれども、犯罪を捏造してまで抵抗してくるだなんて思いも寄りませんでした。

 そして不当逮捕は誰でも良かったのでしょう。だから繁華街を一人で歩いていたナーヴィンさんに目を付けたのでしょうね。

 ちなみにこの地本来の統治者は領主家ですから、領主家経由で弁明することはあり得ますが、今の領主はラーフルなので、弁明したところで意味がありません。だから余計に追い詰めてしまったが故の行動、と言えなくもないのですが……

 であったとしても、この行動は短慮過ぎます。少しでも間違えば自分の身が破滅するわけですし、そもそもわたしがこの場にいる以上、破滅するわけですが。

 ですがわたしがいなくたって、リリィがわたしに執心しているのは周知の事実。リリィ伝いにわたしへ連絡が行くとは考えなかったのでしょうか?

「おーいティスリ、どうする? 奴ら、今にも突入してきそうだが」

 窓の外を見張り続けていたアルデが言ってきました。

「……やむを得ませんね」

 しかしここで考えていてもらちが明きません。だからわたしはため息をついてから言いました。

「郡庁に向かいましょう。そこで決着を付けます」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...