108 / 194
第3章
第23話 農家に一人、魔法士ですか……悪くないですね……
しおりを挟む
もはや恒例行事といってもいいかもしれない朝の一悶着をこなした後、アルデたちは、ミアの農地にやってきた。魔動車がなかったら遅刻してたところだ。
ちなみに……魔動車に乗り込んだユイナスがそのスピードに驚いたり、魔動車を乗り付けたら村人達が驚いたりしたが、まぁその辺は想定通りといったところか。
そうして農地に集まったのは、オレたち三人の他にはミアと、あとウルグじいさんがいた。それ以外の村人たちは、すでに作業を開始しているので散り散りになっている。
オレはティスリに「ウルグは、村に来たとき、最初に再会したじいさんだよ」と説明したが、頭のいいティスリは、顔どころか名前まで覚えていた。オレなんて、あの程度の挨拶なんてすれ違いみたいなものだから、すぐ忘れるというのにすげぇな。
っていうか、なんでウルグがミアの農地にいるんだ? ウルグは自分の農地を持っているはずだが。
オレは疑問に思ってそれを尋ねると、ウルグが答えた。
「ミアんちの収穫作業が遅れているから、手伝いを頼まれたんじゃ。あとお前達の面倒も見ることになっとる」
「へ? 収穫遅れてるの?」
子供の頃から手伝いをしていたとはいえ、農業に関してオレは素人なので、どの程度の進行具合なのかまではよく分からない。しかしその素人考えだとしても、収穫作業が遅れているのに、ほぼ観光でしかない農業体験なんてさせていいのだろうか?
オレは疑問に思ってミアを見ると、ミアはなぜか慌てながら言ってきた。
「だ、大丈夫だよ? 農業体験といっても、人手が増えるのに違いはないから、むしろ助かるし……」
「そうなのか? ならいいんだけど……」
とは言っても、今回はガッツリ手伝いというより、あくまでも体験だから、そこまで効率は上がらないと思うけどなぁ?
オレが首を傾げていると、ウルグがオレの肩をポンポンと叩く。
「まったくおまいさんは……言わんこっちゃない」
「な、なんだよじいさん……どういう意味だ?」
「この面子を前にまだ気づかんとは……肝が据わっているのかバカなのか……」
「だからどういう意味だよ?」
「本気で背中には気をつけるんじゃぞ?」
「真面目な顔して不吉なことを言うな! そもそも意味不明なんだが!?」
しかしウルグは、それ以上何も言わずにティスリを見た。
「さて。そうしたら早速じゃが、収穫方法を教えるぞ」
ウルグにそう言われ、ティスリは真剣な面持ちで頷いた。
「はい、よろしくお願いします。ウルグさん」
そしてウルグの農業授業が始まる。
ちなみにオレとユイナスは、作業工程自体は把握しているので復習といった感じだ。オレは率先して、ユイナスは嫌々、子供の頃から収穫作業に駆り出されていたからな。何しろ小麦の刈り入れは、手作業でやらざるを得ないから村総出なのだ。
まず鎌を片手に刈り入れをする。つぎは刈った小麦を束ねて乾燥させる。その後の脱穀なんかは、ある程度の大型農具を使うものの、もちろん全自動というわけにはいかない。人の手で地道に脱穀しなければならないのだ。
というわけで午前中は、刈り入れ作業をみんなですることにした。本来は何日もこの作業をやるわけだが、今回は農業体験が目的なので、午後からは、刈り入れ以外の農作業も一通りやる予定だ。
「あ、皆さん。ちょっといいですか?」
ティスリは全員を呼び止めてから魔法発現する。
「日焼け止め」
オレたちの体が少し光ったかと思うと、すぐにその光は消えてなくなった。
ミアが驚きながら、自分の体を見回してティスリに聞いた。
「い、今のは……なんですか……?」
平民の、しかもこんなド田舎の農村にいたら、魔法発現を見ること自体が珍しい──というより生まれて初めてのはずだ。
もちろんユイナスも驚いて自分の体を見下ろしている。ウルグはポカンとしていた。
そんなみんなに向かって、ティスリはにこやかに言った。
「日焼けするのを完全に防いでくれる結界魔法です。効果は12時間ほどですので、今日は日焼けを気にする必要ありませんよ」
ティスリのその説明に、ユイナスが半ば呆然としながら「これが、魔法……?」とつぶやいていた。
さらにミアがティスリに言った。
「あ、ありがとうございます……本当に魔法士なんですね……あ、いえ、疑っていたわけではないんですが……驚いちゃって……」
「いえ、お気になさらず。日焼けをしすぎると体に悪いと言いますからね」
別に見た目に気を使っていない、オレやウルグにも魔法を掛けたのはそういう理由か。ウルグは帽子を被って長袖長ズボンだが、それでもけっこう日に焼けているからな。
「それでは始めましょうか。ウルグさん、レクチャーお願いしますね」
そうしてオレたちは、ウルグからレクチャーを受けた後、今度こそ刈り入れ作業に取りかかる。
腰をかがめて、茎を根元から刈り取っていく作業は……相変わらずしんどいな。こればっかりは、どんなに体を鍛えたところで我慢するしかない。同じ姿勢で居続けることは、体を鍛えるのとはまた別種のツラさがあるからだ。もちろん、丈夫な体でいることに越したことはないが。
そんなわけで、小一時間もやっていると早くもユイナスが音を上げた。
「あーーー! 腰が痛い! やってられない!!」
ユイナスは、大きく体を反らせながらそんなことを叫ぶ。その近くで作業をしていたオレは、ユイナスに言った。
「やりたいっていったのはお前だろ」
「農作業自体をやりたいわけじゃないのよ、わたしは!」
「ああ……そうか。お前、ティスリと仲良くなりたかったんだよな」
「ちちち、違うわよ!?」
「違うも何も、昨日言ってたじゃん」
「言ってたけど違うの!」
「照れ隠しってヤツだな」
「そうじゃないんだけど!?」
「まぁ農作業を延々とやってたら、仲良くなるどころじゃないしなぁ。そりゃ愚痴りたくもなるか」
「妹の話を聞いてるお兄ちゃん!?」
気晴らしにユイナスをからかっていると、少し離れた場所で刈り取りをしていたティスリも体を起こす。
「ふぅ……確かに、想像以上の重労働ですね。こんなに体を酷使するとは知りませんでした……」
そりゃあ、ティスリは王女殿下だったんだから、普通に過ごしていたら一生涯、農作業なんて知らなかっただろう。ってか知る必要もないというか。
するとミアも体を起こしてため息交じりに言った。
「毎年、麦畑が黄金色になるのを見ると、喜び半分、憂鬱半分なんだ……」
それを聞いて、ティスリは感慨深げに頷く。
「なるほど。農作業を知らないわたしたちからすれば、ただひたすらに美しくて喜ばしい光景ですが……この広大な麦畑を、人の手で刈り取らねばならないと考えると、確かに憂鬱になるでしょうね。これはちょっと、対策を練る必要がありそうです」
そういって、ティスリは思案顔になる。ああいう顔をするときのティスリは、何か、とてつもないことを考えているときなのだが……いったい何を考えているのかまでは、オレには想像すら付かない。
それから少しして、ティスリが全員に向かって言った。
「とりあえず今日は、体の負担だけでも軽減しておきましょうか──疲労回復、身体強化」
ティスリが魔法発現すると、またぞろオレたちの体がいっとき輝く。
すると、さきほどまで感じていた腰の痛みがあっという間になくなった……!
「ん……?」
ちょっと遠くで、黙々と刈り取り作業をやっていたウルグも、体の調子がいきなり変化したのに驚いたのだろう、こちらに向かってくる。
「おーい、お嬢ちゃん、今度はいったい何をしたんじゃ?」
「体に溜まる疲労物質を少々軽減したのと、あとは酷使される部位の自然治癒力をアップさせました。それと魔力により、全身の筋肉を補助しているので、動きやすくもなるはずです」
「な、なんと……!?」
ティスリの説明に、ウルグさんは目を丸くする。それから腰を捻ったり、ジャンプしたりして魔法の効果を試していた。
「ほ、本当じゃ……! 腰痛がなくなっているし、信じられないくらい体が軽い……!」
「身体強化は魔力製のパワードスーツを着るようなものですからね。とはいえ無理は禁物ですよ?」
「ぱわー……なんじゃって?」
ティスリはさらりと説明しているが、もちろん、これら魔法はティスリだから発現できるのだ。
衛士をやっていたころ、魔法理論も学ばされたことがあったが、そもそも、魔法で疲労回復なんてできないはずなのだ。怪我の治療はできても。
もし魔法で疲労回復できるのなら、兵士の疲労を取り除くことで、まるで永久機関のような軍隊が完成しているところだ。
まったく疲労を感じない兵士なんて怖すぎるわけだが、もちろんそんなことできるわけがない。
だというのに……ティスリは、不可能であるはずの魔法をさらりと発現するんだよなぁ……
この場にいる全員が驚いているが、もし魔法士が居合わせたのなら、驚き過ぎて失神しているかもしれない。
オレがそんなことを考えていたら、ティスリがみんなに言った。
「少なくとも、体の痛みはなくなるはずですから、午前中はこれで乗り切りましょう」
するとウルグさんは笑顔で言った。
「いやぁ、助かるよお嬢ちゃん。ありがとうな」
「これくらい、お安いご用ですよ」
「それにしても魔法とは便利なものじゃのぅ。農家に一人、魔法使いが欲しいもんじゃ」
う~ん。魔法って、そんな気軽に使えるもんじゃないんだが……
ティスリのせいで、木訥としたじいさんにあらぬ誤解を与えてやいないか心配になってきたが、ウルグの台詞を聞いたティスリは、なぜか真剣な面持ちになっていた。
「農家に一人、魔法士ですか……悪くないですね……」
いやいや……さすがのティスリでも、魔法士を量産することはできないだろ──
──とオレは思うも、ティスリのことだから、本気で魔法士を量産しかねないと思うのだった。
ちなみに……魔動車に乗り込んだユイナスがそのスピードに驚いたり、魔動車を乗り付けたら村人達が驚いたりしたが、まぁその辺は想定通りといったところか。
そうして農地に集まったのは、オレたち三人の他にはミアと、あとウルグじいさんがいた。それ以外の村人たちは、すでに作業を開始しているので散り散りになっている。
オレはティスリに「ウルグは、村に来たとき、最初に再会したじいさんだよ」と説明したが、頭のいいティスリは、顔どころか名前まで覚えていた。オレなんて、あの程度の挨拶なんてすれ違いみたいなものだから、すぐ忘れるというのにすげぇな。
っていうか、なんでウルグがミアの農地にいるんだ? ウルグは自分の農地を持っているはずだが。
オレは疑問に思ってそれを尋ねると、ウルグが答えた。
「ミアんちの収穫作業が遅れているから、手伝いを頼まれたんじゃ。あとお前達の面倒も見ることになっとる」
「へ? 収穫遅れてるの?」
子供の頃から手伝いをしていたとはいえ、農業に関してオレは素人なので、どの程度の進行具合なのかまではよく分からない。しかしその素人考えだとしても、収穫作業が遅れているのに、ほぼ観光でしかない農業体験なんてさせていいのだろうか?
オレは疑問に思ってミアを見ると、ミアはなぜか慌てながら言ってきた。
「だ、大丈夫だよ? 農業体験といっても、人手が増えるのに違いはないから、むしろ助かるし……」
「そうなのか? ならいいんだけど……」
とは言っても、今回はガッツリ手伝いというより、あくまでも体験だから、そこまで効率は上がらないと思うけどなぁ?
オレが首を傾げていると、ウルグがオレの肩をポンポンと叩く。
「まったくおまいさんは……言わんこっちゃない」
「な、なんだよじいさん……どういう意味だ?」
「この面子を前にまだ気づかんとは……肝が据わっているのかバカなのか……」
「だからどういう意味だよ?」
「本気で背中には気をつけるんじゃぞ?」
「真面目な顔して不吉なことを言うな! そもそも意味不明なんだが!?」
しかしウルグは、それ以上何も言わずにティスリを見た。
「さて。そうしたら早速じゃが、収穫方法を教えるぞ」
ウルグにそう言われ、ティスリは真剣な面持ちで頷いた。
「はい、よろしくお願いします。ウルグさん」
そしてウルグの農業授業が始まる。
ちなみにオレとユイナスは、作業工程自体は把握しているので復習といった感じだ。オレは率先して、ユイナスは嫌々、子供の頃から収穫作業に駆り出されていたからな。何しろ小麦の刈り入れは、手作業でやらざるを得ないから村総出なのだ。
まず鎌を片手に刈り入れをする。つぎは刈った小麦を束ねて乾燥させる。その後の脱穀なんかは、ある程度の大型農具を使うものの、もちろん全自動というわけにはいかない。人の手で地道に脱穀しなければならないのだ。
というわけで午前中は、刈り入れ作業をみんなですることにした。本来は何日もこの作業をやるわけだが、今回は農業体験が目的なので、午後からは、刈り入れ以外の農作業も一通りやる予定だ。
「あ、皆さん。ちょっといいですか?」
ティスリは全員を呼び止めてから魔法発現する。
「日焼け止め」
オレたちの体が少し光ったかと思うと、すぐにその光は消えてなくなった。
ミアが驚きながら、自分の体を見回してティスリに聞いた。
「い、今のは……なんですか……?」
平民の、しかもこんなド田舎の農村にいたら、魔法発現を見ること自体が珍しい──というより生まれて初めてのはずだ。
もちろんユイナスも驚いて自分の体を見下ろしている。ウルグはポカンとしていた。
そんなみんなに向かって、ティスリはにこやかに言った。
「日焼けするのを完全に防いでくれる結界魔法です。効果は12時間ほどですので、今日は日焼けを気にする必要ありませんよ」
ティスリのその説明に、ユイナスが半ば呆然としながら「これが、魔法……?」とつぶやいていた。
さらにミアがティスリに言った。
「あ、ありがとうございます……本当に魔法士なんですね……あ、いえ、疑っていたわけではないんですが……驚いちゃって……」
「いえ、お気になさらず。日焼けをしすぎると体に悪いと言いますからね」
別に見た目に気を使っていない、オレやウルグにも魔法を掛けたのはそういう理由か。ウルグは帽子を被って長袖長ズボンだが、それでもけっこう日に焼けているからな。
「それでは始めましょうか。ウルグさん、レクチャーお願いしますね」
そうしてオレたちは、ウルグからレクチャーを受けた後、今度こそ刈り入れ作業に取りかかる。
腰をかがめて、茎を根元から刈り取っていく作業は……相変わらずしんどいな。こればっかりは、どんなに体を鍛えたところで我慢するしかない。同じ姿勢で居続けることは、体を鍛えるのとはまた別種のツラさがあるからだ。もちろん、丈夫な体でいることに越したことはないが。
そんなわけで、小一時間もやっていると早くもユイナスが音を上げた。
「あーーー! 腰が痛い! やってられない!!」
ユイナスは、大きく体を反らせながらそんなことを叫ぶ。その近くで作業をしていたオレは、ユイナスに言った。
「やりたいっていったのはお前だろ」
「農作業自体をやりたいわけじゃないのよ、わたしは!」
「ああ……そうか。お前、ティスリと仲良くなりたかったんだよな」
「ちちち、違うわよ!?」
「違うも何も、昨日言ってたじゃん」
「言ってたけど違うの!」
「照れ隠しってヤツだな」
「そうじゃないんだけど!?」
「まぁ農作業を延々とやってたら、仲良くなるどころじゃないしなぁ。そりゃ愚痴りたくもなるか」
「妹の話を聞いてるお兄ちゃん!?」
気晴らしにユイナスをからかっていると、少し離れた場所で刈り取りをしていたティスリも体を起こす。
「ふぅ……確かに、想像以上の重労働ですね。こんなに体を酷使するとは知りませんでした……」
そりゃあ、ティスリは王女殿下だったんだから、普通に過ごしていたら一生涯、農作業なんて知らなかっただろう。ってか知る必要もないというか。
するとミアも体を起こしてため息交じりに言った。
「毎年、麦畑が黄金色になるのを見ると、喜び半分、憂鬱半分なんだ……」
それを聞いて、ティスリは感慨深げに頷く。
「なるほど。農作業を知らないわたしたちからすれば、ただひたすらに美しくて喜ばしい光景ですが……この広大な麦畑を、人の手で刈り取らねばならないと考えると、確かに憂鬱になるでしょうね。これはちょっと、対策を練る必要がありそうです」
そういって、ティスリは思案顔になる。ああいう顔をするときのティスリは、何か、とてつもないことを考えているときなのだが……いったい何を考えているのかまでは、オレには想像すら付かない。
それから少しして、ティスリが全員に向かって言った。
「とりあえず今日は、体の負担だけでも軽減しておきましょうか──疲労回復、身体強化」
ティスリが魔法発現すると、またぞろオレたちの体がいっとき輝く。
すると、さきほどまで感じていた腰の痛みがあっという間になくなった……!
「ん……?」
ちょっと遠くで、黙々と刈り取り作業をやっていたウルグも、体の調子がいきなり変化したのに驚いたのだろう、こちらに向かってくる。
「おーい、お嬢ちゃん、今度はいったい何をしたんじゃ?」
「体に溜まる疲労物質を少々軽減したのと、あとは酷使される部位の自然治癒力をアップさせました。それと魔力により、全身の筋肉を補助しているので、動きやすくもなるはずです」
「な、なんと……!?」
ティスリの説明に、ウルグさんは目を丸くする。それから腰を捻ったり、ジャンプしたりして魔法の効果を試していた。
「ほ、本当じゃ……! 腰痛がなくなっているし、信じられないくらい体が軽い……!」
「身体強化は魔力製のパワードスーツを着るようなものですからね。とはいえ無理は禁物ですよ?」
「ぱわー……なんじゃって?」
ティスリはさらりと説明しているが、もちろん、これら魔法はティスリだから発現できるのだ。
衛士をやっていたころ、魔法理論も学ばされたことがあったが、そもそも、魔法で疲労回復なんてできないはずなのだ。怪我の治療はできても。
もし魔法で疲労回復できるのなら、兵士の疲労を取り除くことで、まるで永久機関のような軍隊が完成しているところだ。
まったく疲労を感じない兵士なんて怖すぎるわけだが、もちろんそんなことできるわけがない。
だというのに……ティスリは、不可能であるはずの魔法をさらりと発現するんだよなぁ……
この場にいる全員が驚いているが、もし魔法士が居合わせたのなら、驚き過ぎて失神しているかもしれない。
オレがそんなことを考えていたら、ティスリがみんなに言った。
「少なくとも、体の痛みはなくなるはずですから、午前中はこれで乗り切りましょう」
するとウルグさんは笑顔で言った。
「いやぁ、助かるよお嬢ちゃん。ありがとうな」
「これくらい、お安いご用ですよ」
「それにしても魔法とは便利なものじゃのぅ。農家に一人、魔法使いが欲しいもんじゃ」
う~ん。魔法って、そんな気軽に使えるもんじゃないんだが……
ティスリのせいで、木訥としたじいさんにあらぬ誤解を与えてやいないか心配になってきたが、ウルグの台詞を聞いたティスリは、なぜか真剣な面持ちになっていた。
「農家に一人、魔法士ですか……悪くないですね……」
いやいや……さすがのティスリでも、魔法士を量産することはできないだろ──
──とオレは思うも、ティスリのことだから、本気で魔法士を量産しかねないと思うのだった。
1
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる