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第3章

第2話 数人の親衛隊と共に、わたしが現地に出向く!

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 殿下失踪先の予想を大きく外したラーフルわたしは、親衛隊隊長の任を解かれることも覚悟していたが、しかし、リリィ様はそのようなことはなされなかった。

「今、あなたに抜けられては困ります。自身の失態は功績によって挽回なさい」

 とのこと。てっきりヒステリーを起こされると思っていたわたしは、思いも寄らぬその寛容さにちょっと感動したりもして、だからことさら王女殿下捜索に熱を入れることになる。

 そしてその挽回の機会は、思ったより早く訪れた。

 王女殿下が地方都市で発見されたのだ。

「フェルガナ領都に殿下がお出ましになっただと!?」

 その一報を聞いたとき、まったく予想していなかった場所だっただけに、わたしは大いに戸惑った。殿下のことだから、フェルガナ領に出向いたのは何か理由があるはずと思ったのだが、しかしその理由がすぐには思い浮かばない。

 だが貴重な目撃情報を前にして座しているわけにもいかない。それに、どうせ考えたところで殿下の裏を掻くことなんて出来ないのだ。

 魔動車を昼夜問わずに駆れば、フェルガナ領都までは二日で辿り着くが、果たして殿下は、我々が到着するまで領都に留まっておいでかは……その可能性は限りなく低いだろう。

 しかし現地に出向けば、その後の殿下の足取りを予想することも可能かもしれない。だからわたしは即座に立ち上がる。

「よし分かった。今すぐに魔動車の用意を。数人の親衛隊と共に、わたしが現地に出向く!」

 伝令兵にそう告げると、伝令兵は恐縮したように言ってきた。

「ラーフル様、その現地に出向くメンバーなのですが……リリィ様も同行するとおっしゃっております」

「なんだと?」

 リリィ様は王族直系ではないとはいえ、大貴族のご令嬢でその世継ぎでもある。もしお連れするとなれば、それなりの軍隊を動かさねばならないが、今はそんな編成をしている時間はない。

 だからわたしは伝令兵に言った。

「であれば我々は先発するから、リリィ様は後から──」

「いえそれが……先発隊と同行すると申しております」

「そんな無茶な……」

「そんなわけでして、リリィ様に直接進言して頂けないでしょうか」

「……分かった」

 この場で伝令兵と押し問答をしていても確かに埒があかない。仕方がないので、わたしはリリィ様の元に向かう。

 そもそもリリィ様はまだ学生で学生寮に住んでいたのだが、殿下が出奔されてからは、公務が増えたこともあって今は王城内に暮らしている。今日はその私室にいるということで、わたしは私室の前までやってくると、ノックをしてから片膝をついて最敬礼の姿勢を取った。

 少しの間、室内でバタバタしていたようだったが、やがて侍女の一人が扉を開ける。

「いいわよ、面を上げて入ってきなさい」

 そして私室からリリィ様の声が聞こえたのでわたしが頭を上げると、室内には、旅支度をすっかり終えられたリリィ様が仁王立ちしていた。

 わたしは室内に入ってから重い口を開く。

「その……リリィ様。御自らがフェルガナ領に出向くとは本当ですか?」

 躊躇いがちに問うわたしに、リリィ様はなんの迷いもなく頷いた。

「もちろんです。お姉様が見つかったのですから、王位継承権第三位の地位を持つわたしが出迎えるのが当然でしょう?」

「いやしかし……リリィ様が出向くとなると軍編成が……」

「そんなもの必要ありません。お忍びですませばいいでしょう。最低限の人数で編成しなさい今すぐに!」

「ですがこの城での公務も……」

「いい加減、あの駄王を叩き起こせばよいでしょう!? すでに至って健康でしょうおじさまは!」

「ま、まぁ確かに……リリィ様にやられたお怪我も、すでに全治していると聞いてますが……」

「ならそれで決まりです! それともなんです? わたしが出向くことに何か不服でも?」

「いえ、そういうわけではありませんが……」

 確かに、陛下が復帰なされるならリリィ様を王城内にとどめておく必要性はなくなる。とはいえ、准王族であるリリィ様を、ロクな護衛も付けずに王都の外に連れ出すなど、通常なら絶対に反対なのだが……

 あとなぜか、とても嫌な予感がするし……

 しかしリリィ様には、わたしの失態を見逃してくれた恩もあるし、何より、殿下を説得するにあたり、わたしでは身分が違いすぎるのだ。

 だから王位継承権を持つリリィ様が同行するのは理に適っているのは間違いなかった。

 それに今回は、騎馬でも追いつけない魔動車もあるから、野盗などに襲われるような心配も少ないだろう。

「分かりました……では早急に準備をしますので、一時間ほどお待ちください」

 元々は、魔動車一台にわたしを含む四人で今すぐにでも出発するつもりだったのだが、いくら魔動車があるとはいえ、リリィ様が同行されるとなれば最低でも十数人の護衛は必要だ。

 だからわたしは、大慌てで親衛隊を選抜し、また侍従長に、リリィ様のお世話をする侍女たちも三名ほど見繕ってもらってから、最終的に五台の魔動車を連ねて王城を出発するのだった。
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