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第2章
第33話 明日、領主の子飼いであるジェフといよいよ対戦する
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アルデは、発表された決勝トーナメントを控え室で確認する。オレの控え室だったが、ティスリの他にベラトとフォッテスも来ていたので、オレはベラトに言った。
「ジェフってヤツと戦うのはオレになったな」
するとベラトは悔しそうに頷いた。
「ええ……出来ればぼくが戦って、雪辱を果たしたかったですが」
「ま、あちらさんもベラトを警戒しているんだろう。予選を考慮した結果、オレへ当てることにしたんじゃないか?」
「その判断、明らかに間違ってますよ」
「でもまぁ地下水路では、オレは大して戦ってないし」
オレが予選を勝ち抜いたのも、相手が弱すぎたと思われたんだろう。確かに対戦相手は弱すぎて、まともな戦いにならなかったからなぁ。
それが功を奏したのかそうでないのか、オレにとってはどちらでもいい事だが、ベラトにとっては藪蛇だったようだ。
「いずれにしてもアルデさん、気をつけてくださいね。今大会では、ジェフは不可解な動きをしていませんが、不利になったら魔法を使ってくるかもしれません」
そう言えばジェフは、本来ではあり得ない加速をするそうだからな。実戦ではよくある手だが試合では反則だ。
オレはティスリに聞いた。
「実行委員会は、ジェフの魔法や魔具を感知できないのか?」
「その可能性もありますが、どちらかというと、委員の誰かを買収しているのでしょう」
「ああ、なるほど。だとしたら、不利になったらまず間違いなく反則技を使ってくるか」
「そうですね。なのでジェフと当たったときは、じわじわと追い詰めてください。そうすれば反則をしてくるでしょうから、それを記録しておけば言い逃れもできないでしょう」
「記録なんて出来るのか?」
「ええ、もちろんです。というか公営賭博ですから、反則のチェックや記録は魔法で公的に行われるのが本来の姿です。ですがおそらく、この大会では記録が行われていないのでしょうから、わたしのほうで記録しておくわけです」
「なるほど。なら追い詰めることは了解だ」
急加速を多少使ったところで、それが魔法なのか筋力なのか、素人目には分からないだろう。もちろん、そういった反則行為がないよう審判がいるわけだが、この分だと審判も買収済みと見て間違いなさそうだ。
だが証拠が残っているのなら話は別だ。買収された人間もろとも一網打尽に出来るかもしれない。
「アルデさん……大丈夫ですか?」
フォッテスが心配そうな眼差しを向けてくるので、オレは力強く頷いた。
「ま、問題ないさ。ヤツの試合を見ていたが、剣さばき自体は大したことないし、だから多少加速されたところでどうってことないよ」
「さすがはアルデさんです。ベラトとは段違いですね」
などとフォッテスが言うものだから、ベラトが「どうせぼくは、二位を目指す程度の剣士だよ……」と拗ねてしまった。
だからオレは苦笑交じりにフォローする。
「ま、まぁ……ベラトと戦った時、ジェフの魔法は、ティスリの縮地ほどに加速していたのかもしれないし」
「あり得ませんね」
オレの台詞に、ティスリが口を挟んでくる。
「この世界に、縮地と同じ加速をする魔法なんて存在しませんし、そんなものを魔具に出来るはずもありません。もっとも、わたし自らが開発すれば別ですが」
「そ、そうか……」
ティスリの台詞を受けて、ベラトは「で、ですよね……」とますます肩を落とした。
おまいらセコンドだろ? 出場前の選手を落ち込ませてどうすんだよ……
とにかくオレは、小さくなったベラトの肩を叩く。
「ま、まぁ気にするな! 決勝トーナメントまで勝ち進んだこと自体が凄いことなんだ! お前の敵はオレが取ってやるから、大船に乗ったつもりで他の選手を蹴散らしてこい!」
「はい……ジェフ相手だと、ぼくでは負けてしまうかもしれませんし……」
「いやいや、そういうことじゃなくって! お前だって、急加速が来ることが分かっていればアイツに負けなかったろ!?」
「ですが……あのときは試合ではなく実戦でしたから、相手の手の内を読めなかったぼくがまだまだということで……」
「そういうのは実戦経験がモノを言うから仕方が無いんだって!」
オレはベラトをなんとか励まそうとするも、ベラトは曖昧な笑みを浮かべるだけだった。
と、そこでフォッテスが立ち上がる。
「もうベラト! いつまでもいじけてるんじゃないの!」
ベラトを落ち込ませた張本人だというのに、自分のことは棚に上げてフォッテスは叱咤する。
「あなたが経験不足だなんて、分かりきってることでしょう!?」
「うぐっ……」
「なのに決勝トーナメントまで勝ち進めたのは、ひとえにアルデさんが特訓してくれたおかげなんだから、それに報いるようがんばりなさい!」
「……うん、そうだね姉さん……経験は、これからたくさん積んでいけばいいし、まずは目先の戦いを勝ち抜かないと」
姉の励ましに、ベラトの顔には覇気が戻ってきた。
まぁなんというか……落としてから持ち上げるという意味不明なこのやりとりも、ある意味で姉弟の絆なのだろう……うん。
ちょうどそのとき、ドア越しに、闘技場から歓声が聞こえてきた。どうやら前の試合が終わったらしい。
なのでオレは立ち上がった。
「そろそろ出番が来そうだな。そしたらちょっくらウォーミングアップしてくるわ」
ティスリは「わたしも付き合います」と言って立ち上がり、ベラトとフォッテスは声を揃えて「がんばってください!」と応援してくれた。
オレはグレナダ姉弟に「任せとけ」と言ってから控え室を後にする──
──そして、その後もオレは順調に勝ち進んでいき、準決勝でジェフと当たることになった。
ベラトも準決勝進出を決める。姉の尻に敷かれている節もあるが、ダークホースとして狙われただけあってベラトは普通に強いのだ。
さらにティスリは、先行して開催されていた女子部門で見事優勝を飾った。不正を疑っていたティスリだから、決勝戦はけっこう時間を掛けて戦っていたが、実力差は歴然だった。だが観客は接戦だと思ったのか大盛り上がりだったが。
そして時間を掛けて戦った結果、女子決勝戦で不正と思えるような技はなかったとのこと。どうやら、女子部門に領主の手は回っていなかったようだ。
となると領主は、ジェフ一点買いということかもな。そのほうが、あっちこっちで八百長するよりバレる確率は下がるだろうし。
であれば今頃、領主は相当にじれていることだろう。ベラトも勝ち進んでいるわ、刺客は戻ってこないわで。だからジェフが不利になったら何かを仕掛けてくるのは間違いなさそうだ。
そんな状況下でオレは、明日、領主の子飼いであるジェフといよいよ対戦する。
「ジェフってヤツと戦うのはオレになったな」
するとベラトは悔しそうに頷いた。
「ええ……出来ればぼくが戦って、雪辱を果たしたかったですが」
「ま、あちらさんもベラトを警戒しているんだろう。予選を考慮した結果、オレへ当てることにしたんじゃないか?」
「その判断、明らかに間違ってますよ」
「でもまぁ地下水路では、オレは大して戦ってないし」
オレが予選を勝ち抜いたのも、相手が弱すぎたと思われたんだろう。確かに対戦相手は弱すぎて、まともな戦いにならなかったからなぁ。
それが功を奏したのかそうでないのか、オレにとってはどちらでもいい事だが、ベラトにとっては藪蛇だったようだ。
「いずれにしてもアルデさん、気をつけてくださいね。今大会では、ジェフは不可解な動きをしていませんが、不利になったら魔法を使ってくるかもしれません」
そう言えばジェフは、本来ではあり得ない加速をするそうだからな。実戦ではよくある手だが試合では反則だ。
オレはティスリに聞いた。
「実行委員会は、ジェフの魔法や魔具を感知できないのか?」
「その可能性もありますが、どちらかというと、委員の誰かを買収しているのでしょう」
「ああ、なるほど。だとしたら、不利になったらまず間違いなく反則技を使ってくるか」
「そうですね。なのでジェフと当たったときは、じわじわと追い詰めてください。そうすれば反則をしてくるでしょうから、それを記録しておけば言い逃れもできないでしょう」
「記録なんて出来るのか?」
「ええ、もちろんです。というか公営賭博ですから、反則のチェックや記録は魔法で公的に行われるのが本来の姿です。ですがおそらく、この大会では記録が行われていないのでしょうから、わたしのほうで記録しておくわけです」
「なるほど。なら追い詰めることは了解だ」
急加速を多少使ったところで、それが魔法なのか筋力なのか、素人目には分からないだろう。もちろん、そういった反則行為がないよう審判がいるわけだが、この分だと審判も買収済みと見て間違いなさそうだ。
だが証拠が残っているのなら話は別だ。買収された人間もろとも一網打尽に出来るかもしれない。
「アルデさん……大丈夫ですか?」
フォッテスが心配そうな眼差しを向けてくるので、オレは力強く頷いた。
「ま、問題ないさ。ヤツの試合を見ていたが、剣さばき自体は大したことないし、だから多少加速されたところでどうってことないよ」
「さすがはアルデさんです。ベラトとは段違いですね」
などとフォッテスが言うものだから、ベラトが「どうせぼくは、二位を目指す程度の剣士だよ……」と拗ねてしまった。
だからオレは苦笑交じりにフォローする。
「ま、まぁ……ベラトと戦った時、ジェフの魔法は、ティスリの縮地ほどに加速していたのかもしれないし」
「あり得ませんね」
オレの台詞に、ティスリが口を挟んでくる。
「この世界に、縮地と同じ加速をする魔法なんて存在しませんし、そんなものを魔具に出来るはずもありません。もっとも、わたし自らが開発すれば別ですが」
「そ、そうか……」
ティスリの台詞を受けて、ベラトは「で、ですよね……」とますます肩を落とした。
おまいらセコンドだろ? 出場前の選手を落ち込ませてどうすんだよ……
とにかくオレは、小さくなったベラトの肩を叩く。
「ま、まぁ気にするな! 決勝トーナメントまで勝ち進んだこと自体が凄いことなんだ! お前の敵はオレが取ってやるから、大船に乗ったつもりで他の選手を蹴散らしてこい!」
「はい……ジェフ相手だと、ぼくでは負けてしまうかもしれませんし……」
「いやいや、そういうことじゃなくって! お前だって、急加速が来ることが分かっていればアイツに負けなかったろ!?」
「ですが……あのときは試合ではなく実戦でしたから、相手の手の内を読めなかったぼくがまだまだということで……」
「そういうのは実戦経験がモノを言うから仕方が無いんだって!」
オレはベラトをなんとか励まそうとするも、ベラトは曖昧な笑みを浮かべるだけだった。
と、そこでフォッテスが立ち上がる。
「もうベラト! いつまでもいじけてるんじゃないの!」
ベラトを落ち込ませた張本人だというのに、自分のことは棚に上げてフォッテスは叱咤する。
「あなたが経験不足だなんて、分かりきってることでしょう!?」
「うぐっ……」
「なのに決勝トーナメントまで勝ち進めたのは、ひとえにアルデさんが特訓してくれたおかげなんだから、それに報いるようがんばりなさい!」
「……うん、そうだね姉さん……経験は、これからたくさん積んでいけばいいし、まずは目先の戦いを勝ち抜かないと」
姉の励ましに、ベラトの顔には覇気が戻ってきた。
まぁなんというか……落としてから持ち上げるという意味不明なこのやりとりも、ある意味で姉弟の絆なのだろう……うん。
ちょうどそのとき、ドア越しに、闘技場から歓声が聞こえてきた。どうやら前の試合が終わったらしい。
なのでオレは立ち上がった。
「そろそろ出番が来そうだな。そしたらちょっくらウォーミングアップしてくるわ」
ティスリは「わたしも付き合います」と言って立ち上がり、ベラトとフォッテスは声を揃えて「がんばってください!」と応援してくれた。
オレはグレナダ姉弟に「任せとけ」と言ってから控え室を後にする──
──そして、その後もオレは順調に勝ち進んでいき、準決勝でジェフと当たることになった。
ベラトも準決勝進出を決める。姉の尻に敷かれている節もあるが、ダークホースとして狙われただけあってベラトは普通に強いのだ。
さらにティスリは、先行して開催されていた女子部門で見事優勝を飾った。不正を疑っていたティスリだから、決勝戦はけっこう時間を掛けて戦っていたが、実力差は歴然だった。だが観客は接戦だと思ったのか大盛り上がりだったが。
そして時間を掛けて戦った結果、女子決勝戦で不正と思えるような技はなかったとのこと。どうやら、女子部門に領主の手は回っていなかったようだ。
となると領主は、ジェフ一点買いということかもな。そのほうが、あっちこっちで八百長するよりバレる確率は下がるだろうし。
であれば今頃、領主は相当にじれていることだろう。ベラトも勝ち進んでいるわ、刺客は戻ってこないわで。だからジェフが不利になったら何かを仕掛けてくるのは間違いなさそうだ。
そんな状況下でオレは、明日、領主の子飼いであるジェフといよいよ対戦する。
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