68 / 245
第2章
第24話 うう……我が弟ながら惚れてしまいそうだよ……
しおりを挟む
アパートに謎の男達が乱入してきて、フォッテスが盾に取られてしまったせいで、ベラトは抵抗らしい抵抗もできずに、わたし共々捕まってしまう。
両手を縄で縛られて、幌の付いた荷馬車に投げ込まれると馬車はすぐさま発進した。
荷馬車の中には、黒づくめの男が六人乗り込んでいる。御者台にも三人乗っているようだから、計九人になるだろうか。
相手の実力にもよるが、これだけの人数を相手に丸腰では、いくらベラトでも切り抜けるのは困難だろう。
そもそも、いったいこの人達はなんなの……!?
強盗なら、わたしたちを連れ出すなんてことしないでしょうし……
わたしは、震える声で隣に座るベラトに聞いた。
「こ、この人達……いったい何者なの……」
「分からない……だけど、それなりに訓練されている」
狭い荷馬車では、小声でしゃべっていても聞こえたようで、男の一人が怒号を放った。
「おい、勝手にしゃべるな! 死にたいのか!」
わたしは肩をすくませて押し黙る。体中の震えが止まらないけれど、出来る限り物音を立てないようにじっとしていた。
荷馬車は幌で覆われているから、今どこに向かっているのかも分からない。ただ、ある瞬間から急に幌内が暗くなったから、日が完全に暮れたというよりも、どこかの屋内に入ったようだった。
でも屋内に入ったというのに荷馬車はその後もしばらく走って行く。いったいどこに入ったのだろう……?
恐怖のせいか、いったいどのくらい走っているのかも分からなくなっていた。目が慣れてきたのでベラトの表情がうっすら見えたが、ベラトは力強く頷いてきた。
乱暴な人達に、両手を縛られて囲まれているというのに、わたしを励まそうとしているのが分かって……
うう……我が弟ながら惚れてしまいそうだよ……
などとバカなことを考えていないと、今にも嗚咽を漏らしそうだったので、わたしは奥歯を噛みしめて涙を堪える。
わたしたち、いったいこれからどうなっちゃうんだろう……
その不安だけが、胸の中で渦巻いていた。
両手を縄で縛られて、幌の付いた荷馬車に投げ込まれると馬車はすぐさま発進した。
荷馬車の中には、黒づくめの男が六人乗り込んでいる。御者台にも三人乗っているようだから、計九人になるだろうか。
相手の実力にもよるが、これだけの人数を相手に丸腰では、いくらベラトでも切り抜けるのは困難だろう。
そもそも、いったいこの人達はなんなの……!?
強盗なら、わたしたちを連れ出すなんてことしないでしょうし……
わたしは、震える声で隣に座るベラトに聞いた。
「こ、この人達……いったい何者なの……」
「分からない……だけど、それなりに訓練されている」
狭い荷馬車では、小声でしゃべっていても聞こえたようで、男の一人が怒号を放った。
「おい、勝手にしゃべるな! 死にたいのか!」
わたしは肩をすくませて押し黙る。体中の震えが止まらないけれど、出来る限り物音を立てないようにじっとしていた。
荷馬車は幌で覆われているから、今どこに向かっているのかも分からない。ただ、ある瞬間から急に幌内が暗くなったから、日が完全に暮れたというよりも、どこかの屋内に入ったようだった。
でも屋内に入ったというのに荷馬車はその後もしばらく走って行く。いったいどこに入ったのだろう……?
恐怖のせいか、いったいどのくらい走っているのかも分からなくなっていた。目が慣れてきたのでベラトの表情がうっすら見えたが、ベラトは力強く頷いてきた。
乱暴な人達に、両手を縛られて囲まれているというのに、わたしを励まそうとしているのが分かって……
うう……我が弟ながら惚れてしまいそうだよ……
などとバカなことを考えていないと、今にも嗚咽を漏らしそうだったので、わたしは奥歯を噛みしめて涙を堪える。
わたしたち、いったいこれからどうなっちゃうんだろう……
その不安だけが、胸の中で渦巻いていた。
0
お気に入りに追加
366
あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる