孤高のぼっち王女が理不尽すぎ! なのに追放平民のオレと……二人っきりの逃避行!?

佐々木直也

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第2章

第1話 お姉様のあの攻勢魔法は、今度はわたしたちに向けられるのですよ?

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「お姉様はまだ見つかりませんの!?」

 リリィわたしは、議場で声を荒げて親衛隊長のラーフルに問うと、彼女は神妙な面持ちで立ち上がりながら、情けないことを言ってきました。

「はい、申し訳ありません……王都近隣の宿場町までは追跡できたのですが、その後、殿下の魔動車に追いつくことが出来ず……見失ってしまいました」

「現在の捜索網はどうなっているのです!」

「数十台の魔動車を購入し、殿下の魔動車が向かわれた方角に向かってローラー作戦を展開しておりますが、まだ発見には至っておりません」

「お姉様は、方向転換されているかもしれないでしょう!?」

「そのときは……現在、領主達に『ティアリース殿下を名乗る人物が自領に現れたなら、丁重にお持てなししつつも、すぐさま王宮に打診すること』と通達しておりますゆえ、例え方向転換したとしても発見できるものと思われます」

「王都から出立されたお姉様が、身分を名乗り出るわけないでしょう!」

「可能性は低いと思われますがゼロとも言い切れません。何かしらの理由で身分を明かさねばならないこともあるかと。そのときは、必ず捕捉できるものと思われます」

「何かしらの理由とはなんですか!」

「そ、それは……定かではありませんが……」

「それにお姉様をかたる輩が現れたらどうするのです!」

「そこは大きな問題はないかと。これまで王族を騙った人間はおりませんし、万が一にも騙りなどすれば、すぐバレる上に即刻処刑ですので」

「分かりました、もういいです……!」

 ラーフルは恭しく頭を垂れると着席しました。

「他に何か案はありませんか!?」

 わたしが、議場に集まった約300人の上級貴族たちに問いかけると、軍務を司る貴族が手を上げてきました。

「近衛と親衛隊だけではなく、国軍と警備隊を動かすのはいかがでしょうか?」

「どちらもお姉様のお顔を知らないでしょう?」

「そこは似顔絵を配布しては?」

「お姉様は、自身のお姿が周知されるのをよしとしませんでした。だというのに、そのお姉様を捜すためにお姿を晒すというのですか? 仮にそれでお姉様が見つかったとして、お姿を晒したことへの怒りはどうやって静めるのです?」

「た、確かに……申し訳ございません」

 彼も、空中庭園での一戦は目撃していますから、それを思い出したのでしょう。顔から血の気を引かせて着席してしまいました。

 そもそも、市中警備と治安維持が目的の警備隊だけならまだしも、対外的な戦闘が任務である国軍まで動かしては目立ち過ぎです。お姉様なら、国軍が市中にいるだけで不審に思うでしょうし、警備隊の制服を着せたとしても、その人数の多さだけで状況を察するでしょう。

 わたしが苦虫を噛みつぶしたかのような気分でいると、別の貴族が挙手をしてきました。

「では、あのアルデ・ラーマを指名手配にするのはいかがでしょうか? あの男なら似顔絵を公開しても問題ないでしょうし、警備隊だけでなく、冒険者や臣民からの情報も得られます。それでも見つからない場合は、あの男の家族を捕らえればいいかと。家族の所在は掴んでおりますので」

 そんな意見に、わたしは再びため息をついてから答えます。

「あのですね……信じたくはないことですが万が一にでも、お姉様があの間男を気に入っていたらどうするつもりです」

「と、言いますと……?」

「間男が指名手配されているとお姉様が知るや否や、この王都に攻め込んでくるやもしれません」

「そ、そんな……まさか……」

「しかし『お姉様が力尽ちからづくで間男に誘拐された』ことのほうが信じられないのですよ? 自分の意志で間男と行動を共にしていると考えたほうが自然です。だとしたらあの男はお姉様の従者です。にもかかわらず、お姉様の従者を指名手配するのですか?」

「……そ、それは……」

「いわんや家族を人質に取るなど言語道断です。それでお姉様の不興を買ったなら、お姉様のあの攻勢魔法は、今度はわたしたちに向けられるのですよ? それを覚悟の上で、あの間男を指名手配にするというのですね?」

「も、申し訳ございませんでした……」

 やはりこの貴族も、顔面蒼白になって着席してしまいました。

 結局のところ……一騎当千かつ才色兼備であらせられるお姉様を出し抜く策など元よりないわけで……

 非常に消極的ではありますが、現在ラーフルが遂行している作戦以外、わたしたちに打ち手はないようでした。

「もういいです……分かりました」

 わたしはため息をついてからラーフルに視線を送りました。

「ラーフルは、引き続きローラー作戦でお姉様の捜索に当たってください」

「承知致しました」

「わたしは、お姉様が抜けた分の公務をこなさねばなりません。各部署でも今やてんてこ舞いなのですから、皆さん、それぞれの仕事はこれまで以上に迅速かつ正確にこなしてください。いいですね?」

 わたしが議場の貴族達を睨み付けると、彼らはげんなりした表情を隠すこともなく、しかしやらざるを得ないわけですから頷くしかないのでした。

 お姉様は、いったいどれほどの仕事量をこなしていたのか……この議場にいる300余名の仕事量を一人で安々とこなしていたわけですから、その凄まじさを改めて痛感するしかないですね、本当に……
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