孤高のぼっち王女が理不尽すぎ! なのに追放平民のオレと……二人っきりの逃避行!?

佐々木直也

文字の大きさ
上 下
36 / 245
第1章

第36話 神器召喚!

しおりを挟む
 リリィが決闘を遮ったおかげで息を整えることは出来ましたが……ティスリわたしは、王家の宝刀フラガラッハを正眼に構えるも、正直攻めあぐねていました。

 まさかアルデが……ここまでの手練れだとは夢にも思っていませんでした。

 アルデのこの強さは……村一番どころの騒ぎではありません。武芸大会に出れば間違いなく圧勝するほどの強さです。わたしは、世界大会に招かれて何度も見学したから分かります。

 アルデはそのあまりの強さに、これまでまともに戦える相手がおらず、それゆえに自分自身の実力が分かっていないのでしょう。平民では公式戦に出ることもできませんし……

 つまり剣術において、アルデは間違いなく世界最強です。

 このわたしを凌駕するほどに。

 最初こそスピードで圧倒していたわたしでしたが、アルデはすぐにその速度に追いついてきたのです。

 そして今では、わたしの斬撃まで読まれているようでした。

 戦いの最中であっても成長を遂げ、しかもわずか数撃で即応するなど……デタラメにも程があるでしょう……!?

 そんなアルデと相対していると……まるで、巨大な山脈を相手に斬りかかるかのような……そんな畏怖さえ覚えてしまいます……!

 生まれて初めての感情に、わたしが歯がみしているとアルデが言ってきました。

「ふふん? 豪語していたわりには大したことないな、ティスリ」

「……!」

「お前の剣は確かに速いが、しかしそれだけだ。力が乗ってないんだよ。前に言ったろ、そんな細腕じゃ無理だって」

「筋力など関係ありません。わたしの刃があなたに触れれば──」

「同じ速度で打ち合えば、力の強い方が勝つ。単純な話だろ」

「このわたしと同等の速度だなんて、思い上がりも甚だしい」

「そうか? ならよーーーく見ておけよ。不意打ちと思われてはかなわないからな」

 アルデがゆっくりと腰を落とし、わたしもフラガラッハを注意深く構えます。

 その瞬間──

「──!!」

 アルデが目前に現れたかと思うと──

「──っ!」

 フラガラッハが激しく打ち据えられて──

「──な!?」

 わたしは手を痺らせ、フラガラッハを落としてしまいました。

「くっ!」

 わたしは慌ててその場から飛び退きますが……しかし。

 今の間合い、完全に二撃目を入れられるタイミングだったというのに、アルデは打ってきません……!

 わたしが剣を落とすというあり得ないその光景に、周囲から悲鳴に近い喧騒が巻き起こりますが、しかしアルデは気にすることなく言ってきます。

「ほら、言ったろ。同じ速度なら力が強い方が勝つって」

「…………!」

 今のは……間違いなく……わたしの縮地を上回る速度でした!

 魔法も使わず!

 この男の身体能力は、いったいどうなっているんですか!?

 わたしが拳を握りしめていると、アルデは剣を収めながら言ってきました。

「さて、これで勝負は付いただろ。まったく……オレの言い分も聞かずに、すっかり欺されやがって」

「オレの言い分? 欺された……?」

「そーだよ。だいたいなんだってお前はそんなに怒ってるんだ? きっと、そこの貴族連中にあらぬ事を吹き込まれたんだろうが」

「あらぬ事……へぇ?」

 驚きで怒りが吹き飛んでいましたが、わたしの心の中で、怒りの炎が再燃してくるのが分かりました。

 だからわたしは、その炎を押し込めるかのように声を出します。

「アルデ……あなたは自供したそうですね?」

 わたしのその問いかけに、アルデは眉をひそめます。

「自供? いったいオレが何を言ったっていうんだ」

「このわたしを毒牙に掛けた──と」

「……は?」

 ぽかんとするアルデに、わたしはさらに言ってやります。

「旅館で一晩過ごしたあのとき、わたしがお酒に酔って気を失っているのをいいことに……子作りをしたと自供したのですよね?」

「あ……!?」

 そこまで説明して始めて、アルデは顔色を変えます。

 この反応……やはり自供は真実だったようですね……!

「ま、待てティスリ! それには事情が──」

「事情? それはどんな事情だというのです? この国の王女を手籠めにしていいほどの事情が、いったいどこにあると?」

「ち、違うんだ! オレはやってないんだ!」

「はぁ? 自供したのでしょう?」

「自供したけどやってないんだ! その自供は嘘だったんだよ!」

「うそ? そんな嘘をつくメリットが見当たりませんが?」

「い、いやそれは……オレの思い違いだったんだ! ティスリとアレな関係になったと言った方が命は助かるかな~? なんてそのときは考えてたんだ!」

「ふふ……清々しいほどに見苦しい言い分けですね。王女と平民のそのような関係を、いったい誰が認めると?」

「ま、まぁそう言われれば確かにそうだけどな? そのときのオレはそう思ってしまったんだから仕方がないだろ!?」

「仕方がない?」

「そうだよ! だいたいオレに、貴族の考えなんて分かるはずないだろ! そもそもティスリが王女だったことすら知らなかったんだぞ!?」

「知らなかった?」

「そうだよ! お前が最初から王女だって説明してくれれば、こんなオオゴトにはなっていなかったんだ!」

「つまり、わたしのせいだと?」

「そ、そうは言ってないが……とにかく! オレはティスリが王女だって知らなかったし、貴族の考えも分からん! だからこれは不幸な事故だったんだ!」

「事故?」

「そ、そう! 事故だ事故! ちょっとした思い違いと勘違いとすれ違いが招いた事故だったんだよ!」

「ふぅん……ちょっとした、ですか」

「そう! ちょっとしたすれ違いだ! だからよく話し合って──」

「そんな、たかがすれ違いで……あなたはわたしの純潔を奪ったというのですね?」

「だから奪ってねぇよ!?」

「そんなわけありますか!」

 わたしは、ついに堪えきれなくなって怒号を放ちました!

「超絶天才美少女であるこのわたしが! あなたしかいない旅館の一室で無防備な姿を晒していたのですよ!? お猿に等しいあなたが手を出さないはずないでしょう!?」

「どんだけうぬぼれてるんだお前は!? お前の裸なんて興味ないっつーの!」

「き、興味ない!?」

「当たり前だ! 一晩一緒にいただけで、手も出してないのに牢屋に閉じ込められるわ、私刑にされかけるわ、衛士に追い回されるわ、あげくの果てに決闘までさせられるわ!」

「ぜんぶあなたが悪いんでしょ!?」

「だからオレは悪くないっつーの! お前みたいな面倒な女を誰が抱くか! 可愛い女なんて他にたくさんいるっつってんだよ!!」

 ぷっっっつん。

「ふふ……ふふふふふ……」

「お、おい……ティスリ?」

「ふふふ……ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……」

「お、お~~~い、ティスリ……さん……?」

「だから……ですか……」

「えーと……だから、とは?」

「だから……わたしの親衛隊にまで手を出したのですね!?」

「なんの話だ!?」

「当てつけのつもりですか!?」

「そんなつもりは微塵もないが!?」

「もーーーーー許さない! 絶対に!!」

 ゴッ──!!

 わたしの中から溢れ出た激情が魔力となって、周囲に嵐を呼び起こします!

「おいティスリ!? 魔法は使わないんだろ!」

「ふふふ……アルデ、誇っていいですよ?」

「な、何を!?」

「このわたしに──前言撤回させたことをです!!」

「んなこと誇りたくもねぇが!?」

 そしてわたしは叫びました!

「神器召喚! 出でよ、天の火剣レーヴァテイン!!」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...