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第1章
第36話 神器召喚!
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リリィが決闘を遮ったおかげで息を整えることは出来ましたが……ティスリは、王家の宝刀フラガラッハを正眼に構えるも、正直攻めあぐねていました。
まさかアルデが……ここまでの手練れだとは夢にも思っていませんでした。
アルデのこの強さは……村一番どころの騒ぎではありません。武芸大会に出れば間違いなく圧勝するほどの強さです。わたしは、世界大会に招かれて何度も見学したから分かります。
アルデはそのあまりの強さに、これまでまともに戦える相手がおらず、それゆえに自分自身の実力が分かっていないのでしょう。平民では公式戦に出ることもできませんし……
つまり剣術において、アルデは間違いなく世界最強です。
このわたしを凌駕するほどに。
最初こそスピードで圧倒していたわたしでしたが、アルデはすぐにその速度に追いついてきたのです。
そして今では、わたしの斬撃まで読まれているようでした。
戦いの最中であっても成長を遂げ、しかもわずか数撃で即応するなど……デタラメにも程があるでしょう……!?
そんなアルデと相対していると……まるで、巨大な山脈を相手に斬りかかるかのような……そんな畏怖さえ覚えてしまいます……!
生まれて初めての感情に、わたしが歯がみしているとアルデが言ってきました。
「ふふん? 豪語していたわりには大したことないな、ティスリ」
「……!」
「お前の剣は確かに速いが、しかしそれだけだ。力が乗ってないんだよ。前に言ったろ、そんな細腕じゃ無理だって」
「筋力など関係ありません。わたしの刃があなたに触れれば──」
「同じ速度で打ち合えば、力の強い方が勝つ。単純な話だろ」
「このわたしと同等の速度だなんて、思い上がりも甚だしい」
「そうか? ならよーーーく見ておけよ。不意打ちと思われてはかなわないからな」
アルデがゆっくりと腰を落とし、わたしもフラガラッハを注意深く構えます。
その瞬間──
「──!!」
アルデが目前に現れたかと思うと──
「──っ!」
フラガラッハが激しく打ち据えられて──
「──な!?」
わたしは手を痺らせ、フラガラッハを落としてしまいました。
「くっ!」
わたしは慌ててその場から飛び退きますが……しかし。
今の間合い、完全に二撃目を入れられるタイミングだったというのに、アルデは打ってきません……!
わたしが剣を落とすというあり得ないその光景に、周囲から悲鳴に近い喧騒が巻き起こりますが、しかしアルデは気にすることなく言ってきます。
「ほら、言ったろ。同じ速度なら力が強い方が勝つって」
「…………!」
今のは……間違いなく……わたしの縮地を上回る速度でした!
魔法も使わず!
この男の身体能力は、いったいどうなっているんですか!?
わたしが拳を握りしめていると、アルデは剣を収めながら言ってきました。
「さて、これで勝負は付いただろ。まったく……オレの言い分も聞かずに、すっかり欺されやがって」
「オレの言い分? 欺された……?」
「そーだよ。だいたいなんだってお前はそんなに怒ってるんだ? きっと、そこの貴族連中にあらぬ事を吹き込まれたんだろうが」
「あらぬ事……へぇ?」
驚きで怒りが吹き飛んでいましたが、わたしの心の中で、怒りの炎が再燃してくるのが分かりました。
だからわたしは、その炎を押し込めるかのように声を出します。
「アルデ……あなたは自供したそうですね?」
わたしのその問いかけに、アルデは眉をひそめます。
「自供? いったいオレが何を言ったっていうんだ」
「このわたしを毒牙に掛けた──と」
「……は?」
ぽかんとするアルデに、わたしはさらに言ってやります。
「旅館で一晩過ごしたあのとき、わたしがお酒に酔って気を失っているのをいいことに……子作りをしたと自供したのですよね?」
「あ……!?」
そこまで説明して始めて、アルデは顔色を変えます。
この反応……やはり自供は真実だったようですね……!
「ま、待てティスリ! それには事情が──」
「事情? それはどんな事情だというのです? この国の王女を手籠めにしていいほどの事情が、いったいどこにあると?」
「ち、違うんだ! オレはやってないんだ!」
「はぁ? 自供したのでしょう?」
「自供したけどやってないんだ! その自供は嘘だったんだよ!」
「うそ? そんな嘘をつくメリットが見当たりませんが?」
「い、いやそれは……オレの思い違いだったんだ! ティスリとアレな関係になったと言った方が命は助かるかな~? なんてそのときは考えてたんだ!」
「ふふ……清々しいほどに見苦しい言い分けですね。王女と平民のそのような関係を、いったい誰が認めると?」
「ま、まぁそう言われれば確かにそうだけどな? そのときのオレはそう思ってしまったんだから仕方がないだろ!?」
「仕方がない?」
「そうだよ! だいたいオレに、貴族の考えなんて分かるはずないだろ! そもそもティスリが王女だったことすら知らなかったんだぞ!?」
「知らなかった?」
「そうだよ! お前が最初から王女だって説明してくれれば、こんなオオゴトにはなっていなかったんだ!」
「つまり、わたしのせいだと?」
「そ、そうは言ってないが……とにかく! オレはティスリが王女だって知らなかったし、貴族の考えも分からん! だからこれは不幸な事故だったんだ!」
「事故?」
「そ、そう! 事故だ事故! ちょっとした思い違いと勘違いとすれ違いが招いた事故だったんだよ!」
「ふぅん……ちょっとした、ですか」
「そう! ちょっとしたすれ違いだ! だからよく話し合って──」
「そんな、たかがすれ違いで……あなたはわたしの純潔を奪ったというのですね?」
「だから奪ってねぇよ!?」
「そんなわけありますか!」
わたしは、ついに堪えきれなくなって怒号を放ちました!
「超絶天才美少女であるこのわたしが! あなたしかいない旅館の一室で無防備な姿を晒していたのですよ!? お猿に等しいあなたが手を出さないはずないでしょう!?」
「どんだけうぬぼれてるんだお前は!? お前の裸なんて興味ないっつーの!」
「き、興味ない!?」
「当たり前だ! 一晩一緒にいただけで、手も出してないのに牢屋に閉じ込められるわ、私刑にされかけるわ、衛士に追い回されるわ、あげくの果てに決闘までさせられるわ!」
「ぜんぶあなたが悪いんでしょ!?」
「だからオレは悪くないっつーの! お前みたいな面倒な女を誰が抱くか! 可愛い女なんて他にたくさんいるっつってんだよ!!」
ぷっっっつん。
「ふふ……ふふふふふ……」
「お、おい……ティスリ?」
「ふふふ……ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……」
「お、お~~~い、ティスリ……さん……?」
「だから……ですか……」
「えーと……だから、とは?」
「だから……わたしの親衛隊にまで手を出したのですね!?」
「なんの話だ!?」
「当てつけのつもりですか!?」
「そんなつもりは微塵もないが!?」
「もーーーーー許さない! 絶対に!!」
ゴッ──!!
わたしの中から溢れ出た激情が魔力となって、周囲に嵐を呼び起こします!
「おいティスリ!? 魔法は使わないんだろ!」
「ふふふ……アルデ、誇っていいですよ?」
「な、何を!?」
「このわたしに──前言撤回させたことをです!!」
「んなこと誇りたくもねぇが!?」
そしてわたしは叫びました!
「神器召喚! 出でよ、天の火剣!!」
まさかアルデが……ここまでの手練れだとは夢にも思っていませんでした。
アルデのこの強さは……村一番どころの騒ぎではありません。武芸大会に出れば間違いなく圧勝するほどの強さです。わたしは、世界大会に招かれて何度も見学したから分かります。
アルデはそのあまりの強さに、これまでまともに戦える相手がおらず、それゆえに自分自身の実力が分かっていないのでしょう。平民では公式戦に出ることもできませんし……
つまり剣術において、アルデは間違いなく世界最強です。
このわたしを凌駕するほどに。
最初こそスピードで圧倒していたわたしでしたが、アルデはすぐにその速度に追いついてきたのです。
そして今では、わたしの斬撃まで読まれているようでした。
戦いの最中であっても成長を遂げ、しかもわずか数撃で即応するなど……デタラメにも程があるでしょう……!?
そんなアルデと相対していると……まるで、巨大な山脈を相手に斬りかかるかのような……そんな畏怖さえ覚えてしまいます……!
生まれて初めての感情に、わたしが歯がみしているとアルデが言ってきました。
「ふふん? 豪語していたわりには大したことないな、ティスリ」
「……!」
「お前の剣は確かに速いが、しかしそれだけだ。力が乗ってないんだよ。前に言ったろ、そんな細腕じゃ無理だって」
「筋力など関係ありません。わたしの刃があなたに触れれば──」
「同じ速度で打ち合えば、力の強い方が勝つ。単純な話だろ」
「このわたしと同等の速度だなんて、思い上がりも甚だしい」
「そうか? ならよーーーく見ておけよ。不意打ちと思われてはかなわないからな」
アルデがゆっくりと腰を落とし、わたしもフラガラッハを注意深く構えます。
その瞬間──
「──!!」
アルデが目前に現れたかと思うと──
「──っ!」
フラガラッハが激しく打ち据えられて──
「──な!?」
わたしは手を痺らせ、フラガラッハを落としてしまいました。
「くっ!」
わたしは慌ててその場から飛び退きますが……しかし。
今の間合い、完全に二撃目を入れられるタイミングだったというのに、アルデは打ってきません……!
わたしが剣を落とすというあり得ないその光景に、周囲から悲鳴に近い喧騒が巻き起こりますが、しかしアルデは気にすることなく言ってきます。
「ほら、言ったろ。同じ速度なら力が強い方が勝つって」
「…………!」
今のは……間違いなく……わたしの縮地を上回る速度でした!
魔法も使わず!
この男の身体能力は、いったいどうなっているんですか!?
わたしが拳を握りしめていると、アルデは剣を収めながら言ってきました。
「さて、これで勝負は付いただろ。まったく……オレの言い分も聞かずに、すっかり欺されやがって」
「オレの言い分? 欺された……?」
「そーだよ。だいたいなんだってお前はそんなに怒ってるんだ? きっと、そこの貴族連中にあらぬ事を吹き込まれたんだろうが」
「あらぬ事……へぇ?」
驚きで怒りが吹き飛んでいましたが、わたしの心の中で、怒りの炎が再燃してくるのが分かりました。
だからわたしは、その炎を押し込めるかのように声を出します。
「アルデ……あなたは自供したそうですね?」
わたしのその問いかけに、アルデは眉をひそめます。
「自供? いったいオレが何を言ったっていうんだ」
「このわたしを毒牙に掛けた──と」
「……は?」
ぽかんとするアルデに、わたしはさらに言ってやります。
「旅館で一晩過ごしたあのとき、わたしがお酒に酔って気を失っているのをいいことに……子作りをしたと自供したのですよね?」
「あ……!?」
そこまで説明して始めて、アルデは顔色を変えます。
この反応……やはり自供は真実だったようですね……!
「ま、待てティスリ! それには事情が──」
「事情? それはどんな事情だというのです? この国の王女を手籠めにしていいほどの事情が、いったいどこにあると?」
「ち、違うんだ! オレはやってないんだ!」
「はぁ? 自供したのでしょう?」
「自供したけどやってないんだ! その自供は嘘だったんだよ!」
「うそ? そんな嘘をつくメリットが見当たりませんが?」
「い、いやそれは……オレの思い違いだったんだ! ティスリとアレな関係になったと言った方が命は助かるかな~? なんてそのときは考えてたんだ!」
「ふふ……清々しいほどに見苦しい言い分けですね。王女と平民のそのような関係を、いったい誰が認めると?」
「ま、まぁそう言われれば確かにそうだけどな? そのときのオレはそう思ってしまったんだから仕方がないだろ!?」
「仕方がない?」
「そうだよ! だいたいオレに、貴族の考えなんて分かるはずないだろ! そもそもティスリが王女だったことすら知らなかったんだぞ!?」
「知らなかった?」
「そうだよ! お前が最初から王女だって説明してくれれば、こんなオオゴトにはなっていなかったんだ!」
「つまり、わたしのせいだと?」
「そ、そうは言ってないが……とにかく! オレはティスリが王女だって知らなかったし、貴族の考えも分からん! だからこれは不幸な事故だったんだ!」
「事故?」
「そ、そう! 事故だ事故! ちょっとした思い違いと勘違いとすれ違いが招いた事故だったんだよ!」
「ふぅん……ちょっとした、ですか」
「そう! ちょっとしたすれ違いだ! だからよく話し合って──」
「そんな、たかがすれ違いで……あなたはわたしの純潔を奪ったというのですね?」
「だから奪ってねぇよ!?」
「そんなわけありますか!」
わたしは、ついに堪えきれなくなって怒号を放ちました!
「超絶天才美少女であるこのわたしが! あなたしかいない旅館の一室で無防備な姿を晒していたのですよ!? お猿に等しいあなたが手を出さないはずないでしょう!?」
「どんだけうぬぼれてるんだお前は!? お前の裸なんて興味ないっつーの!」
「き、興味ない!?」
「当たり前だ! 一晩一緒にいただけで、手も出してないのに牢屋に閉じ込められるわ、私刑にされかけるわ、衛士に追い回されるわ、あげくの果てに決闘までさせられるわ!」
「ぜんぶあなたが悪いんでしょ!?」
「だからオレは悪くないっつーの! お前みたいな面倒な女を誰が抱くか! 可愛い女なんて他にたくさんいるっつってんだよ!!」
ぷっっっつん。
「ふふ……ふふふふふ……」
「お、おい……ティスリ?」
「ふふふ……ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……」
「お、お~~~い、ティスリ……さん……?」
「だから……ですか……」
「えーと……だから、とは?」
「だから……わたしの親衛隊にまで手を出したのですね!?」
「なんの話だ!?」
「当てつけのつもりですか!?」
「そんなつもりは微塵もないが!?」
「もーーーーー許さない! 絶対に!!」
ゴッ──!!
わたしの中から溢れ出た激情が魔力となって、周囲に嵐を呼び起こします!
「おいティスリ!? 魔法は使わないんだろ!」
「ふふふ……アルデ、誇っていいですよ?」
「な、何を!?」
「このわたしに──前言撤回させたことをです!!」
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