24 / 245
第1章
第24話 そもそも子供が出来ている前提がおかしい……!
しおりを挟む
(な、何が一体どうなっている……!?)
混乱極まったアルデはいっとき思考停止に陥ったが、リリィの長話を聞いている間にかろうじて持ち直す。
そしてリリィが去ってから状況を整理してみることにした。
整理その1.ティスリは政商の娘ではなく実は王女だった。
整理その2.オレは、その王女に手を出したという嫌疑が掛けられている。
整理その3.もしオレがティスリに手を出していたと判断された場合……いったいどうなるのか?
振り返ってみれば、この二日間、確かにおかしいことだらけだった。いくら政商の娘とはいえ、入る店入る店すべてが最上級の接客だったからな。
旅館にいたっては最上階を貸し切りだし。たぶんも何も、あの旅館は王都イチの旅館なんだろうから、王侯貴族でもないのに、その最上階を使わせるのはおかしな話だったのだ。
政商とはいえ、その身分は平民の上位互換くらいなのだから。
とはいえ……オレはこれからどうすればいいのか?
いや、どう振る舞えば命が助かるのか?
これからのオレは、その一挙手一投足が死に直結する。大貴族相手に立ち振る舞いを間違えれば、平民のオレなど即刻首が飛ぶのだ。物理的な意味で。
衛士追放なんて生ぬるい処罰だと思えるくらいだった。こうなってはこの世を追放されるか否かなのだから……!
「やはり……鍵になるのはティスリだよな……」
あの護衛っぽい女性は言っていた。
「万が一にも子供を授かっていたとしたら、王女殿下の意向も賜らねばなりません」──と。
この台詞はどういうことなのか?
字面をそのまま解釈するに、もしオレが子作りをしていて、いわんやオレの子供がティスリに宿っていたとしたら……ティスリの意見を聞かねばならないということだ。
では逆に、身の潔白を証明したとしたら……どうなる?
ティスリの意見を聞く必要もなく、オレは処分されるということか?
いやいやしかし……ティスリは貴族どころか王族で、しかもこの国の懐刀とまで言われた才女だったんだぞ?
そんな才女が、平民なんかの子供を産んだとしたら……
産んだとしたら……
オレが王様になるとか?
いやいや……そんなことはあり得ない。何しろ血筋が違うのだから。
オレとその子供もろとも暗殺される可能性だってありうる。
そんな状況に陥ったとしても、ティスリはオレとその子供を守ってくれるだろうか?
………………うーむ。
さんざん、爆殺だのコロすだの言われてきたし、案外あっさり見切りを付けられるかもなぁ……っていうか王侯貴族なら絶対そうするだろ?
でもなぜか、ティスリはそんなことするはずない、なんて思えたりもして……
「いやいや待て待て!? そもそも子供が出来ている前提がおかしい!」
オレは、子供が出来るような行為にはまったく及んでいないのだ。
昨日だって、見た目だけは麗しいティスリの誘惑を見事振り切って見せたんだぞ!?
打ち首どころか勲章を貰いたいところだ!
だがそれならそれで、ティスリに内緒であっさり打ち首になるかもしれず……
「いったいどうすれば……」
思考が暗礁に乗り上げたところで、通路の向こうからガチャン……という音が聞こえてくる。鉄扉が再び開いたらしい。
そうしてやってきた面子は、リリィ達ではなく──
「せ、先輩……?」
オレを追放した、衛士の先輩達だった。
そして、相変わらずのニヤけ顔をしていた。
混乱極まったアルデはいっとき思考停止に陥ったが、リリィの長話を聞いている間にかろうじて持ち直す。
そしてリリィが去ってから状況を整理してみることにした。
整理その1.ティスリは政商の娘ではなく実は王女だった。
整理その2.オレは、その王女に手を出したという嫌疑が掛けられている。
整理その3.もしオレがティスリに手を出していたと判断された場合……いったいどうなるのか?
振り返ってみれば、この二日間、確かにおかしいことだらけだった。いくら政商の娘とはいえ、入る店入る店すべてが最上級の接客だったからな。
旅館にいたっては最上階を貸し切りだし。たぶんも何も、あの旅館は王都イチの旅館なんだろうから、王侯貴族でもないのに、その最上階を使わせるのはおかしな話だったのだ。
政商とはいえ、その身分は平民の上位互換くらいなのだから。
とはいえ……オレはこれからどうすればいいのか?
いや、どう振る舞えば命が助かるのか?
これからのオレは、その一挙手一投足が死に直結する。大貴族相手に立ち振る舞いを間違えれば、平民のオレなど即刻首が飛ぶのだ。物理的な意味で。
衛士追放なんて生ぬるい処罰だと思えるくらいだった。こうなってはこの世を追放されるか否かなのだから……!
「やはり……鍵になるのはティスリだよな……」
あの護衛っぽい女性は言っていた。
「万が一にも子供を授かっていたとしたら、王女殿下の意向も賜らねばなりません」──と。
この台詞はどういうことなのか?
字面をそのまま解釈するに、もしオレが子作りをしていて、いわんやオレの子供がティスリに宿っていたとしたら……ティスリの意見を聞かねばならないということだ。
では逆に、身の潔白を証明したとしたら……どうなる?
ティスリの意見を聞く必要もなく、オレは処分されるということか?
いやいやしかし……ティスリは貴族どころか王族で、しかもこの国の懐刀とまで言われた才女だったんだぞ?
そんな才女が、平民なんかの子供を産んだとしたら……
産んだとしたら……
オレが王様になるとか?
いやいや……そんなことはあり得ない。何しろ血筋が違うのだから。
オレとその子供もろとも暗殺される可能性だってありうる。
そんな状況に陥ったとしても、ティスリはオレとその子供を守ってくれるだろうか?
………………うーむ。
さんざん、爆殺だのコロすだの言われてきたし、案外あっさり見切りを付けられるかもなぁ……っていうか王侯貴族なら絶対そうするだろ?
でもなぜか、ティスリはそんなことするはずない、なんて思えたりもして……
「いやいや待て待て!? そもそも子供が出来ている前提がおかしい!」
オレは、子供が出来るような行為にはまったく及んでいないのだ。
昨日だって、見た目だけは麗しいティスリの誘惑を見事振り切って見せたんだぞ!?
打ち首どころか勲章を貰いたいところだ!
だがそれならそれで、ティスリに内緒であっさり打ち首になるかもしれず……
「いったいどうすれば……」
思考が暗礁に乗り上げたところで、通路の向こうからガチャン……という音が聞こえてくる。鉄扉が再び開いたらしい。
そうしてやってきた面子は、リリィ達ではなく──
「せ、先輩……?」
オレを追放した、衛士の先輩達だった。
そして、相変わらずのニヤけ顔をしていた。
1
お気に入りに追加
365
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

剣しか取り柄がないという事で追放された元冒険者、辺境の村で魔物を討伐すると弟子志願者が続々訪れ剣技道場を開く
burazu
ファンタジー
剣の得意冒険者リッキーはある日剣技だけが取り柄しかないという理由でパーティーから追放される。その後誰も自分を知らない村へと移住し、気ままな生活をするつもりが村を襲う魔物を倒した事で弓の得意エルフ、槍の得意元傭兵、魔法の得意踊り子、投擲の得意演奏者と様々な者たちが押しかけ弟子入りを志願する。
そんな彼らに剣技の修行をつけながらも冒険者時代にはない充実感を得ていくリッキーだったのだ。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる