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第1章

第24話 そもそも子供が出来ている前提がおかしい……!

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(な、何が一体どうなっている……!?)

 混乱極まったアルデオレはいっとき思考停止に陥ったが、リリィの長話を聞いている間にかろうじて持ち直す。

 そしてリリィが去ってから状況を整理してみることにした。

 整理その1.ティスリは政商の娘ではなく実は王女だった。

 整理その2.オレは、その王女に手を出したという嫌疑が掛けられている。

 整理その3.もしオレがティスリに手を出していたと判断された場合……いったいどうなるのか?

 振り返ってみれば、この二日間、確かにおかしいことだらけだった。いくら政商の娘とはいえ、入る店入る店すべてが最上級の接客だったからな。

 旅館にいたっては最上階を貸し切りだし。たぶんも何も、あの旅館は王都イチの旅館なんだろうから、王侯貴族でもないのに、その最上階を使わせるのはおかしな話だったのだ。

 政商とはいえ、その身分は平民の上位互換くらいなのだから。

 とはいえ……オレはこれからどうすればいいのか?

 いや、どう振る舞えば命が助かるのか?

 これからのオレは、その一挙手一投足が死に直結する。大貴族相手に立ち振る舞いを間違えれば、平民のオレなど即刻首が飛ぶのだ。物理的な意味で。

 衛士追放なんて生ぬるい処罰だと思えるくらいだった。こうなってはこの世を追放されるか否かなのだから……!

「やはり……鍵になるのはティスリだよな……」

 あの護衛っぽい女性は言っていた。

 「万が一にも子供を授かっていたとしたら、王女殿下の意向も賜らねばなりません」──と。

 この台詞はどういうことなのか?

 字面をそのまま解釈するに、もしオレが子作りをしていて、いわんやオレの子供がティスリに宿っていたとしたら……ティスリの意見を聞かねばならないということだ。

 では逆に、身の潔白を証明したとしたら……どうなる?

 ティスリの意見を聞く必要もなく、オレは処分されるということか?

 いやいやしかし……ティスリは貴族どころか王族で、しかもこの国の懐刀とまで言われた才女だったんだぞ?

 そんな才女が、平民なんかの子供を産んだとしたら……

 産んだとしたら……

 オレが王様になるとか?

 いやいや……そんなことはあり得ない。何しろ血筋が違うのだから。

 オレとその子供もろとも暗殺される可能性だってありうる。

 そんな状況に陥ったとしても、ティスリはオレとその子供を守ってくれるだろうか?

 ………………うーむ。

 さんざん、爆殺だのコロすだの言われてきたし、案外あっさり見切りを付けられるかもなぁ……っていうか王侯貴族なら絶対そうするだろ?

 でもなぜか、ティスリはそんなことするはずない、なんて思えたりもして……

「いやいや待て待て!? そもそも子供が出来ている前提がおかしい!」

 オレは、子供が出来るような行為にはまったく及んでいないのだ。

 昨日だって、見た目だけ、、は麗しいティスリの誘惑を見事振り切って見せたんだぞ!?

 打ち首どころか勲章を貰いたいところだ!

 だがそれならそれで、ティスリに内緒であっさり打ち首になるかもしれず……

「いったいどうすれば……」

 思考が暗礁に乗り上げたところで、通路の向こうからガチャン……という音が聞こえてくる。鉄扉が再び開いたらしい。

 そうしてやってきた面子は、リリィ達ではなく──

「せ、先輩……?」

 オレを追放した、衛士の先輩達だった。

 そして、相変わらずのニヤけ顔をしていた。
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