5 / 245
第1章
第5話 わたしだって頑張ってたんですからね!?
しおりを挟む
ティスリの台詞に、アルデは目を見開くと、確認のためもう一度聞いた。
「えっと……追放ってどういうことだ?」
「どういうことも何も、追放は追放ですよ。クビということです」
「クビって……オレと違ってお前は家族だったんだろ?」
「そうですね。では追放というよりは勘当といった方が正しいでしょうか」
「いやいや……待て待て」
オレはジョッキをテーブルに下ろすと、状況を改めて整理する。
「お前は政商の娘なんだよな?」
「正確には政商の娘でした」
「なのに実家を追い出されたと?」
「そうなりますね」
「いや待て!? お前こそ、これからどうするつもりだ!」
オレは思わず身を乗り出すが、しかしティスリは至って落ち着いていた。
「何をそんなに慌てているのですか?」
「何をって……お前、実家を追い出されたとしたら住む場所すらないんだろ?」
「住む場所なんて、旅館暮らしでもすればいいではないですか」
「旅館って……そんな高級宿に連泊してたら一体いくら掛かると……」
「お金はたくさんありますから問題ありません。なんなら自宅を購入したっていいですし」
「そ、そうなのか? 実家を追放されても、自由になるお金はあるんだな?」
「当たり前です。そもそも、わたしが働いた結果の対価なのですから。どれほど国──いえ実家に貢献してきたと思っているのですか」
「そ、そうか……ならまぁ……問題ないか……」
どうやらティスリは、ただのお嬢様というわけではなく、ちゃんと家業を手伝っていたらしい。それで給金を得ていたのだろう。
王城に出入りするくらいの大商会なのだから給金だって破格なんだろうな。だからこんなに落ち着いていられるのか。
オレは羨ましくなって、思わずため息をついていた。
「はぁ……いいなお前は。オレは来月から早くも文無しだよ」
オレがナッツをかじりながら愚痴ると、ティスリが首を傾げた。
「王城務めなら貯金くらい作れたでしょう? あなた、そんなに金遣いが荒かったのですか?」
「違う。実家に仕送りしてたんだよ」
「仕送り? 両親は働いていないのですか?」
「うちの両親は、どちらも体が弱くてな。せいぜいが内職をするくらいなんだ。さらには食べ盛りの妹と、愛くるしいわんこがいる」
「そうでしたか……」
「はぁ……まぢで来月から、というより明日からどうすっかな……」
ようやく、まともな稼ぎの仕事に就くことができて、家族みんなで喜んでいたというのに、まさか身分を理由に追放させられるとは思いも寄らなかった。
もちろんオレだってバカじゃない。衛士入隊の初期から、オレを見る周囲の目が剣呑としていたことは分かっていた。
最初はオレをイジメて追い出そうとしたのだろうが、どんなイジメだって、貧乏と飢餓に比べたら可愛いものだった。だからオレは、先輩達をスルー出来ていたわけだが、まさか正式な辞令まで作られてしまうとは……
いや、違うな。
今なら分かるが、オレがイジメをスルーしていたからこそ、先輩達がよりヒートアップしてしまったのだろう。
立ち振る舞いを間違えたな、完全に。
そんなことを思い出し、悔やんでも悔やみきれないオレは、年下の女の子相手についつい愚痴ってしまう。
「身分を問わない衛士登用を王女殿下がしている、と聞いたときには喜び勇んだものだが……こんなもんか……」
「…………」
「けっきょく、お貴族様だけがいい思いをして、平民はそのしわ寄せを受けるだけなんだよ。きっと、王女殿下だって本気で身分を不問にしてたわけじゃないんだろうな」
「………………」
「はぁ……オレは王侯貴族に踊らされただけってことか。どうせ王女殿下なんて、オレたち平民の窮状を知りもしないんだろう。そりゃそうか。王城の奥の奥でふんぞり返っているだけじゃ分かるはずもない」
「……………………」
「ほんっと、どこかにまともな王侯貴族はいないものかねぇ……」
──ドンッ!!
オレがグチグチ言ってたら、ティスリがテーブルを叩いて勢いよく立ち上がる。
驚いてティスリを見上げると、いつの間にか鬼の形相になって怒号を放った。
「いいでしょう!!」
「……は?」
何がいいのか分からずに、オレはあっけにとられてティスリを見上げる。
そのティスリは、顔を真っ赤にして言ってきた。
「ならばキサマを、このわたしが雇ってやります!」
「……はいぃ?」
「それならば問題ないでしょう!? 給金だって衛士の10倍は出してやりますよ!」
「……えーと?」
「これで文句ないですよね!? ならば今の非礼を詫びてもらいましょうか!」
「い、いや、別にお前に文句を言ったわけでは……」
「いいから謝りなさい! わたしだって頑張ってたんですからね!?」
「いやあのお前……もしかして……酔ってる?」
「酔ってなどいませんが!?」
いや……どう見ても酔ってるだろアレ……
ティスリのジョッキを見ると、麦芽酒が半分ほど減っているが……まさかこの程度の量で酔ったのか?
オレが唖然としていると、ティスリはなおも言ってきた。
「謝らないというのなら、不敬罪で監獄送りれすよ!?」
「わ、分かった分かった……! オレが悪かったよ! 王女殿下も貴族たちも何も悪くなかった! 悪いのは……立ち振る舞いを間違えたオレだったわけだ!」
「ふむむ……別に……あなたは悪くないれろう?」
どことなくフラついてきたティスリは、なんとなく怪しくなってきた呂律で言ってくる。
「らから……悪いのはアルデをいぢめてたバカ貴族でせう……?」
「あ、ああ……そうだな。確かに全面的に悪いのはあの先輩達だ」
「なら……このわたしがあとであいつらを……けちょんけちょんにしてやりますよ……」
「けちょんけちょんって……どうする気なんだよ……」
「ろうするもらりも……」
いよいよまったく呂律が回らなくなり、その代わりにお目々がクルクルと回り出したので、オレは立ち上がると身構える。
「ろうしまひょう……? わらし、おうじょじゃなかったのれした……」
と言ったかと思うと、ふっと意識が掻き消えた。
「っと!」
オレは、倒れるティスリを慌てて受け止める。
「おーい、おーい……ティスリ?」
ティスリの華奢な体を揺すってみるが、意識を取り戻す気配はまるでなかった。
「まぢかよ……ジョッキ半分で泥酔するとは……」
葡萄酒には詳しそうだったのに、今まで酒を呑んだことがなかったのだろうか? あるいは安酒が体に合わなかったとか?
「ってかどうすんだよ、この状況……」
これまで衛士の宿舎に住んでいたオレは、今や帰る場所すらないというのに、実家を追放された女の子まで抱える羽目になり、途方に暮れるしかないのだった……
「えっと……追放ってどういうことだ?」
「どういうことも何も、追放は追放ですよ。クビということです」
「クビって……オレと違ってお前は家族だったんだろ?」
「そうですね。では追放というよりは勘当といった方が正しいでしょうか」
「いやいや……待て待て」
オレはジョッキをテーブルに下ろすと、状況を改めて整理する。
「お前は政商の娘なんだよな?」
「正確には政商の娘でした」
「なのに実家を追い出されたと?」
「そうなりますね」
「いや待て!? お前こそ、これからどうするつもりだ!」
オレは思わず身を乗り出すが、しかしティスリは至って落ち着いていた。
「何をそんなに慌てているのですか?」
「何をって……お前、実家を追い出されたとしたら住む場所すらないんだろ?」
「住む場所なんて、旅館暮らしでもすればいいではないですか」
「旅館って……そんな高級宿に連泊してたら一体いくら掛かると……」
「お金はたくさんありますから問題ありません。なんなら自宅を購入したっていいですし」
「そ、そうなのか? 実家を追放されても、自由になるお金はあるんだな?」
「当たり前です。そもそも、わたしが働いた結果の対価なのですから。どれほど国──いえ実家に貢献してきたと思っているのですか」
「そ、そうか……ならまぁ……問題ないか……」
どうやらティスリは、ただのお嬢様というわけではなく、ちゃんと家業を手伝っていたらしい。それで給金を得ていたのだろう。
王城に出入りするくらいの大商会なのだから給金だって破格なんだろうな。だからこんなに落ち着いていられるのか。
オレは羨ましくなって、思わずため息をついていた。
「はぁ……いいなお前は。オレは来月から早くも文無しだよ」
オレがナッツをかじりながら愚痴ると、ティスリが首を傾げた。
「王城務めなら貯金くらい作れたでしょう? あなた、そんなに金遣いが荒かったのですか?」
「違う。実家に仕送りしてたんだよ」
「仕送り? 両親は働いていないのですか?」
「うちの両親は、どちらも体が弱くてな。せいぜいが内職をするくらいなんだ。さらには食べ盛りの妹と、愛くるしいわんこがいる」
「そうでしたか……」
「はぁ……まぢで来月から、というより明日からどうすっかな……」
ようやく、まともな稼ぎの仕事に就くことができて、家族みんなで喜んでいたというのに、まさか身分を理由に追放させられるとは思いも寄らなかった。
もちろんオレだってバカじゃない。衛士入隊の初期から、オレを見る周囲の目が剣呑としていたことは分かっていた。
最初はオレをイジメて追い出そうとしたのだろうが、どんなイジメだって、貧乏と飢餓に比べたら可愛いものだった。だからオレは、先輩達をスルー出来ていたわけだが、まさか正式な辞令まで作られてしまうとは……
いや、違うな。
今なら分かるが、オレがイジメをスルーしていたからこそ、先輩達がよりヒートアップしてしまったのだろう。
立ち振る舞いを間違えたな、完全に。
そんなことを思い出し、悔やんでも悔やみきれないオレは、年下の女の子相手についつい愚痴ってしまう。
「身分を問わない衛士登用を王女殿下がしている、と聞いたときには喜び勇んだものだが……こんなもんか……」
「…………」
「けっきょく、お貴族様だけがいい思いをして、平民はそのしわ寄せを受けるだけなんだよ。きっと、王女殿下だって本気で身分を不問にしてたわけじゃないんだろうな」
「………………」
「はぁ……オレは王侯貴族に踊らされただけってことか。どうせ王女殿下なんて、オレたち平民の窮状を知りもしないんだろう。そりゃそうか。王城の奥の奥でふんぞり返っているだけじゃ分かるはずもない」
「……………………」
「ほんっと、どこかにまともな王侯貴族はいないものかねぇ……」
──ドンッ!!
オレがグチグチ言ってたら、ティスリがテーブルを叩いて勢いよく立ち上がる。
驚いてティスリを見上げると、いつの間にか鬼の形相になって怒号を放った。
「いいでしょう!!」
「……は?」
何がいいのか分からずに、オレはあっけにとられてティスリを見上げる。
そのティスリは、顔を真っ赤にして言ってきた。
「ならばキサマを、このわたしが雇ってやります!」
「……はいぃ?」
「それならば問題ないでしょう!? 給金だって衛士の10倍は出してやりますよ!」
「……えーと?」
「これで文句ないですよね!? ならば今の非礼を詫びてもらいましょうか!」
「い、いや、別にお前に文句を言ったわけでは……」
「いいから謝りなさい! わたしだって頑張ってたんですからね!?」
「いやあのお前……もしかして……酔ってる?」
「酔ってなどいませんが!?」
いや……どう見ても酔ってるだろアレ……
ティスリのジョッキを見ると、麦芽酒が半分ほど減っているが……まさかこの程度の量で酔ったのか?
オレが唖然としていると、ティスリはなおも言ってきた。
「謝らないというのなら、不敬罪で監獄送りれすよ!?」
「わ、分かった分かった……! オレが悪かったよ! 王女殿下も貴族たちも何も悪くなかった! 悪いのは……立ち振る舞いを間違えたオレだったわけだ!」
「ふむむ……別に……あなたは悪くないれろう?」
どことなくフラついてきたティスリは、なんとなく怪しくなってきた呂律で言ってくる。
「らから……悪いのはアルデをいぢめてたバカ貴族でせう……?」
「あ、ああ……そうだな。確かに全面的に悪いのはあの先輩達だ」
「なら……このわたしがあとであいつらを……けちょんけちょんにしてやりますよ……」
「けちょんけちょんって……どうする気なんだよ……」
「ろうするもらりも……」
いよいよまったく呂律が回らなくなり、その代わりにお目々がクルクルと回り出したので、オレは立ち上がると身構える。
「ろうしまひょう……? わらし、おうじょじゃなかったのれした……」
と言ったかと思うと、ふっと意識が掻き消えた。
「っと!」
オレは、倒れるティスリを慌てて受け止める。
「おーい、おーい……ティスリ?」
ティスリの華奢な体を揺すってみるが、意識を取り戻す気配はまるでなかった。
「まぢかよ……ジョッキ半分で泥酔するとは……」
葡萄酒には詳しそうだったのに、今まで酒を呑んだことがなかったのだろうか? あるいは安酒が体に合わなかったとか?
「ってかどうすんだよ、この状況……」
これまで衛士の宿舎に住んでいたオレは、今や帰る場所すらないというのに、実家を追放された女の子まで抱える羽目になり、途方に暮れるしかないのだった……
2
お気に入りに追加
365
あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる