黒帯ちゃんは、幼稚園の先生

未来教育花恋堂

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 最初に声をはり上げたのは保護者だった。
「園長先生、柔道をやめさせてください!」
 園長先生は、こういう時には保護者に気持ちを全部吐き出させることが大事なので静かに聞いた。
「どうしてですか、ご意見を拝聴いたします」
 保護者の話をまとめると違う運動で体力を高め、危険な柔道は、即刻やめてほしいということだ。
「それでは、楓先生が日常行っていますが、保護者の方にご説明をお願いします」
 男の楓先生は、保護者の勝手な言い分に腹が立っていた。
「お宅のお子さんだけ、即刻やめます、それで解決ですね、お帰りください」
「なんて、失礼な先生なの、園長先生!」
 園長先生は、楓先生が火に油をかけてしまったので、黒帯ちゃんに聞いた。黒帯ちゃんは、突然、柔道の前にみんなで言う心得を立ち上がって手を腰に当て、言い出した。
「 柔道の心得、柔道の大切なこと、体だけでなく心も一緒に鍛える、良い人になれるように頑張る、自分の弱い心に負けない、正しいことができる勇気をもつ、礼儀正しくする、柔道で、自分の弱い心に勝つ、基本の練習をきちんとやる、まじめにがんばる、以上」
 言い終わると、黒帯ちゃんは座った。
 園長先生だけでなく、保護者も楓先生も口をポカンよ開けたままだ。
 黒帯ちゃんは、上手に保護者を説得出来ないので、普段、園児に練習前に言わせていることを、大きな声で言ったのだ。
 園長先生が黒帯ちゃんに、保護者の方に分かるように説明するように話した。保護者の方は、黒帯ちゃんに聞いた。
「柔道をすると、今、言ったことが子どもに身につくんですか」
「はい! お約束します」
 園長先生と楓先生が、あわてて黒帯ちゃんをたしなめようとすると、保護者の方が静止した。
「分かりました、もうしばらく様子も見させていただきます、黒帯ちゃん、うちの子も鍛えてくださいね、園長先生、帰ります、お騒がせしてすみませんでした、黒帯ちゃん、怪我には、十分気をつけてね、多少のことは、いい経験になると思うけど」
 気持ちの晴れた保護者の方は、黒帯ちゃんに子どもを託して帰って行った。
 園長先生は、黒帯ちゃんに話した。
「保護者対応が出来るようになったら、もう、一人前ね」
 黒帯ちゃんは、急いで子どもたちの待つ、練習場へと戻って行った。

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