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道路での応援で励まされ、手を振って応える二人だが足が棒のように重くなっていた。「明日香ちゃん、大丈夫? もっとゆっくりはしろうか」
「黒帯ちゃん、大丈夫? また、休憩所でスイカたべようか」
「へへへっ、先生に気をつかってくれてありがとう、ゴールしたら食べるからいいよ」 明日香ちゃんのペースが落ちてきた。やはり、応援されてスタートダッユで無理して速く走り、休憩を取ったから疲れがでたのだろう。足が重そうに上げている。
「黒帯ちゃん、ごめんなさい、やっぱり、ビリになっちゃった・・・」
「ううん、明日香ちゃんが最後まで走れればみんなが褒めてくれると思うよ」
明日香ちゃんは下を向いて走っている。そして、ぼそっと声に出した。
「お父さんを思い出して走ることに決めたけど、やっぱり、走らなければよかったのかな、私だけでなくて黒帯ちゃんまでビリにさせちゃって、明日香、悪い子だね」
すっかり自信をなくしてしまった明日香ちゃんに、頑張ろうの声かけはつらい思いをさせるだけなのかもと考えて、黒帯ちゃんは、すぐに明日香ちゃんに声かけができなかった。
「明日香ちゃん、あの花を見て」
「黒帯ちゃん、あの花は」
「あれは、グラジオラスという花でね、花言葉は努力なんだ」
「だれかが明日香ちゃんに見せたくて、あそこに咲いていたのかな」
しばらく、明日香ちゃんは考えていた。
「あっ、お父さんだ、お父さんが応援してくれているのかな」
「黒帯ちゃんも、きっとお父さんが明日香ちゃんに見てほしくてあそこに咲いていたんだと思うな」
明日香ちゃんの気持ちが晴れたみたいで、腕振りがリズミカルになった。
「うん、亡くなったお父さんが明日香のことを応援してくれているんだ、うれしい」
明日香ちゃんに元気が戻ってきて走り出した。
「黒帯ちゃん、速く走って、ほら、お父さんが笑顔で明日香に、頑張れって言ってるみたいなんだから」
「え~、明日香ちゃん、ちょっと、ペースが速いよ」
「黒帯ちゃん、中学は陸上部だったんでしょ、ほら~速く~・・・」
黒帯ちゃんの手を引きながら明日香ちゃんは前を向いて風を切り、走り続けた。
道路での応援で励まされ、手を振って応える二人だが足が棒のように重くなっていた。「明日香ちゃん、大丈夫? もっとゆっくりはしろうか」
「黒帯ちゃん、大丈夫? また、休憩所でスイカたべようか」
「へへへっ、先生に気をつかってくれてありがとう、ゴールしたら食べるからいいよ」 明日香ちゃんのペースが落ちてきた。やはり、応援されてスタートダッユで無理して速く走り、休憩を取ったから疲れがでたのだろう。足が重そうに上げている。
「黒帯ちゃん、ごめんなさい、やっぱり、ビリになっちゃった・・・」
「ううん、明日香ちゃんが最後まで走れればみんなが褒めてくれると思うよ」
明日香ちゃんは下を向いて走っている。そして、ぼそっと声に出した。
「お父さんを思い出して走ることに決めたけど、やっぱり、走らなければよかったのかな、私だけでなくて黒帯ちゃんまでビリにさせちゃって、明日香、悪い子だね」
すっかり自信をなくしてしまった明日香ちゃんに、頑張ろうの声かけはつらい思いをさせるだけなのかもと考えて、黒帯ちゃんは、すぐに明日香ちゃんに声かけができなかった。
「明日香ちゃん、あの花を見て」
「黒帯ちゃん、あの花は」
「あれは、グラジオラスという花でね、花言葉は努力なんだ」
「だれかが明日香ちゃんに見せたくて、あそこに咲いていたのかな」
しばらく、明日香ちゃんは考えていた。
「あっ、お父さんだ、お父さんが応援してくれているのかな」
「黒帯ちゃんも、きっとお父さんが明日香ちゃんに見てほしくてあそこに咲いていたんだと思うな」
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「うん、亡くなったお父さんが明日香のことを応援してくれているんだ、うれしい」
明日香ちゃんに元気が戻ってきて走り出した。
「黒帯ちゃん、速く走って、ほら、お父さんが笑顔で明日香に、頑張れって言ってるみたいなんだから」
「え~、明日香ちゃん、ちょっと、ペースが速いよ」
「黒帯ちゃん、中学は陸上部だったんでしょ、ほら~速く~・・・」
黒帯ちゃんの手を引きながら明日香ちゃんは前を向いて風を切り、走り続けた。
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