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明日香ちゃんの家に行くとお母さんがお茶を入れて待っていてくれた。
「こんにちは、明日香さんの担任の土浦凜です」」
「いつも、娘がお世話になっています」
顔を上げてお母さんは驚いた。普通、スーツで行くのに、空手着で黒帯姿だったからだ。
「ふふっ、黒帯ちゃんって明日香が言ってましたけど、このことですね」
「新任で未熟ですから保護者の方々にご心配をおかけしてすみません」
お母さんは優しく家の中に通してくれた。そして、腕を引っ張ってしまったことを謝罪すると、恐縮がって気にしないで下さいと言ってくれて、黒帯ちゃんは安心した。
「先生、お部屋に来て」
明日香ちゃんに手を引かれて部屋に行くと、人気少女マンがポスターが貼ってあり、書き込みもされていた。
「明日香ちゃん、モモキュアが好きなの?」
「うん、すき! だってかわいくて強いんだよ、この前もね・・・・」
嬉しそうにテレビ番組のことを話してくれた。
「明日香ちゃんも、モモキュアみたいにかわいくて強くなれるよ」
明日香ちゃんは下を向いて黙ってしまった。黒帯ちゃんが何を言おうとしているのか察しがついている。
「私は、足が遅くてだめだもん、だから、モモキュアみたいになれないの・・・」
黒帯ちゃんは、明日香ちゃんの机の上にある人の走ってる一枚の募集要項を見た。
「これは、明日香ちゃん、何?」
明日香ちゃんは机の上から取って、自分の体の後ろに隠した。
「スイカマラソン大会、死んだパパが一等賞を取ったことのあるやつ・・・」
明日香ちゃんのお母さん聞いたら、明日香ちゃんが物心つく前にお父さんが病気で亡くなって、 スイカマラソン大会で一位を取った写真を宝物のように引き出しに仕舞ってあるとのこと。興味があるけど出たいとは思っていないようだ。幼児は親子マラソンに出られるけど、お母さんも走る気がないそうだ。
「明日香ちゃん、一緒に出ようよ」
「でも、足が遅いから黒帯ちゃんもビリになっちゃう・・・・」
黒帯ちゃんは、それを狙っていた。最後のランナーは、みんなに拍手で迎えられるもの、明日香ちゃんに最後まで頑張ればみんな応援してくれることに気付かせたいのだ。でも、保護者の承諾と、何よりも明日香ちゃんの気持ちが大事だ。
「明日香ちゃん、この黒帯ちゃんと一緒ならビリになっても笑顔でゴールできる、ねっ、でようよ」
明日香ちゃんのお母さんは承諾してくれた。後は、明日香ちゃんの気持ちだ。
「じゃあ、どうしたら、一緒に走ってくれるかな?」
明日香ちゃんはぬいぐるみをいじりながらもじもじとしていた。
「何でも、いいよ、明日香ちゃん、どうしたら一緒に走ってくれる?」
「一緒に走るのに空手着いやっ、選手みたいな姿の凜先生なら・・・いい」
「えええっ、黒帯ちゃん、脱がないとダメッ?」
「うん・・・・、一緒に走って恥ずかしい・・・」
黒帯ちゃんスタイルを変えたことはないので、走るなら空手着に魂の入った黒帯がいいけど、明日香ちゃんのために走るから自分の気持ちを変えた。
「明日香ちゃん、黒帯ちゃん、走る選手みたいな姿で明日香ちゃんと走る、一緒に走ってがんばろう」
お母さんが明日香ちゃんの背中を押してくれた。
「明日香、パパと同じスイカマラソンに、参加できて良かったね」
「うん! 明日香、スイカマラソン、黒帯ちゃんとでる」
帰り道、どうしようか不安になりながらも、前向きな黒帯ちゃんだった。黒帯ちゃん、空手は家の習い事で、中学は陸上部だったのだ。でも、短距離、残念!
明日香ちゃんの家に行くとお母さんがお茶を入れて待っていてくれた。
「こんにちは、明日香さんの担任の土浦凜です」」
「いつも、娘がお世話になっています」
顔を上げてお母さんは驚いた。普通、スーツで行くのに、空手着で黒帯姿だったからだ。
「ふふっ、黒帯ちゃんって明日香が言ってましたけど、このことですね」
「新任で未熟ですから保護者の方々にご心配をおかけしてすみません」
お母さんは優しく家の中に通してくれた。そして、腕を引っ張ってしまったことを謝罪すると、恐縮がって気にしないで下さいと言ってくれて、黒帯ちゃんは安心した。
「先生、お部屋に来て」
明日香ちゃんに手を引かれて部屋に行くと、人気少女マンがポスターが貼ってあり、書き込みもされていた。
「明日香ちゃん、モモキュアが好きなの?」
「うん、すき! だってかわいくて強いんだよ、この前もね・・・・」
嬉しそうにテレビ番組のことを話してくれた。
「明日香ちゃんも、モモキュアみたいにかわいくて強くなれるよ」
明日香ちゃんは下を向いて黙ってしまった。黒帯ちゃんが何を言おうとしているのか察しがついている。
「私は、足が遅くてだめだもん、だから、モモキュアみたいになれないの・・・」
黒帯ちゃんは、明日香ちゃんの机の上にある人の走ってる一枚の募集要項を見た。
「これは、明日香ちゃん、何?」
明日香ちゃんは机の上から取って、自分の体の後ろに隠した。
「スイカマラソン大会、死んだパパが一等賞を取ったことのあるやつ・・・」
明日香ちゃんのお母さん聞いたら、明日香ちゃんが物心つく前にお父さんが病気で亡くなって、 スイカマラソン大会で一位を取った写真を宝物のように引き出しに仕舞ってあるとのこと。興味があるけど出たいとは思っていないようだ。幼児は親子マラソンに出られるけど、お母さんも走る気がないそうだ。
「明日香ちゃん、一緒に出ようよ」
「でも、足が遅いから黒帯ちゃんもビリになっちゃう・・・・」
黒帯ちゃんは、それを狙っていた。最後のランナーは、みんなに拍手で迎えられるもの、明日香ちゃんに最後まで頑張ればみんな応援してくれることに気付かせたいのだ。でも、保護者の承諾と、何よりも明日香ちゃんの気持ちが大事だ。
「明日香ちゃん、この黒帯ちゃんと一緒ならビリになっても笑顔でゴールできる、ねっ、でようよ」
明日香ちゃんのお母さんは承諾してくれた。後は、明日香ちゃんの気持ちだ。
「じゃあ、どうしたら、一緒に走ってくれるかな?」
明日香ちゃんはぬいぐるみをいじりながらもじもじとしていた。
「何でも、いいよ、明日香ちゃん、どうしたら一緒に走ってくれる?」
「一緒に走るのに空手着いやっ、選手みたいな姿の凜先生なら・・・いい」
「えええっ、黒帯ちゃん、脱がないとダメッ?」
「うん・・・・、一緒に走って恥ずかしい・・・」
黒帯ちゃんスタイルを変えたことはないので、走るなら空手着に魂の入った黒帯がいいけど、明日香ちゃんのために走るから自分の気持ちを変えた。
「明日香ちゃん、黒帯ちゃん、走る選手みたいな姿で明日香ちゃんと走る、一緒に走ってがんばろう」
お母さんが明日香ちゃんの背中を押してくれた。
「明日香、パパと同じスイカマラソンに、参加できて良かったね」
「うん! 明日香、スイカマラソン、黒帯ちゃんとでる」
帰り道、どうしようか不安になりながらも、前向きな黒帯ちゃんだった。黒帯ちゃん、空手は家の習い事で、中学は陸上部だったのだ。でも、短距離、残念!
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