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第3話 黒帯が子どもの涙で濡れた・・・
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3 黒帯が子どもの涙で濡れた・・・
朝の打ち合わせが始まった。
中心的な話題は、「今月の誕生会」だった。黒帯ちゃんにとっては、初めての幼稚園の行事である。だから、何の疑問も感じずに担当者からの話しを聞いたが、黒帯ちゃん最年長のクラスがリードしなければならない。
教室に帰って子ども達に話し、誕生月の陽人君に最初に思い出話しをすることを伝えた。陽人君は下を向き、蓮人君たちは陽人君をからかい始めた。
「陽人、おまえ、思い出あんのかよ、お父さん、お母さんいないのに、どうすんだ、作り話、しちゃえよ」
「そうだ、偽物の家族ごっこの話しでもすれば・・へへっ」
陽人君は養護施設から通っていて、誕生会ではお父さん、お母さんへの感謝の言葉を言うことになっている。だから、陽人君は下を向き、みんなはお父さん、お母さんと育っていないことを知っていてから勝手なことばかり言っている。
事情を知っている黒帯ちゃんは、陽人君をからかっている子たちに注意した。
「みんな! おかしなことを言ってはいけない、おかしなことを言ってる人が、おかしな人になっちゃうかも」
園児たちは、黒帯ちゃんの言葉が良くわからなかったが、注意されていることは分かった。
「黒帯ちゃん! 本当のこと言ってるのに、なんで俺たちを怒るの、陽人の味方して、俺たちはかわいくないんだね! もう、いい!」
黒帯ちゃんは叱る時にはきちんと叱るべきだと考えた。
「蓮人君! 友達が悲しむようなことは言ってはダメじゃないかな!」
「なんで、俺だけ怒るの、他にも言ったり笑ったりしたのに! もう、いい!」
隣の席の倫平が蓮人君に小さな声で話しかけている。その後、蓮人君は教室の後ろに行って勝手なことを始めた。
「蓮人君、自分の席にもどろう!」
「や~だね、ふ~んだ、へへっ」
蓮人君は、後ろで遊んでいても安全だったので、心のケアのために、からかわれた陽人君の隣にきた。
「陽人君、大丈夫だよ、黒帯ちゃんが何とかしてあげるからね」
「うるさい! 黒帯ちゃんなんか、どっかへ言っちゃえ!」
痛くないけど、泣きながら黒帯ちゃんを蹴りだした。
「陽人、もっと、黒帯ちゃん、やっちゃえ!」
まったく、関係のない睦月君がけしかける。陽人君は、よりいっそう黒帯ちゃんを蹴ってきた。陽人君を守ってあげたのに、嫌われてしまった黒帯ちゃんは、理解不能だった。さらに、後ろで遊んでいた蓮人君も陽人君に加わって蹴ってきた。
黒帯ちゃんは、陽人君に蹴られる理由はわからないけど、からかった蓮人君に蹴られて納得がいかない。腰に手を当てて、大きな声でどなった。
「オッスゥー」
大きな声だったので、陽人君と蓮人君は尻もちを着いた。
「痛いっ、許さないからな!」
蓮人君は教室を出て行ってしまった。陽人君は無言で席に着いた。
まもなくして、主任の優愛先生に呼ばれ、教室は保育補助の真由美先生が見ることとなった。
「まったく、凜先生! 私も忙しいのに、何で大変な凜先生のクラスを見るの、早く戻って来て!」
真由美先生は凜先生に怒っていたが、優愛先生が真由美先生をじっと見つめると、話すのをやめて凜先生のクラスに入っていった。
「凜先生、蓮人君は本当のことを言ったのに、凜先生に自分だけ怒られたから教室に戻らないって言ってるけど」
黒帯ちゃんは、今までの出来事を話した。そして、理解してもらった。
「蓮人君を納得させないと、保護者の方が言ってくるかも知れないから、私の方で話すからいいわ。後、放課後に教室に帰すから、何も触れずに家に帰してね」
黒帯ちゃんは蓮人君を優愛先生に任せて、陽人君を呼び出した。また、代理でクラスを見てくれている真由美先生に嫌味を言われたが、気にしなかった。真由美先生は、そういう性格なんだと思えば気持ちが楽になる。それより、陽人君の心に寄り添うことが大事だ。
「陽人君、先生、陽人君に悪いことしたかな、蹴られるようなことしたかな」
無言の陽人君であったが、黒帯ちゃんは陽人君が話し始めるまで待った。
傾聴を大事にした。
「黒帯ちゃん、僕ね、お父さんとお母さんの顔見たことない、・・・みんなから言われるのはがまんしてるけど・・・・」
やっと、心を開いて話してくれた。
「我慢してるけど、な~に?」
下を向いていた陽人君が顔を上にあげて話し出した。
「黒帯ちゃんが、みんなの前で、僕がかわいそうって言ってるみたいで、とっても嫌だったんだ。みんなが見てる前では、おんなじようにしてほしくて・・・それで・・僕・・黒帯ちゃんを蹴って、ごめんなさい」
陽人君の目から涙が流れた。
黒帯ちゃんは陽人君を抱きしめた。
「お父さんやお母さんの顔が見たいよ、一緒に遊びに行きたいよ、誕生会で話したいよ」
陽人君の言葉と同じぐらい涙も流して、黒帯が濡れている。
「泣きたい時は、我慢しないで泣きなさい!」
「黒帯ちゃん、え~ん、え~ん・・・」
黒帯ちゃんももらい泣きをして、目から涙の雫が流れている。
友達に揶揄われ、先生にも助けてもらえずに心の傷になってしまった陽人君だったが、泣いてすっきりしたら黒帯ちゃんと教室に戻った。蓮人君が戻っていたが、優愛先生との約束通りに、出来事に触れずに家に帰した。
蓮人の家は父子家庭で一人っ子、お父さんはトラックの運転手だ。蓮人君からの話しを聞いてお父さんは怒りだした。
「空手やっていた先生、そんなゴリラ、俺が幼稚園に行って俺の息子に手を出すなって言ってやる、安心して、幼稚園行け!」
蓮人君は黒帯ちゃんに叩かれたと嘘をお父さんに言ったから、お酒を飲んでお父さんも感情的になっていた。そして、朝、幼稚園に行って、黒帯ちゃんことゴリラ先生に殴りこみにいくのだった。
朝の打ち合わせが始まった。
中心的な話題は、「今月の誕生会」だった。黒帯ちゃんにとっては、初めての幼稚園の行事である。だから、何の疑問も感じずに担当者からの話しを聞いたが、黒帯ちゃん最年長のクラスがリードしなければならない。
教室に帰って子ども達に話し、誕生月の陽人君に最初に思い出話しをすることを伝えた。陽人君は下を向き、蓮人君たちは陽人君をからかい始めた。
「陽人、おまえ、思い出あんのかよ、お父さん、お母さんいないのに、どうすんだ、作り話、しちゃえよ」
「そうだ、偽物の家族ごっこの話しでもすれば・・へへっ」
陽人君は養護施設から通っていて、誕生会ではお父さん、お母さんへの感謝の言葉を言うことになっている。だから、陽人君は下を向き、みんなはお父さん、お母さんと育っていないことを知っていてから勝手なことばかり言っている。
事情を知っている黒帯ちゃんは、陽人君をからかっている子たちに注意した。
「みんな! おかしなことを言ってはいけない、おかしなことを言ってる人が、おかしな人になっちゃうかも」
園児たちは、黒帯ちゃんの言葉が良くわからなかったが、注意されていることは分かった。
「黒帯ちゃん! 本当のこと言ってるのに、なんで俺たちを怒るの、陽人の味方して、俺たちはかわいくないんだね! もう、いい!」
黒帯ちゃんは叱る時にはきちんと叱るべきだと考えた。
「蓮人君! 友達が悲しむようなことは言ってはダメじゃないかな!」
「なんで、俺だけ怒るの、他にも言ったり笑ったりしたのに! もう、いい!」
隣の席の倫平が蓮人君に小さな声で話しかけている。その後、蓮人君は教室の後ろに行って勝手なことを始めた。
「蓮人君、自分の席にもどろう!」
「や~だね、ふ~んだ、へへっ」
蓮人君は、後ろで遊んでいても安全だったので、心のケアのために、からかわれた陽人君の隣にきた。
「陽人君、大丈夫だよ、黒帯ちゃんが何とかしてあげるからね」
「うるさい! 黒帯ちゃんなんか、どっかへ言っちゃえ!」
痛くないけど、泣きながら黒帯ちゃんを蹴りだした。
「陽人、もっと、黒帯ちゃん、やっちゃえ!」
まったく、関係のない睦月君がけしかける。陽人君は、よりいっそう黒帯ちゃんを蹴ってきた。陽人君を守ってあげたのに、嫌われてしまった黒帯ちゃんは、理解不能だった。さらに、後ろで遊んでいた蓮人君も陽人君に加わって蹴ってきた。
黒帯ちゃんは、陽人君に蹴られる理由はわからないけど、からかった蓮人君に蹴られて納得がいかない。腰に手を当てて、大きな声でどなった。
「オッスゥー」
大きな声だったので、陽人君と蓮人君は尻もちを着いた。
「痛いっ、許さないからな!」
蓮人君は教室を出て行ってしまった。陽人君は無言で席に着いた。
まもなくして、主任の優愛先生に呼ばれ、教室は保育補助の真由美先生が見ることとなった。
「まったく、凜先生! 私も忙しいのに、何で大変な凜先生のクラスを見るの、早く戻って来て!」
真由美先生は凜先生に怒っていたが、優愛先生が真由美先生をじっと見つめると、話すのをやめて凜先生のクラスに入っていった。
「凜先生、蓮人君は本当のことを言ったのに、凜先生に自分だけ怒られたから教室に戻らないって言ってるけど」
黒帯ちゃんは、今までの出来事を話した。そして、理解してもらった。
「蓮人君を納得させないと、保護者の方が言ってくるかも知れないから、私の方で話すからいいわ。後、放課後に教室に帰すから、何も触れずに家に帰してね」
黒帯ちゃんは蓮人君を優愛先生に任せて、陽人君を呼び出した。また、代理でクラスを見てくれている真由美先生に嫌味を言われたが、気にしなかった。真由美先生は、そういう性格なんだと思えば気持ちが楽になる。それより、陽人君の心に寄り添うことが大事だ。
「陽人君、先生、陽人君に悪いことしたかな、蹴られるようなことしたかな」
無言の陽人君であったが、黒帯ちゃんは陽人君が話し始めるまで待った。
傾聴を大事にした。
「黒帯ちゃん、僕ね、お父さんとお母さんの顔見たことない、・・・みんなから言われるのはがまんしてるけど・・・・」
やっと、心を開いて話してくれた。
「我慢してるけど、な~に?」
下を向いていた陽人君が顔を上にあげて話し出した。
「黒帯ちゃんが、みんなの前で、僕がかわいそうって言ってるみたいで、とっても嫌だったんだ。みんなが見てる前では、おんなじようにしてほしくて・・・それで・・僕・・黒帯ちゃんを蹴って、ごめんなさい」
陽人君の目から涙が流れた。
黒帯ちゃんは陽人君を抱きしめた。
「お父さんやお母さんの顔が見たいよ、一緒に遊びに行きたいよ、誕生会で話したいよ」
陽人君の言葉と同じぐらい涙も流して、黒帯が濡れている。
「泣きたい時は、我慢しないで泣きなさい!」
「黒帯ちゃん、え~ん、え~ん・・・」
黒帯ちゃんももらい泣きをして、目から涙の雫が流れている。
友達に揶揄われ、先生にも助けてもらえずに心の傷になってしまった陽人君だったが、泣いてすっきりしたら黒帯ちゃんと教室に戻った。蓮人君が戻っていたが、優愛先生との約束通りに、出来事に触れずに家に帰した。
蓮人の家は父子家庭で一人っ子、お父さんはトラックの運転手だ。蓮人君からの話しを聞いてお父さんは怒りだした。
「空手やっていた先生、そんなゴリラ、俺が幼稚園に行って俺の息子に手を出すなって言ってやる、安心して、幼稚園行け!」
蓮人君は黒帯ちゃんに叩かれたと嘘をお父さんに言ったから、お酒を飲んでお父さんも感情的になっていた。そして、朝、幼稚園に行って、黒帯ちゃんことゴリラ先生に殴りこみにいくのだった。
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