3 / 37
②
しおりを挟む
②嬉しいことやつらいことを体験していく中で,三月三十一日となった。
三月三十一日に咲良先生が保育園へ行くと保護者も先輩保育士も涙を流しながら話している。なぜだろう・・・。いったい,何が?
小中学校などでは「春休み」がある。正確には園児達は休みで先生方は一年のまとめとして指導要録を書いたり,新年度の新しいクラス等の準備をするのだ。また,年休をとって休むことができる。
保育園も三月三十一日が年度末として設定されているけど,小中学校と違って働いている保護者のために三月三十一日までクラスで希望者の世話をするのである。そして,次の4月1日には新しいクラスの園児と生活をする。
咲良先生の保育園では,五歳児のクラスは卒園しても三月三十一日まで在籍する子もいた。だから、この日が本当の別れの日なのである。保護者にとっては園児を産まれた時から入園している子もいるので,5年間という子もいる。
咲良先生が職員室に行くと,辞めていく先生方の机の上に花束が置かれている。良く見ると咲良先生の机の上にも数本の花が置かれていた。
「あの~,私,一年間教えていないのにいただいてもいいの・・・」
咲良先生が戸惑っていると、健二先生が咲良先生の花を取り上げた。
「いらないなら、僕がもらうからいいよ」
いらないのではなく、もらっていいのかどうか迷っていただけだった。
メガネをかけた園長先生が健二先生の手から取って咲良先生に渡した。
「保育園全員の先生方へ1本ずつ渡してほしいっていう保護者もいるのよ、これから始まる咲良先生へのエールよ,もらっておきなさい。健二先生、咲良先生の持っていた花を取り上げるのは失礼よ、それとも、そういう仲なのかしら」
健二先生は、すぐに否定した。
「雑草好きの先生とは、ちょっと・・・」
咲良先生は雑草と思っている草花にもすべて名前があって子どもの学習環境になることを言いたかったけど、先輩なので健二先生には話さなかった。
「私、雑草が好きですから!」
目線を合わせずに言ってその場を去って行った。
卒園の五歳児だけでなく,他の保育園に行く園児や先生方、退職する先輩の先生がいて,三月三十一日は回りを見ると悲しみいっぱいの日であった。咲良先生は,ここ数日間,園児の顔が同じに見えたり,先輩の先生方から声をかけてもらわないと話しずらかったりで,同じような悲しみを深く共有することができなかった。咲良先生は,それがつらい一日となった。
その日の帰りに玄関で健二先生に行き会った。
「雑草って強いな、踏まれても踏まれても立ち上がって、ある意味すごい。お疲れ様、お先に」
(雑草って私のことを言って、何かと絡んでくるけど、今のはどういう意味なの?)
三月三十一日に咲良先生が保育園へ行くと保護者も先輩保育士も涙を流しながら話している。なぜだろう・・・。いったい,何が?
小中学校などでは「春休み」がある。正確には園児達は休みで先生方は一年のまとめとして指導要録を書いたり,新年度の新しいクラス等の準備をするのだ。また,年休をとって休むことができる。
保育園も三月三十一日が年度末として設定されているけど,小中学校と違って働いている保護者のために三月三十一日までクラスで希望者の世話をするのである。そして,次の4月1日には新しいクラスの園児と生活をする。
咲良先生の保育園では,五歳児のクラスは卒園しても三月三十一日まで在籍する子もいた。だから、この日が本当の別れの日なのである。保護者にとっては園児を産まれた時から入園している子もいるので,5年間という子もいる。
咲良先生が職員室に行くと,辞めていく先生方の机の上に花束が置かれている。良く見ると咲良先生の机の上にも数本の花が置かれていた。
「あの~,私,一年間教えていないのにいただいてもいいの・・・」
咲良先生が戸惑っていると、健二先生が咲良先生の花を取り上げた。
「いらないなら、僕がもらうからいいよ」
いらないのではなく、もらっていいのかどうか迷っていただけだった。
メガネをかけた園長先生が健二先生の手から取って咲良先生に渡した。
「保育園全員の先生方へ1本ずつ渡してほしいっていう保護者もいるのよ、これから始まる咲良先生へのエールよ,もらっておきなさい。健二先生、咲良先生の持っていた花を取り上げるのは失礼よ、それとも、そういう仲なのかしら」
健二先生は、すぐに否定した。
「雑草好きの先生とは、ちょっと・・・」
咲良先生は雑草と思っている草花にもすべて名前があって子どもの学習環境になることを言いたかったけど、先輩なので健二先生には話さなかった。
「私、雑草が好きですから!」
目線を合わせずに言ってその場を去って行った。
卒園の五歳児だけでなく,他の保育園に行く園児や先生方、退職する先輩の先生がいて,三月三十一日は回りを見ると悲しみいっぱいの日であった。咲良先生は,ここ数日間,園児の顔が同じに見えたり,先輩の先生方から声をかけてもらわないと話しずらかったりで,同じような悲しみを深く共有することができなかった。咲良先生は,それがつらい一日となった。
その日の帰りに玄関で健二先生に行き会った。
「雑草って強いな、踏まれても踏まれても立ち上がって、ある意味すごい。お疲れ様、お先に」
(雑草って私のことを言って、何かと絡んでくるけど、今のはどういう意味なの?)
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1、ブザービートからはじまる恋〜
おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※第15回童話・児童書大賞用作品のため、アルファポリス様のみで掲載中。→noichigoさんに転載。
【完結済み】破滅のハッピーエンドの王子妃
BBやっこ
児童書・童話
ある国は、攻め込まれ城の中まで敵国の騎士が入り込みました。その時王子妃様は?
1話目は、王家の終わり
2話めに舞台裏、魔国の騎士目線の話
さっくり読める童話風なお話を書いてみました。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる