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傍に居て

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次の週末に、麻紀は仕事と偽って悠太と逢う時間を作った。
逢えない間、麻紀と悠太の淫らな感情は仕事へも影響してしまう程だった。全く仕事に集中できない。その思いを悠太は麻紀に正直にぶつけてきた。
「嫌われてしまうかもしれないけれど・・・。麻紀ちゃんの裸が見たい。でも嫌がることはしないから」麻紀は迷ったが、自分もまた同じ気持ちだった。悠太は痩せていたがスポーツを趣味としているその体つきは男らしかった。悠太の服の下に隠された裸体を見てみたい。
二人は誰にも邪魔されない場所へと移動することにした。
部屋に入ると抱き合い、唇を重ねた。悠太はベッドに腰掛ける。その彼の前で一枚ずつ服を脱いでいく麻紀。少しふっくらとした女性らしい体つき。服を脱ぎ外気に触れたせいなのか、麻紀の乳首は可愛らしく赤く自己主張していた。下の下着も脱ぐと黒い茂みが現れた。恥ずかしそうにその場に立ちすくむ麻紀。悠太も誘われるように下着一枚になると、その下着の中では彼のモノがいきり立っていた。
「ああ・・・すごい。綺麗だよ、麻紀ちゃん」
悠太は下着の中から自分のモノを手に取ると固くなったそれをしごき始めた。麻紀もそんな様子の悠太を見て身体が熱くなった。
(私の裸を見て、興奮してる・・・)
性の欲望は人をここまで変えてしまうのかと思うほど、普段の穏やかな悠太の姿とはかけ離れていた。そこにいるのは、たった一人の「雄」だった。
「麻紀ちゃんの、オナニーしてる姿が見たい」
よほど自制心が効くタイプなのか、好きな女が目の前で全裸になっているというのに約束通り悠太は麻紀に触れてこようとはしなかった。
「どうしたらいいか分からないわ」「こっちにおいで」そう言うと悠太は手招きした。
「この上で、僕に足を広げて見せて」
麻紀は言われるがままベッドの上に座り、やがておずおずと足を開いた。悠太の視線が一点に注がれる。視姦されているような気分になった麻紀のアソコは十分濡れていた。互いに向き合いながらアソコを見せつけ合い、悠太のモノをしごく手つきは一層早くなった。麻紀も左手で乳首を弄びながら、右手の指で自分の秘部を慰めた。
「ん、ん・・・」思わず声が漏れる。(こんなの我慢できない)
麻紀は手を止めると、悠太の唇にキスをした。
「悠太君、触って」 「麻紀ちゃん」
悠太は麻紀に触れると、更に固くした。麻紀はそれを見る度、求められている喜びに身体が打ち震えた。麻紀が悠太のモノを口に含み舐め上げると、たまらない、という表情を見せる。その表情がまた愛おしく、麻紀を興奮させた。
「悠太君の美味しい・・・」 「そんなエッチなこと言うなよ・・・」
悠太は麻紀の上に覆い被さると、舌先で甘く麻紀の乳首を突いた。それだけで、麻紀は自分が濡れてくるのが分かった。濡れたアソコがヒクヒクと物欲しそうにしているのを、悠太は優しく舐める。
「いやぁ・・・、欲しいよぉ・・・」
「挿れるよ」
熱く脈打つモノが麻紀のなかに押し入ってくると同時に快感が押し寄せる。
その快感よりも繋がっている感覚が、時間が、何よりも幸せだった。麻紀は悠太にしがみつき、悠太は麻紀を掻き抱いた。


半年後、季節は夏から冬へと移り変わっていた。悠太は比較的仕事時間の融通が利いたため、平日の子供達が学校から帰ってくるまでの時間に逢瀬を重ねた。この半年の間に、別居をしていた悠太は離婚調停に進んでいた。半年もの間、奥さんとはまともに連絡が取れず子供達にも会えず、悠太の心の拠り所は麻紀しかいなかった。
「母さんに迷惑かける訳にもいかないし、早く決着をつけたいと思っているんだけど・・・。子供達にも会いたい」
悠太は度々麻紀に弱音を吐いた。
「ごめんね、愚痴みたいになっちゃって」
「ううん。辛い気持ちは分かるもの。せめてお子さんに会えるといいね」
「子供達の親権は奥さんに渡すことになると思うけど・・・そうだね。なるべく頑張ってみるよ」
麻紀にはどうすることもできなかった。悠太が弁護士に離婚相談をしに行く、と言った時も実際に調停に向かうときも何もできなかった。傍で見守ることしか出来ない自分が歯がゆかった。
「話を聞くことしかできなくて・・・」
「そんなこと気にしなくていいんだよ。傍にいてくれるだけでいい」それは悠太の本心だった。麻紀の存在がなければ乗り越えられないだろう。
「でも、もし麻紀ちゃんが僕の傍にいてくれるなら」 「うん?」
「僕が離婚したら、結婚してくれる?」 「え?」 麻紀は言葉に詰まった。
「困らせちゃったよね、ごめん。冗談・・・でも半分本気」 「・・・うん」
「僕ならもっと麻紀ちゃんのこと大切にするよ。絶対風俗なんか行かないし。お子さん達も大切にする」 「・・・ありがとう」 麻紀はそう答えるしかなかった。

ある朝、麻紀は目覚めると寒気がした。熱を計ってみると体温が高い。(風邪引いたかな、薬を飲んで様子見よう)熱が出たことを悠太に連絡すると、
「心配だな。病院には行けそう?何かあったらすぐ連絡して」と。しかし、熱は下がるどころかその晩には38度を超えていた。(インフルエンザかも・・・)
帰宅した耕介に「インフルエンザにかかったかもしれない」と告げると彼はあからさまに顔をしかめた。
「インフルエンザ?俺、来週大事なプレゼンがあるんだ。移されると困るから早く病院行ってきて」
(移されると困る)耕介の言っていることは分かる。そのプレゼンが今後の耕介の昇進に繋がることも前々から聞いていた。けれど、辛いときにまずかけてくれる言葉とは思えなかった。ふらつく身体を引きずりながらベッドに横になる。(大丈夫?の一言もないの?)
自然と涙が流れてきた。昔は心配してご飯を作ってくれたり優しい言葉をかけてくれた。耕介は変わってしまった・・・。
「悠太君」 麻紀は悠太に電話を掛けた。「麻紀ちゃん?体調はどう?しんどい?」
悠太の声を聞くと麻紀は堰を切ったように号泣した。
「だんなさんが・・・、だんなさんが・・・、移されると困るって・・・病院行けって・・・」
「そうか。心配してもらえなかったんだね。今、言うべきことじゃないけれど麻紀ちゃんが泣くって事は少しでも旦那さんに気に掛けてもらいたい気持ちがあるんだね。僕じゃ役不足かもしれないけどさ、麻紀ちゃんの心の隙間を埋めたい。だから元気出して」
「ううっ・・・」 「僕が支えるから」
離婚なんて考えたことはなかったが、この時麻紀は「この人の傍にずっと居たい」と思った。悠太との未来を少しだけ思い描いた。
麻紀の体調が良くなると、悠太はすぐに麻紀の元へ駆けつけた。久しぶりに悠太に抱きしめてもらうと、麻紀はその腕の中で安堵した。悠太の匂いが、麻紀の鼻をくすぐった。
「心配した。僕はいつでも傍に居るから」 それから二人は愛し合った。

悠太の離婚が成立しても私は一緒にいていいのか。悠太の未来を奪うことにはならないのか。いくら考えても今すぐ答えは出ない。
ただ言えることは。あなたと出逢えて良かった。愛し愛される喜びを思い出させてくれてありがとう。だから、今はこの手を離さないで。



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