45 / 57
第四十五話 異変
しおりを挟む
この世の一大事が来るとは考え難い程に世の中は平穏であった。梅雨にはしっかりと雨が降り、そして初夏となればこの天気である。すずは大集落の人々と共に田んぼの畔で草むしりをしていたところである。
「稲さ元気だで」
「そうだな、ありがてえ事だ」
「おぉぉぉい! いっつぁん! ちょっと来てくれ!」
「一助さん、銀さんが呼んでるだよ」
「なんだぁぁ?」
「用水から! 湯が出たぁぁ!」
「あ?」
銀太の元へ駆けよれば、小川から水を引く為の用水路を手直ししていた銀太の足もとには湯が沸いていたのである。
「掘り直して居たらよ、突然湯が出たんだ」
「凄いだな……湯が沸いただか……なんでだ?」
「さてな、それよりも湯が入ってはならねえ、掘り直すぞ」
「おうよ」
田んぼへと湯が行かないように、取水を止めて水路を掘り直せば、田には冷たい水が注がれていった。その間にすずは武家の居住まで行けば藤十郎を連れて戻ったのである。
「大取の湯が突然涸れたと聞けば、こっちでは用水に湯が沸いたか……」
「藤十郎様、どうしましょうか」
「そうだな……折角だ湯場を建て皆で浸かるか」
「おぉぉぉ!」
そうと決まれば事は早い。藤十郎を中心に湯場建築に対する話し合いが行われれば、温泉の無い地域であっただけに皆の目は輝いていた。
「という事で、この件を殿に申し出て来よう」
「お願いいたします」
「あぁ、任せておけ」
この辺りの風呂事情と言えば、夏なら井戸から汲んだ掛水であり、冬場となれば掛け湯か蒸し風呂となる。故に四六時中湯で満たされている事など夢のような話なのだ。
間もなく噂を聞き付けた徳蔵が姿を見せれば湯へと指を入れて湯温を確かめていた。
「ほう、少し熱めだな」
「んだ、下野の湯が懐かしいだよ」
「そうだな」
間もなく仙吉も姿を見せれば徳蔵と並び、親子で話を始めたようだ、すずはその光景を見ていれば自然と疑問が沸いたのだろう。
「そう言えば、しの……守り人の他の皆さ、親兄弟居ねえだな……死んじまっただでか?」
「あぁ、太助に雪、それに仙太と茂吉はこの度の戦で親兄弟を亡くしたが、他の者は皆、孤児だ」
「んだか……孤児だっただか……」
「あぁ、多くが単身の孤児だったが、小平太には兄達が居たのだぞ、修行の前に人さらいから弟たちを庇い死んだ竹、それに初めての山籠もり修行で毒蛇に噛まれ死んだ弥介、そして忍びとなったが、任務で死んでしまった彦治とな」
「んだか……」
仙吉は目を細めて当時を思い出していた。
任務は三人で敵地に侵入し、忍びを全滅させると言う難易度の高いものであった。本来であれば徳蔵の長男である風太がその命を受ける筈であったのだが、突然の病に倒れてしまい、次に優秀であった彦治にその命が下りたのである。
小平太達兄弟が郷に来て七年、彦治が十九歳の時であった。
「風太、行ってくるよ」
「あぁ、任せたぞ」
「あぁ、仁平もいる任せておけ」
「そうだな、お前達なら必ずやれる、しっかりとな」
「承知! 風太はしっかりと病を治しておけよ」
「承知」
定吉と言う名の忍びは徳蔵の教え子ではないが、優秀であった。故に仁平が先頭となり定吉と彦治がその後を追う形で敵地へと入ったのだが、三人は帰還予定を三日も超過したのである。皆が心配する中で、ようやく戻ったのは仁平と定吉だけであった。
忍びの仕事において失敗を知り支援を送る事が無いのは、敵がそれを待ち受けているからである、ならば命があった場合時間を掛けて自力で郷へと帰る以外に方法は無かった。
「何があった?」
「こちらの動きが読まれ、待ち伏せに合いました」
「そうか……で、彦治は?」
互いに動きを読みあう中で、こうした失敗は実に多い。その時々の僅かな読み違いが痛手を負う事となるのだ。
「巧妙に隠された狭間の弓手に討たれ、その場にて絶命してございます」
「そうか……」
狭間とは弓手が身を隠しつつ矢を撃つための壁である、それらしい屋敷であれば警戒するも、古小屋に作られているとは思いもしなかったようだ。警戒心を持っていてもそれを見破る事は難しかったに違いない。
すべての報告を聞き小平太が唖然としていたが、仙吉は掛ける言葉を見つけられずにいたのである、兄たちを全員失ってしまったその表情は例え様の無いものであったのだ。
「俺も小平太様もその年の試練で認められ忍びになったんだ……忘れられない年となったよ」
「んだか……で、ところで風太さんはどうしただ?」
徳蔵が反応すれば、屈み目線をすずに合わせた。
「風太は優れし忍びであったのだがな、不治の病となってしまったのだよ」
「ふじの病……御山の病気だか?」
「治らない病って事だよ」
「だ……」
「何とか治してやろうと考えてな、故に儂は郷長に無理を言って忍びを引退し薬師となったのだがな……」
「……んだか……それで徳蔵さん薬師だっただか……」
「風太は助からなかったが、他の努力は実ってな、あれ以来多くの薬を生み出したのだぞ、痛薬もそうだし……化膿止めも見事な効き目だ」
徳蔵は笑って見せたが、目の底は悲しい色であった事をすずは見逃さなかった。
「流石だで」
「がはは、当然だな」
一方、小平太と千弦は天竜の川へと出向き船師たちと打ち合わせをしていた。この者達は天竜の中流から下流を行き交い行商を行っているから、川を下るのであればこの者達を頼るのが一番である。
「では、当日よろしくお頼み致す」
「お任せを」
遠江の国では地震が頻発しているという、ならば当日大きな地震が来ても船を出してくれるのかと聞いてみれば一つ返事であった。
「我らは何が起きても川を行き交うのが仕事でさ、お任せください」
「有難い」
船師と話がつけば、二人は馬で以てゆっくりと道を進んでいた。
「準備は万端だな」
「いかにも、しかし今は欠けし最後の一人が未だに揃いませぬが」
「何とかなるのだろうよ」
手練れの一人が未だに揃わないのだが、千弦は心配いらないと笑顔を見せていた、それ程に古文書に信頼を置いている事となる。
しかし、その古文書だが、驚く事に戦いの場所まで記されていると言う、故に千弦は幕府を通してその周辺図を手に入れていたようだ。
天竜を下り行けば左岸に実践的で大規模な今川の兵所があると言う。それと判る見張り櫓があるから見逃す事も無いらしい。海岸線はそこから遥か先となるが、邪神との決戦の地はどうやらその辺りの様だ。無論、死人とは武器を手にした今川の兵となる。
一昼夜を戦い抜き、死人を邪神が宿主一人まで追い込めば、最後は精霊の剣で以て仕留めて邪神を消滅させるのである。
「一昼夜を戦う事になると、神々は知っておいでなのですね」
「うむ、全てお見通しの様だ」
「ならば勝敗の行方もご存じなのでは?」
「そこだけは記してなかった。恐らく、勝つと記せば気が緩み、負と記せば絶望となるから敢えて記さなかったのだろう」
「なるほど」
「神々が、この世を守ろうと記してくれた事だ、我々は全力を尽くし、神々に応えようぞ」
「承知」
「稲さ元気だで」
「そうだな、ありがてえ事だ」
「おぉぉぉい! いっつぁん! ちょっと来てくれ!」
「一助さん、銀さんが呼んでるだよ」
「なんだぁぁ?」
「用水から! 湯が出たぁぁ!」
「あ?」
銀太の元へ駆けよれば、小川から水を引く為の用水路を手直ししていた銀太の足もとには湯が沸いていたのである。
「掘り直して居たらよ、突然湯が出たんだ」
「凄いだな……湯が沸いただか……なんでだ?」
「さてな、それよりも湯が入ってはならねえ、掘り直すぞ」
「おうよ」
田んぼへと湯が行かないように、取水を止めて水路を掘り直せば、田には冷たい水が注がれていった。その間にすずは武家の居住まで行けば藤十郎を連れて戻ったのである。
「大取の湯が突然涸れたと聞けば、こっちでは用水に湯が沸いたか……」
「藤十郎様、どうしましょうか」
「そうだな……折角だ湯場を建て皆で浸かるか」
「おぉぉぉ!」
そうと決まれば事は早い。藤十郎を中心に湯場建築に対する話し合いが行われれば、温泉の無い地域であっただけに皆の目は輝いていた。
「という事で、この件を殿に申し出て来よう」
「お願いいたします」
「あぁ、任せておけ」
この辺りの風呂事情と言えば、夏なら井戸から汲んだ掛水であり、冬場となれば掛け湯か蒸し風呂となる。故に四六時中湯で満たされている事など夢のような話なのだ。
間もなく噂を聞き付けた徳蔵が姿を見せれば湯へと指を入れて湯温を確かめていた。
「ほう、少し熱めだな」
「んだ、下野の湯が懐かしいだよ」
「そうだな」
間もなく仙吉も姿を見せれば徳蔵と並び、親子で話を始めたようだ、すずはその光景を見ていれば自然と疑問が沸いたのだろう。
「そう言えば、しの……守り人の他の皆さ、親兄弟居ねえだな……死んじまっただでか?」
「あぁ、太助に雪、それに仙太と茂吉はこの度の戦で親兄弟を亡くしたが、他の者は皆、孤児だ」
「んだか……孤児だっただか……」
「あぁ、多くが単身の孤児だったが、小平太には兄達が居たのだぞ、修行の前に人さらいから弟たちを庇い死んだ竹、それに初めての山籠もり修行で毒蛇に噛まれ死んだ弥介、そして忍びとなったが、任務で死んでしまった彦治とな」
「んだか……」
仙吉は目を細めて当時を思い出していた。
任務は三人で敵地に侵入し、忍びを全滅させると言う難易度の高いものであった。本来であれば徳蔵の長男である風太がその命を受ける筈であったのだが、突然の病に倒れてしまい、次に優秀であった彦治にその命が下りたのである。
小平太達兄弟が郷に来て七年、彦治が十九歳の時であった。
「風太、行ってくるよ」
「あぁ、任せたぞ」
「あぁ、仁平もいる任せておけ」
「そうだな、お前達なら必ずやれる、しっかりとな」
「承知! 風太はしっかりと病を治しておけよ」
「承知」
定吉と言う名の忍びは徳蔵の教え子ではないが、優秀であった。故に仁平が先頭となり定吉と彦治がその後を追う形で敵地へと入ったのだが、三人は帰還予定を三日も超過したのである。皆が心配する中で、ようやく戻ったのは仁平と定吉だけであった。
忍びの仕事において失敗を知り支援を送る事が無いのは、敵がそれを待ち受けているからである、ならば命があった場合時間を掛けて自力で郷へと帰る以外に方法は無かった。
「何があった?」
「こちらの動きが読まれ、待ち伏せに合いました」
「そうか……で、彦治は?」
互いに動きを読みあう中で、こうした失敗は実に多い。その時々の僅かな読み違いが痛手を負う事となるのだ。
「巧妙に隠された狭間の弓手に討たれ、その場にて絶命してございます」
「そうか……」
狭間とは弓手が身を隠しつつ矢を撃つための壁である、それらしい屋敷であれば警戒するも、古小屋に作られているとは思いもしなかったようだ。警戒心を持っていてもそれを見破る事は難しかったに違いない。
すべての報告を聞き小平太が唖然としていたが、仙吉は掛ける言葉を見つけられずにいたのである、兄たちを全員失ってしまったその表情は例え様の無いものであったのだ。
「俺も小平太様もその年の試練で認められ忍びになったんだ……忘れられない年となったよ」
「んだか……で、ところで風太さんはどうしただ?」
徳蔵が反応すれば、屈み目線をすずに合わせた。
「風太は優れし忍びであったのだがな、不治の病となってしまったのだよ」
「ふじの病……御山の病気だか?」
「治らない病って事だよ」
「だ……」
「何とか治してやろうと考えてな、故に儂は郷長に無理を言って忍びを引退し薬師となったのだがな……」
「……んだか……それで徳蔵さん薬師だっただか……」
「風太は助からなかったが、他の努力は実ってな、あれ以来多くの薬を生み出したのだぞ、痛薬もそうだし……化膿止めも見事な効き目だ」
徳蔵は笑って見せたが、目の底は悲しい色であった事をすずは見逃さなかった。
「流石だで」
「がはは、当然だな」
一方、小平太と千弦は天竜の川へと出向き船師たちと打ち合わせをしていた。この者達は天竜の中流から下流を行き交い行商を行っているから、川を下るのであればこの者達を頼るのが一番である。
「では、当日よろしくお頼み致す」
「お任せを」
遠江の国では地震が頻発しているという、ならば当日大きな地震が来ても船を出してくれるのかと聞いてみれば一つ返事であった。
「我らは何が起きても川を行き交うのが仕事でさ、お任せください」
「有難い」
船師と話がつけば、二人は馬で以てゆっくりと道を進んでいた。
「準備は万端だな」
「いかにも、しかし今は欠けし最後の一人が未だに揃いませぬが」
「何とかなるのだろうよ」
手練れの一人が未だに揃わないのだが、千弦は心配いらないと笑顔を見せていた、それ程に古文書に信頼を置いている事となる。
しかし、その古文書だが、驚く事に戦いの場所まで記されていると言う、故に千弦は幕府を通してその周辺図を手に入れていたようだ。
天竜を下り行けば左岸に実践的で大規模な今川の兵所があると言う。それと判る見張り櫓があるから見逃す事も無いらしい。海岸線はそこから遥か先となるが、邪神との決戦の地はどうやらその辺りの様だ。無論、死人とは武器を手にした今川の兵となる。
一昼夜を戦い抜き、死人を邪神が宿主一人まで追い込めば、最後は精霊の剣で以て仕留めて邪神を消滅させるのである。
「一昼夜を戦う事になると、神々は知っておいでなのですね」
「うむ、全てお見通しの様だ」
「ならば勝敗の行方もご存じなのでは?」
「そこだけは記してなかった。恐らく、勝つと記せば気が緩み、負と記せば絶望となるから敢えて記さなかったのだろう」
「なるほど」
「神々が、この世を守ろうと記してくれた事だ、我々は全力を尽くし、神々に応えようぞ」
「承知」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
淡き河、流るるままに
糸冬
歴史・時代
天正八年(一五八〇年)、播磨国三木城において、二年近くに及んだ羽柴秀吉率いる織田勢の厳重な包囲の末、別所家は当主・別所長治の自刃により滅んだ。
その家臣と家族の多くが居場所を失い、他国へと流浪した。
時は流れて慶長五年(一六〇〇年)。
徳川家康が会津の上杉征伐に乗り出す不穏な情勢の中、淡河次郎は、讃岐国坂出にて、小さな寺の食客として逼塞していた。
彼の父は、淡河定範。かつて別所の重臣として、淡河城にて織田の軍勢を雌馬をけしかける奇策で退けて一矢報いた武勇の士である。
肩身の狭い暮らしを余儀なくされている次郎のもとに、「別所長治の遺児」を称する僧形の若者・別所源兵衛が姿を見せる。
福島正則の元に馳せ参じるという源兵衛に説かれ、次郎は武士として世に出る覚悟を固める。
別所家、そして淡河家の再興を賭けた、世に知られざる男たちの物語が動き出す。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
強いられる賭け~脇坂安治軍記~
恩地玖
歴史・時代
浅井家の配下である脇坂家は、永禄11年に勃発した観音寺合戦に、織田・浅井連合軍の一隊として参戦する。この戦を何とか生き延びた安治は、浅井家を見限り、織田方につくことを決めた。そんな折、羽柴秀吉が人を集めているという話を聞きつけ、早速、秀吉の元に向かい、秀吉から温かく迎えられる。
こうして、秀吉の家臣となった安治は、幾多の困難を乗り越えて、ついには淡路三万石の大名にまで出世する。
しかし、秀吉亡き後、石田三成と徳川家康の対立が決定的となった。秀吉からの恩に報い、石田方につくか、秀吉子飼いの武将が従った徳川方につくか、安治は決断を迫られることになる。
東洲斎写楽の懊悩
橋本洋一
歴史・時代
時は寛政五年。長崎奉行に呼ばれ出島までやってきた江戸の版元、蔦屋重三郎は囚われの身の異国人、シャーロック・カーライルと出会う。奉行からシャーロックを江戸で世話をするように脅されて、渋々従う重三郎。その道中、シャーロックは非凡な絵の才能を明らかにしていく。そして江戸の手前、箱根の関所で詮議を受けることになった彼ら。シャーロックの名を訊ねられ、咄嗟に出たのは『写楽』という名だった――江戸を熱狂した写楽の絵。描かれた理由とは? そして金髪碧眼の写楽が江戸にやってきた目的とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる