9 / 57
第九話 おきぬと言う名の娘
しおりを挟む
「踏み外すぞ! 右へ修正しろ!」
草に覆われた崖上で、きぬは素早く後ろ回転しながら追手の放つ棒手裏剣を避けていた。小平太の位置からでは手助けも出来ずに崖下から、きぬを追い走るだけである。
大沢の忍びが仕える、田村家との長年の同盟を一方的に反故とし、敵方へと寝返った川原を見過ごす事は無い。この裏切りによって田村は不利な状況へと追い込まれてしまったのだから当然と言える。
しかし、勇猛果敢で恐れられる田村とはいえ、明らかな多勢となった相手に挙兵するのは無理がある。川原もそれを見込んで裏切ったのだ、ならば敵将を始末し、その代償を払わす事となる。敵将は昼夜を問わず忍びによって守られているから暗殺を恐れていないようだが、大沢忍びからすれば、それは無駄な事である。
任務には小平太が選ばれ、実戦は未だ経験の無いきぬが同行する事と決まった。それは現場の空気を経験して今後に生かす為であった。
川原の地へと入った二人は、身を隠すことなく往来を行き屋敷の脇まで来れば、草鞋を締め直す振りをして中の気配を探っていた。忍びの気配からその配置と動き、視線を読めば人目が無くなったところで板塀を跳び越え身を隠した。敵の忍びは一切気付いていない。
この屋敷の間取り図は、幻の定吉が数日間潜入し調べ上げたものである。敵将の行動さえ把握しているから仕事は早かった。昼には決まって池の鯉に餌をやるのだが、そこには忍びの目がある。その後屋敷の裏へと移動して屋敷の女たちと共に犬を愛でるのだが、此処には忍びの目は無い。よって暗殺するにはこの機会を見逃してはならない事となる。
先回りして身を潜めると、小平太は毒を仕込んだ吹き矢を手にしていた。情報通りに敵将が現れれば全員の動向を見て予測を立てていた。間もなくして女中たちの視線が敵将から外れれば、間髪入れずに毒矢を放った。
「行くぞ」
「承知」
矢が証拠として残るが問題はない。これは川原の屋敷へ潜入していた幻の定吉が手に入れてくれたもので、川原が雇う忍びの吹き矢なのだ。田村にも疑いが掛かるだろうが、川原は己の懐に入り込んでいる忍びを疑う筈である。
女たちが騒ぎ出す前に板塀を跳び越えれば任務は終了の筈であった。しかしあろう事か、きぬが一足遅れた際にその姿を忍びに晒してしまったのである。
「女だ! 忍びだぞ! 追え!」
「きゃあぁぁ!」
「しまった! 川原の殿がやられた!」
姿を見られたと同時に女たちの悲鳴があがった。此処は一刻も早く立ち去らねば窮地と化す事となる。
「きぬ! 死ぬ気でついてこい!」
「承知!」
小平太の後ろを違わずに走り森へと走ったが、きぬは追手の放った棒手裏剣を避けたまま方向修正が出来ずに走り続けてしまい、小平太と離れて自分は崖上へと逃げる事となってしまったのだ。
きぬの様子を見ながら走り、手探りでクナイの尻環に縄を結ぶと、崖上へと行けそうな枝を見極めていた。もう時がない事は明らかである。
見極めた枝にクナイを投げ枝に廻し引っ掛けると、地を蹴って三間(五メートル四十センチ)の崖上へと跳んだのであった。縄から手を放し短刀を抜けば着地と同時に一人を始末し、瞬時にして身を丸め前転で進めば、勢いよく踏み切って二人目の首を裂き、今度はそこから跳躍し背を向けていた三人目の急所を刺した。
棒手裏剣に足をやられたきぬは、少し先で短刀を抜き覚悟を決めていた。小平太の到着が数呼吸遅れていたら、きぬの命は既に無い。
「動けるか?」
「不覚を重ね、このような事態に……」
「反省は後だ、今は急ぎ手当を」
「承知」
少し動こうとした、きぬを止めた。
「待て、弓手の気配だ、身を低く保ち地と同化するのだ動くなよ」
「承知」
どれ程優れていたとしても、その逆であっても人には運命と言うものがある。良し悪しは別として、それによって人生が大きく分かれる事は言うまでもない。
キィィィ! ……バサバサッ……
気配を消していた事で山鳥が二人に気付かず接近していたのだが、目の前でようやく気付き慌てて飛び出したのだ。
そこへ矢が飛んでくるのは明らかである。二人は瞬時に身を回転させて素早く避けるも、きぬの方は動きを読まれていたのである。きぬもそれを悟りかわそうとした瞬間、二本の矢がきぬの胸に深く刺さったのである。
「くっ! おきぬぅ!」
「こ……たさま……小平太様……なんだで酷くうなされてるだで……大丈夫だか?」
夢にうなされていた小平太を揺さぶり起こしたすずは、心配そうに見つめていた。
「あ、起きた。大丈夫だか? 凄くうなされてただよ、それに凄い汗だで」
「すまない心配かけたな」
「良いだよ」
手拭いで汗を拭き、立ち上がれば障子を開け放ち濡れ縁へと出た。秋の夜風が竹を揺らし心地よい音色を奏でていた。竹林の中の住まいはきぬの理想であったのだ。子が出来たら小平太とそんな家で暮らしたいのだと、夢を語っていた愛らしい忍び、いや娘であったのだ。
今見ていた夢は実際のきぬの最後であった。小平太は夜風に吹かれつつ、更に当時を思い出していた。
目の前で起きた衝撃に一瞬にして血の気が引いていた。それより先はまるで時が止まったのかと思う程に時の経過が遅くなり、頭の中は却って恐ろしい程に冷静となっていた。小平太が幻の心技を手に入れた瞬間である。
きぬの懐に手を入れてクナイの尻環に縄を結ぶと、今までにない戦闘態勢へと身を投じていた。周囲は既に十人の忍びによって囲まれていたが、まるで臆する事も無い。少し驚いた相のままで息絶えたきぬの目を閉じ額を合わせれば、その場にゆっくりと立ち上がった。
敵の忍びは小平太が諦めたものと勘違いをしたのだろう。警戒しつつも捕らえようとの動きである。
敵の動きを見極め、突如大きく跳躍しながら凄まじい勢いでクナイを放てば、円を描く様に大きく回したのである。それにより三人が顔面を深く損傷した。ほんの一瞬の出来事に敵は深く動揺していた。続け様に二人が死体となり転がれば、その者から奪った棒手裏剣で弓手の二人を始末したのである。後は順を追って始末して行くだけである。
愛する者の死によって覚醒した小平太の身の熟しは、もはや化け物であった、敵は腰を抜かすほどに怯み恐怖に顔を歪めるばかりであったのだ。
追手の全てを始末すれば己のクナイを回収し、きぬを背負うと、陽が沈み始めた森を進み、長い道のりをひたすら歩いた。背中で徐々に固くなっていく死の感触を小平太は唯々受け入れるだけであった。この時小平太は十九で、きぬは十七になったばかりであった。
身体が程よく冷め室内へと戻れば、すずは自分の夜具を小平太の隣に並べて白湯を飲み待って居た。
「ん? どうした?」
「此処ならおらが小平太様さ守れるだで、安心して寝てもらいてえ」
「すまないな」
「小平太様さ、命の恩人だで当然だよ」
横になり少しの間、天井を見ていた、夜目が利き巣を修復する蜘蛛の細部まで見えれば、旅の初日にすずが言っていた光の話を思い出していた。
「命に宿る光の話をしていたが、虫にも光はあるのか?」
「あるだよ、とんでもなく小っちゃい虫にだって光はあんだ」
「何か話すのか?」
「話はしねえだども、挨拶はしてくれんだ」
「虫がか?」
「虫ではねえだ……光が挨拶してくれんだ」
「不思議な事だな、しかしその光とは何だろうな」
「なんだでな」
草に覆われた崖上で、きぬは素早く後ろ回転しながら追手の放つ棒手裏剣を避けていた。小平太の位置からでは手助けも出来ずに崖下から、きぬを追い走るだけである。
大沢の忍びが仕える、田村家との長年の同盟を一方的に反故とし、敵方へと寝返った川原を見過ごす事は無い。この裏切りによって田村は不利な状況へと追い込まれてしまったのだから当然と言える。
しかし、勇猛果敢で恐れられる田村とはいえ、明らかな多勢となった相手に挙兵するのは無理がある。川原もそれを見込んで裏切ったのだ、ならば敵将を始末し、その代償を払わす事となる。敵将は昼夜を問わず忍びによって守られているから暗殺を恐れていないようだが、大沢忍びからすれば、それは無駄な事である。
任務には小平太が選ばれ、実戦は未だ経験の無いきぬが同行する事と決まった。それは現場の空気を経験して今後に生かす為であった。
川原の地へと入った二人は、身を隠すことなく往来を行き屋敷の脇まで来れば、草鞋を締め直す振りをして中の気配を探っていた。忍びの気配からその配置と動き、視線を読めば人目が無くなったところで板塀を跳び越え身を隠した。敵の忍びは一切気付いていない。
この屋敷の間取り図は、幻の定吉が数日間潜入し調べ上げたものである。敵将の行動さえ把握しているから仕事は早かった。昼には決まって池の鯉に餌をやるのだが、そこには忍びの目がある。その後屋敷の裏へと移動して屋敷の女たちと共に犬を愛でるのだが、此処には忍びの目は無い。よって暗殺するにはこの機会を見逃してはならない事となる。
先回りして身を潜めると、小平太は毒を仕込んだ吹き矢を手にしていた。情報通りに敵将が現れれば全員の動向を見て予測を立てていた。間もなくして女中たちの視線が敵将から外れれば、間髪入れずに毒矢を放った。
「行くぞ」
「承知」
矢が証拠として残るが問題はない。これは川原の屋敷へ潜入していた幻の定吉が手に入れてくれたもので、川原が雇う忍びの吹き矢なのだ。田村にも疑いが掛かるだろうが、川原は己の懐に入り込んでいる忍びを疑う筈である。
女たちが騒ぎ出す前に板塀を跳び越えれば任務は終了の筈であった。しかしあろう事か、きぬが一足遅れた際にその姿を忍びに晒してしまったのである。
「女だ! 忍びだぞ! 追え!」
「きゃあぁぁ!」
「しまった! 川原の殿がやられた!」
姿を見られたと同時に女たちの悲鳴があがった。此処は一刻も早く立ち去らねば窮地と化す事となる。
「きぬ! 死ぬ気でついてこい!」
「承知!」
小平太の後ろを違わずに走り森へと走ったが、きぬは追手の放った棒手裏剣を避けたまま方向修正が出来ずに走り続けてしまい、小平太と離れて自分は崖上へと逃げる事となってしまったのだ。
きぬの様子を見ながら走り、手探りでクナイの尻環に縄を結ぶと、崖上へと行けそうな枝を見極めていた。もう時がない事は明らかである。
見極めた枝にクナイを投げ枝に廻し引っ掛けると、地を蹴って三間(五メートル四十センチ)の崖上へと跳んだのであった。縄から手を放し短刀を抜けば着地と同時に一人を始末し、瞬時にして身を丸め前転で進めば、勢いよく踏み切って二人目の首を裂き、今度はそこから跳躍し背を向けていた三人目の急所を刺した。
棒手裏剣に足をやられたきぬは、少し先で短刀を抜き覚悟を決めていた。小平太の到着が数呼吸遅れていたら、きぬの命は既に無い。
「動けるか?」
「不覚を重ね、このような事態に……」
「反省は後だ、今は急ぎ手当を」
「承知」
少し動こうとした、きぬを止めた。
「待て、弓手の気配だ、身を低く保ち地と同化するのだ動くなよ」
「承知」
どれ程優れていたとしても、その逆であっても人には運命と言うものがある。良し悪しは別として、それによって人生が大きく分かれる事は言うまでもない。
キィィィ! ……バサバサッ……
気配を消していた事で山鳥が二人に気付かず接近していたのだが、目の前でようやく気付き慌てて飛び出したのだ。
そこへ矢が飛んでくるのは明らかである。二人は瞬時に身を回転させて素早く避けるも、きぬの方は動きを読まれていたのである。きぬもそれを悟りかわそうとした瞬間、二本の矢がきぬの胸に深く刺さったのである。
「くっ! おきぬぅ!」
「こ……たさま……小平太様……なんだで酷くうなされてるだで……大丈夫だか?」
夢にうなされていた小平太を揺さぶり起こしたすずは、心配そうに見つめていた。
「あ、起きた。大丈夫だか? 凄くうなされてただよ、それに凄い汗だで」
「すまない心配かけたな」
「良いだよ」
手拭いで汗を拭き、立ち上がれば障子を開け放ち濡れ縁へと出た。秋の夜風が竹を揺らし心地よい音色を奏でていた。竹林の中の住まいはきぬの理想であったのだ。子が出来たら小平太とそんな家で暮らしたいのだと、夢を語っていた愛らしい忍び、いや娘であったのだ。
今見ていた夢は実際のきぬの最後であった。小平太は夜風に吹かれつつ、更に当時を思い出していた。
目の前で起きた衝撃に一瞬にして血の気が引いていた。それより先はまるで時が止まったのかと思う程に時の経過が遅くなり、頭の中は却って恐ろしい程に冷静となっていた。小平太が幻の心技を手に入れた瞬間である。
きぬの懐に手を入れてクナイの尻環に縄を結ぶと、今までにない戦闘態勢へと身を投じていた。周囲は既に十人の忍びによって囲まれていたが、まるで臆する事も無い。少し驚いた相のままで息絶えたきぬの目を閉じ額を合わせれば、その場にゆっくりと立ち上がった。
敵の忍びは小平太が諦めたものと勘違いをしたのだろう。警戒しつつも捕らえようとの動きである。
敵の動きを見極め、突如大きく跳躍しながら凄まじい勢いでクナイを放てば、円を描く様に大きく回したのである。それにより三人が顔面を深く損傷した。ほんの一瞬の出来事に敵は深く動揺していた。続け様に二人が死体となり転がれば、その者から奪った棒手裏剣で弓手の二人を始末したのである。後は順を追って始末して行くだけである。
愛する者の死によって覚醒した小平太の身の熟しは、もはや化け物であった、敵は腰を抜かすほどに怯み恐怖に顔を歪めるばかりであったのだ。
追手の全てを始末すれば己のクナイを回収し、きぬを背負うと、陽が沈み始めた森を進み、長い道のりをひたすら歩いた。背中で徐々に固くなっていく死の感触を小平太は唯々受け入れるだけであった。この時小平太は十九で、きぬは十七になったばかりであった。
身体が程よく冷め室内へと戻れば、すずは自分の夜具を小平太の隣に並べて白湯を飲み待って居た。
「ん? どうした?」
「此処ならおらが小平太様さ守れるだで、安心して寝てもらいてえ」
「すまないな」
「小平太様さ、命の恩人だで当然だよ」
横になり少しの間、天井を見ていた、夜目が利き巣を修復する蜘蛛の細部まで見えれば、旅の初日にすずが言っていた光の話を思い出していた。
「命に宿る光の話をしていたが、虫にも光はあるのか?」
「あるだよ、とんでもなく小っちゃい虫にだって光はあんだ」
「何か話すのか?」
「話はしねえだども、挨拶はしてくれんだ」
「虫がか?」
「虫ではねえだ……光が挨拶してくれんだ」
「不思議な事だな、しかしその光とは何だろうな」
「なんだでな」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
信忠 ~“奇妙”と呼ばれた男~
佐倉伸哉
歴史・時代
その男は、幼名を“奇妙丸”という。人の名前につけるような単語ではないが、名付けた父親が父親だけに仕方がないと思われた。
父親の名前は、織田信長。その男の名は――織田信忠。
稀代の英邁を父に持ち、その父から『天下の儀も御与奪なさるべき旨』と認められた。しかし、彼は父と同じ日に命を落としてしまう。
明智勢が本能寺に殺到し、信忠は京から脱出する事も可能だった。それなのに、どうして彼はそれを選ばなかったのか? その決断の裏には、彼の辿って来た道が関係していた――。
◇この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n9394ie/)』『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093085367901420)』でも同時掲載しています◇
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-
ジェド
歴史・時代
1894年、東洋の島国・琉球王国が沖縄県となった明治時代――
後の世で「空手」や「琉球古武術」と呼ばれることとなる武術は、琉球語で「ティー(手)」と呼ばれていた。
ティーの修業者たちにとって腕試しの場となるのは、自由組手形式の野試合「カキダミシ(掛け試し)」。
誇り高き武人たちは、時代に翻弄されながらも戦い続ける。
拳と思いが交錯する空手アクション歴史小説、ここに誕生!
・検索キーワード
空手道、琉球空手、沖縄空手、琉球古武道、剛柔流、上地流、小林流、少林寺流、少林流、松林流、和道流、松濤館流、糸東流、東恩流、劉衛流、極真会館、大山道場、芦原会館、正道会館、白蓮会館、国際FSA拳真館、大道塾空道
狩野岑信 元禄二刀流絵巻
仁獅寺永雪
歴史・時代
狩野岑信は、江戸中期の幕府御用絵師である。竹川町狩野家の次男に生まれながら、特に分家を許された上、父や兄を差し置いて江戸画壇の頂点となる狩野派総上席の地位を与えられた。さらに、狩野派最初の奥絵師ともなった。
特筆すべき代表作もないことから、従来、時の将軍に気に入られて出世しただけの男と見られてきた。
しかし、彼は、主君が将軍になったその年に死んでいるのである。これはどういうことなのか。
彼の特異な点は、「松本友盛」という主君から賜った別名(むしろ本名)があったことだ。この名前で、土圭之間詰め番士という武官職をも務めていた。
舞台は、赤穂事件のあった元禄時代、生類憐れみの令に支配された江戸の町。主人公は、様々な歴史上の事件や人物とも関りながら成長して行く。
これは、絵師と武士、二つの名前と二つの役職を持ち、張り巡らされた陰謀から主君を守り、遂に六代将軍に押し上げた謎の男・狩野岑信の一生を読み解く物語である。
投稿二作目、最後までお楽しみいただければ幸いです。
曹操桜【曹操孟徳の伝記 彼はなぜ天下を統一できなかったのか】
みらいつりびと
歴史・時代
赤壁の戦いには謎があります。
曹操軍は、周瑜率いる孫権軍の火攻めにより、大敗北を喫したとされています。
しかし、曹操はおろか、主な武将は誰も死んでいません。どうして?
これを解き明かす新釈三国志をめざして、筆を執りました。
曹操の徐州大虐殺、官渡の捕虜虐殺についても考察します。
劉備は流浪しつづけたのに、なぜ関羽と張飛は離れなかったのか。
呂布と孫堅はどちらの方が強かったのか。
荀彧、荀攸、陳宮、程昱、郭嘉、賈詡、司馬懿はどのような軍師だったのか。
そんな謎について考えながら描いた物語です。
主人公は曹操孟徳。全46話。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる