10 / 20
狸狩り
伊賀越え
しおりを挟む
本能寺の変当日、家康と徳川家臣団は堺で見物をしていた。
「やはり堺は活気があっていいのう。そう思わないか、酒井。」
「えぇ、私もそう思います。このようなところが三河にもあればよかったのですが。」
「殿!やはり私はこのようなところにいるよりも戦をしたいです!」
「まぁ落ち着け忠勝。戦はこれからもたくさんやるからな。それよりも今は私の護衛として守っていてくれ。」
「しかし殿。もうこの日の本も織田様によって統一されそうなのです。もう護衛なども必要なくなるのでは?」
「いや、それは違うぞ直政。いくら織田様が天下を統一しようとも殿に歯向かおうとしてくる者はいくらでもおるのだ。」
「そうでしたか。申し訳ありません。殿、榊原様。」
「あぁ、分かれば良い。」
「では、そろそろ京へと向かうとするかな。」
「えぇ、そうしましょう。殿。」
その徳川家康一行に血相を変えて向かってくる一人の男がいた。
「と、徳川様!」
「おぉ、そなたは茶屋四郎次郎清延ではないか。そんなに急いでどうしたのだ?」
茶屋四郎次郎、その名前は京の豪商の世襲名であり、初代である清延から始まりその後は朱印船貿易や呉服により巨万の富を得る家である。
「い、一大事にございます!京で信長様が明智光秀により討たれました!」
「な、何だと!それは本当なのか!」
「はい、本当にございます!」
「殿!今すぐに三河へと帰りますぞ!」
「いや、酒井。わしは京へ行き追腹をする。」
追腹とは死んだ主君を追って家臣が腹を切ることである。
「な、何をおっしゃるのですか殿!まだあなたは生きていないといけないのです!」
「しかし、信長様亡き後わしはどうすればよいのか。」
「大丈夫でございます!殿はこのような窮地を何度もくぐり抜けて来られたではありませんか!」
「殿、三河への帰り道は用意できております。ただ、少々危険ですが…」
「皆の者、すまない。また弱音を吐いてしまった。まずは三河へ生きて帰ろう。それで帰り道とは伊賀越えか?」
伊賀越え、京などの畿内より東国へと向かう際に伊賀国(今の三重県の一部)を通ることである。この当時、伊賀では超大規模な一揆が起きておりその範囲は伊賀を超えるほど。前年に信長が鎮圧していたが、信長の死により再発していることが考えられた。
「はい、ですが殿。ご安心ください。この本多忠勝、この命に変えても殿を三河へとお返しいたします。」
「あぁ、忠勝ありがとう。ただ、本当に死ぬなよ。まだお前は必要な人なのだ。」
「はっ、分かりました。」
「他の皆もともに生きて帰ろうぞ!」
こうして家康の人生において最も過酷な「伊賀越え」が始まった。
「…わしらは他の道を行こう。」
ある一人の人物を除いては…
「やはり堺は活気があっていいのう。そう思わないか、酒井。」
「えぇ、私もそう思います。このようなところが三河にもあればよかったのですが。」
「殿!やはり私はこのようなところにいるよりも戦をしたいです!」
「まぁ落ち着け忠勝。戦はこれからもたくさんやるからな。それよりも今は私の護衛として守っていてくれ。」
「しかし殿。もうこの日の本も織田様によって統一されそうなのです。もう護衛なども必要なくなるのでは?」
「いや、それは違うぞ直政。いくら織田様が天下を統一しようとも殿に歯向かおうとしてくる者はいくらでもおるのだ。」
「そうでしたか。申し訳ありません。殿、榊原様。」
「あぁ、分かれば良い。」
「では、そろそろ京へと向かうとするかな。」
「えぇ、そうしましょう。殿。」
その徳川家康一行に血相を変えて向かってくる一人の男がいた。
「と、徳川様!」
「おぉ、そなたは茶屋四郎次郎清延ではないか。そんなに急いでどうしたのだ?」
茶屋四郎次郎、その名前は京の豪商の世襲名であり、初代である清延から始まりその後は朱印船貿易や呉服により巨万の富を得る家である。
「い、一大事にございます!京で信長様が明智光秀により討たれました!」
「な、何だと!それは本当なのか!」
「はい、本当にございます!」
「殿!今すぐに三河へと帰りますぞ!」
「いや、酒井。わしは京へ行き追腹をする。」
追腹とは死んだ主君を追って家臣が腹を切ることである。
「な、何をおっしゃるのですか殿!まだあなたは生きていないといけないのです!」
「しかし、信長様亡き後わしはどうすればよいのか。」
「大丈夫でございます!殿はこのような窮地を何度もくぐり抜けて来られたではありませんか!」
「殿、三河への帰り道は用意できております。ただ、少々危険ですが…」
「皆の者、すまない。また弱音を吐いてしまった。まずは三河へ生きて帰ろう。それで帰り道とは伊賀越えか?」
伊賀越え、京などの畿内より東国へと向かう際に伊賀国(今の三重県の一部)を通ることである。この当時、伊賀では超大規模な一揆が起きておりその範囲は伊賀を超えるほど。前年に信長が鎮圧していたが、信長の死により再発していることが考えられた。
「はい、ですが殿。ご安心ください。この本多忠勝、この命に変えても殿を三河へとお返しいたします。」
「あぁ、忠勝ありがとう。ただ、本当に死ぬなよ。まだお前は必要な人なのだ。」
「はっ、分かりました。」
「他の皆もともに生きて帰ろうぞ!」
こうして家康の人生において最も過酷な「伊賀越え」が始まった。
「…わしらは他の道を行こう。」
ある一人の人物を除いては…
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
枢軸国
よもぎもちぱん
歴史・時代
時は1919年
第一次世界大戦の敗戦によりドイツ帝国は滅亡した。皇帝陛下 ヴィルヘルム二世の退位により、ドイツは共和制へと移行する。ヴェルサイユ条約により1320億金マルク 日本円で200兆円もの賠償金を課される。これに激怒したのは偉大なる我らが総統閣下"アドルフ ヒトラー"である。結果的に敗戦こそしたものの彼の及ぼした影響は非常に大きかった。
主人公はソフィア シュナイダー
彼女もまた、ドイツに転生してきた人物である。前世である2010年頃の記憶を全て保持しており、映像を写真として記憶することが出来る。
生き残る為に、彼女は持てる知識を総動員して戦う
偉大なる第三帝国に栄光あれ!
Sieg Heil(勝利万歳!)
浅井長政は織田信長に忠誠を誓う
ピコサイクス
歴史・時代
1570年5月24日、織田信長は朝倉義景を攻めるため越後に侵攻した。その時浅井長政は婚姻関係の織田家か古くから関係ある朝倉家どちらの味方をするか迷っていた。
連合航空艦隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年のロンドン海軍軍縮条約を機に海軍内では新時代の軍備についての議論が活発に行われるようになった。その中で生れたのが”航空艦隊主義”だった。この考えは当初、一部の中堅将校や青年将校が唱えていたものだが途中からいわゆる海軍左派である山本五十六や米内光政がこの考えを支持し始めて実現のためにの政治力を駆使し始めた。この航空艦隊主義と言うものは”重巡以上の大型艦を全て空母に改装する”というかなり極端なものだった。それでも1936年の条約失効を持って日本海軍は航空艦隊主義に傾注していくことになる。
デモ版と言っては何ですが、こんなものも書く予定があるんだなぁ程度に思ってい頂けると幸いです。
蒼雷の艦隊
和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。
よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。
一九四二年、三月二日。
スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。
雷艦長、その名は「工藤俊作」。
身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。
これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。
これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
戦争はただ冷酷に
航空戦艦信濃
歴史・時代
1900年代、日露戦争の英雄達によって帝国陸海軍の教育は大きな変革を遂げた。戦術だけでなく戦略的な視点で、すべては偉大なる皇国の為に、徹底的に敵を叩き潰すための教育が行われた。その為なら、武士道を捨てることだって厭わない…
1931年、満州の荒野からこの教育の成果が世界に示される。
大航海時代 日本語版
藤瀬 慶久
歴史・時代
日本にも大航海時代があった―――
関ケ原合戦に勝利した徳川家康は、香木『伽羅』を求めて朱印船と呼ばれる交易船を東南アジア各地に派遣した
それはあたかも、香辛料を求めてアジア航路を開拓したヨーロッパ諸国の後を追うが如くであった
―――鎖国前夜の1631年
坂本龍馬に先駆けること200年以上前
東の果てから世界の海へと漕ぎ出した、角屋七郎兵衛栄吉の人生を描く海洋冒険ロマン
『小説家になろう』で掲載中の拙稿「近江の轍」のサイドストーリーシリーズです
※この小説は『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』で掲載します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる