本能のままに

揚羽

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狸狩り

伊賀越え

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本能寺の変当日、家康と徳川家臣団は堺で見物をしていた。

「やはり堺は活気があっていいのう。そう思わないか、酒井。」

「えぇ、私もそう思います。このようなところが三河にもあればよかったのですが。」

「殿!やはり私はこのようなところにいるよりも戦をしたいです!」

「まぁ落ち着け忠勝。戦はこれからもたくさんやるからな。それよりも今は私の護衛として守っていてくれ。」

「しかし殿。もうこの日の本も織田様によって統一されそうなのです。もう護衛なども必要なくなるのでは?」

「いや、それは違うぞ直政。いくら織田様が天下を統一しようとも殿に歯向かおうとしてくる者はいくらでもおるのだ。」

「そうでしたか。申し訳ありません。殿、榊原様。」

「あぁ、分かれば良い。」

「では、そろそろ京へと向かうとするかな。」

「えぇ、そうしましょう。殿。」

その徳川家康一行に血相を変えて向かってくる一人の男がいた。

「と、徳川様!」

「おぉ、そなたは茶屋四郎次郎清延ではないか。そんなに急いでどうしたのだ?」

茶屋四郎次郎、その名前は京の豪商の世襲名であり、初代である清延から始まりその後は朱印船貿易や呉服により巨万の富を得る家である。

「い、一大事にございます!京で信長様が明智光秀により討たれました!」

「な、何だと!それは本当なのか!」

「はい、本当にございます!」

「殿!今すぐに三河へと帰りますぞ!」

「いや、酒井。わしは京へ行き追腹をする。」

追腹とは死んだ主君を追って家臣が腹を切ることである。

「な、何をおっしゃるのですか殿!まだあなたは生きていないといけないのです!」

「しかし、信長様亡き後わしはどうすればよいのか。」

「大丈夫でございます!殿はこのような窮地を何度もくぐり抜けて来られたではありませんか!」

「殿、三河への帰り道は用意できております。ただ、少々危険ですが…」

「皆の者、すまない。また弱音を吐いてしまった。まずは三河へ生きて帰ろう。それで帰り道とは伊賀越えか?」

伊賀越え、京などの畿内より東国へと向かう際に伊賀国(今の三重県の一部)を通ることである。この当時、伊賀では超大規模な一揆が起きておりその範囲は伊賀を超えるほど。前年に信長が鎮圧していたが、信長の死により再発していることが考えられた。

「はい、ですが殿。ご安心ください。この本多忠勝、この命に変えても殿を三河へとお返しいたします。」

「あぁ、忠勝ありがとう。ただ、本当に死ぬなよ。まだお前は必要な人なのだ。」

「はっ、分かりました。」

「他の皆もともに生きて帰ろうぞ!」

こうして家康の人生において最も過酷な「伊賀越え」が始まった。

「…わしらは他の道を行こう。」

ある一人の人物を除いては…
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