本能のままに

揚羽

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本能寺の変

本能寺の変

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1582年6月2日未明桂川
「殿、本当によろしいのですか?」

すでに馬から降りた斎藤利三は自分の主君である明智光秀に問いかけた。

「ああ、もうここまで来てしまったのだ。今更引き返せるわけなかろう。」

光秀も馬から降り利三の問いに答えた。その声は低く夜の静けさに消えていった。

「ならば殿、出陣の下知を。」
「ああ、わかっておる。」

光秀は自分の配下である足軽たちの前に立った。

「これより我らは本能寺へと向かう。皆の中には妻子がいるものもおろう。だが、今だけはその命をわしに預けてくれ。皆の命と引き換えにしても奴を討ち滅ぼすのだ。」

「敵は本能寺にあり!」
その声を合図に兵たちは京の町へと動き出した。


京 本能寺
この日信長は前日に茶会を開き、そのまま本能寺に泊まっていた。

信長はもう間もなく夜が明ける頃どこからかの騒ぎで目が覚めた。

「何だ、こんな明け方に喧嘩でもしておるのか?」

信長は小姓たちの喧嘩だと思い気に留めなかったが次第に鉄砲の音も聞こえてきた。

「火縄の音…喧嘩の騒ぎではなさそうだな。まさか謀反か?」

その時信長の寝室のふすまが勢いよく開いた。

「信長様!謀反にございます!」

ふすまを開けたのは信長の小姓である森蘭丸であった。この日は信長とともに本能寺に泊まっていたのである。

「この謀反何者の企てか。城助が別心か。」

このとき信長はまず最初に嫡男、織田信忠の謀反を考えたと言われている。

「いえ、あの水色桔梗の旗からして明智の者と思われます。」

「明智か…そうか、貴様であったか!俺の天下に歯向かうと申すか!」

「信長様、いかがなされますか?今抜け道を探させておりますが。」

「ふん、そんなことをしてもすぐに奴に見つかるわ。すぐに弥助を呼べ!」

弥助とはかつて宣教師とともに日本へやって来た黒人奴隷である。この者を信長は気に入り自分の家臣としていた。

「ノブナガ様、お呼びですか。」

「弥助、貴様は信忠の元へ向かえ。奴はわしのあとに信忠を討ちに行くであろう。」

「分かりました。ではノブナガ様ご無事で。」

信長は弥助が信忠の元へ向かったあと、自分の部屋から刀と弓を手に持った。

「信長様!応戦するおつもりですか!」

「ああ、謀反されたのならばやつの首叩き落とすまでよ。」

本能寺にて時代の変わる気配がした。

京 北西部 愛宕山付近

「おぉ、京の町か火の海じゃねえか!まるで100年前の応仁の乱みてぇだなぁ。本当にこっから行けるのか?」

「『行けるのか?』ではないだろう。行かねばならんのだ。」

「まぁそうだけれどなぁ。」

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