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第1章 最期の別れの後、最初に出会うまで
第15話 キミと現世でのハジメテの別れ
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ミアに関する話がある程度終わった後も、夕愛のお父さんお母さん、理人と遥、それに2人の両親たちみんなから、僕についてたくさん質問されて、ご飯も話も、およそ満足できたような空気になった頃、夕愛のお父さんが僕を呼んで、みんなから少し離れた縁側に連れ出す。
数時間ぶりに真面目な表情と声音だったので、僕の方も少し緊張しながらついていった。
柊さんはふぅと一息つくと、落ち着いた声色で、ゆっくりと語りだす。
「まずは今日はパーティーに来てくれてありがとう。帰国直後で疲れているだろうに、無理をさせてしまったね。色々驚かされはしたけど、昨日ショックを受けたばかりで、今朝は家を出ることも嫌がっていた夕愛が、今は向こうであんなに笑顔で話せているのは、たぶん君のおかげなんだろうね。それで知夜くんに、ちょっとだけ真面目なお話、というかお願いをしようと思ってね。単刀直入に言うと、これから夕愛の付き合いについてだ」
「そ、それは、夕愛と会うな、別れろという話、でしょうか?」
それは嫌だ。夕愛は絶対に僕の運命の人だ。彼女を逃すくらいなら僕は他の何でも捨てられるし、彼女のためなら全部拾いにいく覚悟もあるぞ!
強い意志があることを示そうと表情筋に力を込めて柊さんを見つめて、もとい睨んでいると、柊さんは逆に頬の力を抜いて微笑む。
「いや、そうではなくてね。むしろ、夕愛の面倒をよろしくお願いするよ、という話さ」
最初とはえらく違うお願いに、構えていた話とは真逆の話題に、僕はきょとんとしてしまった。
「えっと、もちろんです。そんなのは当然じゃないですか。僕は夕愛のお婿さんになることが決まってるんですから!」
「いやいやいや。お婿に迎えるわけじゃないよ、結婚は許さないよ、決まってないよ。友達として、夕愛のことをサポートしてほしい、ということさ」
あぁ、そういうことですか。
お義父さんにまだ認めていただけないのは残念だけど、最初に比べて大分優しくなってるし、そのうちなんとかなるでしょ!
「それで、真面目な話だけどね、いつまで続くのかわからないけど、うちの夕愛はこれから声が出ないことが日常生活の上で大きな障害になると思う。これについて君はどう思ってるのか、どれくらい考えているのか、今の素直な気持ちを正直に答えてくれないかい?」
お義父さんは僕を試してるんだろうか。だけど、そんなのは僕にとって考えるまでもないことです。
「一日でも早く、彼女のことを守れる力をつけて、どんな困難があっても常に夕愛の隣にいて、困ることがなにもない生活を送れるようにサポートしたいと思ってます。そのために、まずは父さんたちの会社でもっと仕事をさせてもらってお金をもらったり、いろんな賞をとったり、運動も勉強も頑張って、世の中からも評価されるような、誠実な男になろうと思ってます!」
途中で唖然とするお義父さんを置いて、素直に思ってることを伝えて、さらに続ける。
「夕愛にとっては、きっと辛いことも多いでしょうし、不便なことも少なからずあると思います。でも、夕愛には申し訳ないんですけど、夕愛の心の中を僕だけが知れるなんて、僕にとっては嬉しいとも思ってしまっています。だから僕は、そんな夕愛のことを守りたいんです」
言い切った。
お義父さんの口がぽかんとあいている。
僕らの間に沈黙が流れて、少し離れたところで楽しそうに笑い合っているみんなの声が小さく聞こえる。
そんな長いような短いような時間がしばらく過ぎて、お義父さんが我を思い出したように沈黙を破る。
「お、おぉう。君は本当に、まったく。小学校低学年だとは思えないね......。想像以上に考えてくれているんだね。そうか......。確かに君はすでに俺たちの会社で、一人のプログラマとして成果も上げてくれているようだし、きっと君の言うような大きな目標も達成できるかもしれないね」
最初は僕の年齢に不釣り合いなマシンガントークに戸惑っていた様子だったけど、後半には優しい笑みを向けてくれている。
「うん、わかった。ではやはり、君に夕愛を任せよう。大変になるかもしれないけど、よろしく頼むよ。なにかあれば、できる限り力になるから、いつでも声をかけてくれ!」
お義父さんが握手を求めてきたので、僕はそれに応じながら元気よく応える。
「はい、もちろんです!こちらこそ、よろしくお願いします、お義父さん!」
「だからお義父さんと呼ぶんじゃない!そっちは許してない!」
お義父さんは照れているのかな?しょうがない、ここは僕が折れておこう。
「わかりました。じゃあ結婚の話はまた今度お願いします。今日のところは夕愛とのお付き合いを許してもらうだけにしますね」
「おいおいお~い!それも許してないからね!?君には、夕愛のサポートをお願いするだけ!手を出すんじゃないよ!」
お義父さんが照れ隠しに大きな声をあげていると、お義父さんが僕を怒っていると思ったのか、離れた場所に居た夕愛が険しい表情をしてこちらに走り寄ってくる。
そして僕をぎゅっと抱きしめながら、お義父さんを睨んでいる。
僕が呆気にとられていると、夕愛が僕の目を見つめて、<私のお父さんが知夜くんをいじめちゃってごめんね?>と伝えてきて、また唇をぺろっとしてきた。
う~ん、やっぱりとても美味しくて気持ちいいね!
その様子を目の当たりにしたお父さんはわなわなと震える。
「や、やっぱり駄目だ駄目だ駄目だー!結婚など許さん!付き合うことも許さんからな!」
またお義父さんが大きな声を出す。離れているお義母さんは相変わらずあらあらうふふ~と頬に手を当ててにこやかな様子。
他のみんなも生暖かい目で僕らの様子を伺ってる。
夕愛も僕を抱きしめながら、目を見つめてきている。
<知夜くん!『そんなこというお父さんのことなんて大っ嫌い!』って伝えて!>
「あー、えーっと、お義父さん。夕愛が、そのー。そんなことを言うお義父さんのことは嫌......「くっそぉーーーーーー!!!許すのはまだ付き合うことだけだぞ!お義父さんと呼ぶでない!だからお父さんのこと嫌いにならないでくれー!」......いだ、と」
さしもの柊さんも、夕愛に嫌いだと思われることには耐えられないようだ。
夕愛の気持ちを伝えきる前に譲歩してくれる。ちょっと申し訳ないなぁ~。
でも、柊さんのその譲歩に夕愛は満足したようで、僕の心臓を簡単に停止させる女神な笑顔で、柊さんに抱きついてすりすりしている。
くっそー。お義父さん。そのポジションは僕がほしいんですが......。
それからさらに時間も流れ、良い頃合いになったので、パーティーはお開きにしようということになった。
そんな中夕愛は今、お義父さんにだっこされて強制的に家に連れ帰られそうになっている。
まぁ、今日は遅いし、寂しいけど、仕方ないよね......。
時差の関係で眠気が強くなってきていることも相まって、僕の方はさすがに今日は諦めて帰ろうという気持ちになっていた。なっていたんだけど......。
<やだー!知夜くんと一緒に寝るのー!助けて知夜くん!このままじゃお父さんに連れ帰られちゃうよ!離れたくないよぉー!>
彼女の心の声は僕にしか届かないけど、なんとか抵抗しようとしてお父さんの背中をポカポカ叩いている。
<あぁ夕愛。担がれてる姿も、怒ってる姿も、涙目な姿も、本当にありえないほど最高にかわいいよ!>
<そ、それは嬉しいけどっ!でも今はそうじゃなくてー!助けてよ~!>
「こ、こら、夕愛!お父さんの背中を叩くんじゃない!それに、初対面の男の子と一緒に寝るなんて、さすがにそれは許さないよ!」
いくらなんでも初対面で一緒に夜を過ごすのは許されず、奇しくも僕達は初めての別れを体験することになった。
数時間ぶりに真面目な表情と声音だったので、僕の方も少し緊張しながらついていった。
柊さんはふぅと一息つくと、落ち着いた声色で、ゆっくりと語りだす。
「まずは今日はパーティーに来てくれてありがとう。帰国直後で疲れているだろうに、無理をさせてしまったね。色々驚かされはしたけど、昨日ショックを受けたばかりで、今朝は家を出ることも嫌がっていた夕愛が、今は向こうであんなに笑顔で話せているのは、たぶん君のおかげなんだろうね。それで知夜くんに、ちょっとだけ真面目なお話、というかお願いをしようと思ってね。単刀直入に言うと、これから夕愛の付き合いについてだ」
「そ、それは、夕愛と会うな、別れろという話、でしょうか?」
それは嫌だ。夕愛は絶対に僕の運命の人だ。彼女を逃すくらいなら僕は他の何でも捨てられるし、彼女のためなら全部拾いにいく覚悟もあるぞ!
強い意志があることを示そうと表情筋に力を込めて柊さんを見つめて、もとい睨んでいると、柊さんは逆に頬の力を抜いて微笑む。
「いや、そうではなくてね。むしろ、夕愛の面倒をよろしくお願いするよ、という話さ」
最初とはえらく違うお願いに、構えていた話とは真逆の話題に、僕はきょとんとしてしまった。
「えっと、もちろんです。そんなのは当然じゃないですか。僕は夕愛のお婿さんになることが決まってるんですから!」
「いやいやいや。お婿に迎えるわけじゃないよ、結婚は許さないよ、決まってないよ。友達として、夕愛のことをサポートしてほしい、ということさ」
あぁ、そういうことですか。
お義父さんにまだ認めていただけないのは残念だけど、最初に比べて大分優しくなってるし、そのうちなんとかなるでしょ!
「それで、真面目な話だけどね、いつまで続くのかわからないけど、うちの夕愛はこれから声が出ないことが日常生活の上で大きな障害になると思う。これについて君はどう思ってるのか、どれくらい考えているのか、今の素直な気持ちを正直に答えてくれないかい?」
お義父さんは僕を試してるんだろうか。だけど、そんなのは僕にとって考えるまでもないことです。
「一日でも早く、彼女のことを守れる力をつけて、どんな困難があっても常に夕愛の隣にいて、困ることがなにもない生活を送れるようにサポートしたいと思ってます。そのために、まずは父さんたちの会社でもっと仕事をさせてもらってお金をもらったり、いろんな賞をとったり、運動も勉強も頑張って、世の中からも評価されるような、誠実な男になろうと思ってます!」
途中で唖然とするお義父さんを置いて、素直に思ってることを伝えて、さらに続ける。
「夕愛にとっては、きっと辛いことも多いでしょうし、不便なことも少なからずあると思います。でも、夕愛には申し訳ないんですけど、夕愛の心の中を僕だけが知れるなんて、僕にとっては嬉しいとも思ってしまっています。だから僕は、そんな夕愛のことを守りたいんです」
言い切った。
お義父さんの口がぽかんとあいている。
僕らの間に沈黙が流れて、少し離れたところで楽しそうに笑い合っているみんなの声が小さく聞こえる。
そんな長いような短いような時間がしばらく過ぎて、お義父さんが我を思い出したように沈黙を破る。
「お、おぉう。君は本当に、まったく。小学校低学年だとは思えないね......。想像以上に考えてくれているんだね。そうか......。確かに君はすでに俺たちの会社で、一人のプログラマとして成果も上げてくれているようだし、きっと君の言うような大きな目標も達成できるかもしれないね」
最初は僕の年齢に不釣り合いなマシンガントークに戸惑っていた様子だったけど、後半には優しい笑みを向けてくれている。
「うん、わかった。ではやはり、君に夕愛を任せよう。大変になるかもしれないけど、よろしく頼むよ。なにかあれば、できる限り力になるから、いつでも声をかけてくれ!」
お義父さんが握手を求めてきたので、僕はそれに応じながら元気よく応える。
「はい、もちろんです!こちらこそ、よろしくお願いします、お義父さん!」
「だからお義父さんと呼ぶんじゃない!そっちは許してない!」
お義父さんは照れているのかな?しょうがない、ここは僕が折れておこう。
「わかりました。じゃあ結婚の話はまた今度お願いします。今日のところは夕愛とのお付き合いを許してもらうだけにしますね」
「おいおいお~い!それも許してないからね!?君には、夕愛のサポートをお願いするだけ!手を出すんじゃないよ!」
お義父さんが照れ隠しに大きな声をあげていると、お義父さんが僕を怒っていると思ったのか、離れた場所に居た夕愛が険しい表情をしてこちらに走り寄ってくる。
そして僕をぎゅっと抱きしめながら、お義父さんを睨んでいる。
僕が呆気にとられていると、夕愛が僕の目を見つめて、<私のお父さんが知夜くんをいじめちゃってごめんね?>と伝えてきて、また唇をぺろっとしてきた。
う~ん、やっぱりとても美味しくて気持ちいいね!
その様子を目の当たりにしたお父さんはわなわなと震える。
「や、やっぱり駄目だ駄目だ駄目だー!結婚など許さん!付き合うことも許さんからな!」
またお義父さんが大きな声を出す。離れているお義母さんは相変わらずあらあらうふふ~と頬に手を当ててにこやかな様子。
他のみんなも生暖かい目で僕らの様子を伺ってる。
夕愛も僕を抱きしめながら、目を見つめてきている。
<知夜くん!『そんなこというお父さんのことなんて大っ嫌い!』って伝えて!>
「あー、えーっと、お義父さん。夕愛が、そのー。そんなことを言うお義父さんのことは嫌......「くっそぉーーーーーー!!!許すのはまだ付き合うことだけだぞ!お義父さんと呼ぶでない!だからお父さんのこと嫌いにならないでくれー!」......いだ、と」
さしもの柊さんも、夕愛に嫌いだと思われることには耐えられないようだ。
夕愛の気持ちを伝えきる前に譲歩してくれる。ちょっと申し訳ないなぁ~。
でも、柊さんのその譲歩に夕愛は満足したようで、僕の心臓を簡単に停止させる女神な笑顔で、柊さんに抱きついてすりすりしている。
くっそー。お義父さん。そのポジションは僕がほしいんですが......。
それからさらに時間も流れ、良い頃合いになったので、パーティーはお開きにしようということになった。
そんな中夕愛は今、お義父さんにだっこされて強制的に家に連れ帰られそうになっている。
まぁ、今日は遅いし、寂しいけど、仕方ないよね......。
時差の関係で眠気が強くなってきていることも相まって、僕の方はさすがに今日は諦めて帰ろうという気持ちになっていた。なっていたんだけど......。
<やだー!知夜くんと一緒に寝るのー!助けて知夜くん!このままじゃお父さんに連れ帰られちゃうよ!離れたくないよぉー!>
彼女の心の声は僕にしか届かないけど、なんとか抵抗しようとしてお父さんの背中をポカポカ叩いている。
<あぁ夕愛。担がれてる姿も、怒ってる姿も、涙目な姿も、本当にありえないほど最高にかわいいよ!>
<そ、それは嬉しいけどっ!でも今はそうじゃなくてー!助けてよ~!>
「こ、こら、夕愛!お父さんの背中を叩くんじゃない!それに、初対面の男の子と一緒に寝るなんて、さすがにそれは許さないよ!」
いくらなんでも初対面で一緒に夜を過ごすのは許されず、奇しくも僕達は初めての別れを体験することになった。
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