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第1章 最期の別れの後、最初に出会うまで
第11話 キミとハジメテの共同作業
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「なにか、伝えあってみてもらえたりするだろうか?」
僕は今、将来のお義父さん、もとい目の前の彼女、夕愛のお父さんに、僕と彼女がいかにわかりあえるのか、証拠の提示を求められている。
「お、おい、柊。やっぱり信じられないのか?」
「確かに正直に言えば信じられないが、それ以上に、今の状態の娘を初対面の君と仲良くさせていいのか、見極めたいと思ってね」
なるほど、尤もだ。
何をお見せすれば、僕らのわかりあってることを認めてもらえるんだろうか。
ここは素直に聞いてみよう。
「彼女と結婚するためなら、なんでもします。何をすれば信じてもらえるでしょうか?」
「そうだなぁ。まずは、君が知らないはずの夕愛の情報を、夕愛自身から聞いてもらうとかだろうか」
なるほど、そういうことができれば確かに証明になるね。だけど......。
「『僕が知らない』ということはどうやって証明したらいいんでしょうか......?」
そう、最初の問題はそこにある。
「ん?君は夕愛とは初対面なのだから、個人情報ならほとんど知らないだろう?」
普通はそうかもしれないけど......。
「僕にはユウがいるので、調べようと思えば簡単なことは調べられちゃいます」
「ユウ?」
「はい、お義父さんも知っていると思いますけど、僕のサポートをしてくれる、このYouAIというプログラムです。彼女なら、ちょっとした個人情報くらいなら簡単に集められますし、それを僕が知っていてもおかしくはありませんよね?」
僕はユウの映った自分の端末をお義父さんに見えるように向けてそう伝える。
それに合わせるようにユウが話し始める。
『ふふん、はじめまして、皇柊さん。私はマスターに作成いただいた疑似人格形成エンジンを備えた生活サポートエージェントシステム、|YouAI(ユウ・アイ)と申します。マスターの生活全般をサポートするため、自律的に周囲の方々の情報を可能な範囲で集めております』
お義父さん、もとい柊さんが驚いた表情を見せる。ユウを初めて見た人は大体こんな反応を見せてくれる。
けど、流石に柊さんは父さんから話を聞いてると思っていたけど?
「お、驚いた。本当にこれほど人らしい挙動をするシステムだったなんて。さっきも話には聞いていたけど、これほどのものだとは思ってもみなかったよ」
そうか、予想以上だったということか。だったら頑張って作った甲斐も、使い続けて教育した甲斐もあったってものだね。
僕が嬉しい気持ちになっていると、ユウの方も嬉しがっている挙動を見せる。
『お褒めいただき光栄です。これもマスターの開発された疑似人格形成エンジンが優秀だからですね。つまりマスターの開発能力の高さゆえです!』
ユウがえっへんと胸を張って告げる。うん、システムにそんなに持ち上げられると、僕が言わせてるみたいになるからね?ほどほどにしてね?
僕が苦笑いしていると、柊さんが意を得たというように話し出す。
「ふむ、その年齢でこれだけのものを作るとは、朝人秘蔵の天才プログラマとは伊達じゃないね。それで?知夜くんは、彼女、ユウくん、でよかったかな?からどのような情報を受け取っているのかな?」
「え?」
「夕愛の情報として事前に君が知っている情報は何か?と聞いているんだよ。それを聞いた上で、君の知らないことを、夕愛と伝えあってもらおうと思ってね」
「そんな自己申告でいいんですか?」
柊さんからみれば、僕が知ってるじハズの情報を知らないと言って、この後、あたかも今知ったかのように演技することもできるだろう、と疑ってかかってもおかしくないと思うんだけど。
「知夜くんはそんなウソを付くような人間なのかい?」
柊さんは挑戦的な笑みを見せながら告げてくる。
「ははは、いやなに、信じられないという気持ちは未だにあるが、正直こんな常識はずれなシステムを開発してしまうような異常な君のことだ。信じられないことを起こすこともあり得ると思ってね。
ただ、言葉を交わさなくても気持ちを伝えあえるなんてにわかには信じがたい話だからさ。本当かどうかは見せて欲しいと思っているんだ。」
気づいたら先程までの緊張感に溢れた雰囲気が柔らかくなっている。
父さんは横で「おいおい、うちの自慢の息子を『異常』とはお言葉だねぇ」なんて言ってるけど、こちらも僕と夕愛の以心伝心?が本当なのか気になっている様子。
「信じてもらえそうで嬉しいです!えっと、僕が知ってるのは、彼女の名前が皇夕愛ってことと、理人と遥の幼馴染ということくらいでしょうか。あとは、口に舌を入れると凄く気持ちよくなって......モゴモゴ......」
話している途中で真っ赤になった夕愛に口を塞がれてしまった。彼女を見ると、頬を膨らませてプルプルと全身震えながら、怒った表情をしていた。
急な行動に驚いてしまって、目を合わせて心の中で語りかけてみる。
<ど、どうしたの!?>
<何を言おうとしてるの!?恥ずかしいよ!>
<え?でも、お義父さんに僕が知ってることをきちんと伝えておかないといけないと思って>
<それは言わなくてもいいでしょぉ!?>
うん、怒った表情も最高に可愛いな。
<もうっ!可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、今じゃないでしょ!?>
ん?あれ?僕さっきの可愛いってのは伝えようと意識してなかったんだけどな......。
<でも、聞こえてるよ?>
なんてことだ、今までは「伝えよう」と意識したことだけ伝わってるかと思ってたんだけど、そうじゃないらしい。
でも全部が伝わってるってわけじゃないんだよね?これは後で条件の検証が必要かもなぁ。
目を見つめるっていうのが、この心の中を伝え合う上でのトリガーなんだろうなっていうのは直感的にわかっているんだけどなぁ。
<そうだね、それは後で。今はこれ以上余計なこと話さないで!>
<えー、でも情報は正確な方がよくないかな?>
<まだ口答えするの?>
<はい、だまります>
ドスの利いた心の声で怖くない脅しをしてくる夕愛。あー、そんなところもかわいー!
<もうもう!嬉しいけど!怖くないとか!怒るよ!>
あ、これも伝わってるのか、なんも隠し事できないじゃん。する気もないけど。ってか好きな気持ちが伝わるのいいじゃん。
<私も大好きだけど!今はお父さんたちのこと先になんとかしないと!>
このやり取りを不思議そうな顔で眺める父さん達。
夕愛が赤く膨れっ面になって僕の口をふさいで、しばらく見つめ合って動かないんだから、そりゃ傍から見たら不思議にも思うよね。
「ごめんなさい。夕愛から余計なことを言わないでって怒られちゃってました」
「あぁ、なんとなくそうなんじゃないかとは思ったけど......。なんだか変わった光景を見せられて、狐につままれた気分だよ......。まぁいい。それで?夕愛について君が知ってることはそれで全部かい?」
「まぁそうですね。彼女が恥ずかしがって言葉にしないで欲しいらしいこと以外は、それだけです。」
「お、おう、そうかそうか。意外と知らないんだね?いや、この場合なんでそんなことまで知っているんだと言うべきなんだろうか。正直さっきのやり取りを見て大方信じてしまっている自分がいるんだけど」
信じてもらえたのなら何よりだ。
でも、夕愛と通じ合ってる証明として、もっとちゃんとしたものを示しておきたいな。
僕が知らない夕愛の情報も欲しいし。
「一応なにか披露しておきたいんですが、何を聞けば信じてもらえるでしょうか......」
改めて始めの質問に戻ってきたわけだ。
僕たちがうーんと悩んでいると、さっきまで遠巻きに見ていた母さんとお義母さん、もとい夕愛のお母さんが近寄ってくる。
僕らの目の前まで来ると、夕愛のお母さん、皇奏恋(すめらぎかれん)さんが頬に片手を添えながらニコニコと微笑んで話しかけてくる。
「うふふ、お話は聞かせてもらったわ!さっきからとっても楽しそうねぇ~。難しく考えなくても、もし知夜くんが本当に夕愛ちゃんの気持ちがわかるなら、いくつか夕愛ちゃんのことを質問して、それを答えてもらうってことでいいんじゃないかしら?」
確かに。別に特別なことじゃなくても、いろんなことに答えられればある程度証明になるかな。
僕がそう思っていると、父さんも柊さんも同意だったようで、「うん、そうだね。そうしよう」と言って質問が始まった。
質問の前に、アイデアをだした奏恋さんが夕愛に語りかける。
「いーい、夕愛ちゃん。これからお話する質問にはきちんと答えること。知夜くんが言ったことがあってれば首を縦に振って、違ったら横にふること。絶対に嘘はついちゃだめよ?」
奏恋さんの優しい語り口に、夕愛も大人しく頷いてみせる。
その様子を見て、奏恋さんはうんうん、と満足したようにうなずいた後、「これが夕愛ちゃんと知夜くんの初めての共同作業ね~」などと呟いたかと思うと、ニヤっと笑ってから質問を始める。
「まずは、そうねぇ~。夕愛ちゃんの初恋はいつかわかるかしら?」
夕愛の顔がまた真っ赤に染まった。
僕は今、将来のお義父さん、もとい目の前の彼女、夕愛のお父さんに、僕と彼女がいかにわかりあえるのか、証拠の提示を求められている。
「お、おい、柊。やっぱり信じられないのか?」
「確かに正直に言えば信じられないが、それ以上に、今の状態の娘を初対面の君と仲良くさせていいのか、見極めたいと思ってね」
なるほど、尤もだ。
何をお見せすれば、僕らのわかりあってることを認めてもらえるんだろうか。
ここは素直に聞いてみよう。
「彼女と結婚するためなら、なんでもします。何をすれば信じてもらえるでしょうか?」
「そうだなぁ。まずは、君が知らないはずの夕愛の情報を、夕愛自身から聞いてもらうとかだろうか」
なるほど、そういうことができれば確かに証明になるね。だけど......。
「『僕が知らない』ということはどうやって証明したらいいんでしょうか......?」
そう、最初の問題はそこにある。
「ん?君は夕愛とは初対面なのだから、個人情報ならほとんど知らないだろう?」
普通はそうかもしれないけど......。
「僕にはユウがいるので、調べようと思えば簡単なことは調べられちゃいます」
「ユウ?」
「はい、お義父さんも知っていると思いますけど、僕のサポートをしてくれる、このYouAIというプログラムです。彼女なら、ちょっとした個人情報くらいなら簡単に集められますし、それを僕が知っていてもおかしくはありませんよね?」
僕はユウの映った自分の端末をお義父さんに見えるように向けてそう伝える。
それに合わせるようにユウが話し始める。
『ふふん、はじめまして、皇柊さん。私はマスターに作成いただいた疑似人格形成エンジンを備えた生活サポートエージェントシステム、|YouAI(ユウ・アイ)と申します。マスターの生活全般をサポートするため、自律的に周囲の方々の情報を可能な範囲で集めております』
お義父さん、もとい柊さんが驚いた表情を見せる。ユウを初めて見た人は大体こんな反応を見せてくれる。
けど、流石に柊さんは父さんから話を聞いてると思っていたけど?
「お、驚いた。本当にこれほど人らしい挙動をするシステムだったなんて。さっきも話には聞いていたけど、これほどのものだとは思ってもみなかったよ」
そうか、予想以上だったということか。だったら頑張って作った甲斐も、使い続けて教育した甲斐もあったってものだね。
僕が嬉しい気持ちになっていると、ユウの方も嬉しがっている挙動を見せる。
『お褒めいただき光栄です。これもマスターの開発された疑似人格形成エンジンが優秀だからですね。つまりマスターの開発能力の高さゆえです!』
ユウがえっへんと胸を張って告げる。うん、システムにそんなに持ち上げられると、僕が言わせてるみたいになるからね?ほどほどにしてね?
僕が苦笑いしていると、柊さんが意を得たというように話し出す。
「ふむ、その年齢でこれだけのものを作るとは、朝人秘蔵の天才プログラマとは伊達じゃないね。それで?知夜くんは、彼女、ユウくん、でよかったかな?からどのような情報を受け取っているのかな?」
「え?」
「夕愛の情報として事前に君が知っている情報は何か?と聞いているんだよ。それを聞いた上で、君の知らないことを、夕愛と伝えあってもらおうと思ってね」
「そんな自己申告でいいんですか?」
柊さんからみれば、僕が知ってるじハズの情報を知らないと言って、この後、あたかも今知ったかのように演技することもできるだろう、と疑ってかかってもおかしくないと思うんだけど。
「知夜くんはそんなウソを付くような人間なのかい?」
柊さんは挑戦的な笑みを見せながら告げてくる。
「ははは、いやなに、信じられないという気持ちは未だにあるが、正直こんな常識はずれなシステムを開発してしまうような異常な君のことだ。信じられないことを起こすこともあり得ると思ってね。
ただ、言葉を交わさなくても気持ちを伝えあえるなんてにわかには信じがたい話だからさ。本当かどうかは見せて欲しいと思っているんだ。」
気づいたら先程までの緊張感に溢れた雰囲気が柔らかくなっている。
父さんは横で「おいおい、うちの自慢の息子を『異常』とはお言葉だねぇ」なんて言ってるけど、こちらも僕と夕愛の以心伝心?が本当なのか気になっている様子。
「信じてもらえそうで嬉しいです!えっと、僕が知ってるのは、彼女の名前が皇夕愛ってことと、理人と遥の幼馴染ということくらいでしょうか。あとは、口に舌を入れると凄く気持ちよくなって......モゴモゴ......」
話している途中で真っ赤になった夕愛に口を塞がれてしまった。彼女を見ると、頬を膨らませてプルプルと全身震えながら、怒った表情をしていた。
急な行動に驚いてしまって、目を合わせて心の中で語りかけてみる。
<ど、どうしたの!?>
<何を言おうとしてるの!?恥ずかしいよ!>
<え?でも、お義父さんに僕が知ってることをきちんと伝えておかないといけないと思って>
<それは言わなくてもいいでしょぉ!?>
うん、怒った表情も最高に可愛いな。
<もうっ!可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、今じゃないでしょ!?>
ん?あれ?僕さっきの可愛いってのは伝えようと意識してなかったんだけどな......。
<でも、聞こえてるよ?>
なんてことだ、今までは「伝えよう」と意識したことだけ伝わってるかと思ってたんだけど、そうじゃないらしい。
でも全部が伝わってるってわけじゃないんだよね?これは後で条件の検証が必要かもなぁ。
目を見つめるっていうのが、この心の中を伝え合う上でのトリガーなんだろうなっていうのは直感的にわかっているんだけどなぁ。
<そうだね、それは後で。今はこれ以上余計なこと話さないで!>
<えー、でも情報は正確な方がよくないかな?>
<まだ口答えするの?>
<はい、だまります>
ドスの利いた心の声で怖くない脅しをしてくる夕愛。あー、そんなところもかわいー!
<もうもう!嬉しいけど!怖くないとか!怒るよ!>
あ、これも伝わってるのか、なんも隠し事できないじゃん。する気もないけど。ってか好きな気持ちが伝わるのいいじゃん。
<私も大好きだけど!今はお父さんたちのこと先になんとかしないと!>
このやり取りを不思議そうな顔で眺める父さん達。
夕愛が赤く膨れっ面になって僕の口をふさいで、しばらく見つめ合って動かないんだから、そりゃ傍から見たら不思議にも思うよね。
「ごめんなさい。夕愛から余計なことを言わないでって怒られちゃってました」
「あぁ、なんとなくそうなんじゃないかとは思ったけど......。なんだか変わった光景を見せられて、狐につままれた気分だよ......。まぁいい。それで?夕愛について君が知ってることはそれで全部かい?」
「まぁそうですね。彼女が恥ずかしがって言葉にしないで欲しいらしいこと以外は、それだけです。」
「お、おう、そうかそうか。意外と知らないんだね?いや、この場合なんでそんなことまで知っているんだと言うべきなんだろうか。正直さっきのやり取りを見て大方信じてしまっている自分がいるんだけど」
信じてもらえたのなら何よりだ。
でも、夕愛と通じ合ってる証明として、もっとちゃんとしたものを示しておきたいな。
僕が知らない夕愛の情報も欲しいし。
「一応なにか披露しておきたいんですが、何を聞けば信じてもらえるでしょうか......」
改めて始めの質問に戻ってきたわけだ。
僕たちがうーんと悩んでいると、さっきまで遠巻きに見ていた母さんとお義母さん、もとい夕愛のお母さんが近寄ってくる。
僕らの目の前まで来ると、夕愛のお母さん、皇奏恋(すめらぎかれん)さんが頬に片手を添えながらニコニコと微笑んで話しかけてくる。
「うふふ、お話は聞かせてもらったわ!さっきからとっても楽しそうねぇ~。難しく考えなくても、もし知夜くんが本当に夕愛ちゃんの気持ちがわかるなら、いくつか夕愛ちゃんのことを質問して、それを答えてもらうってことでいいんじゃないかしら?」
確かに。別に特別なことじゃなくても、いろんなことに答えられればある程度証明になるかな。
僕がそう思っていると、父さんも柊さんも同意だったようで、「うん、そうだね。そうしよう」と言って質問が始まった。
質問の前に、アイデアをだした奏恋さんが夕愛に語りかける。
「いーい、夕愛ちゃん。これからお話する質問にはきちんと答えること。知夜くんが言ったことがあってれば首を縦に振って、違ったら横にふること。絶対に嘘はついちゃだめよ?」
奏恋さんの優しい語り口に、夕愛も大人しく頷いてみせる。
その様子を見て、奏恋さんはうんうん、と満足したようにうなずいた後、「これが夕愛ちゃんと知夜くんの初めての共同作業ね~」などと呟いたかと思うと、ニヤっと笑ってから質問を始める。
「まずは、そうねぇ~。夕愛ちゃんの初恋はいつかわかるかしら?」
夕愛の顔がまた真っ赤に染まった。
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