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第1章 最期の別れの後、最初に出会うまで
第7話 キミの居ないハジマリ その2
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シャワーを出てさっと身支度を済ませてパンと牛乳を食べると、すぐに出発だった。
父さんが、民間の自動車運転手を手配するアプリで近くのドライバーを手配すると、10分ほどで車が到着した。
手荷物のスーツケース3つをトランクに詰めてもらい、父さんが助手席。僕と母さんが後部座席に座って、空港に向かった。
うちはテキサス州はヒューストンに居を構えていて、空港までは結構近い。
もちろん車は所持していたけど、帰国に際して売り払ってしまっていた。だから今日は珍しくUb◯rしているというわけだ。
車に揺られながら、これまでのアメリカでの暮らしや出会った仲間たちとの思い出を浮かべてノスタルジーに浸ったり、直接見たことも行ったこともないけど言葉だけはある程度話せる僕にとって不思議な日本という国に思いを馳せたり、これからおよそ半日間も機上で過ごさねばならない憂鬱感に苛まれたりしていた。
今回のフライトは、ヒューストンからダラスを経由して、日本に帰るルートらしい。およそ13時間、飛行機に揺られることになるみたいだ。
あまり乗り物が得意じゃない僕には拷問に近いものを感じさせるお品書きだ。
若干の悲壮感とともにしばらくぼーっと揺られているとすぐに空港についた。
時刻は5時30分。飛行機の時間は7時半から。
ここヒューストンからはダラスに向かう国内線なので1時間も前にチェックインしていればいいことを思えば、それなりに余裕がある。
父さん母さんと一緒にカウンターに向かって、チェックインを済ませて荷物を預ける。
これでかなり身軽になった。
カウンターからでたところで、数名の見慣れた人たちが居た。
僕のクラスメートや一緒に遊んだ子たち、それと彼らの両親がお見送りに来てくれたようだ。
「ハウディ、トモヤ」
「こんにちは!トモヤ!」
「こんにちは、トモ」
「............ハァイ......」
僕に声をかけてきてくれた彼ら/彼女らは、いつも一緒に遊んでいる特に仲のいい友達たちだ。
まぁ両親同士が仕事仲間だったり仲が良くて一緒にいる時間が長くなる内に、必然的に仲良くなったって感じなんだけど。
最初に元気よくテキサスな挨拶をしてきた子が、クリス・ワトソン。僕と同い年で、白人金髪をソフトモヒカンにした青い目の爽やか男子だ。
2人目の元気のいい子は、クリスのお姉ちゃんで、僕らの2歳年上のゼシカ・ワトソン。姉弟なので配色は同じだけど、クリスよりもブラウンに近い色でウェーブのかかった髪をしたしっかりもののお姉さん。
3人目は、ウィリアム・ブラウン。彼もクリスと僕の同い年で、クラスメート。共起てくれたメンツの中で唯一黒い肌を持った友達だ。凄く真面目で、いつも気を遣ってくれる仲良しさんなのだ。
そして最後の1人、俯いて、聞こえるかどうかの小さな声で挨拶をした気弱そうな女の子は、ミア・アンダーソン。年齢は僕より1つ上なんだけど、見ての通り気弱な性格でいじめられたりしがちなので、僕らみんなが守れるときには守っている。
「やぁ、クリス、ジェシー、ウィリー、それにミアも。ハウディ。元気だよ。みんな、来てくれて、今日会えてほんとに嬉しいよ!」
そう言って横を見てみると、彼らの両親達が僕の両親とハグしたり握手したりして当面の別れを惜しんでいるのを見て、僕らも真似をした。
クリスとは拳を作ってコツンと軽く合わせ、ジェシーつまりジェシカと、ウィリアムもといウィリーの2人とは軽いハグをした。
ミアともハグをしようとしたんだけど、彼女だけは俯いたまま少し遠くから動く気配がない。
「ミア?どうしたの?」
僕が問いかけるとキッと顔を上げて僕を睨みつけてきている。
見ると目が赤く腫れて、まだ涙の跡が残っており、すでに泣きはらしたことがわかる。
困惑してクリスたちの方を見ると、肩をすくめて大げさにも見えるジェスチャーでヤレヤレみたいにしている。
「ミア?そんなに僕との別れを哀しんでくれてるの?でもそんなに思いつめないで。きれいな顔が台無しだよ?」
僕がそんなキザったらしい言葉を吐いてみると、ミアはまた大粒のナミダをこぼしてみせる。
そのまま数秒睨みつけてきたかと思うと、急に僕の方へ走り寄ってきた。
チュッ。
頬に親愛のキスをされた。ハグの挨拶はよくあるけど、キスの挨拶は思ってるほど行われることはない。
僕らもキスをしたことはなかったので、これには少し驚いたんだ。
「ミア!?」
驚いてミアの方を掴んで引き剥がすと、やはり睨んでいる。
そんな表情でキスしないでほしいんだけどなぁ......とぼんやり思っていると、漸くミアが声を出してくれた。
「トモヤは私と離れ離れになっても平気なの!?なんでそんな平然としていられるの!?」
急に大きな声で怒られてしまった。
周りの皆はなぜか微笑ましい顔をしてるんだけど、僕が怒られてるのがそんなに嬉しいの!?
「ミア。平然となんてしてない。僕も本当に寂しいよ。でももうずっと会えないなんてわけじゃないんだし、僕らは幸せなことに連絡をとるための手段もあるじゃないか」
手元の端末を指しながら伝える。
「でも......」
それでも悲しみをさらに深めるミア。
そのときミアに向けられた端末の画面にユウが表れる。
『みなさん、こんにちは、ユウ・アイです!私からもお別れを言わせてください。そしてまたお会いしましょう!なに、私は電子の空間さえあればいつでもみなさんの元へ駆けつけられるわけなのですけれど!』
そう明るく話すユウにミア以外の3人が「またね」と返す。
数瞬待ってミアが何も言わないことを確認すると、ユウがさらに続ける。
『ミアさん。大丈夫です、ユウがマスターの側に居ますし、何かあればいつでもお伝えに参りますので元気をだしてください!』
そうか、ユウはミアを元気づけようとしてくれてるんだな。ありがとう。
感謝の気持ちを内心で示していると、ミアがポツリとなにかをつぶやいていたのを聞き逃してしまった。「あなたがいるのも厄介なのよ」みたいに言った気がしたけど、ミアがユウを邪険に扱うなんてことないだろうし、聞き間違えだろう。
「ユウ。ホントになにかあったら教えてくれるの?嘘じゃない?嘘だったらデリートしちゃうからね?」
ハイライトが若干消えたように見える目でユウに語りかけるミアに、僕自身も圧倒されていると、父さんが「そろそろ荷物検査行くぞー」と呼ばれてしまう。いよいよお別れの時間だ。
名残惜しいけど親友たちに最後の別れを伝えて、ミアには再度「必ずまた会えるからね」と言い残して離れた後、おじさんおばさんたち、つまり親友たちの両親ともハグしてお別れを言い、保安検査場に向かうのだった。
そこからは寂しい気持ちもありつつも、正直あまり実感が湧かないまま、気づけば日本についていた。
空港をでてすぐ感じた匂いは家で感じる匂いに近い気がして、始めてきた場所なのになんとなく安心できた。
ただ......ちょっと寒いな......。
今は3月。テキサスも暑いというわけではなかったけど、こんなに寒くはなかった気がする。
あとは......僕と似た見た目の人がこんなにたくさんいるのを、初めて見たな。
初めて感じる母国の印象は、そんな感動も他愛もない感想に留まった。
父さんが、民間の自動車運転手を手配するアプリで近くのドライバーを手配すると、10分ほどで車が到着した。
手荷物のスーツケース3つをトランクに詰めてもらい、父さんが助手席。僕と母さんが後部座席に座って、空港に向かった。
うちはテキサス州はヒューストンに居を構えていて、空港までは結構近い。
もちろん車は所持していたけど、帰国に際して売り払ってしまっていた。だから今日は珍しくUb◯rしているというわけだ。
車に揺られながら、これまでのアメリカでの暮らしや出会った仲間たちとの思い出を浮かべてノスタルジーに浸ったり、直接見たことも行ったこともないけど言葉だけはある程度話せる僕にとって不思議な日本という国に思いを馳せたり、これからおよそ半日間も機上で過ごさねばならない憂鬱感に苛まれたりしていた。
今回のフライトは、ヒューストンからダラスを経由して、日本に帰るルートらしい。およそ13時間、飛行機に揺られることになるみたいだ。
あまり乗り物が得意じゃない僕には拷問に近いものを感じさせるお品書きだ。
若干の悲壮感とともにしばらくぼーっと揺られているとすぐに空港についた。
時刻は5時30分。飛行機の時間は7時半から。
ここヒューストンからはダラスに向かう国内線なので1時間も前にチェックインしていればいいことを思えば、それなりに余裕がある。
父さん母さんと一緒にカウンターに向かって、チェックインを済ませて荷物を預ける。
これでかなり身軽になった。
カウンターからでたところで、数名の見慣れた人たちが居た。
僕のクラスメートや一緒に遊んだ子たち、それと彼らの両親がお見送りに来てくれたようだ。
「ハウディ、トモヤ」
「こんにちは!トモヤ!」
「こんにちは、トモ」
「............ハァイ......」
僕に声をかけてきてくれた彼ら/彼女らは、いつも一緒に遊んでいる特に仲のいい友達たちだ。
まぁ両親同士が仕事仲間だったり仲が良くて一緒にいる時間が長くなる内に、必然的に仲良くなったって感じなんだけど。
最初に元気よくテキサスな挨拶をしてきた子が、クリス・ワトソン。僕と同い年で、白人金髪をソフトモヒカンにした青い目の爽やか男子だ。
2人目の元気のいい子は、クリスのお姉ちゃんで、僕らの2歳年上のゼシカ・ワトソン。姉弟なので配色は同じだけど、クリスよりもブラウンに近い色でウェーブのかかった髪をしたしっかりもののお姉さん。
3人目は、ウィリアム・ブラウン。彼もクリスと僕の同い年で、クラスメート。共起てくれたメンツの中で唯一黒い肌を持った友達だ。凄く真面目で、いつも気を遣ってくれる仲良しさんなのだ。
そして最後の1人、俯いて、聞こえるかどうかの小さな声で挨拶をした気弱そうな女の子は、ミア・アンダーソン。年齢は僕より1つ上なんだけど、見ての通り気弱な性格でいじめられたりしがちなので、僕らみんなが守れるときには守っている。
「やぁ、クリス、ジェシー、ウィリー、それにミアも。ハウディ。元気だよ。みんな、来てくれて、今日会えてほんとに嬉しいよ!」
そう言って横を見てみると、彼らの両親達が僕の両親とハグしたり握手したりして当面の別れを惜しんでいるのを見て、僕らも真似をした。
クリスとは拳を作ってコツンと軽く合わせ、ジェシーつまりジェシカと、ウィリアムもといウィリーの2人とは軽いハグをした。
ミアともハグをしようとしたんだけど、彼女だけは俯いたまま少し遠くから動く気配がない。
「ミア?どうしたの?」
僕が問いかけるとキッと顔を上げて僕を睨みつけてきている。
見ると目が赤く腫れて、まだ涙の跡が残っており、すでに泣きはらしたことがわかる。
困惑してクリスたちの方を見ると、肩をすくめて大げさにも見えるジェスチャーでヤレヤレみたいにしている。
「ミア?そんなに僕との別れを哀しんでくれてるの?でもそんなに思いつめないで。きれいな顔が台無しだよ?」
僕がそんなキザったらしい言葉を吐いてみると、ミアはまた大粒のナミダをこぼしてみせる。
そのまま数秒睨みつけてきたかと思うと、急に僕の方へ走り寄ってきた。
チュッ。
頬に親愛のキスをされた。ハグの挨拶はよくあるけど、キスの挨拶は思ってるほど行われることはない。
僕らもキスをしたことはなかったので、これには少し驚いたんだ。
「ミア!?」
驚いてミアの方を掴んで引き剥がすと、やはり睨んでいる。
そんな表情でキスしないでほしいんだけどなぁ......とぼんやり思っていると、漸くミアが声を出してくれた。
「トモヤは私と離れ離れになっても平気なの!?なんでそんな平然としていられるの!?」
急に大きな声で怒られてしまった。
周りの皆はなぜか微笑ましい顔をしてるんだけど、僕が怒られてるのがそんなに嬉しいの!?
「ミア。平然となんてしてない。僕も本当に寂しいよ。でももうずっと会えないなんてわけじゃないんだし、僕らは幸せなことに連絡をとるための手段もあるじゃないか」
手元の端末を指しながら伝える。
「でも......」
それでも悲しみをさらに深めるミア。
そのときミアに向けられた端末の画面にユウが表れる。
『みなさん、こんにちは、ユウ・アイです!私からもお別れを言わせてください。そしてまたお会いしましょう!なに、私は電子の空間さえあればいつでもみなさんの元へ駆けつけられるわけなのですけれど!』
そう明るく話すユウにミア以外の3人が「またね」と返す。
数瞬待ってミアが何も言わないことを確認すると、ユウがさらに続ける。
『ミアさん。大丈夫です、ユウがマスターの側に居ますし、何かあればいつでもお伝えに参りますので元気をだしてください!』
そうか、ユウはミアを元気づけようとしてくれてるんだな。ありがとう。
感謝の気持ちを内心で示していると、ミアがポツリとなにかをつぶやいていたのを聞き逃してしまった。「あなたがいるのも厄介なのよ」みたいに言った気がしたけど、ミアがユウを邪険に扱うなんてことないだろうし、聞き間違えだろう。
「ユウ。ホントになにかあったら教えてくれるの?嘘じゃない?嘘だったらデリートしちゃうからね?」
ハイライトが若干消えたように見える目でユウに語りかけるミアに、僕自身も圧倒されていると、父さんが「そろそろ荷物検査行くぞー」と呼ばれてしまう。いよいよお別れの時間だ。
名残惜しいけど親友たちに最後の別れを伝えて、ミアには再度「必ずまた会えるからね」と言い残して離れた後、おじさんおばさんたち、つまり親友たちの両親ともハグしてお別れを言い、保安検査場に向かうのだった。
そこからは寂しい気持ちもありつつも、正直あまり実感が湧かないまま、気づけば日本についていた。
空港をでてすぐ感じた匂いは家で感じる匂いに近い気がして、始めてきた場所なのになんとなく安心できた。
ただ......ちょっと寒いな......。
今は3月。テキサスも暑いというわけではなかったけど、こんなに寒くはなかった気がする。
あとは......僕と似た見た目の人がこんなにたくさんいるのを、初めて見たな。
初めて感じる母国の印象は、そんな感動も他愛もない感想に留まった。
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