狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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「招待状の内容だが、狼領主が、ここ一年の間に城に招き入れた人物と、その人物が帯同させている動物と共に参られよ、だと。よく調べている。俺だけならいいが、なぜリオのことを調べているのだ。怪しすぎる」
「そう…。それで招待されて、向こうで何があるんだよ?」
「あそこの国は、二人の王子がいる。ようやく後継が決まり、その祝いをするそうだ」
「ふーん。ようやく決まったって、どうして?普通は第一王子がなるんだろ?生まれた時から決まってるんだろ?」
「第一王子は優秀だが、母親の身分が低い。第二王子は平凡だが、母親は身分が高い。それで揉めていたようだ。だが此度、第一王子に決まった。その第一王子じきじきの招待状だ」
「ふーん。あ…もしかして、俺の魔法のことがバレてるのかな?」
「まさか」

 ギデオンが目を見張る。
 でも俺を連れて来いってことは、そういうことじゃないの?とリオは不安になった。その不安をあおるように、アンの声が聞こえる。

『怪しいな』
「やっぱり?」

 長椅子の側で寝ていたアンが、頭を上げてこちらを見ている。

「アンが何か言ったか?」
「怪しいって」
「そうか…。しかしこれはもう、決定事項なんだ。だが、何があろうともリオのことは必ず守る。すまない」
「大丈夫!考えすぎかもしれないし。それに俺、あそこの国にも行ってみたかったし。ギデオンと一緒だから嬉しいよ」
「リオ…、おまえといると心が安らぐな」
「ほんと?だとしたら嬉しい」

 リオは手を伸ばしてギデオンの頬を触った。
 出会った時はひどかったくまが、今ではもう消えている。よく眠れている証拠だ。
 初めは、俺がいればよく眠れるってなんだよ、抱き枕かよ、と不満だったけど、そのおかげでギデオンを好きになり、好きになってもらえた。これからもずっと傍にいたいな。…でも、ギデオンは領主だ。いつか誰かと結婚するんだろうな…。
 要らぬことを考えてしまい、リオの顔が曇った。
 それをギデオンは見逃さなかった。

「どうした?やはり隣国へ行くのは不安か。もう一度、王に話して止めに…」
「大丈夫!少しデックのことを思い出しただけだから」
「そうか。あれからまだ日が経っていない。寂しいな」
「うん…」

 リオは頷き立ち上がる。

「ギデオン、散歩しよう。王城に来ることなんて二度とないだろうから、いろいろと見てみたい」
「入れる所は限られているが、よい庭がある。案内しよう」
「うん。アンはごめん。留守番していてくれる?」

 リオがアンの頭を撫でると、アンは軽く頷いた。部屋に閉じ込められて可哀想だと思うのだけど、アンはさして気にしていないようだ。ベッドや長椅子、ふかふかの絨毯じゅうたんの上で、常に眠そうにして寝そべっている。
 リオは上着を着て髪を整えると、ギデオンの後に続いて部屋を出た。
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