217 / 241
217
しおりを挟む
「招待状の内容だが、狼領主が、ここ一年の間に城に招き入れた人物と、その人物が帯同させている動物と共に参られよ、だと。よく調べている。俺だけならいいが、なぜリオのことを調べているのだ。怪しすぎる」
「そう…。それで招待されて、向こうで何があるんだよ?」
「あそこの国は、二人の王子がいる。ようやく後継が決まり、その祝いをするそうだ」
「ふーん。ようやく決まったって、どうして?普通は第一王子がなるんだろ?生まれた時から決まってるんだろ?」
「第一王子は優秀だが、母親の身分が低い。第二王子は平凡だが、母親は身分が高い。それで揉めていたようだ。だが此度、第一王子に決まった。その第一王子じきじきの招待状だ」
「ふーん。あ…もしかして、俺の魔法のことがバレてるのかな?」
「まさか」
ギデオンが目を見張る。
でも俺を連れて来いってことは、そういうことじゃないの?とリオは不安になった。その不安を煽るように、アンの声が聞こえる。
『怪しいな』
「やっぱり?」
長椅子の側で寝ていたアンが、頭を上げてこちらを見ている。
「アンが何か言ったか?」
「怪しいって」
「そうか…。しかしこれはもう、決定事項なんだ。だが、何があろうともリオのことは必ず守る。すまない」
「大丈夫!考えすぎかもしれないし。それに俺、あそこの国にも行ってみたかったし。ギデオンと一緒だから嬉しいよ」
「リオ…、おまえといると心が安らぐな」
「ほんと?だとしたら嬉しい」
リオは手を伸ばしてギデオンの頬を触った。
出会った時はひどかった隈が、今ではもう消えている。よく眠れている証拠だ。
初めは、俺がいればよく眠れるってなんだよ、抱き枕かよ、と不満だったけど、そのおかげでギデオンを好きになり、好きになってもらえた。これからもずっと傍にいたいな。…でも、ギデオンは領主だ。いつか誰かと結婚するんだろうな…。
要らぬことを考えてしまい、リオの顔が曇った。
それをギデオンは見逃さなかった。
「どうした?やはり隣国へ行くのは不安か。もう一度、王に話して止めに…」
「大丈夫!少しデックのことを思い出しただけだから」
「そうか。あれからまだ日が経っていない。寂しいな」
「うん…」
リオは頷き立ち上がる。
「ギデオン、散歩しよう。王城に来ることなんて二度とないだろうから、いろいろと見てみたい」
「入れる所は限られているが、よい庭がある。案内しよう」
「うん。アンはごめん。留守番していてくれる?」
リオがアンの頭を撫でると、アンは軽く頷いた。部屋に閉じ込められて可哀想だと思うのだけど、アンはさして気にしていないようだ。ベッドや長椅子、ふかふかの絨毯の上で、常に眠そうにして寝そべっている。
リオは上着を着て髪を整えると、ギデオンの後に続いて部屋を出た。
「そう…。それで招待されて、向こうで何があるんだよ?」
「あそこの国は、二人の王子がいる。ようやく後継が決まり、その祝いをするそうだ」
「ふーん。ようやく決まったって、どうして?普通は第一王子がなるんだろ?生まれた時から決まってるんだろ?」
「第一王子は優秀だが、母親の身分が低い。第二王子は平凡だが、母親は身分が高い。それで揉めていたようだ。だが此度、第一王子に決まった。その第一王子じきじきの招待状だ」
「ふーん。あ…もしかして、俺の魔法のことがバレてるのかな?」
「まさか」
ギデオンが目を見張る。
でも俺を連れて来いってことは、そういうことじゃないの?とリオは不安になった。その不安を煽るように、アンの声が聞こえる。
『怪しいな』
「やっぱり?」
長椅子の側で寝ていたアンが、頭を上げてこちらを見ている。
「アンが何か言ったか?」
「怪しいって」
「そうか…。しかしこれはもう、決定事項なんだ。だが、何があろうともリオのことは必ず守る。すまない」
「大丈夫!考えすぎかもしれないし。それに俺、あそこの国にも行ってみたかったし。ギデオンと一緒だから嬉しいよ」
「リオ…、おまえといると心が安らぐな」
「ほんと?だとしたら嬉しい」
リオは手を伸ばしてギデオンの頬を触った。
出会った時はひどかった隈が、今ではもう消えている。よく眠れている証拠だ。
初めは、俺がいればよく眠れるってなんだよ、抱き枕かよ、と不満だったけど、そのおかげでギデオンを好きになり、好きになってもらえた。これからもずっと傍にいたいな。…でも、ギデオンは領主だ。いつか誰かと結婚するんだろうな…。
要らぬことを考えてしまい、リオの顔が曇った。
それをギデオンは見逃さなかった。
「どうした?やはり隣国へ行くのは不安か。もう一度、王に話して止めに…」
「大丈夫!少しデックのことを思い出しただけだから」
「そうか。あれからまだ日が経っていない。寂しいな」
「うん…」
リオは頷き立ち上がる。
「ギデオン、散歩しよう。王城に来ることなんて二度とないだろうから、いろいろと見てみたい」
「入れる所は限られているが、よい庭がある。案内しよう」
「うん。アンはごめん。留守番していてくれる?」
リオがアンの頭を撫でると、アンは軽く頷いた。部屋に閉じ込められて可哀想だと思うのだけど、アンはさして気にしていないようだ。ベッドや長椅子、ふかふかの絨毯の上で、常に眠そうにして寝そべっている。
リオは上着を着て髪を整えると、ギデオンの後に続いて部屋を出た。
52
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
王太子からは逃げられない!
krm
BL
僕、ユーリは王家直属の魔法顧問補佐。
日々真面目に職務を全うしていた……はずなのに、どうしてこうなった!?
すべては、王太子アルフレード様から「絶対に逃げられない」せい。
過剰なほどの支配欲を向けてくるアルフレード様は、僕が少しでも距離を取ろうとすると完璧な策略で逃走経路を封じてしまうのだ。
そんなある日、僕の手に謎の刻印が浮かび上がり、アルフレード様と協力して研究することに――!?
それを機にますます距離を詰めてくるアルフレード様と、なんだかんだで彼を拒み切れない僕……。
逃げられない運命の中で巻き起こる、天才王太子×ツンデレ魔法顧問補佐のファンタジーラブコメ!
皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ
手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、
アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。
特効薬も見つからないまま、
国中の女性が死滅する異常事態に陥った。
未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。
にも関わらず、
子供が産めないオメガの少年に恋をした。
勇者は魔王!?〜愛を知らない勇者は、魔王に溺愛されて幸せになります〜
天宮叶
BL
十歳の誕生日の日に森に捨てられたソルは、ある日、森の中で見つけた遺跡で言葉を話す剣を手に入れた。新しい友達ができたことを喜んでいると、突然、目の前に魔王が現れる。
魔王は幼いソルを気にかけ、魔王城へと連れていくと部屋を与え、優しく接してくれる。
初めは戸惑っていたソルだったが、魔王や魔王城に暮らす人々の優しさに触れ、少しずつ心を開いていく。
いつの間にか魔王のことを好きになっていたソル。2人は少しずつ想いを交わしていくが、魔王城で暮らすようになって十年目のある日、ソルは自身が勇者であり、魔王の敵だと知ってしまい_____。
溺愛しすぎな無口隠れ執着魔王
×
純粋で努力家な勇者
【受け】
ソル(勇者)
10歳→20歳
金髪・青眼
・10歳のとき両親に森へ捨てられ、魔王に拾われた。自身が勇者だとは気づいていない。努力家で純粋。闇魔法以外の全属性を使える。
ノクス(魔王)
黒髪・赤目
年齢不明
・ソルを拾い育てる。段々とソルに惹かれていく。闇魔法の使い手であり、歴代最強と言われる魔王。無口だが、ソルを溺愛している。
今作は、受けの幼少期からスタートします。それに伴い、攻めとのガッツリイチャイチャは、成人編が始まってからとなりますのでご了承ください。
BL大賞参加作品です‼️
本編完結済み

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます
天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。
広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。
「は?」
「嫁に行って来い」
そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。
現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる!
……って、言ったら大袈裟かな?
※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。

【完結】エルフのじぃさん(900)若いオトコ(40)に求愛される!
志麻友紀
BL
「湖のアルマティよ、あなたは美しい。その湖の色の瞳も、美しい白銀の髪も……」
「この髪は白髪なんだがな……」
「ハーフエルフのあなたは900歳。俺は40歳、人間は長く生きて100年だ。あと60年俺が生きたとしても、あと40年もあなたを未亡人のまま残していくことを思うと……」
「誰が未亡人だ!馬鹿者!」
ハーフエルフのアルマティはレジタニア国王ウーサーの求愛を以前より受けていた。ウーサーは40の男盛り、なにが悲しくて900歳のエルフのじじぃになど夢中になっているのか?と思う。
しかし10歳のときより育てた愛し子は、一向に自分を諦める気配もない。
仕方なくお試しで一度抱いてみるか? とアルマティはウーサーとひと夜を共にする。そしてウーサーが寝ているあいだに彼に自分への恋心だけを失わせる忘れ薬を飲ませるのだった。
翌日、ウーサーはアルマティと愛し合った記憶をすっかりなくしていた。アルマティもまたいつもと変わらぬ態度で彼の背を見送る。
しかし、その胸は“再び”犯した罪への記憶に囚われていた。
そう、アルマティは過去にもウーサーに自分への恋心を忘れさせる薬を飲ませたのだった。
雨の宿に閉じこめられた十日間。18の彼の情熱に押し流されるように抱かれた。そして、その記憶を奪った。
しかし、二度も忘れ薬を使ったことでウーサーは夢魔に囚われて倒れる。
アルマティは夢魔を倒すためにウーサーの夢の中へとはいる。
夢魔を倒せば彼はすべての記憶を思い出す。
勝手に恋心をうばった自分を彼は許さないに違いない。
その覚悟をもって……。
※私的にはハッピーエンドなんですが、色々ご意見あるとおもうので、ハッピーエンドのタグはあえてつけません。でも、私のお話なのでハッピーエンドです。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる