狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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「アンはさ、神獣なんだな」
『そうだ』
「神獣は主を選ぶって。アンの主はギデオンなの?アンはギデオンの守護獣?」
『…そうだ』
「俺とアンが出会ったのは必然で、出会ったその時に契約が成立してる?」
『そうだ。リオと出会ったことは必然であったのだろうが、出会えた者がリオでよかったと思っている』
「アン…!俺もだよっ。アン大好き!」

 そう言ってアンを抱きしめた瞬間、扉が開き「おい」と低い声が聞こえた。ギデオンだ。恐ろしい顔で近づいてきて、ブーツを脱いでベッドに上がるとリオとアンを引き剥がした。

「前々から言おうと思っていたのだが、アンにベタベタしすぎではないか?」
『嫉妬か?器の小さい男め』
「アン!」
「今、アンが何を言ったのか何となくわかったぞ。はっきり言っておく。リオの恋人は俺だ」
『だから何だ。…疲れたから寝る』

 一度顔を上げて、アンがギデオンを見たけど、すぐに戻して目を閉じた。
 リオは「おやすみ」とアンの頭を撫でると、ギデオンの方へと身体を向ける。

「ギデオン、俺を助けに来てくれてありがとう。でも部下もつけずに危険だよ」
「おまえを助けることしか頭になかったのだ。部下を集めることを失念していた」

 ギデオンが、リオを抱き寄せ額に唇を押し当てる。
 リオはくすぐったくて、笑って顔を上げると、今度は唇に柔らかな感触がした。

「ん…」
「リオ、ずっと俺の傍にいてくれ」
「うん、いるよ」

 何度か唇を合わせて顔を離す。
 リオはギデオンの腕に頭を乗せて「あのさ」と口を開いた。

「デックはさ、アシュレイの屋敷で暮らしている時に、いろんな本を読んだんだって。古い本もあって、俺達のことが書かれてたって」
「魔法を使う者のことか?」
「うん。俺は育った村のことしか知らなかったけど、世界のいろんな所に魔法を使う者がいたんだね。今は何人くらい残っているのかわからないけど」
「そうだな」
「たぶん魔法の力って、人を助けるためにあると思う。でも権力者達が、私利私欲のために魔法を使う者を利用したから、数が減っていった…」
「ああ」
「魔法の力は、正しい使われ方があるんだよ。主と神獣と魔法を使う者。これらがそろえばいいらしいけど、揃うことはすごくまれなんだって」
「リオが言ってることが、よくわからぬが」
「ギデオンとアンと俺は、出会うべくして出会ったってこと。アンはギデオンの守護獣で、俺を介してギデオンの力になるんだって」
「どう考えてもアンはリオの守護獣だろ。俺を守るとは到底思えぬ」
「まあ…そうだよなぁ」

 リオもいまだ半信半疑だ。でもリオは、命をかけてギデオンを守りたい。そのためにはアンにも手伝ってほしい。そしてアンはリオの言うことは聞いてくれる。ということは、結果的にアンがギデオンを守ることになる…?

 
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