203 / 241
203
しおりを挟む
「デック…」
ポツリと呟いた瞬間、リオの目から涙が落ちた。泣き始めると止まらなくなった。リオは声を上げて泣いた。泣くリオの身体は、まだ上空に浮かんだままだ。デックが死んだのなら、魔法の効果がなくなり地上に落ちるはずなのに。でもそんなことを気にする余裕などなかった。悲しい気持ちでいっぱいだった。流れる涙もそのままに、子供のように声を上げて泣き、そのうち頭も目も喉も痛くなってきて、リオはようやく泣くのを止めた。
「デック…ロンも…捜しにいかないと。…あれ?なんでまだ浮いてるの?俺、魔法使ってない…」
「もういいのか?」
「え?」
耳元で、大好きな声が聞こえた。声が聞こえた瞬間、柔らかい毛並みの背中に座り、大好きな人に抱きしめられていることに気づいた。
「ギデオン!アンもっ」
「大丈夫か?怪我はないか?」
『あやつ…死んだのか。愚かな』
リオはギデオンに抱きつき、また泣き出した。
「うっ、うっ…、助けられなかった!デックを助けたかったのに…っ、俺が助けられてっ」
「そうか。辛かったな。だが、よくがんばった」
「がんばれてない…っ。何もできなかったっ」
「そんなことはない。デックは、おまえが危険を冒してまで来てくれたことを、嬉しく思っていたはずだ。反面、おまえがデックを助けたかったように、デックもリオを守りたかったのだろう。だからおまえを逃がしたのではないのか?ここに一人でいるのは、そういうことなのだろう?デックは真実の良き友だな」
「うん…っ」
「あと、薄情なことを言うようだが、俺は、おまえが無事であったことに安堵している」
「うん…」
ギデオンの腕の中は落ち着く。匂いに安心する。デックを失った悲しみは深いけど、ギデオンが傍にいてくれてよかった。来てくれてよかかった。それに尻の下の柔らかい毛並みの感触にも安心する。アンの毛並みは本当に極上…。
とても辛い状況を目の当たりにし、いきなりギデオンが現れたことで気づかなかったけど、すごいことが起きていると、リオは勢いよく顔を上げた。
ギデオンが目を細めて「どうした?」と優しく聞く。
リオは、右手でギデオンの上着を掴んだまま、左手でアンの背中を撫でた。
「ねぇ…アン…飛んでる?」
「そのようだな」
「翼っ!生えてる!」
「ああ、俺も驚いた」
「すごいっ!いつ?俺がロンに連れ去られたあと?」
「そうだ。だが、翼が出るまでに、かなり時間がかかったけどな」
『黙れ。本来ならまだ出せぬのに強引に出したのだ。心から感謝しろ』
アンが首を後ろに向けてギデオンを睨んだ。
リオは、上半身を倒してアンの首に抱きついた。
ポツリと呟いた瞬間、リオの目から涙が落ちた。泣き始めると止まらなくなった。リオは声を上げて泣いた。泣くリオの身体は、まだ上空に浮かんだままだ。デックが死んだのなら、魔法の効果がなくなり地上に落ちるはずなのに。でもそんなことを気にする余裕などなかった。悲しい気持ちでいっぱいだった。流れる涙もそのままに、子供のように声を上げて泣き、そのうち頭も目も喉も痛くなってきて、リオはようやく泣くのを止めた。
「デック…ロンも…捜しにいかないと。…あれ?なんでまだ浮いてるの?俺、魔法使ってない…」
「もういいのか?」
「え?」
耳元で、大好きな声が聞こえた。声が聞こえた瞬間、柔らかい毛並みの背中に座り、大好きな人に抱きしめられていることに気づいた。
「ギデオン!アンもっ」
「大丈夫か?怪我はないか?」
『あやつ…死んだのか。愚かな』
リオはギデオンに抱きつき、また泣き出した。
「うっ、うっ…、助けられなかった!デックを助けたかったのに…っ、俺が助けられてっ」
「そうか。辛かったな。だが、よくがんばった」
「がんばれてない…っ。何もできなかったっ」
「そんなことはない。デックは、おまえが危険を冒してまで来てくれたことを、嬉しく思っていたはずだ。反面、おまえがデックを助けたかったように、デックもリオを守りたかったのだろう。だからおまえを逃がしたのではないのか?ここに一人でいるのは、そういうことなのだろう?デックは真実の良き友だな」
「うん…っ」
「あと、薄情なことを言うようだが、俺は、おまえが無事であったことに安堵している」
「うん…」
ギデオンの腕の中は落ち着く。匂いに安心する。デックを失った悲しみは深いけど、ギデオンが傍にいてくれてよかった。来てくれてよかかった。それに尻の下の柔らかい毛並みの感触にも安心する。アンの毛並みは本当に極上…。
とても辛い状況を目の当たりにし、いきなりギデオンが現れたことで気づかなかったけど、すごいことが起きていると、リオは勢いよく顔を上げた。
ギデオンが目を細めて「どうした?」と優しく聞く。
リオは、右手でギデオンの上着を掴んだまま、左手でアンの背中を撫でた。
「ねぇ…アン…飛んでる?」
「そのようだな」
「翼っ!生えてる!」
「ああ、俺も驚いた」
「すごいっ!いつ?俺がロンに連れ去られたあと?」
「そうだ。だが、翼が出るまでに、かなり時間がかかったけどな」
『黙れ。本来ならまだ出せぬのに強引に出したのだ。心から感謝しろ』
アンが首を後ろに向けてギデオンを睨んだ。
リオは、上半身を倒してアンの首に抱きついた。
53
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
王太子からは逃げられない!
krm
BL
僕、ユーリは王家直属の魔法顧問補佐。
日々真面目に職務を全うしていた……はずなのに、どうしてこうなった!?
すべては、王太子アルフレード様から「絶対に逃げられない」せい。
過剰なほどの支配欲を向けてくるアルフレード様は、僕が少しでも距離を取ろうとすると完璧な策略で逃走経路を封じてしまうのだ。
そんなある日、僕の手に謎の刻印が浮かび上がり、アルフレード様と協力して研究することに――!?
それを機にますます距離を詰めてくるアルフレード様と、なんだかんだで彼を拒み切れない僕……。
逃げられない運命の中で巻き起こる、天才王太子×ツンデレ魔法顧問補佐のファンタジーラブコメ!
皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ
手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、
アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。
特効薬も見つからないまま、
国中の女性が死滅する異常事態に陥った。
未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。
にも関わらず、
子供が産めないオメガの少年に恋をした。

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます
天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。
広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。
「は?」
「嫁に行って来い」
そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。
現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる!
……って、言ったら大袈裟かな?
※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
【完結】凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
みやこ嬢
BL
2023/01/27 完結!全117話
【強面の凄腕冒険者×心に傷を抱えた支援役】
孤児院出身のライルは田舎町オクトの冒険者ギルドで下働きをしている20歳の青年。過去に冒険者から騙されたり酷い目に遭わされた経験があり、本来の仕事である支援役[サポーター]業から遠退いていた。
しかし、とある理由から支援を必要とする冒険者を紹介され、久々にパーティーを組むことに。
その冒険者ゼルドは顔に目立つ傷があり、大柄で無口なため周りから恐れられていた。ライルも最初のうちは怯えていたが、強面の外見に似合わず優しくて礼儀正しい彼に次第に打ち解けていった。
組んで何度目かのダンジョン探索中、身を呈してライルを守った際にゼルドの鎧が破損。代わりに発見した鎧を装備したら脱げなくなってしまう。責任を感じたライルは、彼が少しでも快適に過ごせるよう今まで以上に世話を焼くように。
失敗続きにも関わらず対等な仲間として扱われていくうちに、ライルの心の傷が癒やされていく。
鎧を外すためのアイテムを探しながら、少しずつ距離を縮めていく冒険者二人の物語。
★・★・★・★・★・★・★・★
無自覚&両片想い状態でイチャイチャしている様子をお楽しみください。
感想ありましたら是非お寄せください。作者が喜びます♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる