狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 確かに、俺は今までたくさんの人に助けられてきた。俺に魔法の使い方を教えてくれた母さんや親戚のおじさん。一緒に遊んだデック。一人になり旅を始めてから、仕事を紹介してくれた人達。リオがいないと眠れないと破格の賃金で仕事を与えてくれたギデオン。仕事だけじゃなく、人を愛する気持ちを教えてくれた。そして愛される幸せも教えてくれた。
 でも。俺から金品を奪おうとした盗賊や、俺を襲おうとした変人、俺の魔法の力に気づき、恐ろしい執着でつきまとうケリー。彼らにも、出会うべくして出会ったというのか?
 リオが悶々と考え込んでいると、いきなりアンの声が、頭の中に響いた。

『それは貴様の考えだろ。それぞれに考えがあってもいいのではないか』
『しつこい。断ると言ってる』
『あの王子に逆らえぬことは、わかっている。だからといって、リオを巻き込むな』
「俺を巻き込むってどういうことっ?」

 アンが驚いたように横を向く。明らかに「しまった!」という顔をしている。
 リオは、ここぞとばかりにたたみかけた。

「アン、今ロンと話してたよな?デックのことだろ?ロンは王子に逆らえない?だからデックを助けられないの?一体デックはどうなってるんだ?まさか、殺されてはいないよなっ」

 アンは答えない。代わりにロンが「ピイー!」と鳴いた。
 リオは顔を上げると、ロンに聞く。

「殺されてはいないが、危ない状態か?」
「ピイ!」
「俺の助けが必要なのか?」
「ピー!」
『黙れ!』

 アンの低く怒りを含んだ声が響く。アンは、リオがデックの状態を知ることを拒んでいる。リオがデックを助けに行くことを反対している。

「アン、俺はデックを助けたい!アンも空を飛べるよな?俺を乗せて連れていってくれよ」

『できぬ』と言うやいなや、アンはロンに飛びかかった。大きく口を開けロンの翼に噛みつく。ロンも負けじと鋭い爪をアンの背中に突き刺す。
 リオは驚き焦って、止めようとアンとロンの間に入ろうとした。しかし太い尾で殴られ大きな翼で吹き飛ばされてしまう。地面に打ちつけた腰を擦りながら起き上がり、アンとロンの名を呼ぶけど、一匹と一羽は転がりながら暴れて、近寄ることもできない。

「もう!早くデックを助けないといけないのに、何してんだよっ」

 何もできないことがもどかしくて、涙が出てきた。リオが顔を覆ってうずくまっていると、ようやく喧嘩をやめたのか、アンが来てリオの手の甲を舐めた。
 リオは顔を覆ったまま、文句を言う。

「アンのばか、何やってんだよ」
『すまぬ』
「悪いと思ってるなら、ロンが何のためにここに来たのか、教えて」
『それは…』
「教えて。教えてくれないなら、俺は無理にでもロンと行くから」
『リオ…』
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