狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 その後、なぜあのような状態になったのかを聞かれたが、リオは、ギデオンを助けようとして怪我をしたことを話さなかった。これ以上ギデオンに辛い想いをさせたくなかったから。
 そのため、騒ぎを聞いてギデオンの所へ行こうと急いでいたら、いきなり射抜かれたと嘘の説明をした。案の定、「テントは危険だったのか?ならば、そういう時は、どこかに隠れていろ」と怒られたけど。
 でもさ、無理だよ。皆が戦っている時に、一人だけ安全な場所に隠れていることなんてできないよ。そう告げると「おまえはそういう奴だったな。知っているよ。だが心配なんだ」と優しく笑って頭を撫でられ、リオはギデオンを見て、ああ、好きだな… と改めて自分の気持ちを再確認した。

 そしてとんでもないことにも気づいた。
 意識が戻った日の夜、風呂から出てきたギデオンが髪の毛を拭いている時に、左腕に紫色に変色した歯型を見つけたのだ。最初は不思議に思って見ていたが、意識が混濁こんだくしていた時の記憶がおぼろげによみがえり、そういえば治療中に何かを「噛め」と言われたことを思い出した。
 リオは慌ててギデオンに近づき腕に触れた。

「ギデオン!これって…」
「ん?ああこれか。気にするな、すぐに治る」
「ごめん!俺…思いっきり噛んだ…」
「俺が噛めと言ったからな。俺が勝手にしたことだ」
「でもっ、ひどく変色してる…」
「おまえが付けてくれた印だ。一生消えなくてもいい」
「なっ…なに言って…」

 リオは、熱くなった顔を下に向けた。
 え?ちょっ…恥ずかしい…。ギデオンって、こんな甘いこと、平気で言うんだ…。

「リオ」
「はい…」

 頭上から声がして顔を上げる。
 ギデオンの顔が降りてきて、唇が触れる。
 数回角度を変えてキスをして、抱きしめられた。その間、リオの胸はドキドキとしっぱなしだ。恥ずかしくてギデオンの顔を見ることができないので、ギデオンの胸にそっと額を押しつけた。
 ギデオンの手が、リオの腰に優しく触れる。

「まだ傷が痛むだろう?早く休め」
「うん。ギデオンは?」
「俺も休む。リオとゆっくり眠りたい」
「朝寝坊する?」
「そうしよう」

 まだ少し恥ずかしいものの、リオは顔を上げてギデオンと目を合わせた。そして二人で笑い合いながら、ベッドに入った。
 すでにベッドで寝ていたアンが目を開けて、イチャイチャする二人を呆れたように見ていた。
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