狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 もしかして、寝ないで傍にいてくれたのかな。心配させちゃったな。ごめんギデオン…。

「ギデオン」
「…リオっ」

 小さな声で呼んだのに、ギデオンが起きた。勢いよく顔を上げ、リオと目が合った瞬間、泣きそうな顔をした。

「ごめん…」
「なぜ謝る。俺の方こそ、おまえの傍を離れて悪かった。必ず守ると誓ったのに…っ」
「ギデオンこそ謝らないで。俺が勝手なことをしただけ。俺が怪我しただけ。でもそれでギデオンを悲しませてるとしたら…ごめん」
「アンに乗るおまえの姿を見た時、一瞬にして血の気が引いた。身体が動かなくなった。おまえを失うのかもしれないと思ったら、死にたくなった」
「なにバカなこと言ってんの?ギデオンは領主なんだよ?一番に民のことを考えろよ」
「民のことは、もちろん大事だ。だが、俺の一番はリオだ。俺は、おまえがどれだけ大切か、どれほど愛しているか、よくわかった。…リオ、愛している。俺の傍にいてくれ。俺の前から消えないでくれ…」
「ギデオン…」

 ギデオンが、リオの手を握りしめベッドに顔を伏せる。肩が小さく震えている。泣いているのかもしれないと思い、リオはギデオンの頭に頭を寄せた。

「俺も…ギデオンが好きだよ。あ…愛してる…。だからさ、つい必死になって、油断しちゃったんだよな」
「油断?」

 小さく鼻をすする音が聞こえた直後に、ギデオンが顔を上げた。目のふちが赤く染まっている。
 あ、やっぱり泣いてたんだ。ギデオンの泣き顔見たかったな。なんて思っていると、「おまえは何をしたんだ?」といつもの怖い顔で聞かれ、リオはしまった!と目を逸らした。
 そして天井を見て、ここがテントではないことに気づく。

「あれ…?ここはどこ?」
「俺の所有する別宅だ。国境から近い場所にある。おまえを早く治療する必要があったからな」
「え?じゃあ敵兵はどうなったの?アシュレイ王子は?」
「翌朝、日が昇った頃には、対岸の敵兵と魔獣の姿は消えていた。夜のうちに撤退したようだ」
「…何があったんだろう。魔獣の声が聞こえたけど…暴れたのかな…デックは大丈夫かな」

 ギデオンがリオの頬に手を添えた。そして「きっと大丈夫だ」と安心させるように優しくささやく。

「彼はリオと同じ、希少な存在だ。アシュレイ王子が手放すとは思えない。きっと保護している。だからそんなに心配するな。それよりも自分の心配をしろ。おまえは怪我をしすぎる。まだ足の怪我が治りきっていないというのに」
「う…ごめん。気をつけてはいるんだけど。後で治療できるしと思っちゃうんだよな」
「バカめ。今回のようにおまえが気絶していたら、すぐに治療ができないだろうが。これからは一層気をつけてくれ。俺の心臓がもたぬ」
「うん…気をつける」

 リオは素直に頷く。でも内心、ギデオンがすごく心配してくれていることを、嬉しく思っていた。
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