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敵が夜の暗闇に紛れて川を渡り、奇襲をかけてきた。
魔獣が動かない限り攻めてこないと油断していたギデオン達は、必死に応戦する。
応戦しながらギデオンは、テントの中に置いてきたリオが気になっていた。
きっと大丈夫だ。アンがいる。リオも魔法を使える。いざとなれば、うまく逃げることができるのだ。そう自分に言い聞かせて、剣を振るい敵兵を倒し追い払っていく。
ここに集められた騎士達は、かなり強い。人の何倍、何十倍も強い魔獣を倒すために集まったのだ。それゆえに、敵兵など軽く蹴散らしてしまう。
こちらが優勢だと目に見えてわかり、安堵の息を吐き出した。その時、対岸から魔獣の咆哮が聞こえてきた。ギデオンは対岸を睨む。
敵兵だけなら勝てるが、魔獣が襲ってくるとまずい!
周囲に緊張が走り、皆が身構える。しかし一向に魔獣が来ない。なぜだと訝しんでいると、今度は太鼓の音が聞こえてきた。その音で、敵兵が一斉に引き上げていく。後を追おうとする騎士達を、ビクターが「待て!」と止める。
「罠かもしれぬ。ここは静観だ。皆、用心して持ち場に戻れ」
「はっ!」
それぞれが持ち場やテントに戻っていき、ギデオンとビクターが残った。
ギデオンは、コートについた土埃を払いながら聞く。
「向こうで何かあったのだろうか?」
「わからん。何もわからぬ時は動かぬことだ」
「そうだな」
「じゃ、俺もテントにもど……ギデオン!」
剣を手巾で拭い鞘におさめていたギデオンは、大きな声に驚き顔を上げた。
ビクターが険しい表情をして、ギデオンではなく違う方向を見ている。
つられるようにビクターが見る先に目をやり、ギデオンは固まった。
暗闇の中から狼らしき獣の前足が現れた。アンだ。焚き火で照らされた場所に、アンの全身が現れた。背中にリオが乗っている。いや、乗せられている。
ギデオンは、目の前に現れたアンとリオを見て、心臓が止まりそうになった。
「リオ…?」
すぐにリオの安否を確認したいのに、足が思うように動かない。まるで鉛のブーツを履いているようだ。ひどく緩慢な動きで足を出し、アンとリオに近づく。
ギデオンは、アンの背中でぐったりとしているリオを見て、最初、眠って起きないリオを、アンが連れてきてくれたのだと、都合よく思おうとした。だが、リオの脇腹から伸びる矢が目に入り、一気に血の気が引き、情けなくも、その場に倒れそうになった。「リオ!しっかりしろ!」と叫ぶビクターの声が聞こえなければ、実際に膝から崩れ落ちていたかもしれない。そして、己がどれほどリオのことを大切に想っているのかを、心底理解した。
魔獣が動かない限り攻めてこないと油断していたギデオン達は、必死に応戦する。
応戦しながらギデオンは、テントの中に置いてきたリオが気になっていた。
きっと大丈夫だ。アンがいる。リオも魔法を使える。いざとなれば、うまく逃げることができるのだ。そう自分に言い聞かせて、剣を振るい敵兵を倒し追い払っていく。
ここに集められた騎士達は、かなり強い。人の何倍、何十倍も強い魔獣を倒すために集まったのだ。それゆえに、敵兵など軽く蹴散らしてしまう。
こちらが優勢だと目に見えてわかり、安堵の息を吐き出した。その時、対岸から魔獣の咆哮が聞こえてきた。ギデオンは対岸を睨む。
敵兵だけなら勝てるが、魔獣が襲ってくるとまずい!
周囲に緊張が走り、皆が身構える。しかし一向に魔獣が来ない。なぜだと訝しんでいると、今度は太鼓の音が聞こえてきた。その音で、敵兵が一斉に引き上げていく。後を追おうとする騎士達を、ビクターが「待て!」と止める。
「罠かもしれぬ。ここは静観だ。皆、用心して持ち場に戻れ」
「はっ!」
それぞれが持ち場やテントに戻っていき、ギデオンとビクターが残った。
ギデオンは、コートについた土埃を払いながら聞く。
「向こうで何かあったのだろうか?」
「わからん。何もわからぬ時は動かぬことだ」
「そうだな」
「じゃ、俺もテントにもど……ギデオン!」
剣を手巾で拭い鞘におさめていたギデオンは、大きな声に驚き顔を上げた。
ビクターが険しい表情をして、ギデオンではなく違う方向を見ている。
つられるようにビクターが見る先に目をやり、ギデオンは固まった。
暗闇の中から狼らしき獣の前足が現れた。アンだ。焚き火で照らされた場所に、アンの全身が現れた。背中にリオが乗っている。いや、乗せられている。
ギデオンは、目の前に現れたアンとリオを見て、心臓が止まりそうになった。
「リオ…?」
すぐにリオの安否を確認したいのに、足が思うように動かない。まるで鉛のブーツを履いているようだ。ひどく緩慢な動きで足を出し、アンとリオに近づく。
ギデオンは、アンの背中でぐったりとしているリオを見て、最初、眠って起きないリオを、アンが連れてきてくれたのだと、都合よく思おうとした。だが、リオの脇腹から伸びる矢が目に入り、一気に血の気が引き、情けなくも、その場に倒れそうになった。「リオ!しっかりしろ!」と叫ぶビクターの声が聞こえなければ、実際に膝から崩れ落ちていたかもしれない。そして、己がどれほどリオのことを大切に想っているのかを、心底理解した。
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