狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 執務室に着き、ギデオンとゲイルが中に入った。
 リオはどうしようかと迷ったが、ギデオンに促されてアンと中に入る。指示されるままに、ギデオンの向かいにゲイルと並んで座る。
 ギデオンが、これからの計画を話し始めた。

「一刻も早く、シズ、ニコラ、アトラス他数名の騎士を連れて国境に向かう。国境には、前回のように各領地からも騎士が集まるゆえ、少人数で行く。国境で魔獣を止めるが、もしもの場合を考えて、領城に兵力を残していく。もしものことがあれば、ゲイルとスチュアートが指示を出し、領地と城を守れ」

 話を聞いて、ゲイルが小さく頭を下げる。

「承知いたしました。ここはお任せください」
「頼んだぞ。リオはどうした?静かだな」
「うん…」

 リオは、伏せていた顔をゆっくりと上げて、ギデオンを見つめた。

「あのさ、ギデオンは軍隊を持ってるよね?」
「ああ、持っている」
「何部隊かある?」
「ある」
「そのうちの、せめて一部隊でいいから、国境に連れて行けないかな…」
「なぜだ」

 リオは一度、隣のゲイルを見た。次に足に寄りそうようにして座っているアンを見る。
 アンは賢い。最近では、リオの言葉だけでなく、頭の中で考えていることもわかっているような態度を見せる。今もリオの考えに同意するように、首を縦に振る。リオは小さく頷くと、再び目の前の紫の瞳を見つめた。

「たぶんだけど、魔獣の近くには、デックとアシュレイがいる。そしてアシュレイは、自分の軍隊を連れてきていると思うんだ」
「ふむ…。なぜそう思う」
「アシュレイは次の王の座を狙っている。だけど焦っている様子はなかった。それなのに、デックに無理をさせて、いきなり数体もの魔獣を操らせている。俺の想像だけど、なにか悠長にしていられない理由ができて、すぐにでもこの国を侵略したという手柄を立てて、次期王の座に就きたいと思っている。そして自らの力を示すために、自分の軍隊を動かしていると思う。王にこの国を攻めるためだと話したのか、勝手に連れて来たのかわからないけど。でも国境に着き、滅多に見ることのない強大な魔獣を操ってみせた。しかも数体。きっと隣国でも、すごい騒ぎになっているはずだよ」

 ギデオンが険しい顔つきで腕を組んだ。

「ふむ。では魔獣も軍隊もいて、すぐに攻めて来ないのはなぜだ?」
「デックの力では、国境に魔獣を並べるだけで精一杯だから。魔獣を動かして戦わせるには、力が足りないから」
「それならば、しばらくは安心できるか」
「うん。でも油断はできないから、早く行こう。魔獣を止めないと」
「ああ」
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