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一瞬、何が起こったのかわからなかった。でも、すぐ傍で、アンが姿勢を低くして、路地の奥を睨んで唸っていることに気づいた。
「グウウ…」
「アン!俺に気づいて助けてくれたんだな。ありがとう」
アンは前を睨んだまま、尻尾を揺らしてリオの頬を撫でた。
「くそ犬がっ!今度こそ殺してやる!」
物騒な言葉を吐きながら、ケリーが近づいてくる。しかしピタリと動きを止めると、苦々しい顔で踵を返して走り出し、建物の角に消えた。直後に、背後からブーツの音が聞こえてきた。
ブーツの音はリオの隣で止まり、ブーツの主が「どうしたっ」と聞く。
「怪我をしたのか?」
「ビクターさん…ケリーがいた」
「は?今、現れたのか?俺がいる前で、おまえを攫おうとしたのか?」
「そう、みたい」
ビクターが走って一帯を捜すけど、もうどこにもケリーの姿は無かったらしい。
再びリオの近くに戻ってきて「俺も舐められたものだな」と舌打ちをした。
そしてリオの足の怪我に気づく。
「おいっ、刺されたのか?」
「そう…。油断した…」
「その様子では騎乗も難しそうだな。ふむ…よし、俺の馬に乗れ」
「わかった…迷惑をかけてごめんなさい」
「リオが謝ることはない。悪いのはケリーだ」
リオがビクターと話している間、アンが熱心に刺された箇所を舐めていた。心なしか、痛みが和らいだ気がする。
リオは、ゆっくりと上半身を起こすと、アンの顔を両手で撫でた。
「アン、ありがとう。痛みが引いたよ」
「クゥ…」
アンが悲しそうに鳴いて、リオの顔を舐める。
リオがくすぐったくて首をすくめていると、両脇に手を差し込まれ立たされた。
「ひゃあ!ビクターさんっ」
「なんだ。歩くのに助けがいるだろう」
「そうですけどっ」
ビクターに肩を貸してもらい路地を出る。
リオを見たアトラスが、すごい勢いで走ってくる。
「リオ!怪我してるの?」
「ケリーに襲われたそうだ」
「ええっ!こんな明るい時刻の街中なのに」
「あいつは手段を選ばなくなってきたな。いきなりリオの足を刺したそうだぞ」
「えっ!大丈夫?早く手当をしなきゃ!」
「そうだ。だからここからは馬を走らせる。ニコラ、ひと足先に行って、医師に知らせてくれ」
「承知しました」
ニコラが素早く馬に乗り、坂道を駆けていく。
リオの刺された足を、アトラスが手巾できつく縛ったのを見て、ビクターがリオを抱えて馬に乗せた。
「グウウ…」
「アン!俺に気づいて助けてくれたんだな。ありがとう」
アンは前を睨んだまま、尻尾を揺らしてリオの頬を撫でた。
「くそ犬がっ!今度こそ殺してやる!」
物騒な言葉を吐きながら、ケリーが近づいてくる。しかしピタリと動きを止めると、苦々しい顔で踵を返して走り出し、建物の角に消えた。直後に、背後からブーツの音が聞こえてきた。
ブーツの音はリオの隣で止まり、ブーツの主が「どうしたっ」と聞く。
「怪我をしたのか?」
「ビクターさん…ケリーがいた」
「は?今、現れたのか?俺がいる前で、おまえを攫おうとしたのか?」
「そう、みたい」
ビクターが走って一帯を捜すけど、もうどこにもケリーの姿は無かったらしい。
再びリオの近くに戻ってきて「俺も舐められたものだな」と舌打ちをした。
そしてリオの足の怪我に気づく。
「おいっ、刺されたのか?」
「そう…。油断した…」
「その様子では騎乗も難しそうだな。ふむ…よし、俺の馬に乗れ」
「わかった…迷惑をかけてごめんなさい」
「リオが謝ることはない。悪いのはケリーだ」
リオがビクターと話している間、アンが熱心に刺された箇所を舐めていた。心なしか、痛みが和らいだ気がする。
リオは、ゆっくりと上半身を起こすと、アンの顔を両手で撫でた。
「アン、ありがとう。痛みが引いたよ」
「クゥ…」
アンが悲しそうに鳴いて、リオの顔を舐める。
リオがくすぐったくて首をすくめていると、両脇に手を差し込まれ立たされた。
「ひゃあ!ビクターさんっ」
「なんだ。歩くのに助けがいるだろう」
「そうですけどっ」
ビクターに肩を貸してもらい路地を出る。
リオを見たアトラスが、すごい勢いで走ってくる。
「リオ!怪我してるの?」
「ケリーに襲われたそうだ」
「ええっ!こんな明るい時刻の街中なのに」
「あいつは手段を選ばなくなってきたな。いきなりリオの足を刺したそうだぞ」
「えっ!大丈夫?早く手当をしなきゃ!」
「そうだ。だからここからは馬を走らせる。ニコラ、ひと足先に行って、医師に知らせてくれ」
「承知しました」
ニコラが素早く馬に乗り、坂道を駆けていく。
リオの刺された足を、アトラスが手巾できつく縛ったのを見て、ビクターがリオを抱えて馬に乗せた。
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