狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 王城は、王都の最も高い場所に建っている。背後は高い山がそびえ、山の向こう側には大きな湖がある。
 そのため王城へ行くには、どの道を通ろうとも坂道を登らなければならない。
 リオ達は、人の往来が多い大通りをけて、建物と建物の間の狭い道を一列で進んだ。大通りを行くと目立つからだ。
 選んだ道は、馬車がやっと通れるくらいのはばしかない。人を避けつつ馬を歩かせて進んでいると、前方に荷馬車が見えた。
「なぜ大通りではなく、この狭い道を…」と、ビクターが文句を言っている。
 リオが首を伸ばして前方を見ると、いきなり荷馬車から籠が落ちた。その籠から、幾つものリンゴがこぼれて、こちらに向かって転がってくる。
 リオは慌てて馬を降りて、リンゴを拾い始めた。
 ビクターも渋々といった様子で馬から降りる。背後でアトラスとシズとニコラも、馬を降り、リンゴを拾っている。
 リオが夢中でリンゴを拾っていると、建物と建物の間の細く薄暗い路地から「ここにも落ちてるぞ」と声がした。
 路地に目をやると、リンゴを持った手が見える。
 リオは路地に近づき「ありがとう」と手を伸ばした。その瞬間、手を掴まれ路地に引き込まれた。そして地面に倒され背中を押さえつけられる。
 リオは起き上がろうとするが、強く押さえつけられているために動けない。それならばと声を出そうとしたが、口を塞がれた。
 背中に乗る何者かが、リオの耳に顔を寄せて囁く。

「迎えに行くと言っただろう?さあ、一緒に行こうか」
「んんっ…」
 
 顔を見なくてもわかる。ケリーだ。まさか皆も一緒の昼間に襲ってくるとは想定していなかった。リオは考える。背中を押さえられ口を塞がれているが、手は使える。どうせケリーには、魔法のことはバレているのだ。
 リオは指を動かし魔法でケリーの身体を飛ばそうとした。しかし飛ばす直前に、右の太ももに激痛が走る。

「ンーッ!」

 リオの身体が震える。寒くてコートを着てるのに、額から汗が流れる。
 再び耳元で囁かれた。

「痛かった?でもこうでもしないと、リオは逃げるだろ?」
「…っ!」

 離せっ、バカ!変態が!足を刺されたって逃げるぞ俺は!そう叫ぶけど「んんっ」と唸るだけで声にならない。

「そうだ。念のため反対側も刺しておこう」

 そうケリーが呟いた直後、鈍い音がして身体を押さえつける重しが消えた。
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