狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 冷たい風が、リオの金髪を揺らす。肩まで伸びた髪を、いつもは一つに縛っている。ほどいている今は、風に揺れて金糸のように煌めいている。
 リオは、自分の身体を抱きしめて立ち尽くす。
 どうする?まさかケリーが王都に来てるなんて。たまたまじゃない。たぶん、俺を追いかけてきた。ケリーの執着が怖い。そんなに魔法を使う俺が必要?ケリーのために魔法は使わないよ。殺されたって使わないのに。どうしよう。王城にいるギデオンに相談したい。ギデオンに会いたい。
 リオは、寒い風に吹かれながら、いつまでも考えていた。

 その結果、風邪をひいた。熱はないが、咳と鼻水がひどい。リオの状態は、すぐに王城にいるギデオンに知らされ、なぜかビクターが来た。
 部屋に入るなり、ビクターが薬を渡してくる。

「ほら、王城に仕える者しか手にいれられぬ、貴重な薬だ。よく効くぞ」
「え、そんな貴重なくずりを…いいのれすか?あびばとう…ごらいます」
「ひどい鼻声だな。鼻のかみすぎか?赤くなってる」
「そうなんれすよ…」

 スビッと鼻を鳴らして、リオは笑う。
 昨夜は眠れなかったために目が充血してるし、油断していると鼻水が垂れてくる。ついでに
喉も最高に痛い。最悪の状態だ。発熱していないことだけが、唯一の救いだ。
 リオは、すぐに薬を飲んだ。水を飲んだグラスをベッド横の棚に置くと、ギデオンが来てくれなかったことを残念に思って俯いた。まあ、王様との面会をほっぽって来れるわけがないし。わかってる。わかってるけど、ギデオンに会いたいと思ってしまう。
 でも、ビクターが来てくれて心強いとも思う。ビクターはケリーのことを知っている。リオに何をしたかも。だからリオは話した。昨夜、窓の外にケリーがいたことを。三階のこの部屋を見上げていたことを。リオと目が合い、迎えに行くと言われたことを。
 ビクターは、険しい顔で聞いていた。しばらく考え、「リオ」と呼ぶ。

「おまえ、今日にでも王城に来い。ケリーも王城までは来れないだろう」
「ええっ?…でも、俺の身分では入れません」
「そんなもの、偽証すればいい。俺は一旦城へ行き、準備をして半刻ほどで戻ってくる。それまでに荷物をまとめて待ってろ。アトラス達にも言っておけ」
「…わかりました。ビクターさん、気をつけて。薬もありがとうございます」

 リオはもう一度ビクターに礼を言う。
 ビクターが頷き、「後でな」と手を挙げて部屋を出ていった。
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