狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 リオとアトラスは、それぞれの部屋に戻った。  
 四人の部屋は、並んでいる。両端の部屋にアトラスとシズが、アトラスの隣がリオとアンの部屋で、シズの隣がニコラの部屋だ。皆で一つの大部屋に泊まってもいいのにとギデオンに言ったけど、「ダメだ」と速攻で拒否された。
 えー、皆で一緒だと楽しいのにと口を尖らせていたリオだが、「俺以外の者と同室など」とねてる口調の呟きを聞いて、思わず顔がニヤけた。それって、妬いてるってこと?狼領主と呼ばれているギデオンが、そんな風に思ってくれるの?
 リオは嬉しかった。だから、個室なんて贅沢ぜいたくだという本心は言わずに、ギデオンが手配してくれた部屋に素直に入った。

 風呂から出てアンと遊んでいると、アトラスも来て、しばらく他愛のない話をした。でもアトラスは疲れていたらしく、何度か眠りかけていたので、もう寝ろと部屋から追い出した。
 リオも寝ようと、アンと一緒にベッドに入る。疲れて眠いのだが、やっぱり眠れない。それでもアンを抱きしめて目を閉じると、少しだけ眠れた。そしてまたアンの夢を見た。
 大きくなったアンが、背中に翼を生やして空を飛んでいる。空を大きく回って降りてくると、リオに向かって「気をつけろ」と言う。耳から入る言葉ではなく、直接頭に響く言葉で。
「何に?」と問うたところで目が覚めた。窓から入る月明かりで、うっすらと天井が見える。リオはアンから離れ、仰向けになっていた。隣に顔を向けると、アンは器用に顔を枕に乗せて、気持ち良さげに眠っている。

「あのアンの姿は、俺の願望なのかな…。あんな姿に育てば、かっこいいもんな。でもさ、アンは今のままでも、どんな姿になっても、可愛くてかっこいいよ」

 リオの呟きは、暗い空間へと吸い込まれていく。リオはベッドから出ると、窓に近寄り外を見た。 今は何刻だろう。街の建物は、煌々こうこうと明かりが点っている。ここは一晩中明るいのだろうか。シズとニコラは、もう戻って来たのだろうか。
 そんなことを考えて外を眺めていると、ふと下から視線を感じた。何気なくそちらに目を向けて、息を飲んだ。よく声を出さなかったと、自分を褒めてやりたい。リオは窓を開けて、視線を向けてくる人物を見た。暗がりの中でわかりづらいけど、ケリーだ。ケリーがこちらを見ている。リオが、この宿に泊まっていることを知っている。入る時に見られたか。もしくは街に出て夕方に戻って来た時に、後でもつけられたか。
 ケリーは、リオが気づいたとわかると、嬉しそうに笑った。笑って「迎えに行く」と叫んで、その場から消えた。
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