狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 宿に戻ると食事の用意ができていた。
 この宿に泊まるアトラスと二人の騎士、シズとニコラで楽しく食べた。アンもたくさん食べて、満足そうにリオの足下で寝そべっている。
 満腹になったリオは、風呂に入り早く寝ようと思っていた。ギデオンが隣にいないから、どうせ眠れない。せいぜいうたた寝する程度だ。だからせめて、動かずに身体を休めようと思ったのだ。
 食事が終わり、食堂を出る時に、リオはアトラス、シズとニコラに振り返りながら言う。

「まだ早い時間だろ?街に遊びに行っておいでよ。みんな、王都は久しぶりだって喜んでたじゃん」
「そうだな、そうしようかな」

 そう呟いたのはシズだ。リオの二つ歳上で話しやすい。

「リオは行かないのか?」

 そう聞いてきたのはニコラだ。ニコラは五つ上で、すごく落ち着いてしっかりしている。
 昼に街に出た時には、二人はリオの護衛のために、こっそりとついてきていた。しかし帰りはリオが呼び寄せて、四人と一匹で話をしながら戻ってきた。その短い時間で仲良くなった。
 リオは膝を折り、アンの背中を撫でる。最近アンは大きくなったと共に重くなったので、もう抱き上げることができない。やろうと思えばできるが、かなりの力がいる。でも可愛い。リオにとっては、いつまでも可愛い存在なのだ。

「俺はアンと遊んでるよ。それに夜の街は苦手なんだ」
「そうなの?じゃあ俺も宿にいる。シズとニコラさんは行ってきてください」

 アトラスもアンを撫でながら言う。
 シズとニコラは、顔を見合せて「どうする?」と相談をはじめた。

「ギデオン様にリオをまもるよう、言われてるしなぁ」
「そうだな」

 二人の会話を耳にして、リオはあせる。
 俺のために二人を我慢させるなんて、申しわけなさすぎる。
 しかしアトラスが、顔を上げて「俺がいるんで大丈夫ですよ」と言ってくれた。
 
「アンもいるし。アンは強いんですよ、たぶん」
「たぶんって何だよ。しかし、いいのか?」

 ニコラがリオを見る。
 リオは「大丈夫です」と深く頷く。

「この宿は、王都でもかなりの高級宿でしょ?防犯がしっかりしているし、いざという時はアトラスが護ってくれるから、な?」
「もちろん。それにリオも鍛錬をしてますから、そこそこ強いです」
「そこそこか?」
「うん、そこそこ。だからもっともっと鍛錬しなきゃだね」
「アトラスに言われてもなぁ」
「俺はやってる!しっかりと鍛錬してるからっ」
「あはは!冗談だよ。頼りにしてるよ」
「リオぉ」

「おまえら、仲良いな」とシズが笑う。
そして「俺らがいない方が楽しそうだしな」と手を上げ、シズとニコラは夜の街へと出かけていった。
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