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「なんで止めたのっ?みんな連れていかれちゃったよ!」
ポロポロと涙を流すリオの頬を、温かい手で包んで、母親が顔を寄せる。
「あなたが助けに出たところで、無理よ。捕まるか殺されるわ。捕まった村人の中に、隣の家のおじさんがいたわよね?おじさんは、私達に気づいて来るなと合図を送ってきてたのよ…。私も助けたかった。夫がいなくなってからは、よくお世話になってたもの。助けたかったけど…ゴホッゴホッ」
「母さんっ」
母親が、口を押さえてうずくまる。しばらく咳き込んでから、ヒュウヒュウと音を鳴らしながらか細い声を出す。
「今は…ダメよ。リオ、もっと強くなりなさい。そしていつか…捕まっている仲間を見つけたら、絶対に助けなさい。でも、あなたの命をかけて助けるようではダメよ…。圧倒的な魔法の力で、助けなさい」
「わかった」
リオは、涙ぐみながら頷いた。
確かに、今のリオでは、誰も助けられない。もし助けに出て行けば、リオだけではなく母親も捕まっていた。それではダメなんだ。
「リオ?リオ!どうしたの?」
「アン!」
耳元で名前を呼ばれ、肩を揺すられて、リオは意識を戻す。
慌てて男がいた場所を見るけど、もう男の姿はなかった。
あの日から、様々な魔法の使い方を、母親に教えてもらった。毎日毎日鍛錬した。あらゆることが、できるようになった。しかし子供だった故に、体力がなかった。でも今は、成人している。昔に比べれば、体力もある。それなのに、魔獣を倒したくらいで倒れていては、連れていかれた村人を助けることはできない。
リオは頷くと、アトラスに顔を近づける。
「アトラス、帰ったら、鍛錬しよう!」
「え?なんでっ」
「体力をつけたい。強くなりたい。アトラスもそうだろう?」
アトラスは、すごく情けない顔をしていたけど、リオの真剣な様子に頷く。
「そうだな。夕餉の前に鍛錬しよう。俺も強くなりたい」
リオとアトラスの会話を聞いていたアンが、二人の周りをぐるぐると歩く。
「アンもやる気だな?」と笑って、二人と一匹は、宿へと急いだ。
その後ろ姿を、見つめる人がいた。コートを着て、襟巻きで顔を半分隠している。そして光の当たり方によっては金色に見える茶色い髪が、風に吹かれて揺れている。この男の存在に、アンだけは気づいた。二人の後ろに下がって振り向き男を見る。男は、アンの視線に気づくと、すぐに顔を背けて足早に去っていった。
ポロポロと涙を流すリオの頬を、温かい手で包んで、母親が顔を寄せる。
「あなたが助けに出たところで、無理よ。捕まるか殺されるわ。捕まった村人の中に、隣の家のおじさんがいたわよね?おじさんは、私達に気づいて来るなと合図を送ってきてたのよ…。私も助けたかった。夫がいなくなってからは、よくお世話になってたもの。助けたかったけど…ゴホッゴホッ」
「母さんっ」
母親が、口を押さえてうずくまる。しばらく咳き込んでから、ヒュウヒュウと音を鳴らしながらか細い声を出す。
「今は…ダメよ。リオ、もっと強くなりなさい。そしていつか…捕まっている仲間を見つけたら、絶対に助けなさい。でも、あなたの命をかけて助けるようではダメよ…。圧倒的な魔法の力で、助けなさい」
「わかった」
リオは、涙ぐみながら頷いた。
確かに、今のリオでは、誰も助けられない。もし助けに出て行けば、リオだけではなく母親も捕まっていた。それではダメなんだ。
「リオ?リオ!どうしたの?」
「アン!」
耳元で名前を呼ばれ、肩を揺すられて、リオは意識を戻す。
慌てて男がいた場所を見るけど、もう男の姿はなかった。
あの日から、様々な魔法の使い方を、母親に教えてもらった。毎日毎日鍛錬した。あらゆることが、できるようになった。しかし子供だった故に、体力がなかった。でも今は、成人している。昔に比べれば、体力もある。それなのに、魔獣を倒したくらいで倒れていては、連れていかれた村人を助けることはできない。
リオは頷くと、アトラスに顔を近づける。
「アトラス、帰ったら、鍛錬しよう!」
「え?なんでっ」
「体力をつけたい。強くなりたい。アトラスもそうだろう?」
アトラスは、すごく情けない顔をしていたけど、リオの真剣な様子に頷く。
「そうだな。夕餉の前に鍛錬しよう。俺も強くなりたい」
リオとアトラスの会話を聞いていたアンが、二人の周りをぐるぐると歩く。
「アンもやる気だな?」と笑って、二人と一匹は、宿へと急いだ。
その後ろ姿を、見つめる人がいた。コートを着て、襟巻きで顔を半分隠している。そして光の当たり方によっては金色に見える茶色い髪が、風に吹かれて揺れている。この男の存在に、アンだけは気づいた。二人の後ろに下がって振り向き男を見る。男は、アンの視線に気づくと、すぐに顔を背けて足早に去っていった。
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