狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 王都へは、ギデオンとリオ、ロジェと複数の騎士、それにアトラスもついて来た。いつからそうなったのか、アトラスはリオ専属の護衛らしい。リオは自分の身は自分で守れるのだけど、アトラスが傍にいれば楽しいから、まあいいかと思っている。
 順調に進んで王都に着いたが、さすがにリオは王城には入れなくて、アンとアトラスと二人の騎士と共に、王都の宿でギデオンの帰りを待つことになった。
 ギデオンとロジェ達は、何日間かわからないけど、王城に滞在する予定だ。そのため、リオは数日暇になる。時間はたっぷりある。だけど、早く王都を見てみたくて、アトラスとアンと一緒に、宿に荷物を置くとすぐに外に出た。
 護衛の騎士達には、休んでくれるよう頼んだけど、「たぶん目立たないよう、ついて来るよ」とアトラスが言う。
 リオを守るようにギデオンからきつく命じられているらしい。
 リオは、ぽかんとアトラスを見つめて思う。
 いやいや、俺、一人で旅をしていたんだよ?成人前でも大丈夫だったよ?それに今は成人したしアトラスもアンもいるし。本当に大丈夫なのに。ギデオンって、心配性なんだなぁ。
 ギデオンに命じられてるなら、俺が言っても聞かないだろうとリオは諦めて、護衛の騎士達を気にしないことに決めた。
 王都の賑やかな通りを、アトラスとアンと並んで歩いた。人が多くて肩がぶつかりそうになるけど、アトラスもアンも器用に避けて進む。リオも気をつけながら歩き、気になる店の前で足を止めては商品を見て、パンを買って二人と一匹で食べた。
 王都は広くて、短い時間じゃ全てを見てまわれない。日が落ちてきたので、明日は朝から来ようと決めて、宿に戻ることにした。
 その宿への帰途に、リオは、ある男を見かけて足を止める。
 あの男、見たことがある。背が高く、フードの下からのぞく顔。あの顔を見たのは、いつだったか。確か…。
 リオは目を見開く。
 そうだ、あの日だ。
 リオの村から人が消えた日に、見かけた男だ。


 リオは母親と遠出をしていた。村を留守にしていた。用事を済ませて戻って来たら、村が怪しい男達に囲まれていた。リオと母親は、咄嗟とっさに大きな岩に隠れた。怖かった。とんでもないことが起こっているとわかっていた。村人達の悲鳴や怒鳴る声が聞こえていたから。母親が、震える手を握ってくれた。しばらくして静かになった。怖かったけど、リオは恐る恐る岩から覗いた。背の高い男が、部下らしき男達に命じて、縄で縛った村人達を馬車に押し込んでいた。
 それを見たリオが飛び出そうとしたが、母親に魔法で動きと口を封じられた。
 男達と縛られた村人達が乗った馬車が、遠くへと去っていくまで、母親は魔法を解かなかった。完全に男達の姿が見えなくなって、ようやくリオの身体と口が動くようになる。
リオは母親に向かって叫んだ。
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