狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 リオもひと通り仕事をこなして部屋に戻った。そして呑気に部屋で寛いでいると、不機嫌な顔のギデオンが戻ってきた。
 アンと遊んでいたリオは、顔を上げてギデオンに聞く。

「お疲れ様。王城に行くんだって?」
「誰から聞いた」
「アトラスから」
「あいつ、口が軽すぎる」
「俺にだから話してくれたんだよ。怒らないで」
「…怒ってはいない」

 明らかに怒っているとわかる、凶悪な顔つきで、ギデオンがリオの傍に来る。そして机に置かれた水差しからグラスに水を注ぐと、一気に飲み干した。
 よく見ると、額に汗をかいている。

「なんか忙しそうだね。汗かいてるよ。窓開ける?」
「いや、いい。リオ、話がある」
「うん、なに?」
「俺と一緒に、おまえも王都に来てくれないか?」
「え?いいの?行きたいっ」
「行きたいのか?」
「うん。だって賑やかで華やかそうだし、王都って一度は見てみたいじゃん!それにギデオンから離れたくな…いや、離れたら、また寝不足になるし…」

 最後の方は、もごもごと口を動かすだけで、何を言ってるのか、はっきりと自分でもわからない。
 ギデオンが「ん?」と続きを促したが、リオが黙ったので、ギデオンは話を続けた。

「 王から早く報告に来いと急かされている。ったく、俺は忙しいのに無茶を言うものだ。ただでさえ王都へは三日かかるうえに、滞在と帰りも含めて十日は城を留守にする。仕事が溜まる一方だ。まあ、ゲイルとステファンが何とかしてくれるだろう。さっそく明日には出立するつもりだ」

 ステファンとは、ゲイルの従兄弟で、重要な拠点の街の側に屋敷を構えて、怪しい人物や物の出入りが無いか、不正が行われていないかを見張っている。と、ギデオンが魔獣討伐先で怪我をしたと聞いて城を飛び出し、帰って来た時に聞いた。あの時にゲイルが呼び寄せたステファンは、ギデオン帰城の知らせを聞くなり屋敷に戻ったらしく、いまだリオは会ったことはない。
 リオは立ち上がり頷く。

「わかった。すぐに荷づくりする。あ、アンも連れていってもいいよね?」
「もちろんだ」 
「アン、王都まで旅するぞ。楽しみだな」

 アンも嬉しそうに「アン」と鳴く。ただし、ものすごく低い声で。
 温泉地から帰ってきて、ひと回り大きくなってから、アンの声が低くなった。他人が聞いたら震えそうだ。でも、どんなに低い声になろうとも、また身体が大きくなろうとも、リオにとってアンは可愛く愛しい存在だ。それにアンは、すごく落ち着いた行動をするようになった。動物の成長は早いから、もう大人になったということだろうか。でも、まだまだリオには甘えてくる。子供だろうが大人になろうが、リオにとってアンは可愛いままだ。

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