狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 城に帰ってから二日後に、ギデオンの執務室に呼ばれた。リオが部屋に入ると、窓を背に座っていたギデオンに「ここへ」と言われる。
 まっすぐ進み、机を挟んでギデオンの正面で止まる。「早速だが」とギデオンが口を開き、リオは緊張して唾を飲み込んだ。

「先日の温泉地での魔獣のことだ。リオはなぜ、雪山にいた?洞窟に避難しろと命じたはずだが?」
「ごめん。本当に危険になったら避難するつもりだったんだ。でも、窓からギデオン達を見ていたら、雪煙が立った直後に皆が倒れて…。その瞬間、無意識に走り出してた…」
「それで?」
「雪山に着いたら、魔獣は眠っていた。俺はとりあえず皆を助けたくて…治癒をした」
「治癒か…どうやって?」

 リオは、固く拳を握りしめる。今から話す内容を聞いて、ギデオンは、どんな反応をする?少し怖い。

「魔法…を使って、毒を抜いた。ギデオン、俺はね、魔法を使う一族の出身なんだよ。今では希少だと言われる、魔法を使う者だ」

 ギデオンの目が大きく開かれる。リオと眠るようになって、不眠が治り目の下のくまが消えた。そのおかげで、元から整っていた顔が更に魅力的になって、かっこよくなったと思う。相変わらず表情が乏しく怖い顔だけど。
 でもリオは、ギデオンの喜怒哀楽がわかる。今は、本当に驚いているらしい。そりゃあ驚くよな。俺だって逆の立場なら驚くよ、とリオは思う。
 ギデオンが机に手を置いて、ゆっくりと立ち上がった。リオから視線を逸らさずに聞く。

「本当に?」
「本当だよ。ギデオンも、薄々気づいてたんじゃないの?ほら、前に魔獣討伐で、部下をかばって魔獣に飛ばされたことあるじゃん。あの時、魔獣の爪で背中を抉られたの、覚えてるんだろ?」
「ああ…」
「やっぱり。目覚めた時に傷がなかったのに、よく黙ってたね。俺が何かしたのか不確かだったから、言わなかったんだな。無闇に騒ぎ立てない、ギデオンのそういう所が好きだよ。そう、あの時の傷は俺が治した。今回もそうだ。皆から毒を抜き出し、魔獣も倒した。でも、かなり強い魔法を使ったから、その反動で血を吐いた」
「は?口を切っただけと言ってたではないかっ。そんなに負担がかかるほどの、魔法を使うな!」
「ええ?」

 今度はリオが驚いた。なんで怒るの?皆を助けて魔獣も倒したって言ってるのに。しかも予想と違うところで怒ってるし。ただでさえ怖い顔が、さらに怖いよ。
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